不可能を可能にする男   作:展開郎

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Before BulletⅠ 序曲の導入(リ・バース)
第一弾:Remind Bullet


そうだな、もし空から女の子が降ってくるとしよう。一般的な人間はまず、キャッチすることもままならない。

何故そんなことを考えているかについてだが、断じて某SNS会社のサーバーを破壊させるアニメを見たからなどではない。

理由を挙げるなら—————いや、そんなことを考えている場合ではないな。

天から降りてくるは、ピンクブロンドの髪の束。その髪の束が余計に太陽の光を吸収しているせいか、より一層輝いている。

そして地面では俺の自転車をUZIを取り付けたセグウェイが追ってきているという始末。この状況、他人が見たら意味がわからない状況だろうな。 

だが俺にとっては意味がある状況なのだ。いや、ここからが本当のこの物語の始まりだ。

あぁ、知ってはいた、知ってはいたんだよ。こんな状況になるのは。

だけど、起こらないという可能性にほんの少しだけ賭けていた俺が心の中にいたんだ。だが現実は優しくない。

そう、俺がこの状況が起こると知ったのは高校の入学試験の時だったかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どこかで見覚えがある。

いや、前々から見覚え…いやデジャブに似た現象が何度もあった。

巣鴨の実家、星伽神社、カブチュー(神奈川武偵高校付属中)でも、それは確かにあった。

いや場所だけじゃない、父さんの顔、兄さんの顔、それに、それに…まぁ色々な人の顔がどこかしらで見たことがあった。

家族の顔でさえ、既視感を覚えるんだ。少し、変な気がする。

だからこそ当時の俺はそれを全て気のせいだと否定し続けた。だが、今の俺なら断言できる。

—————俺は知っている。これから始まる約3年間にわたるとんでもない出来事を。

 

「久しぶりだね」

 

ああ、やはりと思える。

海風が島全体を支配している人工島、それに併せて回り続ける風力発電機、どこからともなく聞こえてくる旅客機のエンジン音、そして今まで以上に臭う硝煙の匂い。

ここ東京武偵高校に来たのと、()()()()のことで、俺は全てを思い出した。

俺の手が触れてしまっている、巨大な山…いや山脈。

最後に会った小学生の時は未だ平野だったというのに、地殻変動のせいなのか隆起しまくった結果、富士山級の大きさになっている。

 

「あっ、あっ、あっ、」

 

「相変わらず可愛いね、白雪は。久々の再会だし、入試会場までエスコートするよ。」

 

「あわわわわっ」

 

「うん、とりあえず俺について来てね。」

 

すまない白雪。胸を触ったのはこの俺だというのに、謎にエスコートしてしまって。

だけどすまない、もう一度謝るが白雪以上に今俺はこの状況に困っている。

まず今日が入試ということだ。記憶の中ではここの入試は実技と面接と筆記で合否を判断する。

ただし、そのうち筆記に関してはそこまで問題はない。理由としては、東京武偵高校含めて武偵高校というのは殆ど偏差値が低い。これに関しては専門学校ゆえの傾向や、設立してからの歴史がまだあまりないことも挙げられる。というか武偵高校の元祖である場所がローマな時点でお察しだろう。

そして今日は実技と面接の日だ。

………俺実技出来るのか?いや、記憶はある。だけど、体を動かそうにも意思のせいで動かない可能性もある。

というか、実技試験って何をやるんだ。強襲科(アサルト)の試験を受けるが、受験要項に試験内容とかは書かれてなかった。

それは()()()なら分かる。確か、ここで俺は実技試験をとんでもない成績で修めたせいでSランクになったはずだ。

 

「—————キンちゃん様、大丈夫ですか?」

 

「ああ、大丈夫だよ白雪。俺は強襲科だけど、白雪は多分SSR(超能力捜査研究科)だよね?」

 

「うん、そうだよ。試験前で緊張してたけど、キンちゃんに会えて白雪大感激!!」

 

「じゃあ、入学式の日にまた会おうね。」

 

「うん」

 

ヒステリアモードの質は落ちてはいるが、まだなんとか続いている。

これなら試験の最初だけでもヒステリアモード頼りで行けるかもな。

だが、そもそも今回の試験内容は一体なんだ。射撃試験なんて、そんな子供のおままごとみたいなことはしないだろうし、そんなのは武偵小の試験だ。恐らくは、誘拐事件を再現した演習あるいは立て籠もりの突入作戦、教官との1on1ぐらいだろう。武偵高校の入試はその性質上、入試内容が提示されない。武偵たるものあらゆる状況下でも対応しなければならないからだろう。

俺の受験番号はA1102だから、試験会場は第七演習ビル前か。まぁやるようにやるしかないな。

 

 

本来はこんな入試なんかじゃなくしっかりと状況を把握しなければいけないのだろうけど、これはこれで大事なことだ。家に帰ってから全てを整理しよう。

試験会場に着くと、俺以外の受験生が20人程度いるのが分かる。

それと同時に、一人だけ俺たちと格が違う存在がいる。女だ、それも美人だ。ヒステリアモードに悪いタイプの女性だ。髪型はポニーテール、服装は薄そうなタンクトップにジャケットを羽織るだけで、肌の表面積自身は少ないが、チラチラと春風のせいで中身が見えそうになる。

徐々に落ち着いてきていたヒステリアモードがまた復活しようとしてきてはいるが心頭滅却、心頭滅却…

 

「おい、おめぇら、とりあえず目を閉じろ。」

 

(………は?なんだよ、なんでこいつの言うことを)

 

——————ヒュンッ

あっぶな、この女撃ちやがったぞ。今がヒステリアモードだから助かったが、そうじゃなかったら死んでた所だぞ。

 

「お前、顔に反抗してやるって書いてあるから撃ってみたが、避けやがったか。気に入った。」

 

おいおい本当に俺を撃ち殺すつもりじゃねーか。あの一応、この学校の未来の生徒になるんだぞ。入学試験も受けさせてくれないってどんな高校…いや武偵高校だから、一般常識で考えちゃいかん。

 

「いえ、すいません先生。自分が悪いだけです。」

 

「まぁいい、次そんな面したらお前は不合格だ、いいな?」

 

「イエスマムッ」

 

目を薄らと閉じた途端に、俺の目に何かしらの黒い布が覆い被された。そして、その布は俺の頭の後ろで結ばれた。

これはもう試験が始まったのか?どうする、俺の右斜め後ろにいる奴を倒すか。とりあえず、まずは先に布から取り外すべきか。

視覚情報がないせいで、判断が鈍る。空間把握能力である程度の、人間や物の位置合いは分かるが、それがどんな風に動いて、どんな体勢でいるかが分からん。

何が何だか分からんが、とりあえず拳銃をブレザーの胸ポケットから取り出す!!

 

「おいおい、またも反抗的態度かい。目隠しした状態で私と戦るのかい?」

 

さっきの女教官か。声色がさっきの奴だ。てか、ついさっきまで2、30m離れてた筈なのにあの一瞬でここまで来るとかどんな動きしてんだ。

というかいつの間にか、()()()()()にいやがる。改めて銃を構え直して、話し始める。

 

「武偵たるもの、悲観論で備えなくちゃいけないんでね。すいませんけど、銃を構えさせていただきます。」

 

「ふふふ、アハハっ。気に入ったよ、もっと気に入った。いーよ、いーよ銃はしまっときな。試験はまだ始まっちゃないよ。」

 

ここまで近づくと分かるが、なんというかフルーティーな匂いがする。そう例えるなら杏の匂い…、もっと臭うと少々アルコールの匂いもする。兄貴と爺ちゃんが宴会で飲んでた杏露酒の匂いがこの女教官からする。

やばい頭がくらくらしそうだ、屋外なのにも関わらず。アルコールの匂いのせいじゃなくて、この女教官が醸し出す匂いのせいでだ。

そのおかげかとは思いたくはないが、ヒステリアモードが完全に復活している。

女教官に更に手錠をかけられ、鎖の部分を掴まれながらどこかに移動させられる。

 

コンコンコンッ—————屋外から恐らく屋内のタイル張りのところへ連れて来られている。道中階段を登った感覚からして、恐らく俺は階数で表せば12階、メートルで表すとおおよそ35mあたりの位置にいる筈だ。

途中登り降りを無駄にさせられたり、急に立ち止まったりさせられたが、恐らくはそれぐらいであっているはずだ。

そして扉を何回か開ける音を最後に立ち止まった。それと同時に、手錠も外された。

 

「よし、今からもうちょいでアナウンスがある。その通りに行動しろや。」

 

「分かりました」

 

「お前は鍛え甲斐がありそうやから、ちゃんと合格せーよ。」

 

そう言うと、女教官は匂いを残しながら消えていった。いや待てあの女教官、窓から飛び降りなかったか!?

窓を開く音がすると思ったら、その後に地面のジャリっとした音が聞こえた。さっき考えてた通りここ35mぐらいの高さだぞ。パラシュートで降りたような音ではなかったし普通に窓から飛び降り着地…人外とか化け物の巣窟なのか、この武偵高校は。

 

『ピンポン、パンポーン』

 

アナウンスが鳴り始めたな。そろそろ試験内容の説明をしてほしい。

 

『受験者の皆さんは視界を覆い被さっている黒い布を取り外してください』

 

十数分ぶりの光だ、俺がいる場所は廃ビル———第七演習ビル?だろうか。開きっぱなしになっている窓を確認して下の景色を確認すると、やはり推察通りここは12階だ。

そして上も確認すると、更に8フロア分あるな。20階建てのビルがこの入学試験の会場か。

拳銃も今一度確認する。なんの問題もない、流石ベレッタ。

米軍で正式採用されてることだけはある。マガジンOK、銃身もOK、スライド、グリップにオールグリーンと。

 

『では試験内容について通達します。本試験では廃ビル内に潜む受験者を倒す、殲滅戦です。失神気絶あるいは降伏を宣言したものはその時点で試験終了となります。また、本試験は勝ち負けや倒した人数などではなく行動内容で点数をつけるものです。また不正行為にあたる内容としては………』

 

まさにバトルロワイヤルか。原作小説は読んだことはないが、映画版は見たことあるぜ。

だが、この廃ビルで行うのか。銃火器が活躍しづらい盤面ではあるが、そこをどのよう工夫して使用するか、あるいはこのナイフみたいに銃火器以外でどう突破するか。

赤く、紅く、緋色に輝くバタフライナイフ…最初はまさかと思っていたが、こんなものにまで全て繋がっていたと分かった時は驚嘆したな。

人生初めてバタフライナイフを使ってみるが、大丈夫なようだ。体がしっかり使い方を覚えていてくれている。これならベレッタも使えるだろう。

 

『では、これより60分間試験を開始します。時間管理は試験監督の腕時計を使用します。』

 

(はぁ、始まってしまうか)

 

もうなんのことやらだけど、しょうがない。

俺は俺のやるべきことをやる。

 

『では始めっ!!』

 

まずはこの一件を片付けてみせる。

 

 

まずはこの部屋を再度確認する。それほど広くはないが狭くもない、まずは目の前と右側、左側にドアがある。

早速選択肢として三つのルートが提示されたが、確かさっき連れて来られた順番的にいえば、階段がある場所へ確実に向かおうとするならは右側の扉を選ぶべきだ。

壁に一度来たことが分かりやすいように赤色のテープを貼っておこう。ちなみにテープはこの部屋にあったものだ。

ドアは頑丈な金属製、ノブも同じだな。そして下に隙間はなし。

ノブを少し緩めて、足でドアを開けれるようにする。そして、空のカートリッジを用意する。

もしドアが開いた瞬間に何かが投げ込まれた場合、人はそっちに注意を逸らす。

 

(よーし、1、2、3!!)

 

開けたと同時にカートリッジを投げて、部屋の周囲を見渡す。

だが、特に誰もいない。とりあえずカートリッジを回収しつつ部屋を探索する。ここはドアが二つだけ…あとはさっきの部屋と同じだ。あとはコチラは窓が開いてないのもある。

テープを貼り付けようとしたところ、壁に恐らくこのフロアのマップと思しき紙が貼ってある。

 

部屋の構造は、真ん中にエレベーターが1基あり、左端と右端両方に階段がある。部屋の構造はどれも同じであり、1フロアに合計10部屋ある。

そして俺がいる部屋は恐らく左上の角部屋か、右下の角部屋だろう。

まだ確信は持てないが、上も下もいや全ての階は同じ構造をしているだろう。

もう少しここを分かるためにも、下の階かあるいは上の階に行くしかない。

扉を開けて、廊下に出てみるがどの部屋からも反応はない。だけどここで、油断してはいけない。真ん中を見ながら、階段がある方へと後ろ歩きで向かう。

そうすると、どこかしらから銃声が響き渡る。早速、やり合ってるみたいだ。

それを無視して階段を…下ることにした。

 

階段を一段ずつ降りて行く。階段も金属製なのかどうしても足音が出てしまう。

狭い密閉空間のせいか、その足音が小さくても反響して大きく聞こえる。どうやら、今階段を使っているのは俺だ———コツン、コツンッ————けじゃない!!

恐らく音の発生場所は9階だ!!他の奴らにバレても、向かうしかない!!

階段を三段飛ばしぐらいで飛び降りて、9階へ向かう。

 

さっきと同じ構造、ただ違うのはどこの部屋も扉が開いているということに他ならない。

一々、調べていたら相手はどこかへ逃げてしまう。それに時間を掛けたら、さっき俺が急いで階段を降りた音から俺のいる場所が特定されかねない。

どうする、どうやって短時間でさっきの奴を見つけ出せばいい。

 

………いや一つ思いついた。俺が一度もやったことがないやり方だ。だけど、今の俺なら可能だろう。

思考力、判断力など全ての力が30倍の今の状態なら出来る。

 

「クワッ、クワッ、クワッ!!」

 

音を重ねて、反響で敵のいる位置を探し出す方法。これは俺じゃなくてかなり先の未来で弟が鳥人間を探す時に使っていた奴だ。

ありがたく使わさせてもらおう。そして奴がどこにいるか分かった。右列のこっち側から見て3番目の部屋だ。

場所が分かったからには、もう迷う必要はない。

ダッシュいや縮地気味に三番目の部屋へわざと音を大きく踏み鳴らしながら向かう。

部屋の中から奴が見えたと同時に、銃弾をフルオートで撃ち始めたが今の俺には避けれる。俺の後ろについてくるように銃弾は痕を作り続ける。

奴はそれに焦ってか、次のマガジンを取り出そうとした瞬間に、カートリッジをぶん投げる。

奴と俺の距離は9m38cmと少し。この勢いなら接近戦へ持ち込める。

 

「うぎゃっ」

 

そんな蛙を轢き潰した時の鳴き声を出したと同時にマガジンは地面へと自由落下する。撃つのは少しの間だけ止まったが諦めず、奴は戦う姿勢を見せている。

そのままの勢いで俺は奴との距離を縮めて、更に左手からナイフを取り出す———残り7mと少し。

 

「まだやるかっ!!」

 

そう言って残り数少ない弾を残さず撃とうとする。

だけど、そんな弾先程と変わらず、ただ俺のいた道のりをなぞるだけに過ぎない。

 

————残り4m14cm

 

奴は懐からもう一丁の拳銃を取り出した。先程と同じ型の銃を、弾が切れた途端に撃ち始める。

 

ちっ、これ以上は捌ききれない。

ここまで至近距離に接近したら、回避は不可能…防弾制服だから喰らっても大丈夫だが、痛いのは御免被る。だから、ちーっとばかしこれまた早すぎるが、使わさせてもらうぜ。

俺の想像通りにやるんだ、まだもう一つの方法が完璧には出来ないからこそと遠山キンジではない俺だからこそ編み出せる技。 

 

 

 

 

 

 

(さぁ、やってみよう『銃弾円弧(スプリット・アーク)』)

 

世界は今スローモーションになった。それはヒステリアモードによって本来の30倍となる力による副次的な効果だ。

本来俺が使う銃弾を切る技である銃弾切り(スプリット)はまだ出来ない。あれを使うには、弾道を完全に予測しなければならない。だけど経験の浅い俺には弾道の完全予測は出来ない。

しかし、これは銃弾の先端部分をナイフで少し掠めることによって弾を空力的に本来の軌道を取ることが出来ず、円を描くように曲がらせる。自分ではなく相手の弾道をナイフで曲げる。まさに弧弾(アーク)と逆の発想。

そしてこれを連続で行う。奴の銃のマガジンの弾数は十四発、だからこれを十四連続で行う。

行ける、俺なら100%いける。何故なら天下無敗のヒステリアモードだからだ!!

まだ俺は遠山キンジに成り立て数時間も経たないが、分かる。俺には出来る!!

 

————残り2m47cm

 

これで弾は八個切った。

繊細な動きを超短時間で高速で行う、無茶苦茶すぎる。だけどそれが今なら出来る。

まだ駆け抜けれる。まだだ、まだ俺は切れる!!後、百発撃ってきても切れるぞ。

 

————残り1m38cm

 

残る弾数は三発、まだだ頭が少しばっかし、しんどいがまだ切れる。

 

————残り98cm

 

この距離ならもう奴は、手出しできない。銃弾はもう全てお終い、近接格闘戦でも俺が勝つ。

 

「僕の武器が銃だけとは思わないことだよ!!」

 

こ、こいつ、刀を隠し持ってたのか!!

まずい、それじゃあ、ここまで迫った俺がバカだ。こうなったらベレッタは節約しようと考えていたのに、使うしかなくなるじゃないか。

とりあえず一気に距離を取る。刃渡は約80cmといったところか。にしても、刀剣に関しては詳しくないから分からないがなかなかの業物だと思う。

それに対してこっちのナイフの刃渡は10cm、圧倒的な不利。

 

「へぇ、刀まで隠し持っていただなんて。」

 

「本来なら拳銃だけで済まそうと思ったが、君のナイフ捌きを見るからにこれを使わなきゃ負けそうと思ってね。」

 

奴はそう言いながら刀を振る。

刀か、刀といったら例のメガネを思い出すなぁ。

 

「一応だけど、言っておく。降伏するなら今のうちだぜ。」

 

「それは僕のセリフだよ。」

 

こいつ負けず嫌い…いや、そうではない。そういう性格的な問題ではない、だが負けたくない理由が他にあるように見える。

もしや、こいつ最初から逃げてきてたんじゃなく誘い込もうとして階段の音を出していたのか。 

 

「お前、名前は?」

 

「一石、一石マサト。」

 

「良い名前だな、俺は…遠山キンジ。武偵になる男だ。」

 

俺がそういうと奴は思いっきり笑い出す。何故だ、何故笑い出す。

別に面白いジョークやギャグを挟んだわけでもあるまいし。

 

「運命は面白いものだ。だけど、僕は君の更にその上を行く。」

 

「散らせるものなら、散らしてみやがれ」

 

只者じゃない。話していて分かる、こいつには何か大きな覚悟があってここにいる。

運命がなんだか、知らないがとりあえずこいつに勝つ。そうじゃなきゃ、全てが始まらない!!

まずは奴に空になった拳銃たちに弾を装填などさせてたまるか。

ベレッタを撃ちまくってやる。

奴の腕、胸、足元、全てに打ち込む。そこから、もう一度近接戦に持ち込んで小回りの差で奴に負けを認めさせる。

 

———残り6m85cm

 

俺が撃った銃弾は残念ながら全て避けられた。だか、これはしょうがない。

俺と一石の距離、銃口の向き、心理バイアスを含めるとそうなってしまう。だが、あいつをその場に固定はさせた。

まだ弾は残り六発、俺はお前の弾を避けて切ってきたが、お前に出来るかな!!

 

———残り4m45cm

 

今度は奴が弾を逸らし始めた。あれは、俺の『銃弾円弧』とは理論が違う。

刀を振る時に生じる風の力で奴は弾道を逸らしてやがる。俺が精密コントロールに優れているとするなら、一石はパワーでゴリ押しみたいだ。

距離を取ろうにも俺の銃弾のせいで、距離が取れない。確かに殺傷圏(キリングレンジ)はお前の方が広くて強いだろうが、その範囲内で全て同じ強さという訳ではない。

さぁ一石、そこを動くなよ!!

 

———残り2m37cm

 

一石が、俺の弾が切れたことがわかってか柄頭をしっかりと握りしめて刀の腹を横に見せるように構えてやがる。

確かに俺のベレッタの弾倉は空っぽだ。そして今この状況でリロードなんかできる訳ない。

勝ち目なんかお前からしたらないように見えるかもしれねぇ。お前の覚悟と比べりゃ、俺なんて今意味の分からない状態でただただ走ってるだけだ。

それでも一つだけ、心の中だけど言わせてもらおう。俺が遠山キンジになってるからには、お前を倒す。

例えそれが、不可能であろうと。おれはそれを可能にする!!

 

———残り1m19cm

 

「だからこそ、お前の負けだ!!」

 

ナイフを刀の切先に沿うように切り続けながら、あいつが刀に掛けてる重みを耐えながら、俺は()()()()()()()()

確かに弾倉の中には一発も入っていや、しねぇ。だけど、薬室にはまだ最後の一発がある。

最後の一発を真ん中の刃文に向かって零距離射撃だ。お前がどれだけ、パワーでゴリ押しする奴でもナイフを握っている俺の力と拳銃の威力には勝てん。

 

カッキーン————

 

そして刀はたった一発の9mmパラベラム弾の前にあっさりと折れてしまった。

ほんの一瞬の静寂を置いて、俺は駆け出した。それと同時に一石も更に覚悟を決めたようにこちらへ向かってくる。

確かに刀は折ったが、柄と一緒に刃渡30cm強の刃は残っている。だが、もはや脅威などではない。そのぐらいの刀なら、このナイフでも十二分に鍔迫り合いは可能だ。

 

 

———残り84cm

 

俺はもっと距離を詰めながら、俺はベレッタを放り捨てる。一石は捨てられたベレッタなんか見向きもせずに、こちらの動きを注視し続ける。

やはり一石、こいつは強者だ。ワンチャン、引っ掛かってくれるかなと思ったが見向きもしないとは悲しいな。柄頭を握りしめてこちらに刀を降りかかるが、ナイフで応戦する。

 

(くっ、重い。刀を半分に折ってやってもまだ重いかっ!!)

 

「遠山君、君は強い。そして僕は弱い、教習内容をもう少し勉強すべきだったよ、ベレッタの弾数が16+1発だってことを。」

 

「それなら一石、負けてくれないかな?もう勝負の行く末は分かるだろ?」

 

「ごめんだけど、分かりたくないよ」

 

「それなら、後で文句は言うなよ」

 

 

———残り43cm

 

一応保険は掛けてやったぜ、一石。

俺が左手だけで、一石は両腕で鍔迫り合いをしているところに、俺は左手に更に力を入れて更に押し込んでやる。

そして刀を握っているであろう両腕の一つ、左腕を刀の柄の部分から引き離す。

もうこの距離ならいける。

俺には未来の遠山キンジみたく、技がどれもこれもまだ使えない。だけどよぉ、遠山家直伝かつ遠山家最強の技が一つだけあるんだよ!!

 

 

俺は一石の頭に、頭をぶつけてやった。

すると、一石は一瞬にして右腕だけで握っていた刀を手離した。

そして同時に後ろに倒れ込んだまま、失神した。

 

「いてて、流石遠山家の石頭。こんな強い奴を倒しちゃうだなんてな。」

 

失神が演技がどうかの確認のために一度身体を触ってみたが、間違いなく失神している。

とりあえず試験が始まって何分だ?えーっと、逆算したらまだ40分もあるのか。あんなに長かった戦いが、そんなに短かったのか。

 

「————とりあえず、これで一件落着…だな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、東京武偵高校の教務科(マスターズ)の職員室で会議が行われていた。

議題の一つ目は、狙撃科(スナイプ)でSランク相当の成績を出した生徒が現れたこと。この件に関しては、会議の主目的ではなかった。

会議の主目的である議論の二つ目、それは強襲科(アサルト)の試験で起きたことである。

 

顔がない…いや厳密にはあるのだが、一瞬でも見るのをやめた瞬間に誰かが分からなくなるような顔立ちをしている。その仕組みは何か機会や能力を使用しているわけではなく、彼が持つ顔の特徴と言えない特徴である。

そして彼こそが、東京武偵高校の校長でもある。

その男が上座に座りながら喋り始める。

 

「いや、まさかねぇ。X組候補生である一石マサトを倒す生徒が現れるとは。」

 

「やっぱり、こいつがやりよったか。アハハハハッ、校長こいつは面白い奴ですよ。」

 

「この子すごいのネェン。その一石マサトを倒した後は、順々に受験生を全員、それから隠れていた教官まで倒すとワァ。この男の子強イッ!!」

 

「だが、この男がたまたま一石マサトを倒したという可能性はないのか。」

 

「高天原先生、彼の情報は?」

 

顔がない男がそう言うと、メガネを掛けたロングヘアーの女性が席を立ち、席に座っている各自に資料を配っていく。

そして配り終わると同時に席に着き、喋り始める。

 

「彼の出身校である神奈川武偵高校付属中学校からの成績には特段目を見張るものや特筆事項などはありません。そして今回の勝利がフロックではないとは言い切れる情報はありません。ただ、彼が間違いなく強いと確固として裏付ける情報が二つあります。」

 

そこで話を区切り、これから喋ることが重要であるかのように息を吸い大きな声でまた話し始める。

 

「彼の兄、遠山金一は武偵庁に所属する特命武偵という点が一つ。」

 

そして更に今から話し始めることが、先程のことより重要かのようにさらに息を大きく吸って話し始める。

 

「そして、彼の父はSDAランキング総合8位をマークし法務大臣直属の武装検事として36番目に就任した遠山金叉であります。」

 

この情報に、教師陣は驚きを隠せ得ない。武装検事、その息子がこの武偵高校に入学するとは。そして、この情報を特筆事項に記載してない神奈川武偵高校付属中学校の調査力に嘆く事しかできなかった。

 

「うん、それじゃあ彼をSランク武偵に認定しようと思うが、皆同じ意見だね?」

 

顔がない男がそう尋ねると、皆誰も口にせず首を振るのみ。一部ポニーテールの女だけは満面の笑みで首をブンブンと振っていた。

 

 

 

 

 

BBⅠのシナリオ展開アンケート

  • オリキャラたちで回していく展開
  • 原作のストーリーを強化する感じの展開
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