ホビアニ転生!! ~世界を救う戦いに巻き込まれてから一五年が経ち平和に過ごしていたらなんか様子がおかしいんですが?~ 作:海星めりい
通報から数分で到着した警察によって、囲まれる我が『Connecters』。
なんか、大事になっちゃったな。
あ、規制線とか貼るんですね。
犯人はそこですし、被害もないんですけど……あ、はい。そういうわけにはいかないと。
「被害者が犯人ひっ捕まえたっていうから、何事かと思ったら八百望かよ。そりゃ、やれるわな」
ため息を吐きながら、アンニュイな雰囲気を隠さずに歩いてきたのは、スーツ姿の男性。
自分に自信がないと掛けられない赤い眼鏡を光らせる、黒髪ショートのイケメンだ。
胸にはキラリと警察バッジが輝いている。
「その言い方だと、私が暴力女みたいじゃない?」
「……お前のバトルの腕は嫌と言うほど理解しているからな」
警察の口から真面目な顔でバトルとか聞くと思わず笑ってしまいそうになるからやめてほしい。
この会話で分かる通り、このイケメン警察官と私は知り合いだったりする。
最終決戦でも足止め部隊の一人として活躍していた主人公(絆君)のライバル――
ホビーに関わる警察の部署なんて言うと相◯の特◯係とかの捜査権がない部署だったり、掃き溜め扱いされている部署だったり……とか思われそうなところだけど、この世界じゃ違う。
花形の一課、エリートの二課なんて言われることもあるけど、そこにならぶ超エリート部署だ。
元からクールだった顔立ちはより一層クールになっており、警察でも大層オモテになっているのではないだろうか。
最近、そこまで連絡取ってないからわからないけど。
「で、どれくらいかかりそう? うち、今日も営業日で結構いそがしいんだけど?」
「あー、被害は一応ないし、犯人も捕まえたから早く終わらせることはできる……か? 手口とか、侵入経路とか、ゲソ根だとか調べるものがあるから十分やそこらとはいかないが、なるべく早く。最低でも今日中にはなんとかしよう」
本来なら一週間ぐらい規制線だったりするんだろうか? 小説やドラマの知識しかないからわからないけど、犯罪に巻き込まれて一日でなんとかなるならありがたい。
持つべきものは権力機構の友達だね! こう言葉にすると最低じゃないか私?
「それにしても、八百望の店までやられるとはな」
とりあえず、一通りのことは説明したので、店の前に開店が遅れる旨を表示させておこうと思ったのだが、恭也君の言葉が気になってしまった。
ええっと、ちょっと悪いけどうちの店員に表示しておいてもらおう……送信してっと。
「それ、どういう意味? うちの店だけじゃないの?」
「聞こえていたのか……まあ、いいか。オフレコにしてくれ」
「うん。それはいいけど、ほんとにまずいなら聞かないよ?」
こんなんで警察をクビになったとか聞いたら申し訳無さすぎるから。
遠慮してみたのだが、恭也君は首を横に振る。
「いや、殆どはニュースになったレベルだし、一部じゃ噂も出回っているみたいだから大丈夫だ。大っぴらに広められるのは困るがな……少し前に別のショップに泥棒が入ったニュースは知っているか?」
「ああ、そんなのあったね」
ロクにニュースなんて見ない私だが、流石にショップ関連のニュースは覚えている。
ただ、近所のショップではなかったので、うちも警戒しておくかー程度にしか捉えていなかったけど。
「それもパタッシー団だったみたいだ」
「うちに来た奴らってこと?」
あいつら余罪があったのか。もっとボコボコにしたほうが良かったかもしれない。
「そっちは逮捕できてないから、お前が捕まえてくれた奴らかどうかはわからん。それはこれからってところだ。同じやつならこの事件は終わりだが……」
「違ったら面倒ってことね」
「多分、いつもの残党だとは思うがここ数年はパタッシー団の被害はなかったんだがな……そのせいでちょっと上が騒いでいる」
面倒くさそうにぼやきながらメガネをクイッとする恭也君。お似合いの仕草だけど疲れは隠せていない。
どうやら、本当に困っているみたいだね。
まあ、それは私もわかる。
あの当時、パタッシー団の数は非常に多かった。正式な団員は半数程度だったらしい。
しかし、見た目を隠すAR装置とジャマーによって監視カメラを無効にするとかいうストロフィ博士の科学力をこれでもかと見せつけるような装備が支給されたせいで、バイト感覚で参加するやつが多かったという。
バトルの腕がそこまでじゃないためバカにされた人が、『ディアノイド』のようなわりと強力な専用機がもらえるから……みたいな理由で参加するやつも結構いたらしい。
この世界、バトル至上主義とまではいかなくてもバトルを重視している感じはそこかしこにあるから、わからなくもない。
一応、ストロフィ博士がいなくなったのと同時に解散され。大半の人は脱退したはずだけど、時たま昔の感覚が忘れられないのか、事件を起こす元団員もいる。
残党って呼ばれるパタッシー団だね。
今日、事件を起こしたのもそいつらだとは思うんだけど……また、巻き込まれたりしないよね?
そこはかとなく嫌な予感がするのは気のせいだろうか?
黙りこくった私が不安そうにしているとでも思ったのだろうか。
恭也君が柔からな声と一緒に手を伸ばしてきた。
「そんな顔をするな。そのための俺達、警察だろう。あと、今度からなんかあったら、すぐ呼べ。お前は一般市民なんだからな」
そのまま、私の肩に触れようとしていた恭也君の手を遮るかのように三体の影が割り込んだ。
「ご心配には及びませんわー! マスターはワタクシ達がついておりますのでー!」
「肯定。マスターの防衛はお任せを」
「というわけでござる」
その正体とは当然私のパノプロイド達だ。さっきまでの会話には割り込んでこなかったが終わったと判断したらしい。
「……お前らもいたんだったな」
「あはは、ごめんね恭也君。うちの子達が……」
「いや、いい。愛されているようで何よりだ。パートナーとは仲がいいにこしたことはないからな」
わざわざ、そんなことをいうなんて、恭也君の方は喧嘩でもしてしまったのだろうか。
なんて思ってしまたけど、そんな考えはすぐに覆された。
「キョウヤ様、鑑識からの報告が……どうした?」
恭也君の相棒パノプロイドが倉庫の中から、私達の方へとやってきたからだ。
久々に見たエヴァーブルー(恭也君のパートナー)はキレイにメンテされていて、アップグレードされていた。大切にしているみたいだね。
「なんでもない。わかった。すぐに行く。ひとまずはこんなところか……」
「うん。だけど、うちの店さ営業していてもいいんだよね?」
「そうだな、問題ないだろう。ただ、後で再び聞きにいくことはあるかもしれない。そこだけは認識しておいてほしい」
「オッケー。じゃあ、恭也君もお仕事頑張ってね」
そう告げて別れようと振り返ったところで、恭也君から今思い出したかのように問いかけられた。
「そういえば、楔。お前、あのバカとは連絡とっているのか?」
恭也君があのバカなんて言葉で呼ぶのは一人しかいない。主人公である絆君だけだ。
「ううん。最近は全然。メッセージも でも、どうして?」
「やつならなにか知らないかと思ってな」
「ああ、でもヒロ……
愛衣ちゃんっていうのは私達の友達にして最終決戦での足止め組の一人――ヒロインちゃんこと
ただ、絆君とほとんど一緒に動いているだろうから、絆君に連絡つかないなら愛衣ちゃんのほうもつかないかもしれない。
国際的なパノプロイド団体の実働隊として活動しているのが絆君だ。
NPOとかNGO的な団体の一員というのが一番わかり易いかもしれない。インターポール的なのも足されてるかも?
細かくは知らないけどパノプロイドのために世界を股にかけて活動していると思えばいい。
ホビアニ世界だからそんな団体もあるんですよ。
ストロフィ博士の消失とともに思うところがあったのか、絆君は勉強が苦手だったにもかかわらず国際的なパノプロイドのための職業につきたいと言いだしたのだ。
さすが、主人公って思ったね。やっぱり滅茶苦茶カッコいい。
とはいえ、教えるこっちとしてはマジで大変だったけどな! 愛衣ちゃんと一緒に理解させるのにどれだけ苦労したことか……。
その甲斐あって、絆君はバッチリ所属することに成功。
ついでに、愛衣ちゃんとしっかり付き合っていたりする。やっぱり、主人公とヒロインはくっつかないとね。
けっ、リア充がよー。とか一ミリも思わないとは言わないけど、それよりもあの朴念仁というか、子ども脳というか、の絆君を落とした愛衣ちゃんの悪戦苦闘を見ていたので喜びのほうが大きい。
愛衣ちゃんに一回、『楔ちゃんは絆君のことはいいの?』的なことは聞かれたけど、ソッコーで断った。
あ、そういうのいいです。絆君を主人公としては見れるし、カッコいいと思えるけど。恋愛的な意味はないです。
愛衣ちゃんと絆君についてはこんな感じだろうか。
「すぐにでも連絡取ってみる?」
「いや、いい。知っていたら程度の話だ。連絡が来たらこちらにも回してくれ。連絡が来ないということはあのバカも頑張っている証拠だしな」
ふっ、とニヒルに笑う恭也君。バカと言いつつもさすが俺のライバルだなって感じが隠しきれていない様子だった。
前世のお姉様方がこのシーンを見ていたら薄い本が厚くなりそうな光景に心の中で、にまにましつつもおくびにもださない。バレたらムキになりそうだもんね。
「そっか。わかった。愛衣ちゃんか絆君から返事が来たら恭也君に教えるよ。恭也君もお仕事頑張ってね」
「ああ、楔もな」
こうして、久しぶりの会話も終わり、私はうちの子達と一緒に店の方へと歩いていく。
さぁーて! 遅れたけど、『Connecters』開店だぁー! 今日も頑張るぞー!!