『魔法少女救済プログラム』 作:ふすまじっく
「ん?なんだこれ」
俺は右手の中指で動かしていたマウスホイールを止め、画面に表示されたその画像とタイトルに視線を寄せる。
時刻は午後九時半に迫ろうとしている頃、実家から帰宅した俺は自室のパソコンでゲームソフト配信サイトを開き、購入したゲームの一覧を眺めていた。
一般的な家庭に生まれ、大したドラマやイベントなどもなく育ち、至って平凡な会社員として人生を謳歌している、それが俺だった。
そんな俺の唯一の趣味と呼べるものがこのゲームだった。小さい頃からゲームは好きで、昔はコンシューマーやアーケードと言った形態のゲームを好んで遊んでいたが、最近はPCゲームをメインとして嗜むようになっていた。
そんな趣味のゲームは社会人となっても継続しており、今も休日や暇な時間があればパソコンと向き合っては、買ったゲームを起動して画面の中の世界に没入していた。
現在はお盆休みという事で、有休も含めて五日程度の休みを取り、購入してまだ遊んでいないゲーム、所謂”積みゲー”の消化を行おうとしていた。
そしてどのゲームで遊ぼうかと悩んでいる俺の視界に、見覚えのないタイトルのゲームが現れた。
「タイトルは……『魔法少女救済プログラム』、なんだそれ?」
青緑色の奇妙な模様のアイコンのそのゲームの名前は『魔法少女救済プログラム』と言うらしい。聞いたことも見たこともないタイトルだ。
今俺が眺めている画面には購入したゲームしか表示されていないはずだ。だが俺はこのゲームを買った覚えがない。
「寝ぼけてた時に買った……とか?」
このゲームを買った経緯を考えながら、なんとなく気になった俺はそのゲームのアイコンをクリックする。するとゲームを開始する前のステータス画面へと移行する。
このステータス画面ではゲーム内で取得した実績の確認やアップデートの情報が見れるのだが……ぱっと見た感じ、実績の類は無く、アップデートも行われていない。勿論、プレイ時間は0分だ。
アップデートがない、という事は最近発売されたゲームだろうか?ゲーム内実績がないのも珍しい。その後ゲームのステータスを色々と眺めてみるが、何だか怪しい雰囲気だ。
もしかして、ウイルスの類?いや、配信サイトを通じて購入されているから、その可能性は低いか……。
「ま、考えてても仕方ないか」
色々と悩んだ末、取り合えずゲームをプレイしてみる事に決めた。購入済みゲーム一覧に存在しているという事は、少なくとも俺の意思で購入をしたゲームのはずだ。ウイルスの危険性も低いように思えるし、何より純粋な”プレイしてみたい”という欲求が勝った。
俺はゲームのダウンロードボタンにマウスカーソルを運ぶと、それをクリックし、ダウンロードを開始しようとした。
それと同時に、画面内に新たなウインドウが現れる。それはゲームダウンロード開始前の利用規約への同意画面だった。
”利用規約
この規約(以下「本規約」)はお客様が『魔法少女救済プログラム』サービス(以下「本サービス」)をご利用いただく際の取り扱いにつき定めるものです。本規約に同意した上で本サービスをご利用ください。
第一条(定義)
本規約で利用する用語の定義は、次に掲げる通りとします。
(1)本サービス 当機関が運営するサービス及び関連するその他のサービスを指す
(2)本コンテンツ 本サービス上で提供される文字、静止画、動画、ソフトウェアプログラム、の総称
(3)アカウント 本サービス利用にあたり当機関が発行するお客様を認識するための文字列、その他標識を指す
第二条(本規約への同意)
1 利用者は本利用規約に同意頂いた上で、本サービスを利用できる――――――――――――――
「えーっと、『同意』『同意』っと」
俺はマウスホイールをグルリと回し、利用規約画面の一番下まで移動する。そして一番下に存在する『同意』のボタンをクリックする。
それから間もなく、利用規約画面は消え、ゲームのダウンロードが開始される。ダウンロードに必要な容量は然程なく、一分程度が経つとゲーム開始可能な状態に変わった。
俺は『プレイ』のボタンをクリックし、いよいよゲームの世界に飛び込むのであった。