神谷 遊戯は奇妙な男である。
いくつもの預言を残し、いくつもの企業を立ち上げた男。
ただし、予言は外れることも多々ある。
そんな遊戯は、今、ライブダンジョンという遊園地を作らんとしていた。
北海道の僻地。人が来るはずがないのに、広大な土地を買収。
持ちうる資金の全てを使って土地とホテルと遊興施設を作った。
誰もが言った。成功するはずがない。予言はいつも当たる訳ないではないか。
だが、強行した。
そして、神谷は狂人だとは思えなかった。
だから、武田首相は遥か、北海道の僻地まで自ら向かったのだ。
何かが起こる予感を抱き締めて。
朝9時。テーマパークとしては少し早い時間に開演する。
なんと、このテーマパークは年中無休、24時間運営らしい。
ありえない。あり得るはずがない。
掃除の時間など、絶対に必要なはずだし、そんなの採算が取れるはずがない。
これはもう、何かあると言っているようなものだ。
ちなみに、滞在時間によって料金は変わり、1時間千円である。
ただし、手付として入場時に1万円の支払いが必要になる。
事前に、演舞を見せる隊員達の台本を見せてもらっている。
魔物退治(スタッフが変装します)をしてもらうというものだ。
もちろん、魔物が現れるなんてありえない。それでも。
何かがあった場合に備え、警察や自衛隊もある程度動員していく。
そして、オープニングが始まった。
花火と共に、神殿が出現していく。
武田首相の胸は激しく高鳴った。
「さあ、テープカットを!」
非日常の始まりだった。
テープカットを終えて、演舞を披露してもらうと言っていた25人が、誘導されていく。
そして、しばらくして、現れた沢山のモニターに5人ずつのパーティとして映し出されていた。
『えー。実況のヨーチューバーの泉ちゃんです! 凄い、これは凄い! 時間まで開けるなと言われていた台本を開けますね! さー! 始まりました! 神の作りしダンジョン、ライブダンジョンの開演です! 第一階層はゴブリンの平原です。100階層まであり、10階層ごとにボスがいます。システムを説明すると、最大5名のパーティで戦い、見どころのあるパーティを神の目が広場に映し出します。モンスターと戦うとレベルが上がり、最大は100レベル、到達回数プラス10レベルまでレベルを上げられます。ダンジョン内で死亡すると黒門から吐き出されますが、アイテムを高価なもの一つ以外全部失います。半分じゃないのかー! キビシー! 情けとして、無地の服を恵んでもらえるそうです! 貴重品はダンジョン内に絶対持ち込まないように! ジョブは神が選んだもの一つを授けられるそうです。ちゃんと正規の方法で登録して入場しないと、ジョブも得られないし、ダンジョン内で死亡しても本当に死んでしまうという事なので、正規の登録を心がけましょう!』
説明をしている間にも、25人はそれぞれ、いろいろ試している。
『ヒール! おお、手が光った!』
『俺はやるぜ俺はやるぜ』
『ひゃあああゴブリン!』
『カメラ持ってくれば良かったなぁ』
『とにかくゴブリンを倒せばいいのか!?』
『えーい、とにかくゴブリンを倒していくぞ! 他の隊には負けられん!』
『ゴブリンって実際に戦うの怖いな……』
『コンバットクライ! うわ、ゴブリンがいっぱい来た!』
『それ、挑発スキルだ、バカー!』
『足止めなら任せてください!』
『白魔道士2人に黒魔道士と召喚士と付与魔導士でどうしろっていうんだ……』
『あ! あっちに襲われている人達が!』
『合流するぞ! 陸さんだと前衛ばっかりで逆にバランスが良くなるはずだ!』
『あ、ファイア出た! いっけー!』
『バフ掛けますねー』
『私たちはどうしようか。万が一他のチームに勝つと大変だぞ』
『探索して植物とか持って帰ってはどうだろうか。幸い、袋も貰っているし、持ち帰りOKという事であれば……』
『まずはゴブリンのいないところまで逃げようか』
『私達は全員無事で帰還を目指しましょう』
『ゲームはやったことがなくてなぁ』
『とりあえずゴブリン倒せばいいんだよな?』
『中にスタッフがいるとかやめてくれよー?』
『怖いこと言うな』
『あ、死体消えた。大丈夫みたいだな』
『強いな!?』
「会話まで聞こえるのか……」
「これは注意しないとですね」
「13時から一般公開か。ぜひ中を視察したいが……」
「やめてください、首相。それに、警察か自衛隊しかダメだそうです」
屋台の食事をいただきながら、ひたすら閣僚や官僚を呼ぶ。
もちろん、友人である在日アメリカ大使も。
せっかく広いし会議室もあるのだ。会議はここでしよう。
北海道まで呼びつけるな? ならば来なくてよろしい。
まずは、神谷くんから土地を買ったり、インフラを整えなければ。