ホビアニ転生!! ~世界を救う戦いに巻き込まれてから一五年が経ち平和に過ごしていたらなんか様子がおかしいんですが?~   作:海星めりい

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一 パタッシー団

「み、見つかったパタ!?」

 

「だから、朝はいくら早くても危ないって言ったパタよ~」

 

「最終的にはお前も同意したパタ! それに夜は活動出来なかったパタ! 仕方なかったパタ!」

 

 私が見ていることも忘れて醜い言い争いを繰り広げるこの珍妙な生物(なまもの)どもはパタッシー団という。

 厳密にはパタッシー団の下っ端と呼ぶべきだろうか。

 バカ・アホ・マヌケの三拍子が揃った『戦友機人 パノプロイド!!』の悪の組織の軍団員だ。

 

 ストロフィ博士を頂点とする組織の底辺も底辺の存在なのだが、なかなか憎めないギャグ要員として存在していた。

 序盤は特に彼らを中心として物語が進んでいくので、私にとっても幾度となく戦った馴染み深い存在でもある。

 

 なにゆえ、パタッシー団がここにいるのかは知らないが、その手に持っているうちの商品を持っていかせるわけにはいかない。

 一つ盗まれたら、同じ商品を数十倍は売上なきゃいけないとまで言われる小売業だ。私の店は売れ筋のホビーショップだから、ちょっとやそっと盗まれたぐらいじゃ屋台骨は揺らがないけど、この量を持っていかれたなら今月は赤字確定だ。

 

「と、とりあえず逃げるパタよ~」

 

「そ、そうパタ!」

 

「逃げるが勝ちパタ!」

 

「逃がすわけ無いでしょうが!!」

 

「「「ひえ~、お助けパター!?」」」

 

 ダン! と入口に陣取って般若もかくやという怒りの表情でパタッシー団を睨みつけていると流石にビビったのか、全員で固まって震えていた。

 よしよし、そのまま大人しくしといてよ。

 

 でもどうしようか。今のうちに通報したいけど、こいつら素早いからなぁ。目を離したら爆速ですり抜けられちゃうかも。

 隙を見て、どうにかしようと思っていたら、パタッシー団の一人がとんでもないことを言い出す。

 

「た、たかが女一人に怖がること無いパタ! こ、こっちには人質――いや、商品質があるパタ! 手出しは出来ないはずパタ! それにこのまま捕まるぐらいなら、持っている商品含めて全力で暴れてやるパタ! 」

 

「盗めないくらいなら、壊すってことパタ!?」

 

「それ、かなりの悪パタ」

 

「すでに悪パタ!!」

 

 余計なことを言い出し始めため、こいつら一体どうしてくれようか? と本気で悩み始めたのだが、私の表情の変化を見逃さなかったらしい。

 

「それが嫌ならバトルするパタ! バトルしてこっちが勝ったら見逃すパタ! そっちが勝ったら、俺達は暴れもしないし商品も返すパタ!」

 

「はあ?」

 

 思わず何言ってんだこいつ? と固まってしまったが、

 

「そ、そうパタ!」

 

「パノプロイドで勝負パタ!!」

 

 他の二人も賛同の声を上げて来た。

 どうやら、本気で言っているらしい。

 ああ、うん。そういう世界なんだけど、このレベルのは久々すぎてちょっと感覚麻痺してたかもしれない。

 子供の頃は何でもバトルで解決するのって違和感があっても楽しかったけど……大人になってからもやるってなるとすっごい恥ずかしい気持ちになるのなんでだろうね。

 

 多分、私以外に誰とも共有できない感覚だろうな。道を歩けば、限定商品を巡って~とか腐る程あるし。

 まぁ、バトルで片がつくならそれでいいか。バトルでの約束を不意にする人っていないし。おそらくホビアニ世界の住人にとってはDNAどころか魂に焼き付いているのだろう。

 暴れられて商品を台無しにされる方が困ったので、私としても助かる。

 

「いいよ。じゃあ、バトルしようか」

 

「本当パタ?」

 

「本当だってば」

 

「ほんとに本当――」

 

「しつこい! ほら、さっさと出す!」

 

 そう声をかけつつ、 パノプロイドを呼び出すためのデバイスを取り出して構えた。

 私とほぼ同時に、パタッシー団も構えて――両者がデバイスを構えたところで叫ぶ!

 

「「「「バトル承認! 戦闘領域(バトルフィールド)展開(((パタ)))!!」」」」

 

 その声に合わせて立方体の空間が形成される。パノプロイドたちが戦うための領域は互いのデバイスから射出された極小のドローンによって成り立っている。片方に依存しないのは不正防止でもあるらしい。

 

 今回、形成されたフィールドは……砂漠フィールドか。

 障害物が少なく見通しがいいかわりに砂嵐や砂埃で視界が悪くなるのが特徴だ。

 

「パータッタッタッタ!! 引っかかったパタね? 誰も一人で戦うなんて言ってないパタ!」

 

「承認した以上卑怯とは言わせないパタよ!」

 

「三人がかりでやっちゃうパタ!!」

 

 そんな声に合わせて、三体のパノプロイドがフィールドに現れる。

 出てきたのはパタッシー団が使う量産型パノプロイド『ディアノイド』が三体。

 恐竜と悪魔をモチーフにしたいかにも悪そうなパノプロイドだ。アニメ版だとパタッシー団が最後に行き着くのが『ディアノイド』であって、それ以外にも色々なパノプロイドを繰り出してくるんだけど、ゲームだとモデリングが面倒だったのかこれだけだったんだよね。

 

 観察してみるも特に変わった武装は持っていないみたいだった。

 バトル時のパノプロイドは本体・装甲(アーマー)・武装の三つで構成されていて、本体はそこまでの性能差は生まれない。

 

 精々、性格が違ったり、得意武装が異なったりするだけだ。練習でどうにでもなるから、性格でパートナーを選ぶことも多い。

 装甲と武装、これはもろに性能の差がでる。装甲ごとに防御力や速度、武装のためのハードポイントが異なっているため、同じ本体でも装備によって全然変わってきてしまう。

 

 今回、相手する『ディアノイド』は装甲を厚くしつつ、武装の数を絞ることで速度もそこそこに確保している――という雑魚敵が使う最終機としては非常に優秀だが、おなじみのやつが相手なら十分に対処は可能だ。

 

 数が三体ってことで、圧倒的優位だと思っているみたいだけど――私には通じないんだよねぇ!

 

「出てきて! ()!」

 

「イエス、マスター。敵機、確認しました」

 

「ワタクシ、華麗に推参ですわー!!」

 

「出番でござる。お相手は……おや、随分と懐かしい顔ぶれでござるな」

 

 相手が三体ならこっちも三体じゃい! 独特の名乗りを上げながら出てきたこの三体――はい、ぜーんぶ私のパートナーだ。前世の記憶が蘇ったときに渡された三体だね。

 この三体はいずれもゲーム版のパートナーだったのわけだが……当然ゲームでは一体しか選択できない。

 だが、現実(リアル)である今なら全員を自分の子にしてもいいわけだよ。

 

 機械的な喋り方で出てきたのは中量級パノプロイドのバレッティア。透明感のある銀髪と意思の強そうな赤い目を持つ、サイバーパンクチックな衣装に身を包んだサイボーグ型のクールな女の子だ。愛称はティア。

 

 続けて、お嬢様みたいな言葉遣いで出てきたのは重量級パノプロイドのフレイズニル。見た目は金髪碧眼で白いボディスーツがよく似合う女神型のスタイル抜群の女の子だ。愛称はフレイ。

 

 最後に芝居がかった口調で出てきたのは、軽量級パノプロイドのシノーヴィー。名前の通り黒いバトルスーツに身を包んだ忍者型の男の子で、口元を隠しているがちらりと見える赤みがかった髪と黒い目はとてもカッコいい。愛称はシノ。

 

 

 パノプロイドは軽量級・中量級・重量級の三つの区分に分けられているけど、本体の大きさは変わらない。接続する装甲と武装の規格が異なっているだけだ。

 

「ひ、一人で三体呼び出してきたパタ!?」

 

「これじゃ、数で押せ押せ作戦が無意味パタ!?」

 

「怯むなパタ! 複数体所持しているやつなんかどこにでもいるパタ! それに同時に三体も操れるわけ無いパタ!」

 

「そ、その通りパタ!」

 

「我々のコンビネーションを見せてやるパタ!」

 

 空中に浮かぶカウントがゼロになり『BATTLE START!』の文字が表示された途端に突っ込んでくる『ディアノイド』たち。

 パタッシーたちの言う通り、この世界でパノプロイドの複数持ちなんて珍しくはない。バトルが苦手でコレクション目的の人もいるし、ペットみたく単純に一緒に過ごすのが好きって人もいる。

 パノプロイドはタイトルにもなっていた『戦友機人(リンクデバイス)』の名前の通り、リンク――つながるデバイスだ。操って戦うのにも集中力がいるし、武装や空間も把握しなければならない。それを複数体となるとものすごく大変なのだ。

 

 ま、私はできるんだけどね。

 これは主人公だった絆君や他の誰も出来なかったりする。

 もっとも、あの当時はティア・フレイ・シノの中から一体を使い分けていたけど。

 

 理由としては目立ちたくなかった、というのもあるけど、ストロフィ博士にバレたら過剰に対策を取られたり、何かに利用されかねなかったらである。仕方ないね。

 でも、平和になった今なら使っても問題ないでしょ。おまけに、こいつら相手に負けたくなんて無いし。

 バトルで複数体操る人間がいるなんて想像もしていないのは当然だろうけど……利用できるものは利用させてもらおう。

 フレイよろしく!

 

「真正面から来るだなんて、随分と舐められたものですわね!!」

 

 ババババババババババババ!! とフレイのバックパックのミサイルランチャーから多量のミサイルが『ディアノイド』たち目掛け放たれる。

 肩のキャノン砲からも次々と砲弾が発射され、両手に備え付けられたガトリングと合わせて一人で砲火を形成していた。

 これで全弾発射じゃないんだから凄まじい。

 

 フレイは重装甲重火力をコンセプトにしたパノプロイドで、機動力こそないもののその要塞じみた戦闘力は折り紙付きだ。

 性格的にど派手なのが好きらしく、最終的にこのスタイルに落ち着いた。

 

「な、なんて弾幕パタ!?」

 

「でも、これであいつが操っているのがどれなのかわかったパタ!」

 

「こちらの機動力は低く無いパタ! 直撃だけは避けて突っ込むパタ!」

 

 パタッシー団の『ディアノイド』たちはフレイのミサイルや砲弾を迎撃したり、かい潜ったりしながらその距離を詰めてくる。

 流石にすべて回避とはいかず、ガトリングこそいくらか命中しているが装甲の硬い部分で受けているのか、機動力に陰りはみられない。

おまけに時たまフレイに反撃までしていた。

 

 結構やるな。『ディアノイド』と戦うの久々だけど、こんな強さだったけ? 昔過ぎて、よく覚えていない。

 まぁ、『ディアノイド』の基本武装であるライフルじゃ、この距離のフレイの装甲はそう簡単に抜けないけど撃たれ続けるのも面白くない。

 

 だ・か・ら――行って、ティア!

 

「オーダー受諾。援護します」

 

「パタ!?」

 

 ティアは中量級パノプロイドにして遠・近・中どんな距離でも戦えるオールラウンダー。性格的には私にすべてを委ねてくるような子で、武装をしっかりと選んであげないとただの器用貧乏にもなってしまう。

 でも、あえてどれかに特化させてもいいし、ある意味で一番カスタマイズのしがいがある子ともいえる。

 

 今回は三体同時での運用だからフレイの援護をさせるためにスナイパーライフルや迎撃用のカウンターミサイルなどを装備して出撃させている。

 ティアの放つスナイパーライフルによって『ディアノイド』の一体がふっ飛ばされる。弾幕のなかでは回避するのも一苦労だったようで肩の武装がごっそりと消失している。

 

「二体目!? こっちが発射したミサイルごと持っていかれたパタ!?」

 

「同時に動かしているパタ!? 弾幕も止まないしどうするパタ!?」

 

「う、うろたえるなパタ! まだこっちのほうが数はうえ――」

 

「では、ないのでござるよなぁ?」

 

「パタ!?」

 

 フレイの弾幕を無視するかのようにいつの間にか『ディアノイド』の頭上に存在していたシノが縦一文字に刀を振るう。

 

「パター!?」

 

 不意打ちの一撃は、最後尾の『ディアノイド』の左腕ごと肩のハードポイントにあるシールドを破壊する。本体を機能停止に追い込むつもりで切りかかったのに持っていけたのは左腕だけか。

 肩のシールドとあわせれば二つも武装を持っていけたとも言えるけど、ちょっと予定と違うなあ。

 

「ご主人……どうするでござるか?」

 

「シノはそのまま撹乱しつつ切り込んで! フレイの攻撃に当たらないようにいくよ!」

 

「相変わらず無茶をおっしゃるでござる……が、承知!」

 

 シノは軽量級パノプロイドで高機動近接型。性格は真面目だが、口調に『ござる』とつけるネタキャラみたいな感じの子。見た目と相まって忍者のような戦法を得意としている。ゲーム版ではクセが強く上級者向けの子だった記憶がある。

 

 『ディアノイド』たちは近くを飛び回りながら斬りつけてくるシノのせいで、フレイに近づくことも出来ず。

 かといって、シノをどうにかしようとすればフレイの砲火によって阻害されロクに身動きが出来ない。

 無理やり抜け出してもいいけど、そうなったらなったでティアのスナイパーライフルに撃ち抜かれて終わる。

 これはもう、勝確だね。

 

「ぐぬぬぬぬぬ、ど、どこでミスったパタ!?」

 

「ほとんど何もさせてもらえないパタ……」

 

「鬼パタ。鬼がいるパタ……」

 

 誰が鬼じゃい!? ツッコミを入れたいところだけど、そんなことして今の状況から抜け出されても面倒なので、一気に機能停止に持ち込んで行く。

 

 ドカーン! とひときわ大きな爆発の後、『BATTLE END!』と表示されフィールドが消失する。

 

「さて、これで終わりね……あれ?」

 

 あとは一応、コイツラが逃げないように……と思ってパタッシー団を見るとそこには――

 

「「「パタ~~~~~~~!?!?!?」」」

 

 キュウウー!? と目を回して気絶しているパタッシー三人組の姿があった。

 

「あ、そのシステムは変わってないんだ」

 

 何でパタッシー団が気絶しているのかというと、バトルに負けたからだ。

 アニメやゲームでもあったシチュエーションだが、一応ちゃんとした理由がある。

 

 パタッシー団のパノプロイド――『ディアノイド』は大した戦力にならないパタッシー団の底上げを図るために作られたのだが、性能をあげるために使用者とのリンク機能も強化されており、バトルに負けるとフィードバックの負荷がすごいらしく気絶してしまうのだ。

 

 たまに? そこそこ? 見かける設定のアレだ。決してオカルト的なアレではない。

 え? ロボとつながってバトルすること自体がオカルトだって?

 イッツ・ア・ホビーアニメ。 気にしてたらハゲるよ? 

 私はもうそういうものだと理解することにしてるからね。

 

「ふぅ、まあまあ満足しましたわね」

 

「あれだけ撃って満足しないのでござるか?」

 

「当然ですわ。ワタクシ、妥協はしませんの」

 

「さようでござるか……」

 

 装甲と武装を解除したフレイとシノが何やら会話しているが、うん、仲が良くて結構だね。うちの子達はいつもこんな感じだ。

 なんて、思っていたらティアが私の耳元にやってくる。

 

「マスター、通報を」

 

「ああ、うん。そうね――でも、その前に」

 

 気絶中のパタッシー団を倉庫にあった固定用のロープで縛り上げると、警察へと電話をかける。

 全く、これじゃ開店するのが遅れちゃうじゃん。

 

 というか、警察ってさ。連絡したら多分彼が来るよね?

 私の脳裏にはとある人物が浮かぶのだった。

 

 

 

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