【本物】オカルトVtuber【現る?】   作:田中高菜

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プロローグ

「うっし。Vtuberやるべ」

 

 唐突に決意した。思い立ったが吉日である。その日以外は全て凶日、とは誰の言葉だったか。

 

 俺、天童院 総(てんどういん すべる)には昔からオカルティックな力があった。縁が繋がった人の過去は大体見えるし悪霊もまあ人並みには祓ってきた。並の人が悪霊などというものに関わるかどうかは知らんが。

 

 小さい頃から『そういう家業』で育ってきた俺だったが、なんとなく周りと馴染めなかった。「悪霊のケツ引っ叩いて金貰うことに誇り持って命を懸けてるこいつら馬鹿じゃねーの」と思っていた。ケツ引っ叩く件は物の例えである。

 思えば碌でもない一族だった。面倒だから説明しないが。

 

 あのカスどもとなんとか離れて生活することに歳25にして成功したのはいいものの、家業以外の働き方なんて全くわからん。そもそもスマホというものにも3年前まで触れたことはなかったのだ。

 

 幸いなことに金はあった。自分が仕事した分の報酬はきっちり貰ってから出て行ったので。あいつら個人に金持たせないのマジでヤバいよな。別に仕事したからって大したもん貰えないし。

 

 外界に出てからは驚きの連続だった!漫画、アニメ、映画、ゲーム!ああ素晴らしき娯楽の数々!金に物を言わせていろんな物を買い、楽しんだ。食事も美味かった!今までゲロみたいな味がする丸薬しか口にしてこなかったからな!

 

「ま、遊びすぎたから金がほぼ無くなったんだけどな」

 

 わはは。いや、笑い事じゃないけどな。

いや肉美味いねん。高い肉はマジで美味いねん。信じられないくらい旨みと油の塊!って感じでたまらん。たかだか3年であれだけあった金が尽きたわ。

 

 と、いうわけで冒頭に至る。ぶっちゃけ家業一筋で生きてきた俺にまともな仕事が務まるとは到底思えない。かといって今更悪霊ぶん殴って生活していくのも血の定めに負けたようでムカつくので無し。

 

 つまりVtuberである。これしかない。言っちゃなんだが俺の出自とかめちゃくちゃ面白いから余裕で受かるという算段だ。間違いない。スパチャも山ほど飛んできてウッハウハである。どこからどうみても素晴らしい考えで我ながらにやけが止まらんな。

 

 やるからには個人より企業勢だ。そっちの方がなんか儲かりそうだし。どうやら最近になって「with DREAM」という企業が第3期生を募集しているらしい。対して詳しくない俺でも名前を聞いたことあるくらいの企業だ。「蘇我山 勝《そがやま まさる》」の配信は俺も好き。絶叫してはいけないホラゲ配信で1分も進めないまま5時間経過する切り抜きは爆笑した。

 

 話が逸れたが、とにかく俺はこれからこの企業に所属することになる。受かって当然だからな!俺天才だしな!というわけでいざ面接!

 

 

 

「落選……?」

 

 

 

 落ちた。秒で。

いわゆるお祈りメールという物を眺めながら呆然と呟く。わなわなとした震えまで止まらない。

 何が悪かったんだ?確か面接は……

 

「今回弊社のVtuberユニットであるwith DREAMの第3期生に志望していただいたわけですが、まず志望動機をお願いします」

 

「はい。金を稼ぎたいからです」

 

「なるほど。みんな基本的にはそうですよね」

 

 ニコニコとした笑顔で人当たりの良さそうなおじさんが答える。やっぱり面接ってのは正直にやらないとな。嘘はつけない、そういう場所らしい。ググったらそう書いてあったから多分そうなんだろう。

 

「これまでの職歴を教えてください」

 

「3歳から25歳までは家業の手伝いをしていました」

 

「……3歳から?なるほど、小さい頃から実家の手伝いをしていたのですね。ちなみにどのような業種か伺っても?」

 

 

 

「うーん、そうですね……どちらかというと殺しですね」

 

 

 

 ニコニコとしていたおじさんの表情がここで固まった気がする。数秒言葉を失い、その後

 

「……殺し?」

 

 とようやく呟いた。

 

 

「ああいや既に死んでるものをもう一回殺すんで正確には違いますね。二度殺しです」

 

「二度殺し」

 

 おじさんがふうーっと深い息をつく。おじさんっていうけど俺も28だしそろそろおじさんの仲間入りなんだよな。いやだなー。この人はどちらかというとイケおじ寄りの40代って感じだけど。こういう歳の取り方してぇな。

 

「あー、つまり、その……動物の加工?のような職業だったのでしょうか?食肉を作ったり?」

 

 笑いは既に苦笑いになっていた。どう思われたんだろうか?少し心の声を聞いてみるか。

 

(受け狙いにしても狙い過ぎてるな、社会性が不足しているしユーモアのセンスも微妙だ)

 

 評価が悪い。ここで俺は自分の犯した過ちに気がついた。

 

 よく考えたら一般的には祓魔の仕事なんて知られてねぇじゃん!

 

「ええはいその通りです。肉を作ってました牛とかバラバラにしてましたよ6歳にはね。はは!」

 

 面接で嘘はダメらしいがもうこれ嘘つかないとどうしようもないだろと思い俺は食肉加工職人になった。咄嗟に出ちゃったけど牛をバラバラにする6歳児怖くね?

 

「はは、そうですか」

 

(結構いるんだよね、こういう人。奇抜ならVtuberになれると思ってんのかね。舐められてるな)

 

 あーダメだ心の声が呆れている。というか表の声も呆れてない?終わりじゃない?

 

 

 

「いやよく考えたら受かる理由の方がないわな」

 

 

 

 回想終わり!以上!完!俺の人生終了!

 

 と、いっそ諦められたら楽なんだがそうもいかない。俺は俺の人生をまだまだ謳歌してぇよぉ〜!

 

 

 

 は!閃いた。別に企業じゃなくて個人勢でよくね〜?

 

 

 そう、Vtuberは個人でもやれちゃうのだ。もちろん相応の機材は必要だが、幸い後少しだけ金は残っている。この金を使ってオールインし個人勢として成り上がっていくしかない。それしかない。うん。

 

 というわけでヘッドホンとかカメラとかマイクとか諸々買った。パソコンはゲームやるためにいいやつ買ってたから問題ない。

 

 あとは絵だな。描くか。俺天才だしなんとかなるだろ。描いたことないけど。と勢いで液タブを購入。

 

「うーん本当に金が全部尽きたわ」

 

 というわけで残金36円である。マイクとかクソ高いんだな、びっくりしたわ。

 

 とりあえず絵の練習から始めることにした。

 

 1週間後━━

 

「こんなもんかなぁ」

 

 この1週間一睡もせずに絵の勉強をした結果、それなりのモデルが出来上がった。

 睡眠?食事?問題ない。俺は1ヶ月は寝なくても食わなくても戦闘行動を継続できる。身体の出来が違うんだよ。

 

 

 完成した絵は結構いい感じだ。腰まで伸びたボサボサの長髪、キリッとした眼光に真っ青な瞳、180センチくらいの身長で衣装は黒尽くめの和風っぽい作り。12つの輪がついた錫杖を手に持っている。

 

 うんうん、そうだね。これ完全に俺だね。服とか仕事用のやつだもんね。錫杖はメインウェポンだもんね。

 

 

「しょうがねぇじゃんよ……!」

 

 絵は確かにかなり描けるようになった。俺天才だからな、学べば大抵のことはすぐプロ並みにできるようになる。そう育てられたしな。

 ただいかんせんこれまで家業の経験と3年間遊んで暮らしただけの俺には想像力が不足していた。もう完全に0だった。自分がやるVtuberのモデル作れって言われても俺の姿以外想像できねぇし描けねぇよ。馬鹿か俺は。

 

「いいか!別に誰に会うわけでもないしな!」

 

どうせ外に出る機会なんて全然ないんだ。Vtuberのモデルと俺の姿が全く同じでもなんの問題もない。もしかしたら家の奴らが目をつけて俺のことを連れ戻しにくるかもしれんが━━

 

 

 

「そんときは全員叩きのめしゃいいしな」

 

俺、強いし。

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