ネギが3-Aに来てから5日ほど経った日の体育の時間、麻帆良学園中等部の屋上にて揉め事が発生していた。A組は屋上でバレーをする予定だった。しかし、中等部の隣の隣にある女子高『聖ウルスラ』の生徒がわざわざ中等部の屋上までやって来て喧嘩を売って来たのだ。この日の昼休みにも衝突があり、その時は前担任の高畑が収めたが、それを根に持ってやってきたのだろう。そして、体育の先生が不在の為代わりでやって来ていたネギはウルスラの生徒たちに捕まっていた。一触即発で暴力沙汰になりそうだった時、ネギが魔力を暴発させ大風を吹かせ、面々が呆気にとられた所でスポーツで勝負することを提案。双方受け入れA組の方はメンバーを選定していく。千雨は存在感が薄くなるようにひっそりと佇んでいた。だが、そんな努力も虚しく声を掛けられる。
「ちうちゃん! 頼みがあるんだけど」
「そのあだ名やめろ、てか私は出ないぞ」
「違う違うそうじゃなくて、ウチの……秘密兵器を呼んできて欲しいの♡」
「それ、アリなのか? まあいいや、どうなっても知らねーぞ」
そう言って千雨は、体育の時間は別室で自習となっている秘密兵器、もとい自分の友人を呼びに行った。程なくして、戻って来た二人を見て場は騒然となってしまう。
「キャァァァ! 男子がなんでここに!?」
「ヘンタイ!! ヘンタイが出たわ! 早く射殺してっ!!」
「おまわりさんですかっ! おさわりマンが現れて!」
ウルスラの生徒たちは突然現れた男子、シンを見て心無き悲鳴を上げ、動転する。千雨は多分悲しんでいる友人の肩をポンと叩き、すまんと一言を残した。シンに対する精神攻撃は、A組から説明を受け一応の納得をして収まった。しかし、今度は男子が混ざるのは卑怯ではないかという、まっとうな主張をしだす。
「小娘ども、恥ずかしくないの? スポーツで男と女が分けられてるの何でか知ってる!?」
「間薙さんは私たちのクラスメイト、仲間ですわ。ですからこのA組対あなたたちの闘いに参加するのは当たり前のことです」
「くっ」
3-Aの学級委員長ことあやかのめちゃくちゃな論に何故か丸め込まれてしまったウルスラの高校生たち。それをバカを見る目で見ていた千雨は、何気なくシンの方を見た。
「うわっ、お前なんでそんなやる気なんだ? 準備体操までして」
「さっき、メタメタに言われて腹が立ったのと……仲間と言われたのがグッときた」
「チョロくないか?」
「かもな、それで競技は何をするんだ」
「ドッジボール」
「……顔面セーフの恐ろしさを味わせてやろう」
「やめとけ、手加減しろよ?」
「善処しよう」
「政治家かテメーは……」
そんなこんなで、ドッジボール対決は始まった。当初A組のメンバーはハンデとして22人とウルスラの倍だったが、それは逆に不利なのではというシンの呟きで同数となった。運動部を中心にした動けるメンツを集めたチームと特別参加のネギのドリームチームだ。
「余計なことを言ってくれたわね! しぃ、速攻でアレ行くわよ。必殺――太陽拳」
仲間にボールを高く上げてもらい、太陽を背にした投球がシンに放たれる。普通なら眩しくて、アウト必至の技だったがシンは軽く捕球する。ボルテージの上がる味方を尻目にシンはぼやく。
「やっちゃって間薙くん!」
「言いそびれていたが、俺は球技苦手なんだ」
「え!?」
そう言って下投げで軽くボールを放る。速度は速いが取れない程ではない、先ほど「しぃ」と呼ばれた生徒が取ろうとした。ラッキーと言わんばかりの表情でボールに触れた瞬間、地面に叩きつけられる。ボールの回転に体を持っていかれたのだ。
「やはり苦手だ、加減が難しい」
「タ、タイム! 待ちなさい! レギュレーション違反よ、聞いてないわ! 何その魔球使いは! あんたら、そこまでして勝ちたいの? 恥を知りなさい!!」
「いや、私たちもここまでとは……でも勝負だし」
「見なさい、しぃの状態を! ドッジボールにあるまじきダメージを負っているのよ」
「……うぅ……あぁ」
「そこの破廉恥男! あんたも何とか言ったらどうなの!?」
「お前ら全員泣いたり笑ったりできなくしてやろう、鏖殺だ」
ピピーッと審判の笛が鳴った。
「間薙くん退場!」
「あれ? 待て審判」
「協議の末、あなたは退場です。大人しく見学していてください」
「ほら、行くぞシン……だから、どうなっても知らねーって言ったのに」
その後の勝負は、やはり体格の差から不利な状況になりエースの明日菜が討ち取られ、諦めムードになりかけた。その悪い雰囲気を吹き飛ばしたのはネギで、諦めず勇気を持って挑もうと皆を励まし、見事A組は勝利した。ウルスラのリーダー英子は嫌がらせで明日菜に背後からボールをぶつけようとしたが、謎の悪寒に襲われやめた。
この一件から担任の先生と言うよりは、マスコット的に思われていたネギが見直されることになった。