藤丸立香に救われたいカグヤヒメ 作:二次元好きの匿名さん
特異点の性質上、襲撃されずに行けるのはおかしくね? という考えとゲーム的都合の戦闘あるよな……というメタ的思考の結果です。
ただ、漫画版FGO未読のため、簡易召喚に関する描写に自信がございません。あらかじめご了承ください。
今度買いに行きます。
危機はすぐに訪れた。
初めに感じたのは刺すような殺気。次いで大地を駆ける大型の獣の足音。加速度的に大きくなるその音に、藤丸は自分が狙われていると直感した。
(レイシフトして早々にか!?)
思わず内心で悪態を吐くや否や、灯りが見える方向に全力で走り出す。
鍛えているとはいえ、この身はあくまでただの人間に過ぎない。人と獣であればすぐに距離は詰められてしまうのは道理だろう。事実、数分もしない内に獣の姿を視界の端に捉えた。
これ以上の距離は稼げない──マスターとしての経験がそう訴える。カルデアとの通信はできず、同行する筈だったサーヴァント達は不在。まさに詰みの一歩手前の状況で、藤丸の取れる手段は一つだけだった。
「頼む、来てくれ──」
視界の端に捉えた影は四足歩行型で、少なくても自分よりは間違いなく大きな獣。恐らくは魔獣、今まで何度も対峙してきた事のある姿。カルデアではソウルイーターと呼称されていたものだ。しかし、それらの情報を脳内から引き出すよりも早く、反射的に一騎の英霊が脳裏を過ぎる。
この場での最適解かは不明。だが、カルデアのマスターとしての選択は彼に任せることだった。
その技は一つの神話に於ける頂き。
その身は十二の難行を踏破した大英雄。
その名は「ヘラの栄光」を意味する半神半人。
「──ヘラクレスッ!!」
刹那、藤丸とソウルイーターとの直線上に立ち塞がるようにして、巨躯の男が顕れる。斧剣を握り締めて腰を落とし、油断なく構えるその後ろ姿に安堵を覚えた。同時に、簡易召喚が問題なく使えた事実に胸を撫で下ろす。
ソウルイーターは突如出現したサーヴァントに戸惑う事なく、まるで障害物を飛び越えるかのように跳ね上がる。その瞳には
それが魔獣の敗因であり、死因となる。
ヘラクレスは目の前で飛び跳ねたソウルイーターを見た直後、大地を踏み締め砲弾のように突っ込む。ソウルイーターが反応するよりも早く、ヘラクレスは尾を掴んで慣性を殺し、流れるように大地へと投げ落とした。
轟音が響く。砂煙が舞うよりも早く、ヘラクレスは握っていた斧剣をソウルイーターの心臓へと投げ放つ。ソウルイーターは僅かに身を捩り即死を免れたが、直後、空から落ちてくるヘラクレスに頭部を踏み潰されて完全に沈黙した。
そこまでを見届けた藤丸は安堵の息を吐こうとした瞬間、ヘラクレスは斧剣を藤丸の居る方向へと投げ飛ばしてきた。自身と大差ない大きさを誇る斧剣が飛んできた事に息が止まりそうになり──斧剣は藤丸の頭上スレスレを通過し、背後に忍び寄っていたもう一体のソウルイーターを串刺しにした。
「……は」
ヘラクレスが庇ってくれなければ死んでいたことに、思わず冷や汗が伝う。
ギャウッ、とソウルイーターが怯んでいる隙にヘラクレスが全力で駆け寄り、刺さっている斧剣の柄を握り込む。彼は躊躇うことなく、そのまま胴を両断してソウルイーターを塵へと変えた。
戦闘終了。この間、僅か43秒。ギリシャ神話の大英雄、その面目躍如であった。
「ありがとう、ヘラクレス。助かった」
返事は無い。簡易召喚されたサーヴァントはカルデアで正規召喚されたサーヴァント本人ではなく、サーヴァントの「戦闘力」のみを呼び出しているに過ぎないからだ。
藤丸の感謝の言葉を受けてからヘラクレスはその場から消え去った。
「お……っと」
気が抜けたからか、少しフラついてしまう。咄嗟の判断とはいえ、バーサーカーのサーヴァント、それもヘラクレスを呼び出したのはそこそこ負担だったらしい。狂化を最大限抑えてもらった上で、だ。
場に静寂が満ちる──ことはなく、祭囃子が変わらず鳴り続けている。それは戦闘時もずっと、だ。分からないことが多いが、それでも今の行動指針は変わらない。灯りは消えず、大きくなっている。どうやらちゃんと近付けているらしい。
「よし!」
藤丸は気合いを入れ直し、再び歩き始めた。
千里の道も一歩から。この特異点攻略に向けて少しづつ、確実に。
俺のバーサーカーは最強なんだ!
ちなみに藤丸がヘラクレスを選択した理由は大きくわけて以下の3つ。
・直前のミーティングで印象に残っていたこと。
・特異点に適性のあるサーヴァントなら簡易召喚でも呼べる可能性は高いと踏んだこと。
・適性のあるサーヴァントの中でも、特に怪物殺しのスペシャリストだったこと。
ほぼ無意識下の思考だった為、作中ではカット。
……ここまで来てまだヒメ様と合流できてないのマジ?