十字の爪を食い込ませ、壁や天井を這い回る。   作:リハビリ

4 / 6
第四話 VSヒョウタ①

 

 

 

 

 岩タイプのジムに相応しく大小様々ないわおの主張するフィールドを挟み、二人のトレーナーがボールを構える。

 

(結構、緊張するな……)

 

 ジムチャレンジ。本の中では幾度も読んだ上に、修行中に幾つかの試合を観戦したこともあるのだが、やはり自分が戦場に立つとなると別物なのだろう。

 

 観客席から伝わる期待とプレッシャー。

 空気の張り詰めるような緊張感。

 心の底から滾る高揚感。

 

 きっと、()()を制した者が勝者になり得る。俺は静かに目を閉じて、ゆっくりと息を吸い込んだ。───あと、シロナさんも見てるし。

 

「これより、挑戦者チャレンジャー・コウキ対ジムリーダー・ヒョウタのジム戦を行います! 使用ポケモンは2体のみ、道具の使用は禁止のシングルバトルとなります! 両者、準備は宜しいでしょうか?」

「オーケー!」

「了解」

「では、一匹目をフィールドへ!」

 

 その一言を皮切りに、モンスターボールとハイパーボールが投げ込まれた。

 

「貫け、ラムパルド!」

「任せた、エアームド!」

 

 俺の投げたハイパーボールから現れた鋼の武装鳥・エアームドは翼を羽ばたかせ、対する太古の化石獣・ラムパルドは着地と共に大地を揺らす。どうやら俺の願い通り、彼も本気で来てくれるらしい。

 

「─────それでは、バトルスタート!」

 

 叫んだのは、殆ど同時だった。

 

「『ストーンエッジ』!」

「『鋼の翼』で迎え撃て!」

 

 ラムパルドが大地フィールドを踏み鳴らし、幾本もの巌の剣がエアームドを刺さんとばかりに襲い来る。対するエアームドは硬化した翼を器用に使い『ストーンエッジ』を破壊しながら更に高く舞い上がる。とはいえ、ジムの天井は精々公営の体育館程度。逃げてばかりでは、間も無い内に『ストーンエッジ』に貫かれてしまうのがオチだ。俺が逡巡している間にも、フィールドは次々と隆起していく。

 

「逃げてばかりでいいのかい? 悪いが、ボクはそう甘くない」

 

 不敵に告げるヒョウタの言葉の奥には、まるで余裕さえ眠っているかのようで。

 

 ……いや、まだ慌てる必要はない。相手のペースに流されるな!

 確かに『ストーンエッジ』の逃げ場を失うリスクもあるが、主導権を持つのは依然こっちだ。刹那を見極め『鋼の翼』で、

 

()()───『もろはのずつき』!」

 

 刹那。ドン、と何かが破裂したような爆音が響く。俺が轟音に顔を歪ませるよりも早く、俺の視界には信じ難い光景が飛び込んできた。

 

「……は?」

 

 ()()()()()()()()()()()

 

 いや、いや……いやいやいや。おかしいだろ、どう考えても!

 

 錯乱する思考を無理矢理加速させ、エアームドにハンドサインを送る。直後、ラムパルドの頭蓋が『鉄壁』で鋼の膜に覆われたエアームドに肉薄し────鈍い音と共に、エアームドは天井に叩きつけられた。

 

「起きろ、エアームド!!」

 

 意識は取り戻したものの、方向感覚を失った様子のエアームドが重力そのまま真下へと急降下する。落下地点には『ストーンエッジ』の先端が今か今かと待ち構えていた。

 

「『ラスターカノン』」

 

 俺の指示を受けたエアームドはコクリと頷き、翼を畳んだ空気抵抗が最も少ない姿に変形する。そうして『鉄壁』で発生した鋼の膜が光り輝き、爆発した! バラバラに砕けた岩の破片を散らしながら、エアームドは岩肌の地面に着地する。

 

「へぇ……! 鉄壁のエネルギーをそのまま! やるね、キミ」

「そりゃ、どーも」

 

 ヒョウタの言葉に返答しながら、脳内コンピュータをフル回転させる。やはりラムパルドは100kg超えの重量型。あんな機動力、()()()()()使()()()()()到底不可能なのだが。この違和感を解明しない限り、負けてしまう。

 ふとラムパルドの方へと視線を向けると、何やら体表に傷がある様子が伺えた。

 

 ───────『ロックカット』か?

 ソレは、身体の岩を削ることで機動力を大幅に上昇させる変化技。ただ、使用した分だけ脆くなるという弱点も存在する。もし、そうだとするならば。

 

「エアームド、やれるか?」

『ぎゅぎぃ!!』

 

 頼りになる鳴き声を上げ、エアームドは翼をバサ、と広げる。俺の方を見るその瞳は「任せろ」と言わんばかりに鋭く光っていた。

 

「『鋼の翼』!」

「『岩砕き』!」

 

 互いのポケモンが巌を砕き、散らしながら肉薄する。翼と頭蓋が衝突し、混じり合い、ジム内には鋭い金属音と重い破裂音が木霊する。やがて、ラムパルドに背後を取られた瞬間、俺は腕を振り上げた。

 

「───! ラムパルド、一旦が」

「『燕返し』」

 

 幾ら『ロックカット』で機動力が上がろうと、ラムパルドの突進を途中で止めることなど不可能に近い。一歩下がろうとするも間に合わず、エアームドの翼が振り向きざまに腹部に叩きつけられた。鋼のエネルギーを纏っていない、ただの一撃。

 

 本来ならば痛くも痒くもないはずの一撃は─────、

 

『ぐ……らぅ……』

「ラムパルド!!」

 

 鎧の剥がれたラムパルドにとって、致命的な一撃と化していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「流石ね。やっぱり、()()()に似てる」

 

 クロガネジム・観客席にて─────見事にラムパルドを突破して見せたコウキを傍目に、シロナは嘆息していた。『鉄壁』を『ラスターカノン』のエネルギーに変換するコウキトレーナーの機転に加え、見事に再現してみせたエアームドポケモンの俊敏性。

 

 そのコンビネーションは、名実共に実力者であるシロナから見ても見事なものであった。それも、かつてシンオウリーグにてシロナを破った年端も行かない少女を想起させるほどに。

 

 ───()チャンピオンとして、彼が如何にしてヒードランを従えるのか。

 ───考古学者として、ヒードランがどれほどの力を秘めているのか。

 

 この時、シロナはいちトレーナーとしてこれ程ないまでに昂る感覚を覚えていた。

 

「本気のジムリーダー相手に何処まで戦えるか……。是非、見せてもらおうかしら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

「ラムパルド、戦闘不能!」

 

 その宣言を耳にして、思わず身体の力が抜けそうになる。エアームドの方を見やると、いつものように涼しい表情で空を仰いでいた。かなり消耗しているだろうに図太い奴だ。

 

「エアームド、戻ってくれ」

『ぎゅっ!?』

 

 交換という選択が予想外だったのか、若干のキャラ崩壊を招きながらボールへ戻る。『鉄壁』で軽減されているとはいえ、ラムパルドの頭突きは規格外の火力ゆえに、休んだ方が勝利の為にも、エアームドの為にも繋がるだろう。

 

「いいのかい? キミのエアームド、まだ体力が残ってるみたいだけど」

「試合中の交換は挑戦者チャレンジャーの特権なんで。惜しみなく使わせてもらいます」

「……猪突猛進ってカンジでもないワケだ」

 

 互いに所定の位置へ戻り、二つ目のボールを構える。観客も含め、フィールドが緊張で張り詰めた雰囲気に覆われる。挑戦者チャレンジャーがこのままジムリーダーの切り札を落とすのか。はたまた、ジムリーダーが挑戦者チャレンジャーに華麗な大逆転を果たすのか。

 

 この場の全ての人間が魅入られたこの一戦の行方は。

 

「ヒードラン、キミに決めた!」

「押し切るぞ、バンギラス!」

 

『ごぽぼぽぼ!!!』

『ぐがぁ!!』

 

 二匹の獣に委ねられた───────!

 

 

 

 

 





エアームド(Lv67)
ハードマウンテンで仲間になった。
若干ナルシスト気質。
背中に人間を乗せることを意地でも拒むほどのプライドの持ち主。



評価・感想・その他諸々が執筆のエネルギーになりますので宜しければ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。