どうするGQuuuuuuX   作:イナバの書き置き

2 / 25
投稿が重複しており、修正しました(21:11)


GQuuuuuuXの日(上)

 先ず結論を述べると、目論見は大体失敗した。

 ジオンから逃げ出すのも、サイド6に近付かないのも、全部だ。

 特に今の住居は、思いっきり物語の中心になるであろうイズマコロニーで──あろうことか主人公たるアマテ・ユズリハの隣と来た。

 もう何と言うか、言葉にならない。

 とはいえ、これに関しては此方の落ち度だろう。

 金はそれなりにあるし、どうせイズマコロニーに住むことが決定しているなら、UC0085までマチュが根の国の方にあまり意識を向けないよう監視でもするか──と余計な欲を出したのが良くなかった。

 態々内見までしたんだから、隣の表札を確認するくらいしておけば避けられた問題なのだ。

 

 しかも、そのマチュと交流までしてしまうとは。

 

 鍵を忘れたからと言われて思わず上げてしまったのが運の尽きというヤツだろう。

 生まれ持っての行動力の高さなのか、コミュニケーション強者なのか、意図して突き放すような物言いをしていた筈なのにあっという間に踏み込まれてしまった。

 今後の流れに及ぼしかねない影響を考えれば、やはり接触は控えるべきなのだろうが……此方が避けようとしても、向こうは鋭く嗅ぎ付けてくるのだ。

 ホテルに一泊して帰宅時間をズラしたり、塾や学校に行っているであろう時間に戻ってきたりとあれこれ策を弄しているのに──帰って一時間もすれば、チャイムの音と共に押し掛けてくる。

 一体どうやって察知しているのか。

 あれが本物のニュータイプだとでも言うのか。

 

 まあ、まあいい。

 

 いや良くはないのだが、現在のマチュは概ね映画館で見たマチュと変わらないように見えるので取り敢えず良しとしておく。

 家に来るたび何度も宇宙について訊いてくる辺り、元の彼女にも増して猪突猛進、即断即決精神が培われているように見えなくもないが……クランバトルに興味を示したり、それこそ勝手にエアロックを開けて宇宙に出たりはしないからいいのだ。

 今の生活に違和感を覚えつつも元気一杯なマチュは、姪っ子みたいで見ているとこちらも何だか楽しくなってくる。

 

 それで、だ。

 問題はもう一つの方────

 

『レーダーに感あり……このコースはやはり海賊だな。これより艦はミノフスキー粒子を散布しつつ宙域を離脱する!』

 

 オヤジさんのむさ苦しい声を通信越しに聞き流しながら、計器に目を走らせる。

 同時に、ガコンと音を立ててハッチが上下に開き──黒い宇宙がぽっかりと口を開けて俺の前に姿を見せた。

 

『敵は二機、また対MAV戦だぞ坊主!』

「もう二十歳なんだから坊主は止めて下さいよ……」

 

 共有されたレーダーに引っ掛かったのは、此方に向けて加速しつつある二機のMS反応。

 ジオン軍が周辺で活動しているという話は聞かないし、無線も封鎖して一直線に進路を塞ごうとする軌道は明らかに宇宙海賊の特有のそれだ。

 大方此方がMSのパーツを回収し終えた時を狙って総取りを企んでいるのだろうが──足が遅く非武装のコロンブス級(サンフラワー)では、今から進路を変更しても逃げ切るのは不可能に近い。

 輸送艦は兎に角腹一杯詰め込んで一攫千金を掴むには最適だが、非武装と動きののろさから狙われ易いのが難点だ。

 しかし、これも今に始まった話ではない。

 連邦の敗残兵や、退役した元ジオン軍人が経済的な問題から海賊に身を窶すのは、戦争が終わって五年が経っても公国を悩ませる頭痛の種だった。

 何せ元とはいえ正規の軍人が悪意を持って襲いかかってくるのだから、これ以上に質の悪いものはない。

 

 ──尤も、俺も同じ穴の狢だが

 

『何時も通り、坊主を出したら最大船速で離脱する!戦闘が終わるまでは戻ってこないぞ、分かってるな!』

「了解。そっちも何時も通り追加のスクラップを回収する準備、頼みますよ」

『おうよ!大漁を期待してるぜ!』

 

 がなり立てる声に此方も腹に力を込めて返しながら、操縦桿を倒す。

 MS自身の推力だったり、背中から射出されるジオン式と違って、連邦から接収した艦ではカタパルトにMSの足を固定させなければならない。

 ガンダムシリーズで散々見てきた流れだが、よもや自分がそれをすることにはならなかった──なんて思いながら、俺は「それ」を歩かせる。

 

 右足、よし。

 左足、よし。

 

 そして途を示すように、ビーコンのラインが真っ暗な虚空に伸びて────

 

 

 

「ミカボシ・ツヅラ──()()()、発進する!」

 

 

 

 

 シートに背中を押しつけられる感覚と共に、俺とギャンは宇宙の暗闇に投げ出された。

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

 

 

 もう一つの失敗というのは、正にこれ。

 つまりツィマッドの下請け企業──ツキモリ株式会社の艦を護衛する、傭兵のようなものをやらされていると言うことだ。

 一応は民間人扱いで口止め料も貰っているが、戦時中非道な実験を行ったフラナガン機関の被験者をそのまま野に放り出さず見えるところに置いておきたいと言う公国側の思惑が透けて見える。

 それでニュータイプの素質が芽生えたら呼び戻し、余計なことをしたらこれもまた呼び戻して強化人間にする算段なのだろう。

 映画でのエグザベ少尉の扱いを見る限り方針は緩くなっているようだが、俺のようななり損ないに機関が温情など掛ける筈がなかった。

 依然としてアルマの行方は掴めなかったが、戻ってきたところでロクな事にならなそうなのでもしかしたら地球に居た方が良い可能性すらある。

 

 その上、与えられたのがギャンだ。

 

 そう、ギャン。

 ゲルググとのコンペに敗れてマ・クベの棺桶になる筈だった、あのギャン。

 ガンダムタイプとの戦闘を想定して白兵戦能力を高めたらしいが、どうしてこれでゲルググを抑えられると思ったのか分からないトンチキ武装だらけのあのYMS-15である。

 大方ガンダムとホワイトベースが丸々ジオンに捕獲されたせいでテキサスコロニーの一件が無くなったから、マ・クベもこいつに乗らないまま終戦を迎えたのだろう。

 そしてこの世界で簡易ガンダムとの競合に負けたゲルググの、そのまた敗者を置いておくだけの余裕は現在のジオンには存在しない。

 数多のザクたち同様、無慈悲にも払い下げの対象となり──公式的には計画自体存在しないそれをポンと手渡すのは流石に良くないからと、ジャンク屋送りにされた俺にお鉢が回ってきた訳だ。

 

 だが、それが良い。

 

『何だ……ザクじゃないぞ!?』

『ジオンにこんな新型が──避けろ!』

 

 無線の向こうからノイズ混じりに聞こえる混乱に唇が弧を描くのを自覚しながら、()()()()()()()()()()を一斉射。

 慌てて回避行動に移る軽キャノン目掛けて真っ直ぐに伸びる六本の線を追いかけるように、此方は更に増速する。

 そう、連中はギャンを知らない。

 計画そのものが白紙になり、一度も実戦に出ないまま終戦を迎えたこのMSは、連邦ジオンどちらのセンサーで捉えても識別情報が出ないのだ。

 対して、此方は相手のMSが何なのかくらい大体予測がつく──殆どの場合、違法に戦闘プログラムをインストールされたザクか、継ぎ接ぎの軽キャノンのどちらかだ。

 ドムは稀に見掛けるが、ガンキャノンの足の遅さは襲撃には向いていない。

 

 そして、第二のアドバンテージ。

 

『一つ目野郎が、ビーム兵器を使うのか……!?』

 

 ブゥン、と特有の音を立てて発振されたそれの形状は、剣ではなく槍。

 機体各部のディテールや排気口の位置は原型機のそれから変更され、よりマッシヴなものに。

 ギャンのシンボルとも言える特徴的な盾も形状を変え、裏側に二連装ビームガンとミサイルを備えたランチャーシールドへとより洗練されている。

 そう、ギャンはギャンでも、ただのギャンではない──五年間共に戦い抜いてきた相棒は幾度も改修を受け、その最終型とも言えるK型へと至ったのだ。

 

 そう、所謂()()()()()()()()()だ。

 

 だが、これは主に俺ではなくツィマッド側の頑張りによるところが大きい。

 まあ、コンペに負けたトンチキMSとはいえ、折角作ったものが一度も日の目を見ないまま終わると言うのは、設計者たちにとって余程悔しい結末だったのだろう──それがゲルググに負けるならまだしも、いきなり横から入ってきた簡易ガンダムのせいなら尚更だ。

 そんなだから、彼らはギャンが海賊を追い払うたび我が事のように喜び、改修を要請すれば嬉々として請け負ってくれた。

 そればかりか、一部の設計者はギャンの再設計計画をぶち上げ、挙げ句の果てにキャリアを蹴ってツキモリ株式会社に再就職する者すら出る始末。

 今や会社はギャン狂いの集団であり、そんな彼らの狂気と熱意が詰まったこのギャン・クリーガーは、単純な性能だけならUC0085年代最先端のMSに匹敵すると言っても過言ではないだろう。

 相手は連邦崩れながら、MAV戦に習熟しているようだが──乗っているのが軽キャノンでは、相手にならない。

 

「ひとぉつ」

 

 中世の装甲騎兵さながら、盾を構えながらランスごとぶつかるようにして回避が遅れたキャノンを貫く。

 コクピットを抉られたキャノンのバイザーが光を喪い、くの字に折れ曲がる。

 射撃で牽制し、ランスで突撃。

 感覚を広げる遠隔操作に意識を傾けずとも、自分の動きにだけ集中すればいい──そう言った単純さも、サイコミュとの同時操作が覚束無い自分にとっては都合が良かった。

 或いは、本当に制式採用される未来もあったのだろうか。

 先程まで散々トンチキMSと虚仮にしてきたが、MAV戦が浸透したこの世界では原型機でも前衛を務めるには最適なように思える──簡易ガンダムさえ無ければ、ゲルググ共々ジオンの最前線を張るような可能性だって十分に考えられただろうに。

 

『よくも、マヴを……!』

 

 ノイズに雑じって敵の声が鼓膜を叩き、機体の頭上をピンクのビームが掠める。

 射点へ目を向ければ、もう一機の軽キャノンが側面から肩部キャノンとスプレーガンをばらまきながら接近してきていた。

 

(わざと外したな)

 

 互いが互いの死角を補う、お手本のようなMAV戦術だ──ただし、片方が既に沈黙した後であることを除けば。

 初弾を外したのも、粒子の束によって焼かれた仲間を撃つのを躊躇ってしまったんだろう。

 だが、本気で倒すつもりなら最初に当てるかキャノンを狙うべきだった。

 此方は突撃を当てたばかりで、速度を殺されている。

 シールドは油断なく構えていたが、コクピットが潰れたキャノンを撃って誘爆させればそれなりのダメージは入った筈──海賊行為なんて働いておきながら、そうやって中途半端に情を見せるから重大なチャンスを失うのだ。

 そして戦場でチャンスを逃した以上、もう命は諦めてもらうしかない。

 

「そうら、お返しだ」

『なっ……!?』

 

 ギャンの流体パルスモーターが唸りを上げ、破壊した軽キャノンをMAV目掛けて放り投げる。

 押し出すだけなら他のMSでも可能だろうが、投げるなんて真似はエネルギーの余剰を貯蓄、解放出来るアクセラレーターを持つギャンだからこそ為せる技だ。

 一方の海賊キャノンは、進路上に突然障害物を投げ込まれたことで慌てて急制動をかけ──その隙を、接近してランスで突き刺す。

 こちらも、後で高く売れるようコクピットを一刺し。

 気休めにはならないが、パイロットは苦痛を感じる暇すら与えられずに蒸発したに違いない。

 

「……だから、撃てばいいだろうに」

 

 チャンネルを開いて呟いても、当然返事は返ってこない。

 他でもない、俺が殺したんだから当たり前だ。

 でも、最近ではそれに心が動くことも少なくなってきてしまった。

 五年前は、一機落とすたびに過呼吸になりそうなほどだったのに。

 奪った命の分まで生きてやるんだ、と覚悟を決めていた筈なのに。

 宇宙の孤独と日常化した命の獲り合いが、鋭敏に感じる心を鈍らせてしまったのだ。

 

 

 ──やはり、こんなのがニュータイプである筈がない

 

 

 フラナガン機関で仮にもニュータイプ候補として扱われていたのも、きっと悪い冗談だ。

 だってこんなのが人の革新だとしたら、その端くれであってもスペースノイドが救われない。

 バックパックから打ち上げられた信号弾が赤く輝いて戦闘終了を母艦に告げるのを見上げながら、俺は自分の精神性がまた擦り切れていくのを実感していた。

 

 

 

▲▼▲▼▲

 

 

 

『イズマコロニーが肉眼で見えたぞ。皆ご苦労だった』

 

 スピーカーから聞こえたオヤジさんの声に、ヘルメットのバイザーを上げる。

 見れば、モニターの中央にはもうスペースノイドたちが拠って立つ場所である円筒型の居住区域がでかでかと映っていた。

 しかし、こうして引いて見ると何もない宇宙に馬鹿でかい円筒が10も20も浮かんでいるというのは中々シュールな光景である。

 それをコロンブスの上で四つん這いになっているギャンの中から見詰める自分と言うのも、負けず劣らず滑稽ではあったが。

 

「大漁ってことで、いいんかね」

 

 それもこれも、海賊のMSを回収したことで船内がパンパンになってしまったのが全部悪い。

 お陰で港湾でジャンクの積み下ろしが終わるまで、それなりな戦い振りを見せた筈のギャンは威厳の欠片もないポーズを行き交う人や艦に晒すことになるのが確定してしまっていた。

 まあ、いい。

 此処までコロニーに近付けば、もう仕事は終わったようなものだ。

 オヤジさんの配慮で積み下ろしは手伝わなくても良いことになったから、作業が終わった後ギャンを格納庫に戻せばそれで終わり──二週間に及ぶ掃海は無事完了して、待ちに待った束の間の休みを得ることが出来る。

 とは言え、帰宅した途端またマチュが押しかけてくるんだろうが。

 最近では、それを楽しみにしている自分がいるのも事実だ。

 今後のあれこればかり考えて鬱屈している自分からすると、彼女の真っ直ぐで健全な在り方を見ているとそれだけで何だか心が洗われるような気持ちになる。

 願わくば、このまま────

 

「……?」

 

 不意に、背筋に何か走るものがあった。

 

「何だ……?」

 

 得体の知れない、けれど温かみのある感覚。

 何か別の物事に集中していて、此方を見てはいない。

 カメラを最大望遠に、センサー類も全開にして、気配を探る。

 コロニーの付近だからミノフスキー粒子は撒かれていない、探せば直ぐに見つかる筈────

 

「……あぁ」

 

 見えた、一瞬だけ。

 すぐにコロニーの反対側へ飛んでいってしまったから、一瞬だけど。

 ミラーの隙間を高速で潜り抜け、追い縋る軍警の火線を悠々と躱す赤い機影。

 間違える筈がない。

 

 

 

「────あれは、ガンダムだ」

 

 

 

 GQuuuuuuXが、始まろうとしている。




◯ミカボシ・ツヅラ
ジオンから逃げ出せずサイド6からも逃げられないニュータイプのなり損ない。
ギャン共々ツィマッド関連企業のツキモリ株式会社に払い下げられ、傭兵として飼い殺されている…のだが、ツィマッド側がギャンに対して滅茶苦茶やる気を出しているのと、会社の待遇が良いのも相まって普通に良い空気を吸っている。
しかしGQuuuuuuX開始が迫っているのと人殺しに何も感じない自分にまたしても気が滅入っていた。

キラキラこそ見えないもののの、曲がりなりにもNTなのでガンダムを察知する程度は出来る。

◯「オヤジさん」
ツキモリ株式会社の社長。
威勢が良く、面倒見が良く、声がうるさい。

◯YMS-15-K ギャン・クリーガー(ミカボシ機)
色が灰色基調なくらいで、見た目は殆どギャン・クリーガーそのもの。
しかしシールド裏に三連装ミサイルポッド二門、バックパックにガンダムタイプのサーベル二本を備えるなどより重武装化されている。
また、モノアイの周囲を取り囲むようにジンクスのような四眼が配置されているが、こちらはフェイクで使用されていない。
尚、本来のギャン・クリーガーはギャンの発展機であるが、当機はYMS-15を五年間かけて改修し続けた結果外見や機能が酷似したものである。
なので正確にはギャン・クリーガーではないのだが、面倒を避けるため「ギャン」、「ギャン・クリーガー」どちらの表記も行う。

◯コロンブス級サンフラワー
戦後に連邦から接収したコロンブス級が更にツキモリ株式会社に払い下げられた艦。
特にこれと言った改造は施されず、殆ど原型そのまま。

◯ツキモリ株式会社
ジャンク屋。
ただし難民たちが営むような零細企業ではなくツィマッド社に連なる会社の一つであり、同社やコロニー公社からの委託を請け負うこともある。
払い下げられたギャンが護衛のモビルスーツとして所属していることから技術者が多く出向しており、密かにギャン狂いの集団と化している。

後、ツィマッドの支援の下違法であると知りながらクランバトルに参加している。

◯赤いガンダム/???
何か見られてる…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。