GENTILE BRAVERY ~Female ver.~ 作:ヤガミ
私の相手、ジャッカスが出てくるらしい。
しかし、それは見覚えのある人物だった───。
「……よお、数日ぶりだな?死神のお仲間さんよ。」
そう、あの時大亜人と手を組んだ、あの男だったのである。
マヒル「何であなたが…。」
ジャッカス「はぁ?決まってんだろ。てめえとルリアンナをぶっ潰すために来たんだよ。」
マヒル「…は?」
復讐……って事?
私が、ルリアンナが死神じゃないと信じただけで…。
ジャッカス「…俺はあの時、あの女を共に潰せる仲間だと思っていた。だが実際は違った。てめえはあの女に付かなければ、俺達は争う事もなかったんだよ。」
マヒル「…それだけで俺に楯突くの?ただの八つ当たりじゃない。」
ジャッカス「言ってろ。どうせてめえはここで終わる。覚悟してろよクソ異邦人!!」
…こいつはもうダメみたい。
何を言っても通じないのなら、力ずくでわからせてやるしかない。
ジャッカス「アイリス!!グズグズしてねえでさっさと試合を始めろ!!」
アイリス『…言われなくても始めるよ。少し落ち着いたらどうなんだ?』
ジャッカス「うるせえな!!俺はこいつを潰したくて仕方ねえんだ!!」
暴走している…。
私は剣を構える。
アイリス『よし、それでは始め!!』
そして、試合の幕が開いた。
ジャッカスの武器は、以前と同様斧。
剣で通用する相手かはわからないが、やるだけやってみよう。
ジャッカス「……行くぞ、クソ異邦人。」
ビュンッ!!
マヒル「っ!?」
ガキンッ!!
ジャッカスは、物凄いスピードで攻めてきた。
斧は剣よりも重いはずなのに、どうやってあんなスピードを…?
私はギリギリで攻撃を防いだ。
……でも、そうしたのが間違いだった。
マヒル「うわっ…!?」
あまりの勢いを受けたせいで、私は体勢を崩した。
奴に隙を見せてしまった。
ジャッカス「死ねっ!!」
マヒル「っ!」
ドゴオォッ!!
間一髪で追い討ちを回避した。
ジャッカス「……おい、ちょこまかと逃げてんじゃねえよ。正々堂々勝負しろ雑魚が。」
今のジャッカスは、相当な殺意が垣間見える。
早く止めないとヤバそう…。
~エレナ視点~
私は、マヒルの試合を見ていた。
マヒロの相手のジャッカス…、マヒルに強い殺意を持っている。
エレナ「…団長。あれ、ちょっとヤバいんじゃ…?」
アイリス「……。」
エレナ「…団長?」
アイリス「…ん?ああ、すまない。少し考え事していてな…。」
団長は、隣で黙り込んでいたのである。
アイリス「…実は、ある噂を聞いた事があってな。」
エレナ「噂?」
アイリス「…ジャッカスの事だ。」
団長が黙っていた理由、それは彼…ジャッカスに関する事だった。
アイリス「つい最近知った話なんだが…。」
「彼、実は警備員に捕まった事があったんだよ。」
エレナ「……えっ…?」
アイリス「……それも、ルリアンナ関連の事で。」
衝撃の事実だった。
彼は、そんな事で…。
アイリス「ルリアンナを“死神”と認識して、彼女本人やそれに関わった人間を1人残らず蹴散らしていたらしい。相手が例え、女子供でも…。」
エレナ「酷い…。何でそんな事に?」
アイリス「…多分彼女が不幸体質であり、関わってきた人物達が被害に遭っていた事を何度も見てきたからだろうな。まあ、傍から見たらただの八つ当たりだと思うが…。」
ジャッカスにとって、ルナは許されざる者…と思っているのかな…。
もしそうであれば、それに付いた私や団長、それにマヒルに牙を剥くのも理解できる。
エレナ「それなら、早く何とかしないと!」
アイリス「…待て、エレナ。あたしに考えがある。」
団長にそう言われる。
団長の考えとは─────。
~マヒロ視点~
ジャッカス「ハハハハハハッ!!どうした異邦人!!あん時みてえな威勢見せてみろよ!!」
彼は、私を本気で殺そうと喰らい付く。
回避だけでは事進まない。反撃しないと…。
全体を見ても、やはり隙は見当たらない。
後ろに回り込んでも、背中に目があるんじゃないかと思うくらい、反撃してくる。
マヒル(…わかっちゃった。)
ここまでの攻撃方法を振り返ると…。
・物凄いスピードで攻めてくる。
・防御しようとするとこちらが隙を生んでしまう。
・後ろに回り込んでも反撃される。
私はこれで全てを察した。
こいつの弱点は─────。
ジャッカス「ほらほらぁッ!!斬っちまうぞおぉッ!!」
ビュンッ!!
─────足だ!!
“回避斬り”
マヒル「……そこっ!!」
ズバッ!!
ジャッカス「…あ?があああああッ!?」
予想的中。
足は自分を動かすためにある。
ならそれを狙えば良い。
マヒル「……形勢逆転。」
腹に。
ズバッ!!
肩に。
バシッ!!
そして頭に。
バシィッ!!
ジャッカス「ぐわあぁッ!!」
思いきりぶっ叩いた。
ジャッカス「くそ…!死神の分際で!!」
ジャッカスはまた攻めてくる。
しかし、もう読んだ。
マヒル「何度やっても同じよ!」
“回避斬り”
ズバッ!!
ジャッカス「ぐっ!?」
そして俺は、再び奴に追い討ちを与える。
バシッ!! バシッ!!
バシィッ!!
───ジャッカスはボロボロになっていた。
ジャッカス「てめえ…!!」
マヒル「もう降参しなさい。これ以上やったら死ぬわよ。」
ジャッカス「うるせえ!!俺はまだ終わってねえんだよ!!!」
ジャッカスはよろめきながら、また私に攻撃を加えようとする。
アイリス『そこまで!!』
すると、アイリスの合図が聞こえた。
アイリス『…ジャッカス、ライバルならわかるが、一方的な殺意を持って出場する事は許されていないぞ。それがわかってんのか?』
アイリスは、ジャッカスにそう説得する。
ジャッカス「ああ!?こいつもやってただろうが!!何で俺だけが悪い事になってんだよ!!」
アイリス『あたしはあんたを凄腕の戦士だと思ってた。戦闘技術も、そこらこ戦士よりずば抜けている。あたしとそこは褒めるよ。』
『だが、凄腕は普通の人間に何をやっても良いのか?』
アイリスは、彼に向けて怒りをぶつける。
殺意を剥き出していた事を許せなかったのだろう。
アイリス『あんたが一番嫌っているルリアンナが、グレーテをぶち壊していると考えるのも無理はない。彼女が“死神”と呼ばれているのも、あたしも重々承知している。だからといって彼女と関わった人間に当たれば、何か変わるとでも思ったか?違うだろ!!』
マヒル「アイリス…。」
エレナ「団長…。」
アイリスは、本気で怒っている。
ジャッカスが一方的き私に当たった事、そしてルリアンナの事で暴走した事…。
これが闘技場内で起こった事なのだから、誰も彼の味方などしないだろう。
アイリス『今、警備員がそっちに向かってる。お前には鞭を与えないとダメみたいだからな。』
ジャッカス「…は…?」
ジャッカスは顔を青ざめた。
仕方ないよね。ここまで問題を起こしたのだから。
マヒル「…ジャッカス。」
ジャッカス「…っ!」
マヒル「これでわかったでしょう?ルリアンナは死神じゃないって。だからもう彼女を責めるのは辞めて。」
私はジャッカスにそう説得した。
彼は黙り込んだが、その後私の手を取った。
ジャッカス「……すまなかった、異邦人…。」
彼はそう言う。
ようやく反省したんだね。
「……とでも言うと思ったか?」
ザシュッ!!
マヒル「いっ…!?」
───そう思ったのが間違いだった。
ジャッカスは斧で、私の手を斬った。
エレナ「マヒル!」
アイリス「あいつ…!!」
突然の状況で、会場は一気にざわめいた。
ジャッカス
「誰がてめえにそんな事言うかよ!!俺が諦めたとでも思ったか!?とことん馬鹿だなてめえはあぁっ!!!」
マヒル「あなた…!!」
私は斬られた手を抑える。
まずい、出血が止まらない。
ジャッカス「なぁ?今どんな気持ちだぁ?俺はなぁ?今てめえを斬ってすげえ良い気分だぁ!!お前が言ってた“形勢逆転”ってヤツだなぁ!!ギャハハハハハッ!!!」
今のジャッカスは、とんでもなく狂ってる。
同じ人間とは思えない。
でも、彼も笑っていられるのも束の間だった。
ガッ!
ジャッカス「……あっ……?」
突然、ジャッカスは倒れた。
いや、気絶したと言った方が正しいかな。
「…悪ふざけも程々にしろ、極悪人が。」
どうやら、警備員が彼を気絶させたみたい。
「…ったく、罪のない異邦人にまで手を出しやがって…。こりゃお仕置きが必要だな。」
「連れて行け!」
気絶したジャッカスは、警備員に連れて行かれた。
アイリス『マヒル!あんたは控え室に戻ってくれ!あっちにエレナを向かわせてやった!』
マヒル「助かるわ、アイリス…。」
私は、流血している手を抑えながら控え室へ向かった─────。
~控え室~
私は今、控え室にいる。
あの狂人…ジャッカスに斬られた手を抑えていた。
これ、決勝戦まで大丈夫かな…。
マヒル「……クソ野郎…。」
私は誰もいない控え室で、そう呟いた。
今頃彼は、制裁を受けているかもね。
俺がルリアンナの仲間と知った彼は、凄腕の戦士から狂人へと変わり果ててしまった。
エレナ「マヒル!大丈夫!?」
すると、エレナがようやく入ってきた。
エレナ「うわっ、思いっきりやられてる…。」
マヒル「…千切れてはいないから大丈夫。止血はしたい所だけど…。」
エレナ「任せて、今治療するね。」
エレナは救急箱を置き、応急処置を始めた。
エレナ「ちょっと痛むけど、我慢してね。」
エレナは私の手に消毒液をかけ、包帯を巻く。
マヒル「…エレナ、手際が良いんだね。」
エレナ「ルナがケガした時、いつも私がやってたからね。これくらい慣れっこだよ。」
副団長をやってて、他人の怪我の治療もできる…。
…あれ?エレナって弱点がないのでは?
エレナ「…これで良し!」
マヒル「ありがとう。でも、決勝戦まで持つかどうか…。」
エレナ「降参もOKにはなってるから、無理だけはしないでね。」
エレナは、そう私に心配をかけた。
決勝戦まで落ち着くと良いけど…。
エレナ「じゃあ、私は団長の所に戻るね!」
そう言って、エレナは控え室を出た。
さっきの試合で体力も消耗したから、しっかり休んでおかないと……。
~エレナ視点~
私はマヒルの治療を終えた後、団長がいる所へ戻った。
それにしても彼…ジャッカスは、酷く哀れな者だと思わなかった。
彼の事は凄腕の戦士と聞いたけど、ルナの影響で狂っていたなんて……。
エレナ「団長、戻りました!」
アイリス「おう、お疲れ。こっちは丁度準決勝戦が終わった所だ。」
あれ?思ったより早かったな。
エレナ「それで、決勝戦はマヒルと誰に?」
アイリス「……。」
エレナ「…団長?」
私が問いかけると、団長は黙ってしまった。
何かあったのかな?
アイリス「…エレナ、心して聞いてほしいんだが…良いか?」
エレナ「…?はい。」
アイリス「決勝戦に立つのはマヒルと─────。」
~マヒル視点~
「マヒル様、出番ですよ!」
ついに来た。
手は止血し、痛みも落ち着いてきたし、大丈夫。
私は控え室を出て、闘技場へ向かう。
アイリス『来たか、マヒル。』
私が出ると、アイリスが迎えてくれた。
アイリス『まさか新参者のあんたがここまで来るとは思わなかったよ。あ、これは褒め言葉だから安心しな!』
マヒル「ええ、わかってる。」
私も、ここまでできるとは考えもしなかった。
腕試し…という思いで出てみたけど、今はもうそれどころじゃないね。
アイリス『さて、対するマヒルの相手は───。』
「……紹介は良いですよ、アイリスさん。」
私の相手が出てきたのだろうか。
だがしかし、予想外の相手だった。
何故なら、私の決勝戦の相手は─────。
マヒル「………ルリアンナ……?」