不可能を可能にする男   作:展開郎

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えーっと、久々の投稿ですね。
これには深い理由があるんです。
寒波のせいで風邪をひいて、ここ数日間寝込んでました。
みなさん体調には気をつけてください、本当に。
では本文へレッツゴー!!


第五弾:未来の0(ヴァージン・アサルト)

(う、美味い…)

 

そう思いながら、何回も何回も麺を啜り、お椀のスープをグビグビと飲み干していく。

依頼が終わってから、小一時間探した果てにこのラーメン屋に行き着いたのだが、美味すぎる。

濃厚な魚介豚骨の出汁に、肉厚たっぷり味濃いめのチャーシュー、それと名脇役のメンマ、不思議と何故かいる海苔。

値段はそれなりに高くて、入店する前は散々悩んだが、入って良かった。

入ってから強面の店主が野太い声で“いらっしゃいっ‼︎”と言われた時は少し後悔していたが、そんなのチャラに出来る美味しさである。

鬱屈とした服屋の後に、このラーメンは脳髄までβエンドルフィンが出ている気分にさせてくれる。

確かアンケートが何かで、日本以外の各国は性的なことをするのが一番の幸せだったそうだが、日本だけは食事をすることが一位だったらしい。流石、飯を食う為にこんな天災だらけな島にずっと住んでるだけある。

今なら何故そうするかを、きちんと理解できる気がする。GⅢ(ジーサード)が美術品でヒステリアモードを発動しても今ならそれも納得できる。

こんなに美味いラーメンを食べれたら、後は何も望む物なんてない。

だがこのラーメン屋恐るべきところは、ラーメンだけでなく炒飯までセットについているところだ。

炒飯じゃなく餃子のセットもあったが、今日はお米が食いたい気分だった。この黄金に輝く米粒がなんと美味しいことか。

厨房の奥から鳴り響く中華鍋とお玉が発生させる鈍い金属音が、この炒飯を美味しくしている秘訣なのだ。

 

パクパクパク…ゴックン

 

胃袋にとてつもない多幸感が迸る。

そして締めは、備え付けのお冷を一気飲み。こうすると、胃の中がちょうど良い温度になって、更に幸せになる気がする。

ちょっとばかし高いが、これも幸せの為と思い会計を終わらせて退店する。

そうして、空を見上げるともう夕焼け空である。

一日が終わる、それをこんなにも綺麗に表してくれる。

どんなに退屈な一日であろうと、こんな綺麗な夕焼けを見せてくれたら、頑張って良かったとそう感じてしまう。

俺が単純だから、そう感じるのかは置いておこう。今は素直にこの夕焼け空を見ながら寮に帰ろう。

夕焼けのせいか、そこら中のビルの窓ガラスが茜色に染まり切っている。何故かこういう風景を見ていると切なく感じる。

一日が終わるせいなのか、そう感じてしまう。

 

———PiPiPi…———

 

そんな感慨深い思いをしていると、ズボンのポケットに入れていた携帯から電話の着信音が鳴り響く。とりあえずポッケから取り出し、画面を開くとそこには教務科と書かれている。

とりあえず急いで電話に出ることにした。入学式の日に、教務科の人から無理矢理に登録されたが、まさか掛かってくるだなんて。

でも一体なんの要件だ…?まさか平賀さんに依頼した違法改造がバレたとか?いや、それはないか…だとしたら何の電話だ?

 

「はい、遠山キンジです」

 

教務科(マスターズ)の南郷だ。近くの郵便局で立て籠もり時間が起きた、携帯の電波から逆探知してお前の居場所は分かっている。至急現場近くの対策本部へ向かってくれ、道案内はこちらがする。』

 

立て籠もり事件…すなわち強襲科(アサルト)案件かぁ。Sランクにもなると、こんな現場へ行かなくちゃならんのか。一応、前世(?)の俺は一般人だった筈だぜ、武偵ってヘビーだなぁ。

原作の遠山キンジはよくヒステリアモードなしで生き残れたもんだ。

 

「一応ですけど、これって要請ですよね?」

 

『………これは命令ではなく要請ではある。だが承諾しない場合には単位の大幅減となるが、良いのか?』

 

(良くねぇよ!!)

 

はぁ、家でゆっくり今日は休もうと思った時に出動とか最悪な一日だ。フリーな日に出動命令来るのはもっと最悪だが。

しょうがない、これは要請だが実質命令だ。行くっきゃない。

 

「了解、武偵“遠山キンジ”向かいます!本部を敷いてる場所までのナビゲートお願いします!」

 

『合流地点は———』

 

左手でガラケーをスピーカー状態にして走り始める。

全速力で走る、気分はそう潜林(せんりん)濠蜥蜴(ほりとかげ)気味にこの街を駆け抜けていく。

景色をどんどん置き去りにさせながら、電話で話し続ける。

さぁて高校生一発目の事件、一件落着させに行きますか。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ!!」

 

よ、ようやく事件対策本部が見えてきた。

こんなに遠いんだったら迎えの車ぐらい出すなりして欲しいぞ。マジで、はぁ…走り過ぎて血の味がする。唾を飲み込もうにも、走り過ぎたせいもあって喉が乾き切って飲み込めん。

黄色い規制テープを下から潜り抜けて、学生武偵たちがあちこち動いている間を縫って司令部と思われる一つだけ真っ白なテントへ向かう。

辺りを見回すと、周りには野次馬や報道陣たちが揃い始めている。嗅ぎつけるの早いなぁ、てか上にヘリコプターまで来てるのか。

煩いから、あんまりヘリからの撮影はやめて欲しいんだが、それで飯を食ってるのがマスメディアだ。どれだけ文句を言おうと、数百年後の未来でもあんなことをやってるな違いない。

 

(にしても、警察の姿が一切見えないな)

 

刑事や鑑識、お巡りさんまで警察関係者らしき人物がいない。

事件が発生してからは早いが、警察が来るには十分時間がある筈なんだが、一体何があったんだ?

てかマスコミの連中、カメラのシャッターのフラッシュ焚くなよ。眩しいから、邪魔すぎる。

一応走りながら、南郷先生からは事件の詳細はある程度聞いた。

まず事件の発生時刻は、午後6時25分。通報は内部の職員によるものだったそうだ。

そして犯人たちの要求は、人質一人当たり1億円、合計68億円の要求だそうだ。

犯人の数はまだ不明らしく、そこは現場に到着してから聞こうとは思う。

そして、事件現場である郵便局が少々特殊であるらしい。

そのポイントは本局であるという点である。この郵便局は町に点在するような小型の郵便局ではなく、担当地域の郵便物の集配を行う本局であるということだ。

本局であるが故に、大きく、強襲するにしても時間が掛かり、人質の安全性が低くなる傾向にある。

だからこそ俺みたいなSランク武偵の招集が掛かったのだろう。

だとしたら、余計警察が出る盤面な気がするんだが…

そうこうしていると白いテントに辿り着いたが、蜘蛛の子散らすように人が入ったり出たりを繰り返している。

朝の通勤ラッシュの電車みたいに無理矢理押し込む形で中に入るしかあるまい。

 

「すいませーん!!通ります!!」

 

テントの周りの輪形陣をうまいこと掻い潜り、ようやくテントの中に入る。

すると周りにはホワイトボードに色々ならことが書かれており、中には写真まで貼られている。あれが犯人の内の一人なのだろうか…?

他にも、メガネやヘッドホンを掛けている生徒たちが、パソコンに向かってずっと作業をしている。

しかし、大人というか警察が見当たらない。いや目の前に一人だけいるが、警察にしちゃ、格好があまりにも自由すぎる。

 

「応援の武偵、遠山キンジです。教務科(マスターズ)の南郷先生の指示で来ました。詳細な情報を教えてください。」

 

「お前が例の“遠山キンジ”か。俺は教務科(マスターズ)の八木山だ。今回の事件の管理官でもある、よろしく頼む。評判は良く聞いている。」

 

この男、教務科(マスターズ)の教官か。

待て待て教務科(マスターズ)だと?普通こういうの立て籠もり事件とかは警察と学生武偵あるいはプロ武偵による合同で作戦を行う筈…

そういう時は教務科は出張ってこない。理由は武偵憲章4条と6条である。

4条の『武偵は自立せよ。要請なき手出しは無用の事。』と6条の『自ら考え、自ら行動せよ。』

だからこそ、2巻の魔剣(デュランダル)、6・7巻の京都の修学旅行Ⅰ(キャラバン・ワン)ではなんの助けもなかったのだろう。

とりあえず、黙っていても何も始まらない。警察の動向を聞きながら、俺たちの動きを確認しなければ。

 

「今回、警視庁からはSITはどれくらい派遣されるんですか?後、俺の動きなども宜しければ。」

 

「そうかまだ聞いてないのか…警察の応援は来ない、0だ。この事案については警察は出動しないことが決まっている。」

 

は?どういうことだよ。

SITどころか警察関係者の一人でさえ来ないってそれどういうことだよ。

基本的に武偵と警察は仲が悪い。そして利権も同じピザから供給されている。だからこそ、基本的に仲が悪くても手柄を取られたくないために両者は殆どの事件で合同作戦を執る。

これも自民党が、アメリカの共和党の銃規制開放の圧力に耐えきれないせいもあって、こんな歪な行政構造になっちまった訳ではあるが。

まぁ…こういった政治関連の話は頭が痛くなりそうなので、ここら辺にしよう。

 

「な、何故ですか!!確かにここは東京武偵校からも近いし、尚且つ東京武偵局だってある。だけど、いくらなんでも俺たちだけでってのは。あまりにも特異的過ぎます!!」

 

「だからこそ俺たち(教務科)が出ている。」

 

今回の事件、相当厄介だなぁ。

わざわざ武偵だけに任せるだなんて。初動捜査などを武偵に任せることはあっても、事件そのもの全てを武偵に任せるとは。

基本的にこういう場合、導ける結論はただ一つ。

それは、責任を武偵たちに丸投げするつもりだろう。成功しても武偵なら出来て当たり前、失敗した場合は非難を煽って警察の立場を優位にする。

日本が武偵(DA)ライセンスの国際化に批准してからよくやっている芸当だ。

何せ今や武偵は、武偵“庁”によって管理されているように、政府の一機関に雇われている個人事業主である。

武偵庁の予算の元々は警察庁の予算から出ている。要するに警察は政府のアメリカとの外交交渉の失敗のツケで出来た武偵庁にピザを半分ぐらい横取りされた形である。

警察にはパチンコ屋などの利権は未だあるが、武偵庁に流れていった利権を取り戻そうと警察は躍起である。

同じ省庁にも関わらず敵対関係にある。まるで法務省管轄の武装検事と国家公安委員会管轄の公安0課と同じである。

本当に、この世界の日本は歪な行政構造をしてやがる。武偵という概念が自分のいたと思われる世界になくて本当良かったもんだ。

まぁ武偵という職業があることで、この世界の俺は幾らか真っ当な人生を送れているという点はあるし、そこら辺は少し感謝している。

 

「………分かりました。それじゃ事件の詳細は、新しい情報とかは入りましたか?」

 

とりあえず事件の概要を聞かなきゃ、何も始まらないし聞いてみる。

そうすふと手元にある、A4用紙10枚分の束をこちらに投げつけながら教えてくれる。

 

「まず犯人グループは合計17人と見ていい。全員が銃火器を持ち合わせており、人質は全員手を縛られ、目も塞がれている。情報の真偽についてだが、通信科(コネクト)情報科(インフォルマ)が周囲や内部の通信切断されていない監視カメラなどを調査して整理した結果だ、信用していい。」

 

資料に添付されている写真を見れば、皆が銃火器———アサルトライフルを所持している。

そのアサルトライフルの形は、あまり見かけない姿形をしている。写真を見たら、ある程度どんな銃火器かは分かるように中学校から習っているんだが、どっかで見たことあるような、ないような。

しかしながらアサルトライフルを持っている“だけ”である。特殊な武装は特になし、一般人にアサルトライフルを持たせた…そんな感じである。組織的な犯行の線は無さそうだな。

日本で言えば、昔からよく事件を起こしていた新左翼系のグループや世界各国でテロを起こしている宗教関連の組織たちが起こした事件と今回の事件は全く違う。

そんな組織的犯行では無いにも関わらず17人か…かなり規模が大きいグループだな。

まずよく17人も集めたもんだ。普通は仲間割れの危険性も考えて、10人以下で行うものだがなぁ。

で、確か身代金が68億円だから、犯行メンバーが17人で全員かつちょうど等分した場合は、一人当たり丁度4億円手に入る計算になる。

しっかし4億円か…こう普通は人質が何人いようと100億円とか、こうキリの良い数字というか。何か、さっきから引っ掛かるポイントがあるんだが、それを明確に表現できない。

そもそも一人当たり最低4億円ってのが少ないようにも感じるというか。仲間割れ前提での立て籠もりなら、分からんが、そもそもこんな大規模なグループ犯行ならわざわざ、そんな行為なんかするとは思えん。

いや逆に4億円というのが丁度良いのかもしれない。確か1億円は1万円札で全部揃えた場合は10kg相当になるという。それの4倍である40kgは持ち運ぶにはギリギリの重さ。

途方もない巨額を請求するより、これぐらいのお金が実は合理的なのかもな。

そうこう考えていると、八木山先生が辺りを見回して大声で喋り始める。

 

「よし、これで強襲部隊は全員揃ったな。これからブリーフィングというか、まぁ今後の動向についての説明を始める。」

 

強襲部隊が揃った、と先生は言った。勿論俺が呼ばれる理由なんてそうだろうだろうとは当たり前に分かっていたが、招集された強襲部隊のメンバーの中に一人だけ顔見知りの奴がいる。

強襲科(アサルト)でAランクの胡散臭いイケメンこと、不知火亮。もう所属しているかどうかは不明だが来年には間違いなく公安0課に所属している、何かしらのアクションを起こすかもしれないし、要注意だ。

他のメンバーの3人は全員見たことがない。というか、全員女だ。

 

「とりあえず、今来たのは遠山キンジ、強襲科(アサルト)のSだ。おい、遠山挨拶しとけ。」

 

「よろしくお願いします!」

 

俺が頭を下げると、不知火は笑顔で迎えてくれたが、他の三人は微動だにしない。

正確に言えば、ほんのちょっとだけ首を下げて会釈してくれている。だが目線は三者三様でこちらを向いていない。

ヒス持ちの俺からしてみれば、この上なく有り難い。

ちょっとした顔合わせが終わると、八木山先生が低い声で矢継ぎ早に話始める。

 

「んでお前と今回正面突破部隊(フロントアタック・フォース)を組んでもらうのは、同じクラスの不知火亮だ、詳しくは…言わなくても良いよな?」

 

「クラスメイトなんで知ってます。…あぁ、うん、よろしくな。」

 

「こちらこそ、宜しく遠山君」

 

そう言って不知火と初めて握手を交わした。蘭豹の演習の時にでも、喋ろうと思っていたが、そういやまだ接触すらしていなかった。

意外と手はガッチリしている、少し軟い感じを想像していたが、さすがAランクを取るだけの手をしている。

にしても、近くで顔を見たら分かることだが、こいつ…顔が胡散臭い。優男と胡散臭さが同居している顔だが、俺からは胡散臭さの方が勝っている様に見える。こいつが0課っていう先入観があるから、そう見えるのだろうか?

 

(得物は、SOCOMピストルか。伝説の傭兵かな…?)

 

不知火亮は俺と同じ強襲科(アサルト)のAランクだが、恐らくは実力的に言えばSランクにも届きうる力を持っている。

そう、コイツの最大の武器は、雰囲気がないことだ。不知火と仮に本気で戦うとなった場合には、戦う以前の動きで決着が着くと思っていい。

敵だと思わせないのも、力のうちの一つだ。そして敵と認識した瞬間に倒す力、確かにSOCOMとお似合いだ。わざわざサプレッサーまでつけてやがる。

ただ不知火の性格からして、こんな変態チックな拳銃は選ばないと思ったんだが、違うようだ。

俺のベレッタはそれと比べたら普通な感じではある、まぁ改造予定がある俺が言えた話ではないが。

 

正面突破部隊(フロントアタック・フォース)は以上だ。そして後方突破部隊(バックアタック・フォース)のメンバーはお前から見て、右から斯波田、瀧川、惟住だ。二年生だからあまり知らんだろうがこれから、またこういう場面で出動することもあるだろう。今のうちに仲良くしとくことだな。」

 

「あ、よろしくお願いします」

 

「「「………」」」

 

三人は無言で代わる代わる、俺と握手をする。

恐ろしいほどまでにこちらを無視してくる。そして、なんというか統一された一体感が彼女たちには不思議とある。

もしかして次の修学旅行Ⅰ(キャラバン・ワン)とかで、この三人でチーム組んだりするのかなぁ…

 

三人と握手しながら、ある程度の分析をしてみる。

敬称は省略させてもらって、まず一人目は斯波田。

黒髪の腰まであるロングポニーテール、そして切れ長な紫色の瞳をしていてる。得物は腰に携えている四本の刀、一本一本ずつ見た目が違うように思える。

刀を二本も持つ武偵はいるだろう。だが、四本も持つ武偵とは非常に珍しい。二本持つだけでも重たいというのに、四本も持つとなると、相当機動力は落ちる筈である。

機動力を犠牲にしても強いのか、あるいは機動力の低下が一切ないか…どちらにしても恐ろしい人だ。

そして先程から思っていることがある。それは、白雪はK2であったのだと。世の中にはエベレストがあるのだと思い知った。あれに少しでも体のどこかが触れたらすぐさまヒスりそうである。

 

二人目の瀧川、こいつの恐ろしい点は腰にぶら下げているのがキャリコM100のロングバレルモデルである。

キャリコM100とか中々の変態…いや猛者だ。あの銃は確か、特殊なマガジンの構造上、撃つ度に重心が変わる扱いづらいそうだ。

その銃をこんな時にまで使うとは、とんでもないトリガーハッピーな人間なのだろう。

SOCOM使いの不知火には申し訳ないが、変態のステータスはこの先輩に譲った方がいい。

見た目は、金髪と銀髪が入り混じったボブカットで垂れ目気味で、なおかつ低身長。見た目だけなら、なんでこの人キャリコ持ってなさそうに見えるんだがなぁ。

 

最後の三人目の惟住は、まず謎の筒状の物体を背中に担いでいる。その他に武器と思えるものは特に所持していない。恐らくは筒を使用して棒術や槍術とかで戦うのだろう。

この人に関しては謎の筒より一番目に入る物がある。それは着用しているメガネいや正確にはバイザーであろう。そのバイザー越しでずっと、何かを見ている。

先程からもそうだが、握手の時でさえこちらの顔を見ていないことが視線から分かる。この人はずっと何かをしている、何をしているかまでは分からないが。

三人の中で一番不気味である。分からないが故に不気味である。戦力の把握を出来ないというのは一番恐ろしいものである。

そして見た目はバイザーをさっ引くと、オレンジ色の髪をしていて髪型はウルフカット。そして身長は普通ぐらい。

 

三人が三人とも、強襲には向かなさそうな装備というか。

俺と不知火が普通過ぎるというか。

この人たち、人質救出するどころか、建物ごと潰しそうである。

 

「さて、突入時刻についてたが、こちらが指示を出す。それまでの間は各自、待機地点で待つように。」

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

「なぁ、不知火。今回の件、どう思う?」

 

「どうって?」

 

警察(サツ)が出ないことだよ」

 

不知火と待機場所にいるが、暇なのでちょいと話しかけてみる。

こいつのことだから、恐らくは何かしらの裏事情を知っているかもしれん。

さっき八木山先生と話していて分かったことが一つだけある。それは警察が何故来ないかという質問には答えなかった、という事だ。

警察が来ないから教務科が来るのは当たり前の話だ。だが、俺が聞いてるのは何故来ないのかである。質問と回答が噛み合っていない。

一見納得して忘れちまいそうになるが、肝心なことは分からずだ。

 

「さぁ…ね。僕には分からないことさ。」

 

ちっ、しらばっくれるか。それとも本当に知らないのかもしれん。

にしても郵便局の占拠か。やるならもうちょい、こう大型のショッピングモールあたりでもしないもんなのかね。

犯罪者の心理は分かりたくもないが、普通大人数でこんな事をするのなら、もうちょい派手に確実に大丈夫にするのでは?

これ以上考えても、何も思いつかん。ヒステリアモードじゃ無い時の俺は名探偵ならぬ迷探偵だからな。

 

「お前さ、元々中学どこだったんだよ。俺カブチューだったけど。」

 

「僕は公立の中学出身だったよ。こう見えてサッカー少年だったんだ。」

 

「へぇ〜、そうなのか」

 

銃を弄りながら、話を右から左へと聞き流す。

適当に話題を振ってみたが、そんな大した情報じゃないな。もうちっと、こう…まぁいいや。

時刻は7時43分…勿論PMだ。

空は完全に真っ暗になり、黄色く輝く月は鈍い色をする雲により、見えなくなっている。

インカムは未だ、なんの音も発さない。

この静寂が、無性に嫌になってくる。自分の心音だけしか聞こえないからだろうか。

隣の不知火は緊張している素振りは一切見えない。

その反面、俺は緊張しまくっている。

やはり一番の原因は今がヒステリアモードじゃない事なのだろう。普通の状態の時の自分に自信が持てない。

 

「不知火、お前ってラーメン好きか?」

 

「唐突だねぇ〜」

 

緊張してるんだから、ちょっとでも話して落ち着こうとしてんだよ!!

しょうもない落語でも今は一向に構わない。

 

「う〜ん、僕は塩ラーメンかな。それに———

 

『各員、突入態勢を取るように。』

 

「ラーメンの話はまた今度にしよう、不知火」

 

「そうだね、遠山君」

 

あんなにずっと音を発してなかったインカムから八木山先生の声が聞こえる。

右手にベレッタ、左手にバタフライナイフ。

落ち着けよ、俺。落ち着け、遠山キンジ。

 

『5、4、3』

 

体感時間がこういう時だけはゆっくりと来てはくれない。

物凄く早く感じる。

 

『2、1』

 

隣にいる不知火に軽くアイコンタクトをする。

それに応えてくれる不知火に今は感謝である。

 

『0』

 

「「突撃っ」」

 

 

 

 

今回の章のヒロインはダーレだ!!

  • 神崎Hアリア
  • 星伽白雪
  • 峰理子
  • レキ
  • ジャンヌ
  • 平賀文
  • 中空知美咲
  • 鏡高菊代
  • 望月萌
  • リサ
  • ネモ
  • 蘭豹
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