【本物】オカルトVtuber【現る?】   作:田中高菜

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ゲーム配信!

 

 予告通りに今日はゲーム配信やるか。

というわけで早速バトロワ系FPS『Gan and Ghost』、通常GaGを起動する。

 

 GaGはバトロワ系FPSの中でもかなり変なシステムで有名だ。バトロワ系ってのは100人が縮小するフィールドの中で物資を奪い合って最後の1人になるまで戦うあれな。

 

 ヘルメットや防具がなければヘッドショットで即死、たとえ防具が揃ってたとしてもそこまで人体は頑丈じゃねぇよと言わんばかりに弾があたれば一瞬で命が飛ぶ。

 

 そんな一瞬で死ぬ仕組みだと流行らないだろと思うかもしれないが、なんとこのゲームには死後がある。

 

 プレイヤーは死んだ時点で持っている装備、キル数、生存時間などをポイント化し、そのポイントによってランク別のghostになる。

 このghostの性能がすごい。全くポイントがない状態で死んだ最弱のゴーストでも壁抜け、移動時は音がないというとんでもない利点がある。遠距離武器は使えず近接攻撃しかできないが、そもそも人間はghostには勝てない。体力が違いすぎるからだ。

 

 人間時は吹けば飛ぶような命だったカスどももghostになると強烈な硬さになる。しかも人間を殺すとランクアップし、さらに強力なghostになっていくのだ。

 

 ──そう、ghostには基本的に人間は勝てないのである。これ作ったやつ馬鹿じゃねぇの?なんで流行ってんだ、と思うが実はこのゲームは人間対人間ではなくghost対ghostの戦いなのだ。

 ghost同士が潰しあって最後に生き残ったghostが勝ちであることもそれを証明している。

 

 つまりこのゲームは『脆い人間の身体を捨ててからが本番』のゲームである。怪物に人間は勝てないのだ。ははは。

 

 

 気に食わねぇよな。

 

 俺が全部めちゃくちゃにしてやる。

 

 

 

 

 というわけで配信開始。

 

「うーい聞こえてる?」

 

:始まった!

:うおおおおおおおおおおお

:霊能力あるって本当?

:詐欺師が来たな

:インチキ霊媒師www

:早く占ってみろよ

:犯人脅して自白させたってマジ?

:インチキおじさん登場〜

 

いいね〜人が多い。

疑ってかかってるやつが多いのもナイスだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「否定的な書き込みしたやつ、上から順番に行くわ。歯磨き粉お前は16歳の時に友達ぶん殴って絶縁したことをいまだに後悔してるたらこ唇は見つかったら一生世間に顔出せないようなフォルダを素材用.zipに隠してるトリオトリオは幼馴染の凛子ちゃんと付き合ってると思ってたのに実は他の男と普通にできてて結婚したことをまだ引きずってる俺だ結婚してくれー!は蛸壺」

 

:うおっ早口

:高速詠唱

:なんだよ蛸壺ってwww

:ごめんなさい

:マジかよ

:BSSくんかわいそう

:寝てからいえ定期

 

 7割。信じたな。まあ今できることはこんなもんか。

 

「俺は今日お前らの人生覗き見しに来たわけじゃねーんだよ。普通にゲーム配信させてくれや」

 

:そういやゲーム配信だった

:応援してます

:占いとかしてくれないの?

:やらせだろこんなもん

:どうやってんのこれ

:何のゲームやるん?

 

「今やらせと言った泥沼くんは1週間前にずっこけて犬のフン踏んづけた後水溜りにインしてドロドロになりました。可哀想ですね〜!今日やるゲームはGaGだ」

 

:かわいそう

:散々やね

:名前通りでよかったね

:フン沼

:GaGってあの開幕即死戦法流行ってるクソゲー?

:これ本当ならやばすぎない?画面越しでこんなにみえるもんなの?

:どっちでも面白いからええぞ

 

「その開幕即死戦法流行ってるゲームやるぞ」

 

:あれ殺したやつがghostになった執拗に後追いかけてくるのクソすぎる

:殺されたんだからそりゃやり返すだろ

:人を呪わば穴二つ

:呪われてるのはどちらかというとこっちなんだよな

 

「このままだといつまで経っても始まらないから早速スタート!やるぜやるぜやるぜ〜」

 

言葉と同時にマッチングを開始する。お、一瞬で集まった。人気のゲームは人口多くて助かるね。

 

「さーて降下開始だな」

 

:やっぱ即死すんの?

:まあゲーム性的に強いよな即死

:頑張って生き残って高ランクghostになるより低ランから餌人間ども殺して高ランになった方が楽だからな

:一応最後らへんまで人間状態でいることが条件の超高ランクもいるけどまあ基本無理だわな

 

「俺が何やるかは見てたらわかるさ」

 

というわけで強いアイテムが集まる激戦区にダイブ!

 

:お、いきなり激戦区行った

:どうせ白旗どもで溢れてんのに

 

「白旗ねぇ」

 

 ここら辺は武器多くていいな。助かる助かる。降りてった奴らも多いが……

 降下してからすぐに移動しつつ装備を漁る。おっ強めのショットガンあるじゃんラッキー。

 

:このゲーム始めて長いの?

 

「いや今日が初日。人の動画は見てたが」

 

:動画勢かよ

:の割には動きいいな

 

「俺天才だからね。おっと」

 

 人間いたわ。しかも3人。全員お互いのことが見えてるのに装備漁るのに夢中だな。

 

:あっ白旗どもだ

:アイテムだけ集めて殺された後ghostになる動きひでーよな

:天才てw

 

「うむ。皆殺しじゃ」

 

3発の銃声が鳴った後、3人の人間が死んだ。我ながら完璧なエイムで惚れ惚れするわ。

 

:は

:マジか!

:なにやってんの

:エイムうま

:いやこんなもんghostに囲まれて終わるだろ

 

 死体がぐにゃり、と周りの空間ごと歪んでいく。肉塊となり、霊魂となり、そして悪霊へと変質していく──

 

 そして3人のghostが生まれた。

三人とも同じ姿。薄汚い白い布を羽織り、腹がぼってり膨らんだ小さな小鬼。

 

:やべぇ三人とも餓鬼だ

:良い装備拾ってたなあいつら

:終わったな

:あーあどうすんのこれ

:天童先生の次回作にご期待ください

 

「ここからここから」

 

 ひっくり返すさ、俺が全部。

 

 殺された三人の餓鬼が喜びを全身で表現しながら俺を追いかけてくる。あいつら速いんだよな。

 基本的にghost相手に壁は意味がない。通り抜けてくるからな。その上であいつら物理的な破壊できるのクソだよクソ。

 

 餓鬼の攻撃手段は鋭い爪による引っ掻きと飛びついてきての噛みつき攻撃のみ。噛みつきは当たったらほぼ即死だ。鬼畜難易度たまんねぇ〜。

 

 とりあえず適当な家に入り、銃を構える。さあ追いかけてこい。

 

:家の中逃げ込んでどうすんの?

:壁抜けてきて終わりだべ

:〜糸冬〜

 

 あいつら壁抜けられるけど別に壁の中は見えないからな。付け入る隙があるとすりゃそこだ。

 はーい凄い勢いで壁から侵入してきた餓鬼の目の前でショットガンをヘッドショット。死にはしないけど明らかに怯んだので続けざまにヘッドショット。まず1匹終わり。

 

:は???

:何今の

:ウォールハックしてらっしゃる?

:このゲームやたらチートに厳しいからそれはない

:何で入ってくるところがわかったんだ……?

 

「壁抜けられて強靭な肉体を持ってる間抜けがどこら辺から侵入してくるかなんて丸わかりなんだよ」

 

 はい次。裏側から飛びつき奇襲を仕掛けてきた餓鬼にヘッドショット。そのまま横にスライドするように動いて飛びつきを交わしつつ続けて横っ面にヘッドショット。2匹目〜。

 

:なんで!?

:裏からの奇襲かよ

:完璧に捌いてる……

:こんな速さで動いてる相手にヘッショ決まるか??

:だから何でわかるんだよwww

:うおっすげぇキャラコン

 

 分かるんだよ。化け物が何考えてるなんて俺には全部わかる。

 さ、最後だな。今度は一対一で正々堂々やろうぜ。家の外に出た後、待ち構えていた餓鬼が飛びついてくる。みんな即死だいちゅきでちゅね〜!

 

 当たり前にヘッドショット。この程度反応できないわけないだろ馬鹿が。後ろに吹っ飛んだ衝撃を利用して餓鬼が近くの壁に隠れた。壁の中に隠れてまた奇襲すんの?お前ら芸がねぇな。

 

 10秒、20秒、静かな時間が続く。32秒だろうな。はいそこ。後ろの家から飛び出してきた餓鬼の顔面を撃って終わり。

 

「化け物になったからって無敵になったわけじゃないんだよな」

 

:うおおおおおおおおおお

:マジでチート使ってないの?

:ゲームうっま

:頭以外打てないんか?

:餓鬼ってヘッドショット2発で死ぬんだ雑魚じゃん

:いや、ショットガンだからだなこれは 近距離で弾がばらける前にヘッショ決めてるから死んでる

:もっと硬いイメージあったからそうだよな

:化け物が人間に勝てるわけないんだよね

 

「さーて。化け物はぜーんぶ殺すぞ〜」

 

 本当に強いのはどっちなのか教えてやるよ。

 

 

 

 

「こんな早い時間にghostのキルログ?それも3体立て続けに同じ人が……」

 

「……この試合、面白くなりそうね」

 

 

 

 

「もうちょっと歯応えある試合がしたいね」

 

:うっそだろこいつwww

:人間もghostも狩尽くしてる……

:半分以上1人で倒してら

 

 フィールドが半分以下に縮小するくらいには続けたが、どいつもこいつもghostの性能頼りで話にならん。餓鬼や幽鬼程度が徒党組んだって俺に勝てるわけねぇだろ。

 

:これだけghost倒してたら相当ポイント貯まってそう

:最上位ghostも夢じゃないな

:はよ死んで無双ゲーやろうぜ!

:いやどうせなら生き残れるだけ生き残った方が強い

:何でこんなにゲーム上手いんだよこいつ

 

「いや、ghostにはならない」

 

:は?

:何言ってんの

:ぼくはしにましぇーん!

 

()()()()()()()()()()()

 

:無理定期

:これは大言壮語

:ビックマウスビックマウスの実を食べた全身ビックマウス人間?

:お薬出しておきますねー

 

 言ってろ馬鹿ども。やるって言ったらやるんだよ俺は。

 

「1人、いるな。強いやつが」

 

:キルログ結構流れてるよな

:あの、この垢なんか見覚えあるんすけど……

:もしかしなくても峰姐ですよね?

 

「峰姐?」

 

:峰姐をご存じない!?!?!!?!!?!

:お前Vtuber降りろ

:ウィズドリの一期生だよ 桐ヶ崎 峰さん

 

「あー知ってる知ってる。FPS上手いらしいしそういうことか」

 

:普段ふわふわしてるのにFPSやるときはキリッとしてるのたまらん

:ここがあの男のハウスね

:もしかして配信してる?

:うん 向こうの配信でも話題に出てるよ

:こん!

:こんなゲーム上手い新人いたんだ

 

 おっこりゃあっちの配信から人が流れてきたな?いいねいいね、人は増えれば増えるほど良い。

 

「配信いま開いたやつもよろしくな。今はゲームしてるけどゲーム以外にもいろいろやるつもりだ」

 

:いろいろ(意味深)

:オカルト能力待ちきれないよ!早く出してくれ!

:視聴者のお悩み相談とかやってほしい

:絵も自作らしいしお絵描き配信くだち

:過去を知りたいです

 

「はいはい今はゲームに集中な。そういうのはそのうちやるから」

 

 もうあんまり人も化物も残ってねぇからな。

移動しながらざっと見ていたが明らかにプレイヤーがいない。俺ともう1人、峰さんとやらがあらかた狩尽くしたからだな。まあ俺ほど無茶はやってないだろうが。

 

「ラストスパートかけるぜ」

 

 

 

「いやー大鬼は強敵でしたね」

 

:瞬殺しやがったwww

:うっそだろwww

:あいつ超強いのに……

 

 いや流石に終盤に出てくるghostだけあって強かった。全身硬すぎて頭にしかダメージ通らないくせに高速移動と攻撃範囲の広い棍棒振り回しはズルだろズル。

 まあそんな攻撃に俺が当たるわけもなく全部避けて全部当てたら勝つんですけどね。

 

 さて。

 

「残り3人か」

 

:全員人間なのすげー

:基本的にこのゲーム早い時間で大体みんなghostになってわちゃわちゃするからな

:FPSの姿か?これが……

 

 流石FPSの皮被っただけのファンタジーアクションと称されるだけはあるな。

 

「お」

 

ようやく射線に出たなオメー。

 

:ファーwwww

:エイムよすぎ

:一瞬で命が消し飛んだな

 

「本番はここからだけどな」

 

 変質していく死体。大きく歪む空間。高位の化け物が顕現する時の歪みそのまんまだ。

 白い体毛、2メートルほどの肉体。ゴリラのような体格。夜叉だな。

 

「ヴォォォォォォォォン!!!」

 

 咆哮。ありゃ位置を探ってくるやつだ。

場所はすでにバレたな。

 

 鬼のような形相(実際に鬼だが)をした夜叉の顔がこちらをギィっと睨み、そのまま突っ込んでくる。

 

「こいよ、蜂の巣にしてやらぁ」

 

:はえぇ

:夜叉は無理だろ

:当たり前のように高速移動してきて掴み(即死)、殴り(即死)、噛みつき(即死)だからな

:咆哮でプレイヤーの位置がわかるのもクッソ強いよな

 

 無理かどうかは俺が決めること。……ん?

 

 俺を狙っていた夜叉の顔に横から弾が飛んでくる。明らかにもう1人のプレイヤーの攻撃……峰さんだな。

 

:キャー峰姐さーん!!!!!

:ここで援護してくれるの男前すぎる

:まあこいつ2人で倒した後に勝敗決める方が勝率高いから合理的だな

 

「いいね。気に入った、付き合うぜ」

 

 怪物と戦う人間は好きなんでね。

 

「グゥッ」

 

 夜叉は一瞬怯むが気にせずに俺を狙い突進を続ける。さあ間合いにくるぜ。

 

 突進の勢いをそのまま活かしたタックルを横に躱わす。そのまま顔に一発銃弾を打ち込む。体勢を急に変えて無理やり殴りかかってきた拳を避ける。そのまま顔面に一発。違う方角からさらにもう一発。距離を取ってきて素早い飛びつきをかましてくる。顔面に一発。腕力に物を言わせた腕ぶん回し。顔面。蹴り。顔。噛みつき。顔。

 

:すげぇ

:何も当たらないw

:こんな完璧に避けて当てられることある?

:やっぱチート使ってるんじゃ

 

 実はチート使ってるとも言える。俺の反射神経を含めた身体能力は普通の人間と違いすぎるからな。リアルチートみたいなもんだ。

 

「じゃあな」

 

 全ての攻撃を避けられることに怒りを通り越して怯えさえ出てきた夜叉の顔面を撃ち抜く。

 

 夜叉は断末魔を上げながら消えていった。

 

:勝ちやがった

:これマジで人間勝利アリエル?

:無理無理

:最後のあいつはどうしようもない

 

 あとは一対一。どちらが本物の人間なのかの勝負だな。

 

 最後のフィールドは密林。ここら辺は木が密集していてお互いを視認しづらい。とはいえさっきの射撃で相手の位置は大体割れてる。俺の位置はあんだけどんぱちしてたので言わずもがな。

 

 お互いに息を潜める。──能力なんて使わなくてもわかる。相手がいるであろう木の裏をじっと見つめる。顔を出した瞬間が最初で最後の邂逅だ。

 

 リロードはしない。弾は一発でいい。絶対に外さない。確信があった。

 

 

 撃つ。

 

 

 最後に立っていたのは俺の方だ。

 

:峰姐にエイム勝負勝ちやがった

:とんでもねぇ新人や

:うおおおおおおおお!!!!!!

:ポイントもこっちの方が上だしghost勝負に持ち込んで勝ちかな?

:いや普通に最後まで人間だから毘沙門天になって勝ちやね

 

 ぐにゃり。空間が歪む。異様に、異質に。世界の法則が乱れていく。やはりこれは。

 

()()()()()()()

 

 本物が生まれる時にな。明らかにこれバケモンを知ってるやつが作ってるだろ。

 まあ今はどうでもいい。それよりも最終決戦だな。

 

「とんでもない化け物になっちゃってまあ」

 

 ──羅刹。真黒な肌に3メートルほどの巨体、異様なほど隆起した筋肉を持つ人喰いの鬼。

 

 静かに、だが確実に俺をじっと見つめている。真黒な目で俺を見ている。

 

「やる気満々だな!」

 

 最高だ。

 

「殺す」

 

 それでこそ俺の敵だ。

 

:いつ見ても羅刹は迫力あるな

:羅刹VS夜叉とかほぼ怪獣バトルだからな

:まあ毘沙門天にはひっくり返っても勝てないんですけどね

:羅刹と夜叉がタッグ組んで戦いが成立するレベルだもんな

:それでも夜叉より全然強い定期

 

 説明するタイプのモブかお前らは。反感買うから言わんが。

 

 しかし羅刹か。こいつ疾い、堅い、強いの三拍子揃っててめんどくさいんだよな。

 やることは何も変わらない。敵の攻撃を全部避けて顔面に弾をぶち込むだけ。ただ難易度が段違いだ。

 

「現実なら楽勝だがゲームの俺の体は脆くて困る」

 

:逆ゥ!

:確かに不思議な力はあるっぽいけど鬼には勝てねぇだろw

 

「いやいやこれくらいの鬼とは割と」

羅刹の身体がブレたと思ったらすでに目の前にいたので普通に回避。

 

「戦ってたっちゅーの」

 

:よく避けられたな

:拙者鬼が出てくるような世界観に住みたくないでござる

:でも普通に身体能力は気になるよな

:少なくとも動体視力はいいよね

 

「いつかお前らの前で俺の力見せたるからな……」

 

 ぼやきつつ羅刹の猛攻を回避する。顔面撃ってるけど大して効いてね〜。

 羅刹は疾い。本当に早くて速くて疾い。さっきのワープじみた高速移動(実質的にはワープと変わらん)に発生フレームが全部5F以下の超優秀な攻撃を各種備えている。もちろん人間態で当たったら全部即死。あークソゲクソゲ。

 

 避ける避ける避ける避ける。もう全部避けて避けて避ける。当てる当てる当てる当てる。全ての弾を顔面に当てる当てる当てる当てる当てる。

 

「ほんっとにHP減らねぇな!」

 

:これだけやってもまだ5分の1くらいしか削れてないよな

:かった

:人間じゃ無理だよ

 

「だから諦めないっての」

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 

「そんだけ疾いと操作も大変だろ?ん?」

 

 だから俺に攻撃が当たんねぇんだ。

 上位のghostの性能は確かにクソ強いがどちらかというと対ghostを意識した性能をしている。つまり小回りが利いて的が小さい人間には微妙に適してないんだなこれが。

 

 そもそも俺のキャラコンが死ぬほど上手いってのは前提条件だけどな。

 

「感じるぜ。お前の焦り。()()()()()()()()

 

 

 

 

 

「──この人、本当に強い」

 

:頑張って!

:全部避けてる……

:本当にチートじゃないの!?

:今運営に問い合わせてる

 

「チートではないです。チーターにはこんな動きはできない。彼の細かな所作が、人間であることを証明している」

 

 夥しい数のフェイント。私が移動するラインへの正確無比な予測撃ち。スレスレで回避する反射神経の高さ。そして何より変化していく状況に対する異常なまでの適応能力。

 

「本当にすごい……」

 

 成し遂げてしまうかもしれない。私がかつて諦めたことを。私がこのゲームにいつか見た、そしてとうとう成し得ないと結論づけてしまった夢を。

 

 ──だからこそ。

 

「私はあなたを全力で打ち倒します」

 

 そして見せて欲しい。

 

 人間は────

 

 

 

 

 

「人間は怪物なんかに負けねぇってなァ!!!」

 

:おいおいおいおい

:マジかよ本当に当たってねぇ

:これ体力半分くらいまで行ってるんちゃう?

:でももうフィールド狭いよ

:この狭さで避け続けるの無理では?

 

 全て避ける。全て当てる。これを続けていれば勝てる。確かにその通りだ。

 これができていたのはフィールドの範囲がある程度あったからでもある。だが、もう最後のフィールド縮小が始まった。

 

:これ勝てる!?

:狭くなったフィールドでも避け続けられるならワンチャン

:あと1分で削り切るの無理ゲーでしょ

 

「削り切らなくていいんだよ」

 

 羅刹の攻撃が一層激しくなる。高速移動による俺の後ろを取るとみせかけた上方向への跳躍。回避。着地と同時に振り向きざまのパンチ。回避。足払い。回避。飛びかかり。回避。

 

「俺の攻撃で倒す必要はない」

 

:なんで?

:あーーーそっかフィールド外って固定じゃなくて割合ダメージなんだ

 

「その通り」

 

 フィールドの外に出た場合プレイヤーはダメージを受ける。ただそのダメージの数値は%だ。膨大な体力差があれど、同タイミングでフィールド外に入れば無傷の俺が勝つ。

 

 残り10秒。

フィールドは極限まで狭くなる。こうなるともう回避は難しいな。

 

:本当に勝っちゃう!?!?

:偉業じゃん

:まだ誰も達成したことねーぞ!!!

:頑張って

:勝て!!!!!!!

 

 残り8秒。

 

 羅刹の大ぶりな腕の振り回しによる攻撃。もちろん普通なら悠々と躱せるが、フィールドの範囲的に無理だな。

 

「しゃーねぇなぁ!」

 

 バックステップでフィールド外に出る。

 

 HPがガリガリ削れていく。

 モーションが終了したのを見てから再度フィールドにイン。HPが羅刹以下になった瞬間俺は終わりだ。

 

 残り4秒。

 

 羅刹が足を大きく上げたのが見えた。範囲攻撃の予兆。地に足を付けていると膨大なダメージとスタンを喰らう地割れだ。もちろん人間は死ぬ。

 

 まだ飛ばない。飛ばない。飛ばない。

 

 足が付く。地面がひび割れ、それが広がっていく。飛ぶ。

 

 残り3秒。

 

 俺が飛んだのを見逃す羅刹じゃない。地割れのモーションの終了をじっと堪えている。

 

 残り2秒。

 

 俺が地面に着く前に硬直が終わった羅刹が飛び込んでくる。真っ直ぐ、真っ直ぐすぎるほど完璧に俺を狙った飛び蹴りに向かってショットガンを撃つ。

 

 残り1秒。

 

 空中でショットガンを打った反動で後ろに吹っ飛ぶ。

 

その飛び蹴りは届かない。

 

 残り0秒。

 

 お互いは既にフィールドの外。

 

 体力がもの凄い勢いで削れていく。

 

 最後の一撃になると分かっていた。

 

 このまま避けることに専念すれば、俺の勝ち。

 フィールドの広さはすでに関係なく、俺からすれば最後の羅刹の一撃を避けることなんて簡単だ。

 

 それでも。

 

「お前を打ち倒すのは俺だ」

 

 勝つ。今飛び込んできている羅刹の拳からそんな執念が伝わってくる。

 

 俺も同じ気持ちだよ。

 

 

 

 ショットガンを撃つ。

 

 

 

 眼前の拳は止まっていた。

 

「強かったなぁ」

 

:かっっっっっっった!!!!!!!!

:人間で勝利うおおおおおおおおおおおお

:今夜はカツ丼じゃあ!!!!!!!!!!!!!!

:とんでもない大物新人が来たでぇこれは

:なんか泣いてる

:霊能力とか全く関係なしでもとんでもねぇ新人だ

 

 ピコン。通知の音がしたと思ったら「本物のghost」という称号を手に入れたらしい。

 

 化物を打ち倒す人間こそが本物の化物ってか?やかましいわ。

 

「今日はこんなもんでいいか。配信終わるわ。じゃあな」

 

:一試合で配信をやめる男

:これはしゃーない

:絶対ネット記事になるぞこれ

:俺たちはとんでもないものを見てしまったのかもしれん

 

 いやいや俺の凄さがわかるのはこれからだぜ。

 全人類に教えてやるんだよ。俺という存在をな。

 

 配信を閉じた。

 

「いやー結構楽しかったな」

 

 ゲームに真面目に取り組むことあんまりなかったからな。今日はいい試合ができた。

 

 さて。

 

 

 

 トゥイッターの通知がかなり多い。その中の一つに、桐ヶ崎 峰にフォローされたという知らせもあった。

 

 フォロバした。楽しかったもんなぁ。また遊ぼうぜ。

 

 DMまで来た。

 

【はじめまして。今日はありがとうございました。あれほど素晴らしい試合に参加させていただいたことを誇りに思います。

話は変わりますが、天童院さんもVtuberをやっていると伺いました。よければ私とコラボしませんか?】

 

 また遊ぶってそんな近日中の話じゃなかったんだけどね。うん。

 

 「マジかよ……」

 

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