GENTILE BRAVERY ~Female ver.~ 作:ヤガミ
決勝戦。
闘技場に立っているのは私と─────。
─────ルリアンナだった。
マヒル「………ルリアンナ……?」
ルリアンナ「…まさか、君と相対するとは思わなかった。…私が思ってたよりも相当な実力者だったとはね。」
驚いた。まさか私の相手がルリアンナになるとは。
あの時助けてもらった少女と戦う事になるなんて───。
マヒル「ルリアンナ…、私は…。」
ルリアンナ「…わかってるよ、戦いたくないんでしょ?…私も同じ。……恩を仇で返す形になるなんてね…。」
どうやらルリアンナも、同じ事を考えていたみたい。
ルリアンナ「…でも、これは仕方のない事。進んでしまったのから、逃れる事はできない……。…闘技場はそういう場所だから。」
ルリアンナは、覚悟を決めたのだろう。
そんな事を考えていると─────。
「異邦人!死神に勝て!!」
「そいつは許されざる罪人だ!さっきのクズ野郎と一緒でな!!」
「死神を倒して、沢山の人の無念を晴らしてやって!!」
……やはり、ルリアンナが言っていた通り。
ルリアンナに対する心無い言葉が、会場に響き渡る。
アイリス『…マヒル、気持ちはわかるが、いつまでもそんなんじゃ始められない。』
マヒル「……ええ、わかってる。腹を括らないと…だよね。」
アイリス『よし、それじゃあ決勝戦─────。』
『始めっ!!』
アイリスの合図で、試合が始まる。
ルリアンナ「…遠慮はいらないよ。…全力で来て。」
マヒル「…ええ、行くよ!」
私はルリアンナに向かって、攻めに入った。
~エレナ視点~
今の私は、とても複雑な気持ちだった。
まさか、マヒルとルナが戦う事になるなんて。
私は、どっちを応援すれば良いの?どっちの味方をすれば良いの?
アイリス「…エレナ、大丈夫か?」
エレナ「……。」
アイリス「…そうでもないみたいだな。」
エレナ「…今でも信じられないです。まさかあの2人が戦うなんて…。覚悟はできてるんでしょうけど…。」
アイリス「…だな。だがあたしらは見る事しかできねえ。司会をする以上、下手に手出しはできないからな。」
今は、2人の試合を見守る事しかできない。
そんな事わかっていても、胸騒ぎが収まる事はない。
私は、どうしたら良いの?
~マヒル視点~
ガキンッ!
ガキンッ!!
ルリアンナ「…良い動きしてるね。」
マヒル「そっちこそ!」
目の前のルリアンナとの戦闘。
なかなか隙がない。流石女騎士…といった所ね。
“強斬り”
マヒル「くらいなさいっ!」
ブォンッ!
ルリアンナ「…甘いよ。」
“氷結斬り”
ルリアンナ「…ハァッ!!」
ズバッ!!
マヒル「くっ…!?」
私の攻撃がなかなか当たらず、反撃されてしまう。
それにルリアンナのあの攻撃…氷だ。
そんな事を考えていた末───。
パキパキ…!
マヒル「…!?」
まともにくらってしまったせいか、私の身体には霜が付いた。
ルリアンナ「…凍結状態。…しばらくはこっちの番だから、覚悟してね。」
冷たさで身体が思うように動かない。
その隙にルリアンナは、音速でこちらに向かう───。
ビュンッ!!
ガキイィィィインッ!!
マヒル「うぐっ…!!」
ルリアンナと私の剣がぶつかり合い、私は大きく吹っ飛ばされる。
ジャッカスとは比にならない程に速い。
ルリアンナ「…これは耐えられる?」
ルリアンナは、剣を上に掲げる。
そして─────。
“吹雪”
ビュオォォォオッ!!
マヒル「あっ……!!」
私はついに、全身が凍ってしまった。
霜に覆われ、やがて氷漬けにされ、動けなくなった。
………強いね、ルリアンナ。
剣術も長けて、氷も使いこなせて………。
ルリアンナ「…ごめんね。…これで勝負ありね。」
私は負けるの?
このままで良いの?
─────答えは、否。
バリイィィィインッ!!!
ルリアンナ「…っ!?」
全身全霊をかけて、凍った身体を元に戻した。
そう、何故なら私は─────。
─────“火属性”を持っているからだ。
~数日前~
それは、依頼を受けにギルドに向かおうとしていた時の事。
『ちょいとあんた、こっちに来なさい。』
突然、誰かに呼び止められた。
『そこの若者、あんたじゃよ。あんたに用があるんじゃ。』
声の主は、どうやらおばあちゃんのようだった。
私は呼び掛けに応じる。
マヒル『どうしたんですか?』
おばあちゃん『あんた、どこかから来たのかい。見ない顔だねぇ。』
マヒル『ええ、元々グレーテの人間ではありませんから。』
おばあちゃん「それならあんた、“属性”に興味はあるかい?」
マヒル『属性?』
おばあちゃん『おや、知らないのかい。属性というのは、火や水などが使える特殊能力の事じゃよ。あたしゃその専門でね。』
おばあちゃんから聞いた“属性”。
それは、戦闘に使えるものかと、最初は考えた。
マヒル『その属性があれば、戦闘を有利に進められるのですか?』
おばあちゃん『それが主じゃな。色んな用途にも使えるのじゃが、ほとんどは戦闘で使うためにある。』
マヒル『…それなら試してみて良いですか?』
おばあちゃん『ええよぉ。それじゃあ、手を出してみぃ。』
私は、おばあちゃんに手を差し出した。
おばあちゃんは俺の手を取り、すると何やら念じている。
おばあちゃん『むむ…、こりゃあ…。』
『あんたはどうやら、全ての属性が使えるみたいやね…。こりゃあ珍しいよ。』
マヒル『え?本当ですか?』
最初はそんな力を持っていたなんて知らずにいた。
でも、今ならおばあちゃんが言っていた事…、私には特別な力が秘められていたという事を受け入れられた。
おばあちゃん『あんたの他に全て使える人は、これまでなかなか現れなかったのよぉ。もしかしたらあんた、物凄い力の持ち主かもしれないねぇ。』
マヒル『そうなんですね。驚きました…。』
おばあちゃん『おっと、話が逸れちゃったね。どの属性を使いたいか、希望はあるかい?』
マヒル『おばあちゃんのおすすめは何ですか?』
『一番簡単に使えるのは“火”やねぇ。それがおすすめよぉ。』
『なら、火属性でお願いします。』
~現在~
大亜人やジャッカスの時は敢えて使わなかったけど、まさかここで役立つとは思わなかった。
あのおばあちゃんには感謝しないと。
ルリアンナ「…火属性…!?」
マヒル「氷は火に弱いって言うでしょ?いざって時の切り札として残して良かった。」
形勢逆転。
ルリアンナには申し訳ないけど、ここから本気を出させてもらう。
マヒル「行くよ、ルリアンナ。」
ルリアンナ(…!…まずい…!)
“火炎斬り”
ボウゥッ!
マヒル「はあああっ!!」
ズバアァッ!!
ルリアンナ「…っ!…ああっ!!」
私は剣に火属性を付与し、一撃をルリアンナに叩き込んだ。
今ので大ダメージにはなっただろう。
~エレナ視点~
エレナ「…!あれって、火属性!?」
驚いた。
まさか、マヒルが属性を使えるなんて。
アイリス「あいつ、属性を使えたのか!しかも、ルリアンナが弱点の…!」
団長も目を丸くしていた。
いつ習得したんだろう、私はマヒルに属性を覚える所なんて教えてないのに。
でも、そんな事を考えるのも束の間。
エレナ「ルナ…!」
そう、ルナの事だ。
マヒルが使っているのは火。対するルナは氷。
団長の言っていた通り、ルナの弱点は火だ。
……つまりはそういう事。
~ルリアンナ視点~
予想外だった。
マヒルが、火属性を扱えるなんて。
マヒル相手でも、負けられないと思ったのに。
ああ、私の無敗は終わっちゃうんだ。
今まで闘技大会で負けた事なんてなかったのに。
初めての敗北は異邦人……マヒルの相手なんだ。
マヒル…、あなたも成長したんだね。
~マヒル視点~
マヒル「はぁ…、はぁ…。」
ルリアンナは、倒れてしまっていた。
私も力を使い果たしたせいか、息が上がり跪いた。
アイリス
『勝者、マヒルーーーーーッ!!!』
『うおおおおおおおおおおっ!!!』
場内には、大歓声が上がる。
でも私は、素直に喜べなかった。
何せ相手は、あのルリアンナだったから。
私の、命の恩人だったのだから。
「すげえええ!!死神に勝った!!」
「あいつに勝った奴なんて今までいなかったのに!あの異邦人すげな!!」
あちこちからその言葉が聞こえてくるが、今の私には罪悪感しかなかった。
マヒル「…!ルリアンナ!大丈夫!?」
私はルリアンナに駆け寄った。
ルリアンナ「…あ…、マヒル…。」
マヒル「ごめんなさい、やりすぎた…。立てる?」
ルリアンナ「…平気…。遠慮はいらないって言ったのは私だし…。」
ルリアンナは怒る事なく、私にそう言った。
アイリス『マヒル、優勝者はあんただ。改めておめでとう。』
アイリスから賞賛される。
ルリアンナと俺を戦わせた事に躊躇いがあったのか、少し苦い表情をしていた。
「おいルリアンナあぁッ!!!」
突然の一声に、会場は静まり返る。
不穏な気配を感じた─────。