「おおっマジか、よろしくお願いします。前から配信見てましたわ、いやーホラーのビビり方何回見ても面白かったっす」
「前から……?……すぅーっ……ありがとうございます、光栄です……」
いやこんな早い段階で蘇我山さんともコラボさせてもらえるとは思わなかった。企業様々だなぁおい!
「実を言うと蘇我山さんがVtuberを知ったきっかけなんですわ。You○ubeの動画を見漁ってるときにたまたまおすすめに出てきたらこれがもう面白くて!ある意味今の俺がいるのは蘇我山先輩のおかげと言っても過言ではない!」
「アッいやあのほんと大したことないんで先輩呼びは心臓に悪いので勘弁してくださいお願いします」
:なんか蘇我山硬くね?
:こういうので緊張するタイプじゃないのにな
:オカルト系だから苦手なんじゃねーの
「……勝くんやけに緊張してますね?」
「イヤゼンゼンソンナコトナイヨ」
ん〜?なんだ?確かに少し硬くなりすぎな気がする。
蘇我山さんはこういう時の場を軽快な喋りで盛り上げたり大人数のイベントでの場を回すのも得意なタイプのVtuberのはずだ。新人Vtuberとのコラボも何度もやってるし緊張する理由なんてないはず。
……ああ、そういう。
「天童院を知ってるわけだ」
「ひゅっ(呼吸停止)」
なるほどなるほど。なるほどね?
「新興の祓屋か。3代目。親に天童院と関わるなと馬鹿ほど言われていたわけだ」
「勝なんのことか全然わかんない(裏声)」
隠さなくてもいいって。つーかどうせ隠せないしな!俺に隠し事は無理!
「実際に天童院の仕事ぶりを見てから
「……こんな場で、天童院について言及してもいいんすか?」
「いいのいいの。俺あそこ足抜けしたから」
「足抜けしたァ!?」
そんな驚くぅ?蘇我山さんもそっちの道やめてるじゃんね。
「いや、その……可能、なんすか?」
「そらできるよ。俺天童院家の天童──要するに当主だもん。俺の好きにやれるしやるよ」
:天童院家?
:なにそれ
:設定じゃないの?
:いやでも恐山がやたら恐れてるしな……
:そういう一族の生まれってこと?
:蘇我山オカルト能力あったん!?
あっさらに顔が青ざめてる。ウケる。上の方だとは思っててもまさか当主とは思ってなかったわけね。
「いや当主が抜けたって……家めちゃくちゃ荒れるのでは……?」
「今すごいことになってるらしいよ。ウケるよね」
「いやいやいやいや」
信じられないって顔してんなぁ。まああそこも体裁あるし必死に隠してるだろうがぶっちゃけバレるのも時間の問題だったろ。本当に全てが終わる前に俺が先にバラしてやったんだ、むしろ感謝してほしいわ。
「そんなことはどうでもいいので。占いすっぺ占い」
「そんなことって……おいおいやべぇってこれマジで」
「……勝くん。不思議なことに関わってたのに私たちに今まで秘密にしてたんですね」
あっなんか桐ヶ崎さんがキレてる。
「いや俺たちは普通世の中が混乱しないようにこういうことは秘匿する義務があるの!目の前のヤバいやつがなんかはっちゃけて全部言ってるだけで!」
「やーんヤバいやつ扱いされちゃった」
「ヒッ今のは勢いで言ったんです許して……許して……」
「別に怒ってないって」
「理由があったなら仕方ないですが私は少し怒ってますけどね」
つーん。と桐ヶ崎さんが頬を膨らませる。
まあ秘匿義務とか知ったこっちゃねぇよ。オラ世の中に混乱を撒き散らしてぇんだ。この世の中を変えたい気持ちだけは誰にも負けません!(マニュフェスト)
「いやもうほんとにかんべんしてつかぁさい……」
「まーた脇道にそれてるって。じゃ、本題の悩み解決行ってみよう」
「この状況の解決方法が一番知りたいんですけどねぇ!」
それは諦めてほしい。
「ああ……」
おいおい。おいおいおいおい。
何やってんだあの馬鹿どもが。
「こりゃトラウマになるわ」
天童院のクソガキが。小物の討伐に大層な式神出して、しかも善良な祓屋を巻き込むとは。
お仕置きが必要だな?
「Vtuberは楽しいから続けたいけど、それはそれとしてトラウマの克服もしたいわけだ。任せてほしい、後日一緒にあの馬鹿双子しばきに行こう」
「しばき……えっ?」
「本当に申し訳ない。いくら出て行ったとは言えこれは完全にうちの家の落ち度だ。きっちり落とし前はつけさせるから安心してくれ」
「えっあのぅ……それってもう一度あの人たちに会うってことですか……?」
「大丈夫大丈夫、ちょっとキツめにしばくだけだから。隣で見てるだけでいいから。それで心の傷も癒せるから。ついでにしばいてる様子も配信してオカルティックを世に知らしめていこうぜ!」
「いやいやいやいやいやいや」
実写による現実味のないバトル。CGじゃ再現不可能なレベルの戦闘を見せつけてやろうや……
「というわけで今度実写コラボ配信しましょうね!相談終了!」
「ちょっ」
「はいゲストの蘇我山勝さんでしたありがとうございました〜。私はしばらく根に持ちます、そういうタイプなので」
:なんかすごい勢いで実写コラボ決まってなかった?
:オカルト映像が実際に見られる……ってコト!?
:よくわかんないことがよくわかんないまま終わった
:双子って何?そもそも天童院って何???
:なにもわからない
:トラウマってなんやねん
:置いてけぼり感がすごい
:よく考えたらこの企画意味不明だろ
まだ桐ヶ崎さんキレてるのおもろいな。いやしかし今のところなかなか上手く解決できているのではないだろうか。蘇我山さんの方もこの俺が直々に動くとなれば解決したも同然よな!
その後も次々と華麗にいろんなVtuberの悩みを解決していった。流石よな。
「太るの気にしてるなら毎日夜食でドーナツ食べるの普通にやめた方がいいんじゃねぇかな」
「うぎゃー!リアルな暴露やめろ!!!」
「霊感なんてない方がいいよ。逆に霊感0過ぎて霊からの干渉跳ね除けてるからお得じゃん」
「はぁ!?ウチは一向に霊能力者なんだが!?!!」
前半2人に比べて内容が薄いから割愛割愛。
「はい、お疲れ様でした。以上で今回のコラボ配信は終了となります」
:前半と後半の差よ
:ドーナツ・タベロナさん……
:いやー0能力者は本当に0能力者でしたね
:蘇我山との実写コラボ配信って本当にやんの?
:まあ前半はよくわかんなかったから
:オカルト割と普通に信じそう
:天童院家ってなによその女!
「コメント欄も大盛り上がりですね……。
「でもよく考えると視聴者に悩みの内容が伝わらないの普通に企画としてアレだったよな」
「盛り上がれば全てヨシ!ではないでしょうか」
心強い言葉だ。いやほんと。
「一応今後も様々な形でコラボして行きたいと思ってたのですが、なんかとんでもない速さで勝くんとの謎コラボが決まりましたね。というかしばくってなんですか?あんまり暴力的なのはちょっと……」
「大丈夫大丈夫、心をへし折るだけだから。面白い内容になると思うぜ?本物のオカルト映像見せたらぁ」
:こちらの方で映像を確認させてもらえるならOKです。念のためスタッフも何名か同行します
「コメントでうちのスタッフから爆速で許可降りてますね」
「このフットワークの軽さはどうなんだと思わなくはない」
「面白いことに貪欲なんですよね、うちの会社。良くも悪くも」
その姿勢は見習って行きたいけどオカルトに安易に手を出すとこえ〜ぞ〜。俺が言えたことじゃねぇな!
「というわけで天童院総と」
「桐ヶ崎峰のコラボ配信でした!ご視聴ありがとうございました!」
無事にコラボ配信が終わり数日後。
「おーフォロワー増えとるわ」
初期とは比べ物にならないくらい増加している。ネット記事や周りの先輩のおかげだな。
掲示板でも最近頻繁に話題に上がっているようだし、このままいけば普通に収益化も通りそうだ。順調順調。
さーて次は蘇我山さんと実写コラボだ。半ば無理やり取り付けたようなものだが、これも彼のためだ。もちろん受け入れてくれるだろう、うん。
というわけでさっそくコラボの準備のために蘇我山さん宅のインターフォンを鳴らす。
「はぁ〜……」
【コラボの件について話し合いましょう】
【いや勝手に決めたのは申し訳ないけど大丈夫だって!盛り上がるって絶対!】
【トラウマの方も治せるからやろうよ〜〜〜コラボやろうよ〜〜〜〜〜】
「なんでこんなことに……」
とんでもない後輩から連投で届くDMに辟易する。
いや勝手にめちゃくちゃなコラボ決めるなよ……そして事務所も許可するんじゃねぇよ……
リビングのソファーの上で寝転ぶ。あーもうやだやだ。オカルトには関わりたくないんだって。
【いや復帰はしたいけどトラウマが邪魔してるだけでしょうに】
「当たり前に会話してくるんじゃねー!」
怖いわ!
【その気になれば星の裏側の砂粒の気持ちまでバッチリ見えまっせ】
砂粒の気持ちってなんだよ……あまりにも化け物すぎる……本当かどうかはしらないが、少なくともかなり離れた範囲からの千里眼や読心くらいは当たり前にこなすあたり並の術者じゃない。
こりゃ天童院のトップって話もあながち嘘じゃないかもな……あー怖い怖い。絶対返信もコラボもやらねぇ。
【返信してくれないのが悲しいので今家の前まで来てます】
「……はっ?」
えっ嘘でしょ?怖い怖い怖いまじで?
と思った瞬間にインターホンが鳴り響く。
「DM無視しないでくれよォ蘇我山せんぱ〜い」
「ひっ(脈拍停止)」
気を失いそうになるが、グッと我慢する。こいつ好き勝手してんじゃねぇぞ!
「インターホン鳴らしたんならわざわざ神通力で耳元に声飛ばしてくるんじゃねぇよ!!!」
「いやどうせ出てくれないでしょ?だからこうやってお話しするしかなくてぇ……」
「わかった!!!わかったよああもう!!!そこらへんのファミレス行くぞ!!!」
「やった〜うれし〜」
こいつどこまでもめちゃくちゃやりやがって……!一回先輩として説教してやらぁ!
気合いと怒りと反転したストレスによって一気に着替えを済ませ玄関の前まで行く。あんまり調子乗ってるんじゃねぇ!
むしゃくしゃする気持ちをそのまま乗せてドアを開くと。
「やっほー蘇我山先輩。すまんねこんな強引なやり方しちゃって。でもこうでもしないと先輩このコラボ受けてくれなくてさぁ」
力そのものが、顕現していた。
溢れんばかりの霊力。恐ろしいほどの速さで体内を循環するオドの流れ。いっそ笑えるほど蓄えられたチャクラの渦。
古今東西ありとあらゆる力が、エネルギーが、廻っている
「おっと。そこまで見えるのか、すごい目だ。申し訳ない、隠すわ」
ふっ、と。その気配の全てが消える。
今、自分が尻餅をついていることに気がついた。汗がどっと吹き出す。
なんだ、これは?
「これでも人間のつもりだよ。あんま怖がらないでくれ」
はっとする。意識がはっきりしてくると、申し訳なさそうに眉を顰めて控えめに笑う男が目の前にいた。
その容姿は──容姿は……
「お前Vの立ち絵そのままじゃねぇか!リスクヘッジどうなってんだ!!!」
「おっいいツッコミ。いやこれしか思い浮かばなかったんだわ!」
一転してケラケラ笑う優男の姿に毒気を抜かれる。
はぁ〜。とんでもないことになっちまった気がする。
「もういいや……。ファミレス行こうぜ。先輩として奢ってやるよ」
「マジで!ありがたすぎる……!崇め奉っていい?」
「やめんかい」
「それで。コラボ配信についてだが」
「はぁ〜ハンバーグうめぇな……マジですごいよなこの食い物……作ったやつは俺と同じくらい天才だ……」
「話聞かんかいコラ」
目の前でもりもりハンバーグを食う馬鹿を見つめる。
やっぱどこからどう見ても立ち絵そのまんまだよな……無駄にイケメンなのもムカつくし。なんなんだこいつは。
「聞いてる聞いてる。コラボの内容に関してでしょ?内容は考えてるからこれを詰めていこうぜ」
「いやまず受けるかどうかについてだな……」
「先輩は受けるよ」
ハンバーグを食う手を止めて、じっと見つめてくる。
真剣な表情で、当たり前を語るように。
「本当はトラウマを克服したいって心の底から願ってるから。その可能性が少しでもあるなら先輩は断らないし断れねぇだろ」
「……そこまで分かってるなら、こんなめちゃくちゃな方法でアポ取ってくるんじゃないよ」
「これが一番早いし一番良い方法だったんだよ。許してくれ」
軽い言葉とは裏腹に、割と本当に申し訳なさそうな顔をしている。……よくわかんないな、こいつ。
「まずトラウマについて確認させて欲しい。一応知ってはいるが、先輩の口から聞いておきたい」
「勝手にホイホイ他人の過去を見るな。……はぁ」
しょうがない、か。解決する可能性が少しでもあるというなら、頼るしかない。
Vtuberは楽しいが……霊能者としての仕事も、続けたいから。
「あれは5年前のことだ」