The ghost mask   作:らっど

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はい、という訳で3話です。
初めての日常会?で文章がめちゃくちゃな所もあると思いますが、楽しんで頂けたら幸いです。
誤字報告ありがとうございます!


日はまた昇る

 

「サイモン兄さん、今日もアイデンティティの整備をお願いします!」

 

「…あのなぁ、自前の銃くらい自分で整備しろ。ただでさえお前の対物ライフルは整備が面倒なんだ」

 

「だ、ダメなんですか?」

 

「…はぁ、今回だけだぞ」

 

 

 

 

「ミサキ、またリストカットをしたのか」

 

「…ごめん、兄さん」

 

「─まあ良い、傷を見せて見ろ。手当てぐらいはしてやる」

 

「…いつも思うけど、兄さんって妙に‘そう云う事’、手馴れてるよね」

 

「自傷行為には一応俺自身も心覚えが有るからな。最も、俺は生傷の方が絶えなかったが」

 

「そう云う意味じゃ無いんだけど…」

 

 

 

 

 

数ヶ月が過ぎた。

最初は警戒心丸出しでサオリの後ろに張り付いていた様な連中だったが、受け入れられるにそう長くは掛からなかった。

 

此処で生活するにあたって俺が何より優先したのは、この少女たちに一つでも多くの生きる術を与える事。

奪う事だけで生きて行けば、きっと破滅は免れない。

 

奪って奪って、何もかもを奪い尽くした果てに待つのは、逃れられぬ死だけだ。かつての俺がそうだった様に。

 

 

知恵を教えた。本来大人が己の子供に与えるべき知恵を。

 

文字の読み書きを教えた。使用している言語としては日本語だろうが一応この世界にも英語などの概念が存在するという。

ブルーアーカイブなる世界が一体何を意味するのかはまだ分からないが、言語という概念が存在する以上元の国との関係性はあると見るべきか。

…1番驚いたのは、使用している貨幣がまさかの日本円だと云う事だがな。

 

ともかくだ。いつだったろうか、誰かに物事を教えるなどという事を最後にしたのは。

 

正直な話、俺は誰かに教えを伝授するという事は得意では無い。何しろ俺自身も誰かから正統な学びを得て生きてきた訳では無いからだ。

寝たきりだった頃は当然だが、サイモン・ライリーとしても兄の通学に掛かる費用だけで家計は逼迫していた為ついぞ学校に通う事は出来なかった。

まともに教育を受けた機会など士官学校程度のものだろう。

 

そんな環境で俺が出来たのは図書館などで本を読み漁る事や、実際に得た経験から学びを得る程度だった。

 

故に、読み書きを教えるという行為が俺に出来るのかという不安があったが、予想に反してサオリたちの要領は良かった。

出来るだけ幼い子供でも理解し易い様に工夫をしたのも有るだろうが、サオリたちは日に勢いを増して読み書きが出来る様になった。その点に於いては俺も大きく安堵したものだ。

 

 

「問題だ。あの看板に書いてある英語は何と読む?」

 

「ガンショップです!gunと呼んで銃、shopと呼んでお店です!」

 

「正解だ。英語が読めて困る事は無い、此処では高い言語能力を持つ者の方が圧倒的に優位に立てる。…所でだ。ヒヨリ、お前銃は持ってるのか?」

 

「お、お恥ずかしながら未だハンドガンしか持ってなくて…」

 

「丁度良いな。実は偶々あの店は余り漁られて無くてな、お前の気にいる銃が見つかるかも知れんぞ」

 

「本当ですか!?」

 

「アンタが他の奴を追っ払ってだけでしょ…」

 

「何か言ったか?ミサキ」

 

「…別に」

 

茶々を入れるミサキに睨みを聞かせて店へと入る。

意外な事に、読み書きについて最も興味を寄せたのはヒヨリだった。

サオリに関しては実用的な事を優先したがっていたし、そもそもミサキは興味を余り示さなかった。

そんな中で率先してヒヨリが読み書きを学んでいた事に触発されて他の2人も学びを入れてくれたのだから、今回の最大の功労者はヒヨリと言って良いだろう。

 

元はと言えば俺のお節介で始まった事だ、努力した者にはそれなりの褒美があってもいい筈だ。

 

 

店の中はホコリを被って所々にカビが生えている。長年放置されていた事が窺えるが、ショウケースやガンロッカーに陳列されている銃の大群は未だに新品同様の艶やかさを帯びている。

 

試しに目立つ様に飾られているHK416を手に取る。

アンビ(両利き)モデルでは無いがフルオート機能付きか。となると相当初期のモデルだろうか。

 

「ほら、コイツはどうだ」

 

そう言って銃を投げ渡す。

ヒヨリは慌てた様にして銃をキャッチしながらこちらに非難の視線を向けるが、その視線はすぐさま銃に惹かれていく。

 

「そいつは俺が知っている限りでは出回っている銃の中でもかなり上等な物だ。性能も悪く無い」

 

「う…う〜ん。強そうなのは分かるんです。けど、出来れば、もっと可愛い銃が…良いです、なんて」

 

「可愛い銃…」

 

可愛い、か。正直、カッコ良さという事は理解できるが、銃に可愛さを求めた事が無い為余り想像が付かない。

確かに昔の俺は無駄にゴテゴテした銃のカスタムや派手な塗装は好きだったが、実戦で使うとなればそうはいかない。

 

とはいえこの世界では銃が身近だ。銃に可愛さを求めるというのも変ではない、のだろうか。

 

可愛い、可愛い…P90やF2000などの丸みを帯びたデザインとかか?

 

それともmp5やAKS74Uなどの短い銃身…などか?

 

 

わ、分からん。

そうあれこれ考えているといつのまにか店の奥に行っていたヒヨリが大声を挙げる。

 

「こ、コレが良いです!」

 

そうヒヨリが指を指したのは店の端っこにポツンと置いてあったガンケースに入った、‘対物ライフル’だった。

 

 

「…マジかよ」

 

組み立てれば全長は180cmにも到達するであろうその巨躯に、武骨なまでの銃身。使用弾薬は人が扱える最大の大きさとも揶揄される20mm口径。通称は、ロマン砲。

特徴的なキャリングハンドルからするに、ダネルntw-20だろうか。

 

…俺も任務の性質上、対物ライフルを使っていた。

 

 

唯、携帯性が優先される為にAW50などの精々50BMG弾を使用する銃を持っていく事が殆どだ。

50BMG、つまりは12.7mm。その威力は20mmとは比べ物にもならない。

 

例えるなら、50BMGが人体にヒットすれば致死傷では無い箇所に当たったとしても死が免れないのに対して、20mmは被弾しただけで身体ごと爆散してしまうレベルだ。使用用途が全く違うと言って良い。50BMGは人体への狙撃、20mmは対戦車や対空砲と言った感じだ。

 

何より、重過ぎるのだ。

50BMG弾を使用する銃が重くて15kg程度で済むのに対して、20mmは20kgを余裕で超えてくる。

50BMG弾を使用する銃はプレートキャリアや小銃を装備した状態でも携帯が出来る程度の重量だが、20mmの方は重過ぎる為2人がかりでパーツを分解して運ばなければならない。

 

簡単な話、実用性が無さ過ぎるという訳だ。

 

一度だけ撃ったことが有るが、その時は敵を撃つ為では無く地面に埋まっている地雷を撤去する為だった。

 

 

一応説明書通りにパーツを組み立てて銃を形作る。

右腕でキャリングハンドルを掴み、持ち上げてみようとすれば意外にも銃は軽々と持ち上がった。

 

キヴォトス人の身体能力の水準が高いのは理解していたが、こうも簡単にクソ重い筈の銃が持ち上げられるとは…

体感だが、25kg程は有るぞ。以前の俺でも相当上振れだろうが、流石に片腕で持ち上げる芸当は出来ないだろう。

 

「─いいのか、コレで?」

 

 

念の為確認を忘れない。というか、可愛いのか?コレが。

聞くのは無粋だと判断し、口を開くのを辞めるとヒヨリは少し重そうに、だがしっかりと両手で銃を持ち上げ大切そうに抱きしめる。

 

「こ、コレが良いんです。私の、私が欲しい可愛い銃です!」

 

 

「──そうか、なら好きにしろ」

 

そんなにも幸せそうな顔をされて仕舞えば、こちらも断る術が無い。それと同時に、少しだけ寂寥感を覚える。

 

剣を持つ者は、剣によって滅びる。分かっているのだ。この世界は、昔とは違う。銃に撃たれた程度で死にはしない。

それでも、この少女を破滅へと導いてしまっている。そんな気がして。

 

そんな想いに封をする様に、口を開く。

 

 

「それで、どうするんだ?そいつの名前は」

 

キヴォトスでは銃に名を付ける風習があると云う。だとすればヒヨリは、何と名を付けるだろうか。

 

「え、そ…そうですね」

 

うんうんと悩んだ末に、ヒヨリは勢いよく顔を上げる。決まった様だ。

 

 

「───アイデンティティ(自分らしさ)。それがこの子の名前です!」

 

 

 

 

 

そして、食料についても大幅に改善を促した。

 

廃墟を漁る事や物資を奪い取るだけでは決して生活は安定しない。

 

幸い俺自身もスラム街出身だ。それに加えて中東での長期間の任務に出ていた事もあり、自給自足に関してはそれなりに知識を持っているつもりだ。

とは言え幼い子供に食べれるからといってその辺の雑草を食わせる事は余りは宜しくない。先ずは廃墟に残された残留物から家庭菜園に利用できる植物を見つける事をした。

 

 

「サイモン、コレ」

 

ミサキが見つけてきたのはプラスチック包装に詰められた植物の種。

直接食べる事は出来ないからと放置されていたのだろう、だが都合は良い。中身を確認する。

 

「ジャガイモの種か、運が良いな。ジャガイモは比較的都市部などの土壌が悪い場所でもよく育つ。よく見つけたな、ミサキ」

 

「...別に、たまたまだし」

 

「そう卑下するな。─そうだ。この種は何処で見つけてきたんだ?」

 

そう聞けばミサキは指を上に差しながら口を開く。

 

「此処から2階上がった所の草が生い茂ってる所だよ」

 

「草、か。いや…もしかすれば」

 

「何、何かあったの?」

 

「いや何。ミサキお前、大手柄かも知れんぞ」

 

 

果たしてその予想は大当たりだった。

ミサキの案内の元、ジャガイモの種を見つけた場所へと向かえば、そこは確かに植物がコンクリートを覆い尽くす神秘的とも取れる空間だった。

廃れ切った場所にも、いずれか緑が生る…か。

 

だが、惹かれるのはその景色ばかりでは無い。生い茂る草に目線を寄せ、注意深く観察する。

 

間違いない、これはパクチーだろう。

それだけではない。イチジクの実の様なモノやほうれん草までも自生している。

恐らく以前はスーパーで云う家庭菜園コーナーでも有ったのだろう。いずれか人がこの地を離れてから芽吹いた植物がこれ程になるまで根付くとは、本当に生命とは凄まじいものだ。

 

 

「─お前のお陰だ、ミサキ。コレは大発見だぞ」

 

「大発見?」

 

 

 

もっと時間が掛かると思っていたがミサキのお陰で大分食料を探し回る手間が減った。後はニワトリの育成や川辺での釣りぐらいで賄えるだろう。

とは言え魚を与えるのではなく釣り方を教えなければならない。植物の育て方や動物の育成に関しても知識がなければ意味が無い。まだまだ課題は山積みだ。

 

そう考えながら換気扇のファンを剥ぎ取り、ロープと合わせて簡易的なナイフを作っている所にヒヨリが喜ばしそうに駆け寄ってくる。

 

「サイモンさん、コレを見て下さい!」

 

 

そして差し出されたのはひとかけらのキノコ。キノコは高い湿度を好む。そして放って置いても勝手に自生してくれる事もある。育てるのは大分容易だ。だが気をつけるべきは、結局は菌類であると云う事。毒を持つキノコがあってもおかしくない。知識が無ければ危険なモノの一つだ。確かに、単色のキノコは食える物が多いとも教えたが、これは…

 

「ヒヨリ、このキノコはオオシロカラカサタケと言ってな。毒キノコの一種だ」

 

「え、えぇ!?」

 

「何をそんなにテンパっている…まさか、喰ったのか?」

 

「食べてないです!」

 

慌て様から見るに、本当に食べていないらしい。

 

「はぁ、お前は食い意地が張ってるからな。その辺の物を食って死なないか心配だよ」

 

「そ、そんな事には、ならない…かも」

 

 

...コイツ、このままだとやりかねんな。

 

「…俺も昔、どうしても食料が足らなかった時にその辺に生えていたキノコを食ったことがあってな、本当に…最悪だったよ」

 

その言葉にヒヨリは分かりやすく動転して、質問を投げ掛けてくる。

 

「ち、ちなみに、その時はどんな感じに…」

 

「視界がぐるぐる回っている様な感覚でな。ろくに歩けなくなっちまった上に、嘔吐も止まらなくなった。今日此処で死ぬんじゃないかと覚悟を決めた程だ。…俺は偶々、毒への耐性が強かったから生き延びられたがまともな人間じゃそうも行かないだろう」

 

因みにキヴォトス人は銃弾などの物理攻撃には高い耐性を誇るが餓死や溺死などは普通にすると云う。随分と偏った能力だが、外部からの衝撃に強く内部からの衝撃に弱いと言った所だろう。その理論で言えばキヴォトス人にも毒は通用すると考えるべきか。

 

「………」

 

 

「そんなにビビるな。そういう事も時にはある。……ん?所で、その背中に隠してるモノは何だ?」

 

「えっな、何でも無いですよ?」

 

「嘘付け、隠してるのが丸見えなんだよ」

 

 

余りにも分かりやすくブツを隠しているので、取り上げて確認をしてみる。

絶望した表情でこちらを見上げるヒヨリを横眼にして、

 

「ああっあ」

 

「女性向けの雑誌か。何でわざわざこんなもんを隠してたんだ?」

 

「だってぇ──」

 

 

うだうだ言っていた事を要約すれば、恥ずかしいからという事らしい。別に雑誌の一つくらい見られた所で構いはしないだろうに。

いや、よく考えれば俺は男の大所帯長年身を置いていたから感覚が鈍っているだけでそれが普通なのか…

 

最大の原因は、戦場に身を置く所謂強い女ばかりを見てきたからではないだろうか。

 

 

ともかく、コイツらも子供では有るが女であるという事には変わり無いか。

こんなスラム街で、多少なりとも欲や興味を持てるのは良い事だろう。言語能力を鍛えながら雑誌越しとは言え情報を得られるのも都合が良い。

 

雑誌をヒヨリへ返す。

 

「まぁ、気になるのなら持って帰れば良いさ」

 

「え、えあ」

 

丁度良く廃墟の探索をしていたサオリとミサキが合流してくる。

 

「どうしたんだ、サイモン?」

 

「何か見つかった訳?」

 

「いや、実はな──」

 

 

その続きを話す事は出来なかった。というのも、

 

「さ、サオリ姉さんは服屋さんの洋服を羨ましそうに観てましたし、ミサキはぼろぼろのクマのぬいぐるに物欲しそうな目線を向けてました!!」

 

「な、何故それを!」

 

「...別にそんな事ないし」

 

苦し紛れにヒヨリが繰り出したその言葉で、場が全くの混乱状態に陥ってしまったからである。

 

わちゃわちゃと絡み合いをしているその様は、少しだけかつての141を想起させる。

誰かもが死んでいき、俺一人がここに立っている。

 

 

 

本当に...本当に。

 

 

「──仲が良いな、お前らは」

 

 

 

こんな日常が続くのなら、どれだけ幸福だろうか。

 

そんな事は有り得はしないのだと、誰よりも俺は知っている筈だというのに。

 

 




サオリの出番が少ない()

本文を書き始めたところで、遂に私用のパソコンが逝ってしまい、iPadでの執筆へ移行しました。
某ウイルスが蔓延する前からの付き合いなので、大往生といった所でしょうか。

私事ですが、大学への進学が決まり、それに伴い引っ越しといった行事を行うことと相成りました。

執筆作業も並行して行なっていくつもりですので、気長にお待ち頂けると幸いです。
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