試合が始まった。
「うおおおおっ!!」
相手は俺に向かって攻撃してきた。
ブォンッ!
マヒロ「おっと。」
俺は相手の攻撃を回避した。
…俺は、ふと過去に経験した事を思い出した。
エレナ『無理に攻めず、相手の動きを見て、冷静に対処する事。これが効率良く戦闘を進める近道だよ。』
そう、エレナの言葉だ。
俺が依頼を受ける前、特訓をしていた時の事。
基礎を学んだ後、更に戦闘技術をを深めたのである。
マヒロ「ガラ空きだ!」
ドゴッ!
「ぐわっ!」
隙を見て、相手に一撃を与えた。
亜人じゃあるまいし、流石に殺す訳にもいかないため、少し手加減してやったが。
「まだまだっ!」
ブォンッ!
そしてもう一度、相手が斬りかかる。
ガキンッ!
マヒロ「くっ…!」
俺は相手の攻撃を受け止める。
エレナ『相手からの攻撃を回避だけでなく、防御する事も忘れないでね。回避のしすぎでスキルが使えないー!なんて事が起きたら大変だからね。』
亜人の時にも行っていた、防御。
実はこれも、エレナから教わったものだ。
防御後、俺は冷静に相手に攻撃を加える。
ズバアァッ!
「うわあぁっ!!」
攻撃が命中した。
…殺す気は全く無いからな?
「待った!降参!これ以上は流石に死んじまう!」
…と、相手はそう宣言した。
アイリス
『勝者、マヒローーーーーッ!!』
この試合、俺が勝った。
…少しやりすぎてしまったか?
マヒロ「すまない、立てるか?」
「ああ…。あんた、結構強いんだな…。なかなかの腕前だったよ…。」
マヒロ「それはどうも。」
そして、俺は準決勝進出となったのだ。
次はどんな相手だろうか。
『私が来ると罵詈雑言ばかり響くけどね…。』
『…信じていない人がいるだけまだマシだよ。…あなたもその1人で良かった。』
…そういえばルリアンナ、大丈夫だろうか…。
きっと誰もが、ルリアンナの敗北を望んでいるだろう。
もし、彼女が勝ち進んでいけば……。
マヒロ「……。」
…いや、考えるのは後にしよう。
元々俺は、腕試しのためにここに来たのだからな。
あれこれ考えるヒマもない。
今は目の前の事に集中しよう。
~エレナ視点~
「ルリアンナに勝てー!!」
「ぶちのめせー!!」
私は今、ルナが出ている試合を見ていた。
観客からはどこもかしこも、ルナへの罵声が聞こえてくる。
アイリス「…ったく、相変わらず酷ぇ言われようだ…。」
流石のアイリス団長も、この状況には目を背けなかった。
親代わりとして見てきた団長であれば、気持ちもわかるのかもしれない。
エレナ「…私は、ルナが死神と呼ばれてるのは、あいつらの思い込みだと思ってます。誰だろうと許せません。」
アイリス「…ああ、そうだな。喉を引き裂いてやりたいくらい胸糞悪い。ルリアンナの事を何も知らないくせに、よく罵声を浴びせられるもんだ。」
団長の顔は、かなりの殺意が込められていた。
でも、本当に怒りたいのは、ルナの方だと思う。
好きで不幸にさせてきた訳でもないのに、周りから悪く言われ、彼女の心は酷く脆くなっているのかもしれない。
~回想~
これは、ルナがまだグレーテにいた頃。
私とルナは、同じ寮で過ごしていた。
本当は騎士団専用の寮だけど、ルナは休む場所すらもなく、団長と相談して特別に入らせてもらった。
ある日、ルナからこう言われた事がある。
『…ねえエレナ。私って、生まれてきて良かったのかな。』
エレナ『…え?どうしたの、急に。』
ルリアンナ『……どこに行っても死神呼ばわりされ続けて…。…いっその事、あのまま死んでも良かったんじゃないかって、考えた事があるんだ。』
あの時、ルナは珍しく消極的になっていた。
不幸体質で、そのせいで実の両親から見放され、挙句の果てにはグレーテ全般からも恨まれる。
……ルナは、ずっとそんな風に生きてきた。
エレナ『…大丈夫だよ、ルナは死神じゃない。誰に何と言われようと、私が守ってあげるから。』
ルリアンナ『………。』
…そんな言葉を送ってあげられるのも束の間。
限界を迎えたルナは、とうとうグレーテから姿を消した。
死神と呼ばれた者の顔を、仮面で隠して─────。
~現在~
ルリアンナ「…ふっ!」
ズバアァッ!
「ぐわあああっ!!」
過去を思い出していると、いつの間にか試合が終わっていた。
ルナの相手は倒れていた。
アイリス「…おっと、嘆いてる場合じゃなかったな。」
アイリス
『勝者、ルリアンナーーーーーッ!!』
団長は司会に戻り、そう声を上げた。
普通であれば、観客は歓声を上げるだろう。
─────でも、ルナの場合は。
「何やってんだ!!役立たずが!!」
「死神が勝ちやがった!誰か止められねえのかよ!!」
普通とは違い、混沌としていた。
アイリス『ルリアンナは準決勝進出だ!その調子で次も頑張れよ!!』
ルリアンナ「………。」
「何加担してんだアイリス!!」
「ルリアンナを止めさせろよ!!相手を動けなくするまでやったんだからよ!!」
アイリス「……あたしにも牙剥けんのかよ、クソ野次共が…。」
とうとう、団長にまで恨まれてしまう。
私、どうしたら良かったの?
ルナから始まり、私、団長…このままだと、最悪マヒロまでいってしまうかもしれない。
私は、ルナの親友として、グレーテ騎士副団長として、どうにかこの状況を打破しようと考える。
───とにかく、何とかしないと。
~マヒロ視点~
…さて、準決勝の時間だ。
俺は闘技場へ向かう。
アイリス『さあマヒロ!準決勝という事で、さっきより強い相手かもしれないぞ!!準備は良いかい!?』
マヒロ「ああ、とっくにできてるよ。」
俺はアイリスに、そう呼び返す。
アイリス『それなら良かった!あんたと対する相手を紹介しよう!凄腕の戦士、ジャッカスだ!!』
俺の相手が出てくるらしい。
その人物とは─────。
「……よお、数日ぶりだな?死神のお仲間さんよ。」