十字の爪を食い込ませ、壁や天井を這い回る。   作:リハビリ

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必ずと言っていいほどヒードランの鳴き声がここすきされてて笑ってしまう


第五話 VSヒョウタ②

 

 

 

 ボクは拳を握り、相手の動きを慎重に見極める。ジムリーダーであるボクでさえ一度も目にしたことがないポケモン──挑戦者チャレンジャーは「ヒードラン」と呼称していた──を相手に、昂る気持ちを抑えられずにいる。

 

 先に動いたのは、挑戦者チャレンジャーだった。

 

「『火炎放射』!」

 

 文字通り、直線状のブレスを発射する炎技────のはずなのだが、どちらかと言うと()()と呼ぶのが適切に見える。

 さっきのエアームドといい、凄まじいポケモン達だ! 一先ず防ぐのが最善だと考え、バンギラスに指示を送る。

 

「『砂嵐』で相殺!」

 

 地を踏み巻き起こした砂塵の球体が溶岩を取り込み、破裂音と共に霧散する。僅かに滴った溶岩が地に落ちると同時に、バンギラスが大きく右足を上げた。それが『地震』の予備動作であると察したらしい挑戦者チャレンジャーは素早く指示を送る。

 

 ────瞬間。地面を踏み抜いたバンギラスを中心に波打つように大地が揺れる。対するヒードランは『炎の渦』で自身を巻き上げ、その巨体を宙に浮かせる。『地震』の膨大なエネルギーは行き場を失い、先ほどの『ストーンエッジ』により乱立した巌が次々と倒れ砂嵐を引き起こす。

 

(ここまでは、想定通り!)

 

 視界が不明瞭になったフィールドの中、バンギラスの影が消えた。技の名は『穴を掘る』。ポケモンバトルにおいてトレーナーは"目"。それを奪ってしまえば、重量級のポケモンバンギラスの不意打ちも容易く通る!

 

「その場で『ヘビーボンバー』!」

 

 刹那。ヒードランの真下の地面にヒビが入る。重機の如く勢いで現れたバンギラスは『ヘビーボンバー』で落下するヒードランと衝突した。───まさか、見破られたのか!?

 

 砂嵐の中でも的確に状況を判断する観察力。やはりと言うべきか、ポケモンだけでなくトレーナーも中々の強者らしい。ともかく、相手が鋼技を持っていることは分かった。あのポケモンのタイプは炎・鋼と言ったところか?

 

 殴り合いでは不利になると予想し、この場はもう一度バンギラスを穴の中へ────、

 

 

「逃がさねーぞ」

 

 

 途端、背筋がゾクリと冷える。獲物を捉えた猛獣に睨まれたような感覚に、脳内がアラートを鳴らし始めた。ボクのジムリーダーとしての勘が騒ぐ───今は、()()()()()()()()()

 

「『ロックカット』ォ!!!」

 

 身体の表面の岩を分離させ、機動力を底上げしたバンギラスがヒードランに肉薄する。防御力は落ちるけれど、どちらにせよ当たった時点で致命傷。ならば避け続けるか相殺するしかない!

 

「速攻だ『アイアンヘッド』!」

 

 ヒードランの居たはずの地面が抉れ、その巨体の姿が消える。

 

(消えた!?───いや、違う!)

 

 恐るべきスピードで肉薄してきたヒードランから軽い身動きで数歩距離を取り、『ストーンエッジ』の壁で攻撃を防ぐ。一撃で穴が開くほどとは……予想外だが、問題ない。

 

 ラムパルドの攻撃的なソレとは違い、バンギラスの板状の巌は防御に適している。さぁ、挑戦者キミは対応出来るかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

普通シンプルに面倒臭い……!)

 

 俺の目の前に広がるは、まるで森林の樹木のように入り乱れ視界を防ぐ岩の砦。『ストーンエッジ』で形作られたソレは、明らかに岩タイプの独壇場。頼みの綱の『マグマストーム』もこんな状況では当たる訳がない。

 元より、使い勝手が悪すぎんだよあの技は……!

 

『がうぅ!!』

 

 岩の影から現れた巨体を捉え、ヒードランに回避の指示を出す。バンギラスは『ロックカット』で防御力が下がっているのだが、迂闊に『アイアンヘッド』なんて打ってしまえば崩れた岩の下敷きになるのがオチだ。

 

 バンギラスが一撃離脱ヒットアンドアウェイの容量で小刻みな攻撃を仕掛けてくる。なんとか岩を這い回ることで避けているが、限界はそう遠くない。

 

「さぁ、ラストスパートだ! 『かわらわり』!」

 

 俊敏な動きで現れたバンギラスの拳が、最後の一撃とでも言わんばかりにヒードランの脳天めがけて振り下ろされる。───いや、そう来るなら……()()()。回避行動を取ろうとするヒードランに素早く指示を送った。

 

「ストップ、動くなヒードラン」

 

 無論、ジムリーダーのポケモンが動かない標的に攻撃を外す筈はなく、鈍い音と同時にヒードランに拳が衝突する。相手にとっては、効果抜群の一撃が直撃するこれ以上ない好都合なシーンだろう。まぁ、ヒードランが怯んでいたら、の話だけれど。

 

 悪いが、俺のヒードランのボディはヤワくない。

 

 俺の意図に気付いたのか、ヒョウタが何かを叫んだ。……今。

 バンギラスが振り下ろした拳を戻し、後ろへ飛び退がる。言うなれば、バンギラスが両足を地面から離す瞬間、どう足掻いても回避行動が取れない瞬間。

 

 時間が粘性を帯びるのを感じる。

 目を見開き、コンマ単位で時間を計る。

 バンギラスの踵が僅かでも岩肌から離れた瞬間。

 

「ッ、バンギラス!!」

 

 例え気付いても、もう遅い。

 命中率・使い勝手ともに最低レベルだが、それを覆すほどの、場合によっては『破壊光線』をも上回る超火力。きっと、ヒードランにしか扱えないであろうその秘技────俺は張り裂けんばかりにその名を叫ぶ!

 

「『マグマストーム』!」

『ごぽぼっ!!』

 

 バンギラスの真下の地面に、ヒビが入り割れ始める。

 

 ピシ。

 ───一秒。バンギラスが片足を地面につける。

 

 ピシピシ。

 ───二秒。両足を地につけ、踏み込む。

 

 ピシピシピシ。

 ───三秒。バンギラスが勢いそのままに両足を離して。

 

 その巨体は、轟々と燃え盛る溶岩マグマの嵐に包まれた。

 

「バンギラス、戦闘不能! 勝者───挑戦者チャレンジャー・コウキ選手!!」

 

 

 




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