PERSONA EPISODE of SHADOW WORKER   作:漆竜 黒鍵 

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 辰巳記念病院、その一室にて目を覚ます不良少年。状態を起こせばその直後夥しい量の吐瀉物を撒き散らす。

「ぁっ…ァァァッ!!!!来るっ!!アイツが来る!!!ァァァッ!!!!」

 嗚咽、涎、涙に鼻水を撒き散らしいベッドの上で錯乱、数日前に自分に降りかかった暴力による絶対的トラウマ。それは彼だけでなく複数人の男女が同じ症状に陥っている。


 そして皆揃って同じ事を言うのだ、あの男は人じゃない…と


総てに翻弄され踠き苦しみ進む愚者、総てを破綻させ抱腹し嘲笑う道化師。 後編

 

 

 2014年5月1日、5月の開始でありゴールデンウィーク手前の街の喧騒はその大半が今日と明日に対する不満で溢れている。

 

 無論俺も同じ意見だ、間に挟まってるものは挟んできた奴と同色に染る、オセロで学んだ常識だぞコンチキショーめ。

 

「でもまぁその理論だとそもそも平日に挟まれてるゴールデンウィーク自体平日に染まるって理屈になるんだけどな。」

 

「そうだとしてもしんどいって……ねぇ玖城、それに天田くんにテレジアもさ、ちょっと今日サボろ?ね?」

 

「綾崎さん成績のことで美鶴さんが話あるってさ」

 

「これは俗に言う個人レッスンのお誘いというものですね。ご愁傷さまです綾崎さん」

 

「ぎゃぁああああす!?!?」

 

 そんな風に談笑しながら歩いていればもう既に月高の校門が見えてきた。

 

 未だにサボりたいとボヤき続けてる綾崎には悪いが、これが現実だ。

俺達学生は社会の歯車として学業という工程を実行しなければならない。

 

「そういやみつ姉が今日明日乗り越えたらゴールデンウィークに良いとこ連れてってくれるって言ってたな」

 

「え!?良いとこ!?どこそれどこ!?!!」

 

「いや知らんけど、でもみつ姉みたいなVIP人間が言う良いとこだし、フレンチとかじゃねぇか?」

 

 知らんけど

 

「うぉっしゃぁああああ!!!今日と明日乗り越えてやる!!!」

 

 単純なヤツ

 

…そういや何か忘れてる気がするんだよなぁ……なんだっけな。

 

「フッレンチィ!フッレンチィ!!フッレンっってなんじゃこりゃぁああああああああぁぁぁ!?!?!?」

 

 あ、そういや昨日の南雲のとのアレ説明すんの忘れてたわ。

 

 自分達のクラスであるE組の惨状を眺める綾崎と天田。

廊下側の窓は粉々に割れ散らばっており、教室内も多くの机がなぎ倒されている。というか前側の引き戸もへし折れてんだよな……。

 

「それは」

 

 説明しようとするテレジアの口を右人差し指を当てて制し、自分達の教室へ連れていく。

 

 言わぬが仏、知らぬが仏が正しい形だがこの場面なら前者の方が適してるだろう。

 

 ごめんな2人共、ホームルームで何とかしといてくれ

 

───────────────────

 

そして俺達F組のホームルームが終わり一限の始まる。あ、また歴史……小野教諭の戦国好きムーブかぁ……

 

「もういいでしょ?高床式倉庫なんて覚えてもなんの役に立つって言うのさ!!

 そんなことよりあの奥ゆかしくも激しく熱かりし戦国乱世における侍精神や武士道精神を先生は学んで欲しいのよ。

 ってなんだいまたちゃんとした授業をして欲しいだって?もぉ仕方ないな。

 なら今日は5月1日かぁ、そうだこのクラスで5月生まれなの玖城だけだな、なら玖城に問題を出そう」

 

 理不尽が過ぎる

 

「最初に話した高床式倉庫には柱と倉の間にとある仕掛けが施されていたんだが。その仕掛けの名前が何かわかるか?」

 

「えっと……ねずみ返し?」

 

「そう正解、これは名前の通りネズミの侵入を防ぐ為の工夫だな。

 そもそも高床式倉庫自体湿気と食害、つまりネズミを初めとする動物や虫が収穫物を食い荒らさないようにしたものだからな。

 さて、この時代はこの当たりでいいだろう、戦国をやるか、え?まだ先?このペースだと二学期になるでしょうが!!!!!」

 

 どうやら正解だったようだ、何となくみんなから尊敬の眼差しを向けられた気がする。

 

────────────────

 

 そして昼休みの時間になる。俺はいつも通り教室から我先に

 

「ボサっとすんな」

「ごえっ」

 

 先に出ていく久遠に突き飛ばされて引き戸近くの掃除用具入れにもたれ掛かる。

 

 あのアマ……!

 

 気を取り直して教室から出ればE組の状況をチラ見、窓や扉はないがある程度修復されていて安心する。

 帰ったらなにか奢るかな。

 

 さて、今日はどこで過ごすかなぁ……

 

────────────────────────

 

 昼休みをやはりいつもの柿の木が生えている中庭で過ごすことにする。

もしかしたら久遠と遭遇するかもしれないが、柿の木の下がダメなら少し離れた庭木の中で寝転がってればいいだろう。

 

「久遠は……まだ来てないな、よし」

 

 そう言って俺は念の為に庭木の中で横になる事にする。

あいつの事だ、遅れてきても堂々と俺に文句を言いながらも居座るだろう、なら見つからなければ……て。

 

「お前もかよ…」

「ちっ、柿の木はお前が使えよバカ玖城が…」

 

 なんもこんな考え方まで似てる必要ないだろ……

 

 維持を張るのも面倒だ。よってもう互いに居ることを知ったなら気を使う必要も無いので昨日と同じく柿の木を挟んでそれぞれの昼を過ごす。

 

「………またアンパンと牛乳にいちごかよお前、肉とか野菜食えよ。」

 

「るっせぇ話しかけんなボケ」

 

 取り付く島もない。しかし飯を食えなくなってよくわかるが、バランスよく食うことってのは本当に大事な事だと思う。

 

「……そんな甘いもんばっかだからいつも生理中みたいに不機嫌なんじゃねぇか?」

 

「期待してねぇけどほんとお前デリカシーないな玖城……、つかそれを言うならテメェこそ飯食ってねぇじゃねぇか。そっちの方がらしくないんじゃねぇか?」

 

「ホントだよな、ホント我ながら情けがねぇよ、拒食症なんて」

「何?」

「あ」

 

 言うつもりはなかったがポツンと出てしまった。

 

  ……………

 

「教職賞は誰の手に!?」

 

「誤魔化すにしてももう少しマシな言葉あったろテメェ!!つか拒食症だァ!?お前が!?はぁ!?」

 

 クソこいつ大声で言うな聞かれんだろ!!

 

「あーくそ……一生の不覚だ……」

 

「お前それ隠し事だったのかよ……気をつけろよお前……そのうちうっかり私に口座番号とかも漏らす可能性あるぞ……」

 

 まじそうだよな……、コイツといると変に気を張る必要が無いからポロポロと言葉が出る……それがまさかこうなるとは…

 

「しかし玖城みたいなノンデリの権化、神経の図太さだけが自慢の野郎が拒食症とはなぁ?」

 

「いや別に俺の神経は図太い訳じゃねぇよ」

 

「ノンデリは認めるんかよ……」

 

 拒食症ということがこいつにバレた。しかしなんでか解らねぇが言うほど怖くねぇ。

 コイツならバレたとしても言い触らすという心配がないからかもしれない。

 

「んで?何したお前」

 

「……わりぃ流石に言えねぇかな」

 

「そうかよ」

 

 そりゃそうだろ、人間数十人惨殺しちまったなんて言える訳がねぇ。

 

 そもそもペルソナ云々を説明できねぇんだからその先の殺人なんぞ伝える方法は無い。

 

「まぁノンデリカシーのお前の事だから女関連ってとこか?」

 

「いやそんな仲になるような女の知り合いはいないから」

 

「どうかねぇ?聞いた話だとお前に振り向いて貰えないって泣いた女子が居るとか居ないとか」

 

「え!?まじで何年何組!?可愛い子!?」

 

「お前女に興味無いとか言ってなかったか?」

 

 そんな冗談を飛ばしながら時間が経過している。

 

「あ、予鈴なったな」

 

「ホントだ、まさかテメェとこんな面白い会話ができるとはな……意外だよ私は」

 

 まぁ互いに嫌いあってるハズの俺らがこうして互いに同じ場所で昼を過ごしてる時点でそう考えるべきなんだがな。

 

 そういうと2人揃って立ち上がり、そして互いに視線が険しくなる。

 

「一応釘刺しとくが、拒食症のこと絶対言うんじゃねぇぞ」

 

「ンなもん話す相手も居ねぇっての」

 

 俺達はお互いから視線を外し中庭から立ち去る。

 

─────────────────────────

 

 午後の授業が終了しホームルームが終わる。

 

 E組の惨状についての報告や注意喚起がないところを見ると別の事故と挿げ替えられたのだろう。

 

 南雲は南条財閥との関わりがある。故に桐条も本格的に問題には出来ないし、桐条グループを母体としている月光館学園も同様なのだろう。

 

 しかしそれはあの惨状を起こしたのが南雲と俺であるを把握しているということになる。

 

 まぁ桐条と南条の関係者が本校で揉めましたなんて口が裂けても言えんわな。

 

 そう締めくくれば机から立ち上がり鞄を持つ。

 

 既に教室には誰もいない。外の運動部の活気ある声が聞こえてくるだけだ。テレジアは天田や綾崎に任せている。

 

 さて、行くか。

 

──────────────────────

 

 そうして俺は運動部の声を聴きながら月高の校門を抜け、辰己ポートアイランド駅へ歩いていく。

 しかしその足は駅へは向かわずそのハズレにある裏路地のたまり場へ運ばれる。

 

 ニュースにて報道された先日の暴力事件が発生していたらしい此処、そして俺はその関係者の1人に偶然心当たりがある。

 

 なぁそうだろ、俺は月高から俺の後ろに着いてきていたソイツに振り返る。

 

 振るわれていた拳を頬を掠めながら避け、その攻撃主との顔の距離を近づけて互いの額が鈍い音を立て激突する。

 

「よぉ玖城ォ!昨日ぶりだなぁ!!」

「白々しい…校舎にいた時からずっと後ろを追ってきたろぉが!!」

 

 互いに激突された額は離れない。代わりにお互いの額が裂け、互いの血が混ざり合う液体が互いの顔を伝う。

 

「南雲ォ……テメェ俺と会う前にも随分派手に暴れたらしいなぁ……」

 

「おぉ!テメェと殺り合う為の前哨戦と思ってよぉ、だがここの奴らどいつもこいつも屁みてぇなやつばっかで全く歯ごたえがなかったぜっ!!!!」

 

 そういい俺の腹を蹴り抜く南雲。俺は堪らず後ろに交代し南雲の追撃に晒される。

 的確に殺すつもりで放たれる此方の顬を狙った拳の連撃。

 

「くだらねぇぞクソがァァァ!」

 

 しかしその全てを無視した俺の体当たりが南雲をはじき飛ばす。

 

「グッガァッ!!」

 

 俺のタックルで大きく吹き飛ぶ南雲。しかし地面に落ちる寸前に受身を取り回転、そのまま体勢を立て直し滑りながら此方へと向き直れば即時疾走。

 俺もそれに答えるように前進を開始する。

 

「ぉぉおおおおおお!!!!」

「ぉぉおおおおおお!!!!」

 

 俺が右腕、南雲が左腕、互いに利き手を引き絞りここに必殺、相手を確実に潰す為の一撃を装填すれば一気に放つ。

 

 そしてそれが互いの顔面に激突した刹那、世界が影時間へと堕ちる。

 

 その激突によって勝敗が着く。

 

 南雲の強烈の一言でしか言い表せれないほどの一撃は確実に俺の脳髄を掻き乱し意識が遠のく。

 然し俺は倒れなかった。前に倒れ込む瞬間に意識を繋ぎ止め右足を前に出すことで踏ん張る。

 

 それに対比し南雲は完全に意識を手放しその顔面を俺の肩へと激突させ、そのまま地面まで滑り落ちる。

 

「はぁ……はぁ……グッ……ぁぁああっ!!!」

 

 そして俺は崩れた姿勢から立ち直り周囲の影時間化をそこで初めて認識する。

 

 クソが、こんなタイミングでかよ……!!

 

 周囲を囲む黒服の群れ、エルゴノミクス。南雲との殴り合いはその撃ち合いこそ数は少ないが、その内訳を考えれば俺の消耗はかなり大きい。

 

「……天田達が来るまで持つかねぇ……」

 

 俺は有事に備え常備していた召喚器を手に取り冷や汗を流す。

 

 ジリジリの躙り寄るエルゴノミクス。この状況において俺の不利などどのような贔屓目で見ても明らかだろう。

 

 非常に不味い……気配的に周囲に俺の知るシャドウワーカーは1人も居ない。

 

 そしてエルゴノミクスの黒服の中から一人、我先にと俺を狙い疾走する男が居た。

 

 その手には召喚器が握られている。いつか見たあの名称不明のペルソナが出現する、そう覚悟した刹那

 

「づっぁあああああああああああ!!!!!」

 

 気絶から持ち直した南雲が立ち上がりざまにその黒服を拳で打ち上げ殲滅する。

 

 コイツ……マジかよ。

 

「貴様何者だ!」

 

 黒服の中から南雲に飛ばされる言葉に顔をニヤケさせ答える南雲。

 

「アン?見りゃ分かんだろ、巻き込まれた只のイケメンだよ。」

 

 打ち上げた男から手放された召喚器を掴む南雲。そして俺と南雲は何を示し合わせた訳でもなく互いが背中を合わせて黒服の包囲網と対峙する。

 

「よぉ玖城、なんだコイツらお前の客かよ?」

 

「は、こんな客共に来られたら速攻で塩まいて追い返すわ」

 

「はっ、違ぇねぇ」

 

 風が吹く。俺の紫がかった黒髪と南雲の緑がかった黒髪が揺れ、俺の深紅の目と南雲の金色の目に確かな力が宿る。

 

 影時間で象徴化していない南雲……こいつにも素養があるということかなら

 

「業腹だが今は力を貸せ南雲、やり方は何となく解るだろ?」

 

「あぁ、俺たちの殺し合いを邪魔したんだ。相応に報いるつもりだ」

 

 そして俺達は互いに同じ動きをとる。

 

 手に持つピストル型のこの召喚器を自分の顬に押し付け

 

  引き金を引く。

 

「ペルソナ!!」

「ペルソナ!!」

 

 そして出現するのは俺のペルソナであるメサイア・影神、そしてもうひとつ。

 

 南雲を中心として吹き荒れる力の奔流、単純な出力なら俺のメサイア・影神と同等の渦から権限するのは巫山戯た出で立ちの侍。俗に言う傾奇者と呼ばれる存在だろう。

 

 何処までも巫山戯ている。自身の武器であろう太刀を足場としその上でしゃがみこみ全てを見落とす武辺者。

 

「こいつぁいい…こんな世界があったのかよ…おもしれぇ…おもしれぇぞ!お前もそう思うだろ!!ケイジ!!!!」

 

 そしてケイジと呼ばれたペルソナが始動、その太刀を足で弾けば空中にて抜刀。その圧倒的武威とともに荒れ狂う雷撃を撒き散らし制圧していく。

 

 そしてメサイア・影神も起動、血濡れの大剣を振り払い吹き荒ぶ烈風と共に疾走すれば黒服の尽くを無血にて制圧していく。

 

 俺たち2人はもう既に限界の筈だった、仮にペルソナを召喚できていても本来こんな芸当は出来なかった筈だ。

 

「くくくく…」

「へへへっ…」

 

 俺達は気が付けば笑いあっていた。共に戦うことが不思議で、互いに刃を向けないことが可笑しくて、そして

 

「ハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」

「ハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」

 

 コイツにだけは負けてたまるかという対抗心で何処までも強くなれる自分達がとても楽しいのだ。

 

 そして同時にメサイア・影神とケイジの猛威が爆発する。

 

 メサイア・影神の爆発魔法であるギガオンにて大きく垂直に打ち上げられた黒服達をケイジの放つ純粋な衝撃を発生させる衝撃魔法、マハザンマによって彼方へと吹き飛ばしていく。

 

 ああここが地獄かと、エルゴノミクスには同情さえ覚える。

 

 ────────────────

 

 そして敵全員を制圧した俺と南雲。しかしこの共闘で俺達に友情が、などという都合のいい展開などない。

 

 相も変わらず南雲は俺を殺したいし、俺は南雲を早急に排除したいのだ。

 

「白けちまった、今日は気分じゃなくなっちまった」

 

 悔しいが同意だ、俺達は今日の闘いをこれ以上続ける気がない。だがこいつには聞かなきゃいけないことが多過ぎる。

 

「南雲、お前がこの辰己ポートアイランドに来た理由はなんだ?

 南条の飼い犬である南雲の家の人間であるお前がここにいるのなら、このエルゴノミクスとの戦いに南条が介入するってことか?」

 

「知らねぇな、俺には興味のない話だ。

 言ってんだろ?俺はお前と殺し合いをするために来た。そこに南条のおっさんの思惑なんぞ関わってねぇのさ。

 まぁあのおっさんもこっちに近いうちに来るみてぇだし、なにかあるのかもなぁ」

 

 そう言いながら南雲は影時間の空に浮かぶでかい月を眺める。

 

「…こんな世界があるなら確かに、普段に刺激は求めなくなるか」

 

「南雲…?」

 

「玖城」

 

 俺の名前を口にする南雲に息を飲む、その声に今まであった敵意が消え失せている。

 

「死ぬなよ?テメェを殺すのは俺でなくちゃならねぇからな」

 

 そう言って南雲は裏路地の更に奥へと消えていった。

 

 

 

─────────────────────────

 

 目が開く、青い壁、青い床、青い座席に青い机、窓から見える景色は一面の黒で染められている。

 

「ようこそ我がベルベットルームへ」

 

 前を向けばイゴールとその従者であるエルフリーデが居た。

 

 そうかベルベットルームか。

 

「ふふふ」

 

 いつもいきなり笑うが、開幕早々に笑い出すイゴールに首を傾げる。

 

「いえ、貴方には驚かされる事ばかりですな。よもやあのような奇縁までお持ちとは」

 

 奇縁?俺がペルソナに目覚めてから奇縁ばかりな気もするんだが?

 

 機械の乙女共やシャドウワーカー、それに的ではあるがあの黒服共…そしてあとは南雲か…?

 

「それもまた良い経験でしょう。その様々な縁が貴方の未来を照らすものとなりましょう。」

 

 そんなもんかなぁ?

 

「そんなもので御座います。

 さて、今回貴方にお伝えするのはアドバイスでございます。

 

 この先貴方は決して相容れぬ、然し手を取るために相手を知らねばならぬという試練を迎えることとなります。

 それが決して容易ではない事は貴方がよくご存知でしょう、然し時に人はそれらと腹を割って向き合う必要がございます。

 

 無論私共は貴方ならばそれさえも乗越えうると考えております。

 

 さて、そろそろ現実の貴方もお目覚めになるご様子、では再びお会いする時まで、御機嫌よう」

 

 

─────────────────────────

 

 

 

「玖城!」

 天田の声が聞こえて目が覚める。どうやら少し眠っていたようだ…。

 

 天田が走って来ており、その後ろに綾崎やラビリス、テレジアも続いている。

 

「…ぁ」

 

 あれ?声出ねぇな…あーまぁ疲れてるからなぁ…

 

 あー眠……少し眠るかな…

 

「寝んな!!」

 

 綾崎の声と共に俺の頭に走る衝撃。

 

 なんでや、普通こういう時って俺を寝させてくれる流れやんか!!!

 

 いやまぁそうか…こいつにそんなセオリー通用しねぇか…

 

「……っ…疲れてんだよ…ポカポカ人の頭を殴るな。

 後ラビリス、お前も俺の脛をつま先で続くな痛いんだよ鉄塊」

 

 …あーくそ…

 

 そんな中天田は周りにて未だ意識を失ったままのエルゴノミクスの構成員と周囲の状態を見回す。

 

「玖城…これ一人でやったの?」

 

「……いや流石に無理、まぁ世の中俺ら以外にも戦えるやつがいるらしいぜ?」

 

 そんなことよりも誰か手を貸してと言おうとした時に浮かぶ自分の体。

 

「て、テレジア!?ちょ!?あんた何しとん!?運ぶんはお姉ちゃんに任しなさい!」

 

「断固拒否します。この方は私の大切な友人です。私が運びます、では。

ジェット噴射です!!」

 

「ジェット噴射なんて機能アンタについてないのわかっとんやからなぁ!?ちょ、まてぇ!!!」

 

「……天田くん…これ私たち置いてけぼり?」

 

「僕、朝のE組の惨状を見た時の事を思い出したよ今…」

 

 

 

 

───────────────────────────

 

 揺れる身体、自分が何かに座っているのを感じる。

 

 目を開けば広がっているのは青い床、青い壁、青い机に青い座椅子、窓から覗く景色は一面の闇。

 

 ここは……俺は確か玖城と離れてから路地裏の更にBARに入ったはず…

 

「ようこそ我がベルベットルームへ」

 

 長い鼻の老人がそう告げる。

 

「私の名はイゴール、この部屋の主を務めさせていただいております。

 ふふ、よもやこのような事が起きようとは。1つの旅路に複数のお客人、このようなことは初めてでございますな。

 ふふふ、貴方よりも先にここのお客人となった少年と貴方は既に何かしらの深い縁があるご様子。

 であればこの目覚めも必然やもしれませんな。

 

 さて、現実の貴方は眠りから覚めようとして居られるご様子。またいずれお会いすることがあるならば、その時貴方はもう一人の少年と共に訪れるやもしれませんな。

 

 ではその時まで御機嫌よう」

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

「故に」

 

 青い電車の中、長い鼻の老人の話を私は聞いている。

 

 久遠冬祈として生まれて16年目になる自分の人生でこれ程奇妙な体験はないだろう。

 

「貴女もまた1つの旅路を歩む事となるでしょう。」

 

 よく分からない。どうやら何かしら契約を私はするらしいが、怪しげなものにサインをする趣味はないんだが

 

「ふふふ、いずれときが訪れれば貴女にもわかるでしょう、特に貴女は既にある少年との縁をお持ちの様子。

 であれば彼の素養の進化に伴い、貴女の持つ可能性と素養もまた共鳴し喚起されることでしょう。」

 

 そんなものか…しかし気になるのは

 

 

 

 なんでここには座席が4つあるんだ?

 

「ほぉ、見えますかな?

 皆様見えてはいたやもしれませんが、それに疑問を呈したのは貴女だけ。

 

 ふふふ、やはり貴女の素養もまた興味深いものになりそうだ。

 

 さて、いずれ貴女がここに訪れる日を楽しみにさせて頂きましょう。

ではその時まで、御機嫌よう」

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 そして玖城樹下、南雲李独、久遠冬祈を見送ったイゴールはその3人とは違う4人目の人物と対話していた。

 

「貴女だけは彼らの誰とも縁を持っていない。厳密には少女とは繋がりがある様子ですが、それでも縁と言うには繋がりが薄いでしょう。

 

 然しどうしたことか、貴女の力は他の三人よりもより過剰に、過激に、壮絶にその力を伸ばし続けている、この瞬間も尚。

 

 他の三人がまだ到達しえない領域の力。貴女がそれを持ってなんとするか、大変興味深く、然し恐ろしくもありますな。

 

 ふふ、心配せずとも止めることは致しません。わたくしは貴女の旅路を見守る存在でしか無いのですから。

 

 もう戻られるご様子。貴女が再び訪れるのはいつになることやら、もしかすれば今生の別れとなるやもしれませんな。

 

 もしも再び出会うことがあればその時まで、御機嫌よう」

 

 そしてイゴールは見届ける。その炎のように紅く、たなびく長髪を持つ白衣を纏う女の姿がベルベットルームから立ち去るのを




南雲 李独(なぐも りひと)
基本情報
年齢 16歳
性別 男性
誕生日 12月9日
学校 月光館学園高等部
クラス E組
居住地 現時点では不明
外見
身長 174cm
体型 細めだが筋肉質
髪色 緑色掛かった黒髪
目 金色

服装 学校内ではかなり着崩した状態の制服姿。
学外においては朱色を基調とした袖無しのロングコートにロング丈のシャツ、黒の綿パンと目立つ服装。

性格 悦楽主義であり特に戦闘を好む。特に玖城に対して強い敵意や嫉妬心を抱いている。
 彼は挑発的な態度で常に相手を試し、戦いを求める姿勢が顕著であり、例えば裏路地での再会では、すぐに拳を振るい、玖城を攻撃する等が挙げられる。
 また極度の感覚障害を患っており、生まれつき味覚、嗅覚、触覚の感度が健常者の数百分の一と欠損と言って差し支えない程。つまり






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