結局魔法陣を出すどころか魔力操作もできずに4歳を迎えてしまった。これこそ世に聞く
まあ魔法の話は置いておいて、今日はこの家にお客さんが来ている。
「久しぶりね、お母さま、お姉さま」
「そうね、前に会ったのは年初のパーティだからだいたい半年ぶりかしら」
「お腹の子ともども元気にしてた、エリス?」
そう、エリスの実家であるポルクラ伯爵家の人たちだ。
エリスがそのまま歳を重ねたような俺の祖母、アクアリーゼ。
エリスにちょっと勝気な要素を付け足した感じの俺の伯母、フォルスリーゼ。
そして2人の後ろには5、6歳ほどに見える子供たちがいる。
「レン君も久しぶりね、元気そうでなにより」
「お久しぶりです、お祖母さま、伯母さま。お二人方もご息災のようでよかったです」
「もう、そんな堅い口調じゃなくてもいいのよ。今日は私の子供たちの紹介も兼ねて来たの」
そう言ったフォルスリーゼの後ろから2人の子供が前に出てくる。
「私はラクサリーゼ、こっちはニックスモールよ、よろしく!」
「ご紹介に預かった
「初めまして、レンハルトといいます。こちらこそよろしくお願いします」
俺より2つ年上の従兄妹たちであり双子のニックスモールとラクサリーゼ。
2人は双子らしい似た顔立ちだが、ニックスモールのほうが髪色の青色の色素が薄く落ち着いており、ラクサリーゼの方は興奮しているのかなんだか少しソワソワしている。
アクアリーゼやフォルスリーゼ、あとはポルクラ伯爵家の男組である
しかし、ポルクラ伯爵家では青系統の髪色の遺伝子が強いのだろうか?
「隣の領地って言っても馬車旅は疲れたでしょう?美味しい紅茶と軽食を用意してるの」
◇
さっきとは場所が変わってここは来賓室。
菓子類はすでに準備されているからメイドさんたちに紅茶を入れてもらい、最初にエリスが一口飲んでからみんなで飲み始める。
うん、おいしい。ちょっと渋めだけどその分卓上には甘味が多いから子どもにも飲めるものだろう。
チラリ、とみんなの様子を見てみると、まだ6歳のニックスモールも含めエリスたちは紅茶に舌鼓を打っているようだ。しかしラクサリーゼは子供舌なのか、顔を顰めて砂糖とミルクをメイドさんに入れてもらっている。部屋に入ったときはお菓子を見て目をキラキラと輝かせていたのにな、と思わず苦笑してしまう。
一息ついたからかアクアリーゼがエリスに話しかける。
「確かに香りの良い紅茶ね、リニーア産かしら?最近は流通量が減っているって聞くけれど」
「ええ、おかげで前に買ったときよりもかなり高値だったわ。ライルに少し小言を言われてしまったわ」
「あら、娘を甲斐性なしの嫁にしたつもりはないわって今度言ってやろうかしら」
「レンハルト君はもう4歳だったっけ?」
アクアリーゼとエリスが話しているのを横目にフォルスリーゼが俺に話しかけてくる。
「はい、この春に4歳になりました」
「聞いてるわ、すごい優秀なんでしょう?一を聞いて十を知る子でもう教育のほとんどを終えてるんだとか。うちのニックスも優秀だけど流石にレンハルト君ほどじゃないわ」
すごい褒めちぎってくるなこの人、とりあえず謙遜しておこう。
「いえ、まだまだ至らない身ですよ僕は。勉強ができると言っても基礎的な内容ですし」
「そういうところよ、レン!ニックスも2年前はまだ敬語を話せなかったわ!」
ラクサリーゼが身を乗り出して言ってくる。
しかしいくら親戚といえどもまだ初対面なのにいきなり愛称で呼んでくるとは恐ろしい子供だ、フォルスリーゼも貴族教育に困りそうだな。
まあ俺としては別に嫌ではないけどね。
「ラクス!すまないね、遅れながらだがレンと呼んでもいいかい?」
頼れるお兄さんでいたいのかニックスモールが少し焦った様子で問いかけてくる。フォルスリーゼは子供たちの交流が嬉しいのかニコニコだ。
「もちろんいいですよ!家族が増えたみたいで嬉しいです」
「よかった。この愚妹はラクス、僕のこともニックスと愛称で呼んでくれ。あと僕らは年も近いし従兄弟なんだ、わざわざ敬語で話さなくても構わないよ」
なるほど、敬語じゃない方が子供っぽいだろうし渡りに船かな。侯爵家の人間として才能を発揮する場でもないし。
「わかったよ、ニックス兄さん、ラクス姉さん」
「聞いた?ニックス。姉さんだって!まるで弟ができたみたい、可愛がらなくちゃいけないわ!」
そう言ってラクスが俺の頭を撫でまわしてくる。ゆっくりとなんて配慮はなくわちゃわちゃされて目が回りそうだ。
「こら、ラクス!その手を離しなさい」
ラクスは迫ってくるニックスを見て俺から手を離しもとの場所に戻り「だって…」とブーたれ、ニックスは勢いが強すぎると注意する。
エリスたち大人組は子供たちのじゃれあいを見て笑っているようで、部屋全体に和やかな雰囲気が漂っていた。