その日の夜、俺は活動を開始した。何をしているかって?ただちょっと神器を解放しながら街を練り歩いているだけですって。勿論、薄暗く人気のない路地裏とかに限る。そもそも俺の神器である
イッセー達は徹夜でAV鑑賞会するらしいが、光熱費の支払いとか手続きが色々有るからと断った。一人暮らしの身の上で面倒事が多い事は理解して貰えたのだ。手続き期限が近いのは嘘じゃ無いしな。そんな益体もない事を考えると背筋に冷気を感じた。
「妙な獲物を持っているな貴様。誰の差金か応えろ」
見た目は紺色のトレンチコートを着た男だが、敵意とか殺意をビンビンに感じるので堅気じゃない。ヤーさんが俺の神器を見て妙とか言うのもおかしいので人外確定。とは言え、俺の服装にツッコミを入れない奴がまともとも思えない。こういう戦闘の時は気合を入れる為に黒スーツの上下で揃え、エナメルの靴とグラサンまで完備のマフィアスタイルにしている。ああ、普段の服装は適当なトレーナーとジーパンだからな、地味で目立たないので勘違いしないでくれ。
「質問を許した覚えは無いぞ堕天使。面倒だから何処へなりとも消え失せろ」
「崇高なる堕天使、ドーナシーク様に向かってその口の聞きようは何だ!」
このナルシストはやっぱ堕天使か。煽り耐性0とは……何と言うカモでしょう。バサッと黒い羽が背中に現れた所を見るに収納自在か。いや、待て……はぐれ悪魔でもそうだったが外見ぐらい変えられるんだよなコイツラ人外は。つまり……つまり、イッセーに告白したとか言う堕天使の正体がこの男の可能性が有るのか!
「ドーナシークと言ったか……神器を持った奴が狙いなんだろ?」
「ほう、あのターゲットを知っているとは。生かして帰す理由が無くなったな」
イッセーの不憫度が上がったぞ。初めての彼女、ニューハーフかよ。しかもターゲットって事は本気でイッセーを狙っていると……マジで可哀想なんだが。ホロリと涙が零れた。
「泣いているのか、臆病者を相手にする時間も勿体無いんでな、死ぬが良い」
何か勘違いした変態の手から光が溢れだし、槍を形取る。見ただけで頭の危険信号が五月蝿いから、喰らったら確実に死ねる。そんな危険物を投げ付けて来たので必死に避けながら前に出て、刀を斬り上げる。狙いは当然首だが、後ろに下がられたので当たらない。第二目標の槍を投げた無防備な右手を肘から斬り落とせたのでまあ良しとする。
「何だと!?貴様、何者だ!」
「質問を許した覚えは、無い」
実に馬鹿馬鹿しい勘違いをする奴だ。敵にヒントをあげる訳無いじゃないか。追撃の為に更に前に踏み込む。傷付いた右腕をかばう左手は手首の辺りで切り落とす。更に足を狙って達磨にしても良いんだが、光の槍を喰らったら致命傷なのでさっさとトドメを刺す。
「ぐあっ」
正面から首を突き刺し、引き抜きながらの横回転。首がポロリと落ちて逝ったら光の粒子になって消えてしまう。はぐれ悪魔もそうだったし、死体が消えるのはデフォなのかね?今回の収穫はドロップ品?の黒い羽が1枚だ。初ドロップが微妙な品だ。いや、ドロップじゃなくて死体が少し残っただけなんですけどね。
ん?手際が良すぎるって?とうの昔に童貞を捨てているから当然だな、但しバ○的な意味での童貞だ。初回のはぐれ悪魔の時は殆ど用意が無くて全治数週間の複雑骨折を負ったりと残念なデビュー戦だった。性的な童貞はだいじなもの宜しく捨てられないので困っているよ。
「お仕事終了っと」
『オイ、俺ハ暴レタリナイゾ』
「五月蝿いぞ糞蛇、人間の俺じゃ、あの程度の堕天使で十分キツいっつうの」
『人間ハ軟弱ダナ、ソレデハ俺ノ力ヲ使イコナセナイゾ』
「無茶言うなやボケ」
俺の脳内に直接話し掛けて来るこのウザい奴は
俺が廃人にならなかったのは幸運が積み重なった結果論に過ぎない。身近に紫藤というエクソシストがいた事で派手に動けなかった事、格上の神器を宿したイッセーの接触のおかげで消えかけていた俺の意識が浮上出来た為だ。エクソシストの方に感謝していないのは、邪龍を宿しているのがバレた時点で俺を迷わず斬る狂信者だからだ。後で聞いたが、何度か聖剣を隠し持って来ていたらしく、命の危機だったそうだ。
精神世界で何度も死闘を繰り広げたおかげで、今では力を貸してくれる様になったが、基本的に暴れたいだけの糞蛇だから信用に値しない。神器が本気の力を発揮する
基本が一確の死にゲーをどうにか生き残って安堵したのか冷や汗が流れる。あいつが油断も慢心も無く襲い掛かって来たら俺は抵抗出来たか?勝てるかじゃなくて、助かるかどうかの瀬戸際だ。そもそも飛ばれてしまっただけでも、俺には攻撃手段が無いので詰む。
ああ、リアルは何て死にゲーなんだろう。だが今回は割りかし楽だったと言える。神器の性能をまるで活かす事も、幾つか用意した小細工を披露する事も無く倒せてしまった。これならまだ本能で襲い掛かって来る様なはぐれ悪魔の方が怖い。
俺の神器は普通に武器として見ると頑丈だが、シャムシール自体はそんなに強くない。中にいる糞蛇曰く、自分より格上に五大龍王、その上に二天龍、更にその上に神様とかを一蹴する次元の違うドラゴンが二体いる。つまり、それなりのランクでしかないらしい。人間とか並の人外よりは強いんだろうが、負けて封印された訳だし、最強とか目指す気にもなれない。実際、暴れられればそれで良いとかいうタチの悪い馬鹿なので邪龍と称されている。俺の事を乗っ取ろうとした理由だって早く暴れたいからだったし……そんな理由で乗っ取られてたまるかってんだ。今でも夢の中でちょっかいを出してくるせいで、不眠症に悩まされていて忌々しい。
話を戻すと、常に刀身から滴っている毒の追加効果こそが本命で有り、今回の様な武器の強さを全面に押し出した戦いは向いていないんだ。理想としては戦わずしての毒殺や、背後から奇襲しての暗殺とかのアサシンの戦い方になる。ただ、敵の情報が不明確な上、力量に差が有り過ぎると毒が効かないらしいし、身体能力をもっと鍛えないと暗殺すら気取られる。
だから、相手から少しでも情報を搾り取れる様な詐術と、煽る事で激昂させて視野狭窄に陥らせる事に活路を見出したのが俺の戦闘スタイル。煽りの基本は毒を吐き、プライドの高い相手には無視も効果的と言った感じで他人を煽ったりプライドを傷付ける術だけが得意になってしまった。しかも趣味になっている辺り、俺ってほんとクズ。情報を搾り取る為に今ある情報からの推測とカマかけ、推測が間違っていても相手の反応から修正すれば良い。後は油断して貰える様な演技が出来れば良いが、今の所慢心した奴としか会ってないので要らないかもな。
滴っている毒の性質は多少なら調整出来るので、基本的には再生を阻害する
だから俺が勝てない相手は、邪龍より素で強い奴や物理特化の脳筋になる。神器の力を使っている以上、中の邪龍より強い相手に勝てる筈も無いし、そんな奴には毒も効かない。物理特化の脳筋の場合、俺には一撃で倒せる火力が無いし、手加減されても一撃喰らったら即死の紙装甲なんだよ。さっきのドーナシークだって、腕を斬り落とせなかったら俺、死んでるからね。光の槍なら確実に即死、殴られただけでも一発で昏倒するぐらいは有り得る。骨の数本で済んだとしても、刀を全力で振るえない時点で勝ち目が無く、実質致命傷である。
――ああ、願わくばイッセーがこんな世界に足を踏み入れるまで今暫しの猶予があらん事を。
イッセーのハッピーエンドは保証します。克也は未定。
克也は神様転生のチートや原作知識の類も無い人間の高校生です。
故に、推理や断定している内容にも間違いが普通に含まれます。
正解は大半が原作に有りますが、独自設定・解釈で変更された内容も有ります。
オリ主を始めとしたオリキャラ、設定資料の少ない所に対して捏造が結構……。
気合と根性によるバトル物特有のご都合主義は流石に見逃して。