【本物】オカルトVtuber【現る?】   作:田中高菜

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ちょっとした夜襲

 コラボね。コラボかー。

 いや、これはかなり良い話だ。多くの視聴者が欲しい俺としては、正直受けない手がない。

 

 ただこんな始めたばかりの個人Vとコラボするのを向こうの企業は許諾しているのだろうか?と思っていると追加でDMが送られてくる。

 

【もちろん企業の方にも許可を得てお誘いしております。元々新人Vtuberの方とコラボし、お互い切磋琢磨して界隈を活性化させるのがうちの方針なので今回の件もなんの問題もありません】

 

 都合良すぎ〜!最高か?

 こりゃ受けない手はないだろ。これをきっかけに有名になれば他のVとも絡んでさらに大きくなれるかもしれないし。ワクワクが止まらねぇな!

 

 ただ面接落ちた企業なのがちょっと気まずいけどな!いや落とされて当然だったけどさぁ……とかなんとか考えながら夜の街を歩く。考え事は散歩しながらのほうが捗るからな。

 

 どうでもいいか。峰さん面白い人っぽいし物は試しということでコラボを受ける旨の返信をしようとした時。

 

 

 

 こっち側の人間が来たな。流石にはえーや。

 

 気配を察知したので振り返ると黒装束の男がいた。全身を黒い布で覆っており、顔までなので隠している。

 

「黒子か。よく見つけられたな」

 

「ご冗談を。あれだけ縁《えにし》を振り撒いておられたらすぐ分かります。今までは全ての縁を断たれておりました故……」

 

 黒子というのは天童院における役職だ。祓《はらい》を行う実働部隊とは違い、主に裏方の役目を担う。伝令役や諜報、世間に情報を隠す役割もある。大変そ〜。

 

 俺がVtuberを初めて少し目立ち始めたからその縁を辿って俺を見つけたらしい。デジタルにも詳しいようで何より。俺たちには下界のものに全く触れさせなかった癖によ。

 

「天童様。どうか本家へとお戻りください。皆、心配しております」

 

「心配だぁ?お前らの心配はお家が潰れるか潰れないかってだけだろ。おおかた俺が抜けてから派閥争いやら内輪揉めでガッタガタなんだろ?ん?」

 

 ほーら黙った。図星だな。

 

「……天童院は、天童様なくしては成り立ちません。あなたは全ての要……」

 

「俺を産むために何千年も使ったからな。そりゃそうだろうよ。だが俺はお前らのことが嫌いなんでね、家には戻らねーよ」

 

 大体この年でまだ実家暮らしだと今時子供部屋おじさんって煽られるらしいしやだね恥ずかしいとぶつぶつぼやく。

 

「どうか、どうか……」

 

 五体を投げうち俺に懇願してくる黒子をじっと見下ろす。

 

 

 不快だな。こんな猿芝居が俺に通じると思っていることが癪に障る。

 

 

 

「懇願する割には俺のことぶちのめす気満々じゃねーか。なぁ?」

 

 

 そこに飛んでくると分かりきっていた針を当たり前に躱わす。続けざまに俺の胴を狙う刀をちょいとつまんでやる。

 

 

「しまっ」

 

「ぬるいなぁおい。得物取られたならさっさと捨てんかい」

 

 

 そのまま硬直した女を軽く蹴飛ばしてやる。

 面白いくらい吹っ飛んでそのまま壁にぶつかる。黒子に注目してるうちに後ろから来やがって。不意打ちのつもりだったか?馬鹿が。

 

「俺を一発でも打ちたかったら最低でも限定的な予見くらいはできなきゃ話にならんだろ。舐めてる?舐めてんだよな」

 

 そのまま転がってる女の上まで大きく飛んで首を掴む。ふむ。

 

「弱すぎる。お前、捨て駒か?」

 

「かっ……く、は」

 

 とりあえず接触して俺の対応を見たあと、無理そうだったら実力行使に出るってところか。

 

 なるほど。

 

「よっぽど割れてるな。この弱さで俺を狙えってのはもはや残酷ですらある。可哀想に」

 

「ひっ、ぃ……た、ずけ」

 

「どうしよっかな〜」

 

 人殺すのも嫌なんだよな。とりあえず脅しとして四肢の骨を粉々にしてから返却するか。うんそうしよう。

 

「お待ちください!」

 

 めんどいけどさっさとやるかぁと拳を構えると、さっきの黒子が慌てて駆け寄ってきた。同じように五体を伏せて俺に懇願するが、さっきよりは真心がある。

 

「この子は私の孫なのです!私の命はどうとなろうとも構いません、ですがこの子の……!」

 

「あーはいはいわかったよ。とりあえず事情は聞いてやるからその姿勢やめろ」

 

 しゃーねぇな。とりあえず首にかけた手を離してやる。

 

「けほっ、けほっ……」

 

「ありがとうございます、ありがとうございます……!」

 

 あーあ泣いてやんの。そんなに俺が怖いならやめとけばいいのに。ま、そうもいかないんだろうが。

 

「家、上がってけよ。水道水くらいは出してやる」

 

 

 

 

「ここが、天童様の……」

 

「よもやこんなところにいらっしゃるとは……」

 

「人の家物珍しそうに見ないでくれる?」

 

 確かにパソコンとか見る機会ほぼないだろうから珍しいだろうけどよ。

 

「ほれ、座れ。来客用の座布団なんかはないぜ」

 

「め、滅相もない。我らは地べたで十分にすぎます……」

 

「……失礼します」

 

 俺がどかっと座り、あぐらをかいた後畳の床に2人が正座する。水出すって言ったけどめんどくせーからいいや。どうせ喉通らんだろ。

 

「で、なんで襲ってきたんだ?」

 

「……天童様ならば、もうすでに視られているのでは……」

 

「俺はそう軽々しく縁を辿らねーんだよ」

 

 配信は例外な。ぶっちゃけ視聴者にオカルトパワー伝えるのあれが一番楽なんだよね。

 

「左様ですか……」

 

 黒子が俯く。そして決心したように口を開いた。

 

「天童様が指摘された通り、今天童院は割れております。天童様のお戻りを待つ源流派、天童様以外のものを当主に立てようとする親頭派の二つが大きな派閥です。また、これを機に分家も怪しい動きを見せており……」

 

「もうめちゃくちゃなわけだな」

 

 そりゃそうなるわ。あの家で一番強いのってぶっちぎりで俺だからな。大黒柱が抜ければ家も傾く。当然だ。

 

「その通りです。それゆえ、天童様を辿る縁が見出された時は大層騒ぎになりました。私たちは源流派の長たる日々千夜様の命を受けてここへ……」

 

「無理やり連れ戻してこいってわけだ。にしては戦力も格も足りてなさすぎる。よほど激しく対立争いしてんだな。あとは俺がなまってないかのチェックも兼ねてんだろ?」

 

「……全て見抜かれますか。仰る通り我らは今、親頭派のものどもと日夜戦っております。その中で色壮《しきそう》や空幼《くうよう》の方々が離れるわけにもいかず、欲老《よくろう》の私たちが一応接触することになったのです」

 

「ダメ元じゃん。舐められてんなー」

 

 もしくは戻るわけないと思われているか、()()()()()()()()と思っているか。ま、どっちでもいいしどうでもいいか。

 

「どのみち誰がきたところで戻る気なんてさらさらなかったからある意味賢明な判断だ。ま、これに懲りたらさっさと帰れ」

 

 話は終わりだ終わり。しっしと手を振って出ていくように促す。

 

「……分かりました。日々千夜様にもそのようにお伝えします。調《しらべ》、帰るぞ」

 

 黒子が立ち上がり孫と共に出て行こうとする。

 そのとき、今まで沈黙を貫いていた孫が話し始めた。

 

 

「なんで、天童様は出て行かれたのですか?」

 

「……調。不敬だぞ」

 

「天童様が出て行かなければ!こんな、こんなことには!」

 

「調!!!」

 

 

 祖父の大声に慣れていないのかビクッと体を揺らす。殺されかけといてこいつなかなか根性あるな。それとも馬鹿なだけか?

 

 

「いいよ。そのクソ度胸に免じて許してやる」

 

 

 すたすたと娘の顔がよく見える位置まだ近づく。おかっぱのショートヘア、気の強そうな紫色の瞳をよーく見つめてやる。

 

 

「俺はあの家が死ぬほど嫌いなんだよ。あそこにいるものは皆、その血の一片までかけらも残さず灼かれて死ねばいいと思っている。無論お前たちも例外ではない」

 

 

 目を見る。じっと見る。怒りが、憤りが、畏れに変わっていくのを見る。

 

 

「今お前たちが生きているのは、全て私の温情でしかないことを知れ」

 

 

 ひっ、と声が漏れるのを聞こえる。

 

 お前は俺の目に何が見えた?

 

 

「分かったらさっさと出ていくんだな」

 

 

 ぷいと目を逸らす。こんな弱いものいじめしたって楽しくないんだよな。うんちぶり(自由律俳句)

 

 

「申し訳ありません、どうかご容赦を。孫は厳しく折檻いたします」

 

「どうでもいい」

 

 

 顔面を蒼白にして出ていく2人を尻目にコラボ配信の件を受けるDMを送ることにする。

 いやー楽しみだな!大手Vに寄生して視聴者ガッポガッポ稼いだらぁ!どんな配信にするか詰めていこうぜ!

 

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