どうするGQuuuuuuX   作:イナバの書き置き

11 / 25
敗者たちの栄光

『ぅっ……わっ……!?』

 

 成る程。

 マチュは、思ったより「勉強」してきたらしい。

 牽制の為に三連射、動きを誘導する為の三連射。

 ランチャーシールド裏に懸架されている三連装ミサイルでの十八番を模倣したバズーカの連射を、ジークアクスはいとも容易く回避していく。

 筒抜けの通信を通して聞こえる声色は危なっかしく、恐らく考えた動きではなくただの反射だろうが──回遊する魚のように宇宙を泳ぐ様は、流石ジオンの最新型と言ったところか。

 マチュの直感的な操作に追従する機動性とオメガサイコミュの能力には驚かされるばかりだ。

 だが──あまりに直線的過ぎる。

 

「そら、()()()()()()()

 

 ジャイアント・バズの残弾四発、その全てをジークアクスの移動予測経路から()()()()()

 けれど、威圧はそのまま。

 あくまで真っ直ぐ動き続ければ辛うじて当たらない、ギリギリの──回避行動を取らないのが正しい避け方になる位置を狙って、弾を置く。

 機械による弾道予測を信じれば、当たらない筈の外れ弾──しかし、相手が素人のニュータイプならどうだろうか。

 

『わああ!?』

 

 敏感なニュータイプは敵意に対して過剰に反応してしまう──機動を変えたジークアクスの肩を弾が掠め、爆発の光が連鎖して花開く。

 ベテランやエースには通用しない、敵意で回避を誘発して本来無視して良い攻撃による被弾を誘う戦法。

 それでも咄嗟にシールドを構えて爆発から機体を守っている辺り、ここまで連勝し続けてきただけのことはある。

 だが、衝撃までは防ぎきれなかったのか──ジークアクスは吹き飛ばされ、姿勢を立て直すのに手間取っているようだった。

 その辺りは、素人感がまだまだ抜けていない。

 姿勢の制御と回避行動は同時に行わなければ、実戦ではいい的だ。

 そんなどこか危なっかしいマチュの様子に、「上手く飛べるよう、手伝ってやるか」と操縦桿をゆっくり倒して──慌てて引き戻す。

 

「……馬鹿。何やってるんだ、俺は」

 

 苛立ちのあまり、思わず膝を殴りつけてしまった。

 そう、今の俺はマチュにとって倒さなければならない「敵」だ。

 そしてバイタリティ溢れる隣人の少女でもなければ、小柄で可愛らしいアマテ・ユズリハでもなく、彼女はクランバトルのマチュなのだ──それなのに、普段の感覚でつい手助けしようとするなんて我ながらどうかしている。

 

(一番覚悟が出来ていないのは、俺じゃないか……)

 

 マチュは人殺しをする覚悟はできていないだろうが、自分のモビルスーツを手足のように扱い、シュウジと地球を目指す夢に邁進している。

 シイコさんとシュウジは、言わずもがな──視界の隅で繰り広げられる目にも止まらぬ高機動戦は、相手の命を奪うことも厭わぬ本気の闘いだ。

 それに比べて、俺は何だ。

 マチュがこの先やっていけなさそうならジークアクスを破壊するつもりで来たのに、中途半端に手を抜いて……逆に助けようとするなんて腑抜けにも程がある。

 これではもし今後彼女と共闘する機会があったとしても、足を引っ張るばかりで何の支えにもなれないだろう。

 そんな奴が試すとかどうとか、言っていられるのか。

 

「甘えは、捨てろ」

 

 口に出して反芻する。

 そうだ、甘えは捨てなければならない。

 ここは地獄の宇宙世紀──アマテやタマキさんとの温かな交流ですっかり忘れかけていたが、何時何処から死亡要因が飛び出してくるか分からない戦争と闘争に満ち溢れた世界なのだ。

 そこで一度モビルスーツに乗ってしまった以上、生半可な戦い方では生き残ることも誰かを生かすことも出来やしない。

 五年間ずっと隠してきた「切り札」は切らずとも、俺は殺す気でマチュに挑まねばならないのだ──決して、挑まれるのではなく。

 

 だから、捨てる。

 心に残った甘ったれな自分を、弾切れになったジャイアント・バズと一緒に投げ捨てる。

 代わりにマニュピレーターで握り締めるのは、灰色の長槍──ビーム・ベイオネットの折り畳まれた柄が展開し、形成されたメガ粒子の赤刃が穂先を描く。

 此処から先は、ジークアクスに傷一つでも付けば「流れ」に重大な影響を齎すだろう。

 だが、今更それを躊躇うものか。

 

(案の定あちらに割り込む余地は無し、か)

 

 ちら、とMAVの方に意識を傾ければ、簡易ガンダムと本家ガンダムの戦いはいよいよ異次元の領域に突入していた。

 赤いガンダムを起点とするようなゲルググの機動からして、恐らくワイヤーか何かを引っ掛けて翻弄しているようだが、シュウジの方もオールレンジ攻撃染みたシイコさんの強襲を紙一重で捌き続けている。

 その無茶苦茶振りに、少し安心した。

 覚悟は決まったが、ユニカムと本物のニュータイプの間に割って入るのは流石に不可能だ──ただ目の前の相手に集中出来る。

 本気で、倒すのだ。

 どういう結果で終わるにせよ──そうしなければ、俺もマチュも前には進めないだろう。

 

 

「行くぞ、マチュ」

 

 

 今度こそ操縦桿を思い切り倒す。

 次の瞬間、大推力スラスターが生む圧倒的な加速によって俺は背中をシートに押し付けられていた。

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

 

 

「ぐっ……んんんっ!」

 

 右に左に、全身に重くのしかかるGに呻きながらも、アマテ──マチュは、怒涛の勢いで繰り出される赤刃から目を逸らさなかった。

 否、逃す訳にはいかなかった。

 

「試すって、言われたってさぁ……!」

 

 ゲルググとガンダムの戦闘を軽業師同士の曲芸合戦だとするならば、ジークアクスとギャンのそれは互いに押し引きを繰り返す演舞と表現するのが適切だろうか。

 絶えず目まぐるしく攻守が入れ替わり、宇宙と言う広い空間にあって超至近距離でギリギリの接近戦を挑む彼らに対し──マチュとミカボシは、付かず離れずの距離で互いの武器を打ち合わせる、端的に言ってしまえばスローペースな戦いに臨んでいた。

 だが、それは決して「生温い」戦いではない。

 

「いきなりっ、こんなんじゃ、無茶苦茶じゃん……!」

 

 右、左、右と見せかけてまた左──ビーム・ベイオネットのリーチと流体パルスアクセラレータの瞬発力から繰り出される神速の刺突は、マチュに反撃を許さない。

 リーチで大幅に劣るヒートホークで長槍の間合いに踏み込むことは、即座に頭部を刎ね飛ばされることを意味していた。

 選択肢は、防ぐか避けるかの二択のみ──けれど、それを時間一杯まで続けて引き分けに持ち込むのも現実的ではない。

 これまでの無茶振りを耐え、殆ど無傷で切り抜けてきた大型のシールドには既に幾つもの傷が刻まれ、そう遠くない内に崩壊するのは明白なのだから。

 少なくとも、「次」を考えている余裕などない。

 

(動画で見たのと全然違う……使()()()()()()()!)

 

 映像記録で見た時のミカボシは、明らかにベイオネットのリーチを持て余していた。

 長い柄に対してビーム刃の展開部分が穂先だけであるという点に馴染めず、間合いを計り損ねていたのだ。

 尤も、マチュだってこんな取り回しの悪そうな武器をいきなり渡されたって使えないだろうと思っていたが──それに比べて、今はどうか。

 

「鍛え直してきた……ってワケ!?」

 

 刺突の鋭さが違う。

 間合いの取り方が違う。

 これまで彼が得意としていた一撃離脱戦法を捨てた代わりに、よりベイオネットを扱うのに最適化された──まるで中世の槍兵のような物々しい戦い方が染み付いている。

 これを崩すのは容易ではない。

 それこそ、目で追うのも難しいほどの機動戦を繰り広げているシイコやシュウジであれば可能だろうが、慣れてきたとは言えまだ素人の域を出ないマチュがこれを跳ね除けるのは至難の技だろう。

 しかし、それは()()()()()()

 

「何とか言ってよ、ミカボシ!」

『──』

 

 オメガサイコミュが裂帛の気合を読み取り、ヒートホークで受け止めた長槍をかち上げる。

 このバトルが始まって以来、初めてのまともな反撃──その根源は青年に対する強い怒りにあった。

 

「そうやって、黙ってばっかだし!」

『──』

 

「いきなり試すとか言い出すし……!」

『──』

 

「もう、訳分かんないんだけど……っ!」

『──』

 

 だが、通じない。

 手斧を振り下ろせば避けられ、薙げば盾で防がれ、挙句の果てに黙秘は続行。

 まるでマチュの怒りを何とも思っていないような、守勢に回った途端のらりくらりと攻撃を躱わす姿が更に彼女を苛立たせる。

 

 ──別に、クラバの相手として出てきたのはいい

 

 ミカボシは誰彼構わずチームを組んで出場する「クラバ荒らし」なのだし、ギャンなんて特殊なモビルスーツを使う以上、会社の意向に逆らうことも難しいのだろう。

 実際、映像記録の中には「相性の悪い相手と組んだんだろうな」と思わせる動きが何度か見られたし──まだ十七歳で青春真っ盛りなマチュも、彼が抱える世知辛さについては薄らと理解していた。

 それでシイコのMAVになったのは物申したくなる部分ではあるが、まだ腹の内に沈めておくことも出来る。

 

 ──試されるのも、別にいい

 

 ミカボシが自分の動向を常に心配していたのは、如何に無鉄砲なマチュとてよく知っている。

 無理をしてまで明るく振る舞ったり、態々カネバンに現れてアドバイスをくれたり、普段は全然飲まない酒を飲んで酔っ払ったり──裏社会に踏み込んだ自分のために気を揉んでいるのは一目瞭然だった。

 だから、此処から先やっていけるのかクランバトルで試す、と言われればマチュも自信満々で「負けないから」と答えただろう。

 問題は、だ。

 

「何でずっと黙ってんのさ……!」

 

 突き出された穂先を受け止めたシールドが、ついにバキバキと音を立てて中ほどから破断する。

 残ったのは手元側の四割程度だが、そんなことはマチュの頭の中にはなかった。

 そう、ジークアクスはベイオネットを防ぐのではなく()()()()のだ。

 それはつまり、長槍の内側に潜り込んだということで──リーチの短いヒートホークなら、一方的に攻撃出来るということ。

 その決定的な勝機を見たジークアクスの右腕が、ぐわんと振り上げられる。

 

(そんなに話したくないなら、無理矢理にでも話す気にさせてやる──!)

 

 このクラバでぐうの音も出ないくらい打ちのめせば、秘密主義で肝心な所は臥せてばかりのミカボシだって全部吐き出してくれるだろう。

 別にそのような約束をしていた訳ではないが、勝者にはそのくらいの特権があったっていい筈だ。

 

「ぉおりゃああぁぁぁッ!」

 

 気迫と共に、一閃。

 ヒートホークが放つ橙色の軌跡が、ギャンの大袈裟な鶏冠目掛けて一直線に振り下ろされる。

 

(獲った────!)

 

 ベイオネットのリーチの内側。

 相手に組み付いた上で、まともに防げば盾ごとかち割るであろう振り下ろし。

 マチュのようなモビルスーツに疎い者でも分かるほど性能が高いジークアクスの一撃を、正面から受け止められる機体など存在しない。

 

 

 ──本当に?

 

 

 ぞくり、とマチュの背筋を悪寒が駆け抜けた。

 そう、違う。

 この程度でミカボシを、ギャンを倒せる訳がない。

 それだけの積み重ねが、彼と灰色のモビルスーツにはある──幾度もの海賊狩りを、クランバトルを生き抜いてきたミカボシを、()()()()()()()()()()()で倒せる筈がないのだ。

 そして、極限の集中によってスローモーションになった視界の中で、マチュは見付けた。

 円形のシールド裏に潜めた左手に、ビームサーベルのグリップが握り込まれているのを。

 普段はガンダムのように背部のラックにマウントしていたサーベルが一本、盾の裏に隠されていた──その事実を。

 

「────ッ!!」

 

 間一髪、反射的に仰け反らせたジークアクスのモニターを──マチュの視界を、収束されたメガ粒子の黄色い光が灼く。

 単に斬り上げれば良い分、大仰な動作を挟んだジークアクスよりもギャンの方が攻撃に必要とする動きは少ない。

 そして、流体パルスアクセラレータの機構を受けた瞬間的な加速。

 目にも止まらぬ、と表現すべき速度で懐からサーベルを発振する様は、西暦の時代劇に見る抜刀術によく似ており──V字アンテナを形成する頭部の拘束具に、僅かな切れ込みが入る。

 マチュの無茶苦茶な操縦に耐えてきたジークアクスに、初めて明確な傷が刻まれた。

 

『──やっぱり、避けるか』

 

 そして、届く声は思った以上に冷えていて。

 

(──()()()()?)

 

 頭部だけを狙ったのではない。

 胴体から頭部まで一直線に切り裂く攻撃をミカボシは何の躊躇もなく繰り出していた。

 無論、マチュが避けるのを前提としているが、逆に言えば避けなければ間違いなく死んでいた一撃。

 ジークアクスの操作性とマチュの目の良さがあって辛うじて回避可能な攻撃を仕掛けてくる。

 その冷徹さに、彼女は人生で初めて──これまでのクラバですら感じなかった、己の死を予感した。

 

(──なんで?)

 

 だが、それは同時に怒りの火種でもあった。

 

(──ミカボシは、味方じゃなかったの?)

 

 確かに、味方だと言った。

 昨日、自宅の前で彼はマチュの味方だと宣言した。

 なのにこうして敵対し、死の危険すら感じている。

 理屈の上では仕方のないこと、死闘に身を投じる覚悟の出来ていない自身の不備ではある。

 誰が悪いのかと言えば、殆どその場の感情に身を任せて動き続ける自分自身だと、心のどこかでは理解している。

 だが、それ故に────

 

「──ぅああぁあああッ!!」

 

 漏れ出た叫びは、悲鳴なのか絶叫なのかマチュ自身にももう分からなかった。

 嘘を吐かれた。

 何時もそこにあって、宇宙を見る窓の青年に否定された。

 そうしてぐちゃぐちゃになった感情のまま、マチュはギャンと切り結び──押し込まれる。

 

(──嘘、負けてる!?)

 

 マチュはモビルスーツに疎い。

 それでもジークアクスがザクなんかとは比にならないほど性能が高いことくらい理解している。

 だが──黙っていたのだから当然だが、ミカボシがギャンに向けた執念の強さを知らない。

 何度負けても、もう新造した方が早いくらい損傷しても、病院送りになるほどの重傷を負っても、尚「コイツで宇宙世紀をやっていく」と決めた彼が積み重ねた時間を。

 故に、単純な話として──機動の柔軟性や総合的なパワーで負けていても、()()()()()()()()()()()()()()()()()をマチュは知らなかった。

 

「────ッ!?」

 

 拮抗が崩れる。

 ギャンのスラスターが灼け付く勢いで猛然と噴射し、対等な鍔迫り合いを演じていたジークアクスを諸共押し出していく。

 どれだけオメガサイコミュに意思を飛ばしても、全身のスラスターを吹かしても、岩山のように聳えてほんの僅かも押し返せない。

 

 

「──ミカ、ボシぃぃッ!」

 

 

 マチュに出来るのは、怒りとも絶望ともつかぬ声で彼を呼びながら必死に抗うことだけだった。

 

 

 

▲▼▲▼▲

 

 

 

 シイコと赤いガンダムの死闘は、佳境へと突入していた。

 新型コーティング技術によって柔軟性を高められた筈の機体の端々が悲鳴を上げる。

 絶えず噴射し続けるスラスターは灼け始め、コンソールのそこかしこがアラートを吐く。

 そして何より、シイコ自身の身体がワイヤーを用いた複数回の急制動に耐えられなくなりつつある。

 事前の慣らしでは「衰えていない」と評されたが、逆に言えばそれは進歩していないということ。

 子を持ち、母となったシイコの肉体は乗機同様狂気的な機動に負け始めていた。

 

(このままだと、でも──)

 

 決着は、そう遠くない。

 ゲルググがスティグマ戦術に追い付けず自壊するか、シイコの体力が底をつくか──或いは、ガンダムのパイロットの集中力が途切れるか。

 だが、それは現実的でないだろうとシイコは思った。

 何せ戦端が開かれてからこれまで、ガンダムは幾度となく自身に引っ掛けられたワイヤーを使って強襲を仕掛けるゲルググと、ビームガンによる奇襲を紙一重のところで躱し続けている。

 並外れた操縦技術と、ニュータイプ的な感による超人的な察知能力──これらを総動員して、相手のパイロットは100機以上を撃墜したシイコの戦術を凌ぎ続けているのだ。

 時間が解決してくれる、という安易な考えは早々にシイコの頭から消え去っていた。

 何より、時間切れなんて決着は彼女自身が()()()()

 

 ──絶対に、勝つ

 

 これは純粋な私情による、個人的な戦争だ。

 今目の前にいるガンダムを消さないことには、シイコは前に進めない。

 戦争を忘れ、一人の親として大切な子供と向き合うには過去の幻影を振り払うしかない。

 最初から決着はガンダムが破壊されるか、シイコが死ぬかの二択しか存在しないのだ。

 

「──仕掛ける!」

 

 自分に発破をかけると同時、スロットルを全開に。

 視線を巡らせるガンダムの背後を取りながら、ビームガンを設置していく。

 そして、隠し玉の──三本目。

 左腕部から射出されたワイヤーが、ガンダムの背部装甲に食い込む。

 

「これは、避けられるかしら!」

 

 否、避けられる筈がない。

 上下からビームガンで挟み込んで身動きを封じ、ゲルググ本体は側面からビームサーベルを叩き込む。

 たとえ相手がニュータイプであろうが、常識的に考えて物理的に回避しようのないオールレンジ攻撃。

 だが────

 

(やっぱり、避ける────)

 

 モビルスーツは、人のカタチをしているが人間そのままの構造をしている訳ではない。

 稼働領域は人間と比較して大きく制限される──にも関わらず、ガンダムはその機体を捻って上下からの挟み撃ちを回避していた。

 しかし、シイコにとってここまでは想定内──本物のニュータイプであるなら、それくらいはする。

 かつてシャア・アズナブルがそうであったように。

 だから、三本目のスティグマという二の矢を用意して──強引な機動でゲルググは側面に回り込んだのだ。

 ただ、その代償は大きい。

 バキバキと耳障りな音を立てて過剰な負荷に耐えてきた左腕が破砕し、機体が慣性のまま押し流されていく。

 

「……っ、私のために死んで、ニュータイプ!」

 

 だが、そんなものはどうでもいい。

 腕部がどうなろうが、機体がどうなろうが、そんなものは全て関係無い。

 過去の遺物を、ニュータイプなんて世迷い言を、今こそ振り払うのだ。

 そんな気迫と共に、ビームサーベルを振りかぶり────

 

『──僕は、まだ死なない』

「──っ!?」

『ガンダムが、そう言っている』

 

 その刹那、シイコの脳裏に少年の幻影が焼きついた。

 赤い目をした、細身な彼が放つ異様な気配に一瞬だけ意識を逸らされた──シュウジには、それで十分だった。

 シイコがほんの僅かでも攻撃を躊躇えば、彼にとっては大きな反撃のチャンスとなる。

 

「……いない!?何処に────」

 

 ほんのワンテンポだけ遅れた斬撃──しかしその一瞬の内に、ガンダムは包囲から消失していた。

 同時に、背後からぬるりと姿を現す赤い機影。

 シイコがスティグマ戦術で散々やっていたように、センサーの死角を突いてガンダムはゲルググの背中へと回っていたのだ。

 彼女がそれに気付いた時には、もう全てが手遅れだった。

 

「ぁ────」

 

 コックピット背部へ無造作に突き付けられた、サーベルのグリップ。

 その基部にピンク色の光が宿ったかと思うと、収束された粒子の束となって装甲を溶解させ────

 

 

 

 

 

 ──横合いから一塊になって縺れ込んできたギャンとジークアクスが、ガンダムを撥ね飛ばした。




○ミカボシ・ツヅラ
三連射→三連射が鉄板コンボなニュータイプのなりそこない。
当初から対ニュータイプ戦を想定してギャンの改修や戦術の構築を行っているので、殺気フェイントだとかシールド裏のサーベルグリップだとか小手先の技は多い。
しかし当人の操縦技術は(海賊狩りやクラバによる経験積みを経ても)そこそこ止まりなので、シイコのようなスーパーエースやシュウジのようなマジモンニュータイプには及ばない。
とは言えギャンを上手く扱うことに対する執念は凄まじいのでビーム・ベイオネットへの苦手感はコソ練で克服した。

自分が一番覚悟出来てないと思ってるタイプ。

○アマテ・ユズリハ
本編四話だと置いてきぼりを食らっていたが今作ではミカボシが相手なのでガチンコ勝負をする羽目になり、初クラバで感じる筈だった戦いの恐怖をここで知ることになる。
ミカボシが仕掛けてきた理由などに理解は示すがそれはそれとして「味方って言ったじゃん!」とブチ切れ気味。

自分が一番覚悟出来てないと思ってるタイプ。

○シイコ・スガイ
概ね本編通り。
ただし死ぬ寸前でギャンとジークアクスがガンダムに追突する事故があったのでコックピットから放り出され、ゲルググの爆発に巻き込まれて瀕死の重傷を負う程度で済んだ。

覚悟ガン決まりなタイプ。

・ジークアクス
可愛い女の子が乗り込むとキラキラしちゃうアイツ。
本編では最新話(五話)までビームやらマシンガンやら様々な攻撃に曝されて未だ無傷という驚異的な性能を見せるシールドだが、本作ではここで殉職。
加えてビームベイオネットの攻撃で本体にも多少傷が付いている。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。