ホビアニ転生!! ~世界を救う戦いに巻き込まれてから一五年が経ち平和に過ごしていたらなんか様子がおかしいんですが?~   作:海星めりい

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四 ショップでのバトルは日常です 2

 

 オンラインバトルについての会話などを挟みつつ、『Connecters』主催の非公認大会は順調に進んでいき、ついにその優勝者が決まる。

 

「本日の非公認大会優勝は……小金井 紅里ちゃんです!」

「ふっふーん! 当然ね!」

 

 威張りながらも拍手を受ける紅里ちゃんは喜びを隠せていない。負けた参加者のお客さんも紅里ちゃんの様子に微笑ましさを感じているようだ。

 もっとも、悔しさも感じているみたいだけどね。

 

「楔お姉ちゃん! 早速挑ませてもらうわ!」

 

 拍手が終わるとほぼ同時にビシッと宣言されてしまう。

 

「後日じゃなくていいの?」

 

 小さいとはいえ、大会後なんだから別の日でもいいんじゃないかな?

 紅里ちゃん小学生だし、疲れもあるんじゃないかと思って問いかけてみたのだが、

 

「これぐらい全然、平気よ! それに、楔お姉ちゃんに挑める権利をもらったのに後日に回すなんて、むしろ駄目よ! 眠れなくなってしまうわ!」

 

 ええ……、そんな遠足前のこどもみたいな状態になる?

 年一のイベントだとかアイドルのコンサートじゃあるまいし。

 何人かは気持ちがわかるのか、ウンウンと頷いている人すらいるし。そんなプレミアムじゃないと思うんだけど。

 

 まあいいか。紅里ちゃんがそう言うならバトルといこう。

 ただその前に……

 

「オッケー、でもちょっと待ってね……」

 

 レジが混んでいたりは――と確認するも長蛇の列にはなっていない。

 念の為ミドリさんの方に視線を向けてみるもミドリさんも頷いてくれたし、私がバトルしても大丈夫だろう。

 

「よし、じゃあやろうか? 誰がいい?」

 

 この誰、というのは私が使うパノプロイドだ。紅里ちゃんや常連さんは私が複数のパートナーを使うのは知っているからね。

 要望がなければ私が勝手に決めているが――

 

「中量級でお願いするわ」

 

「オッケー、ティア出番だよ!」

 

「オーダー、確認しました」

 

 紅里ちゃんが選択したのはティアだった。紅里ちゃんは中量級使いだし、同じ種類のパノプロイドで戦いたかったってところだろうか。

 

「相手は楔お姉ちゃんよ! 全力で行くわ……いいわね! メイディール!!」

 

「もちろんでございます、お嬢様」

 

 

「「バトル承認! 戦闘領域 展開!!」」

 

 

 ランダムに選択された今回のフィールドは夜の市街地ステージ。

 一定のダメージで壊れる建物と夜特有の視界の悪さが特徴のフィールド。建物の中には入れないので、互いに隠れて泥沼化することがないのが救いだろうか。

 

 紅里ちゃんのパートナーはメイディール。

 メイド型の中量級パノプロイドで性格は私のティアと似ている。紅里ちゃんを第一に考えて動くタイプで、得意な武装は特に無いが苦手な武装もない万能型。

 紅里ちゃんの操作技術と組み合わせれば、どんな状況でもハイレベルな立ち回りが可能なのは今大会の結果を見ても明らかだ。

 

 あえて特化型にしたティアで挑むのも面白そうだけど……ここは同型の先達として真正面からいかせてもらおうかな。

 『BATTLE START!』の文字と同時に市街地を無視するかのように空中へとティアを飛び立たせる。装甲から漏れ出るスラスターの光は夜のフィールドでは目立つけど、それはあちらも同じこと。

 全体を大まかに眺めていると、市街地の中に不規則に揺らめく光を見つける。

 紅里ちゃん確認っと。

 

 いきなり姿を晒す動きを私がするのは想定してなかったかな?

 紅里ちゃんもこちらを認識したようで、すぐさま建物の影へと身を隠す。スラスターも切ったようですでに光は見えない。

 なるほど、一旦隠れてこちらから目視されないようにしたってことか。

 こっちが気付いていないならその戦法は花丸だけど……残念――もう見つけちゃったんだよね。

 

「ティア!」

 

「了解しました。多弾頭分裂ミサイル発射します」

 

 両肩に取り付けたミサイルから大型のミサイルが二発ずつ放たれる。ロックオンしていないから、大まかな範囲にしか攻撃できないけど――あの位置ならこれは効くんじゃないかな?

 飛んでいったミサイルは途中で分裂してマイクロミサイルとなって、紅里ちゃんの隠れている市街地ごと爆発し薙ぎ払っていく。

 さながらクラスター爆弾だね。

 

「っく!? もうバレていたなんて!? メイディール大丈夫!?」

 

「問題ありません。直撃は避けました」

 

 そう言いつつも装甲の一部が小破しているみたいでダメージはいい感じに入っている。先制攻撃としては上々かな。

 おまけに、姿をさらしてくれたことで武装の確認もできた。メイディールの両手に握られているのは、小金井重工製のアサルトライフルが二丁。

 ただ、発射レートが違う種類を一種ずつってことは安定したダブルトリガーによる中距離射撃戦が狙いかな?

 

 肩には一門のビームキャノン――速射を重視したブライト・インダストリー製。だけど、もう片方は私のミサイル爆撃で吹っ飛んだのか破損して失っちゃったみたいだね。

 装甲はこれまた小金井重工製のものだけど、ハードポイントが少ない代わりに機動力と防御力を両立している傑作装備の一つ。

 初動のミサイルこそうまく行ったけど、こっちのミサイルはあの装備相手だともう一回当てるのは難しいかもしれない。

 

「メイディール! 楔お姉ちゃんのレンジに入らないように注意して!」

 

「かしこまりました」

 

 私が観察し終えるのとほぼ同時に紅里ちゃんが動く。地上にいる意味はないと判断して飛びつつも、こちらへ接近するような機動は一切取らない。

 くわえて、アサルトライフルを交互に発射し、こちらへの牽制もバッチリだ。

 今のところ回避こそ出来ているが、この分だとすべて避けるのは無理だろう。もとより、全部避けて勝つバトルなんてよほどの実力差がないとそうそうないのだけど。

 

「ティア、こっちも反撃」

 

「はい、マスター」

 

 今回ティアに装備させたのは両肩にメテオ・テクノロジー製の多弾頭分裂ミサイル。手には、小金井重工のバーストマシンガンとバーストライフルの組み合わせだ。

 装甲は疾風工業製のもので、装甲自体にレーザーブレードが備え付けられているため、わざわざ近接武装を持たなくてもいいのが特徴だ。

 

 その分、こちらもハードポイントが削られており、武装積載量は少なめ。装甲はやや低め、機動力は良好といったクセがそこそこにあるタイプだ。

 ひとまず射撃戦で削っていくことを選択したが、当然、純粋な射撃戦なら紅里ちゃんの方が優勢となる。コンセプトを統一した装甲と武装の方が戦いやすいのは当然だね。

 

 空中で戦闘機同士のドッグファイトのように射撃戦を繰り返すティアとメイディール。その動きは次第に早くなり、複雑にもなっていく。

 うーん、やっぱり装甲の性能差が出てるな。このまま射撃戦を続けていたら、確実に負けちゃうけど……。

 

 天地が目まぐるしく動き回る中、ティアもメイディールも地表へと近づいていた。

 うんうん、狙い通りだね。

 キチンとこっちが上をとった状態で――

 

「ティア!」

 

「発射します」

 

 そのタイミングでティアに多弾頭分裂ミサイルを射出してもらう。真正面から撃つと流れ弾でこっちだけ食らう可能性があるから、少々外側に向けてから発射させる。

 

「っ!? この機動戦の最中に!?」

 

 ドッグファイト中のメイディールを正確にロックオンするのはなかなか難しいが、ティアと私はずっと視界から離さずに機動戦を行っていた。

 煙幕をされたわけでもないのに、ロックオンを外されるわけがない。

 こんなんでロックオン外されてたら、ラスボス戦(あの戦い)まで生き残れてないってね。

 さあ、しっかりと紅里ちゃんたち目掛けて飛んでいくミサイルだよ? どうするのかな?

 

「メイディール! 迎撃よ!」

 

「はい、お嬢様」

 

 そう、紅里ちゃんが取れる選択肢は分裂する前に潰すこと。回避しようにも地上付近でマイクロミサイルが放たれれば最初のときのように爆風に巻き込まれるおそれがある。

 もっとも、その場合こっちにも被害は出るけど、近さの関係から紅里ちゃんのほうが被害は大きいから問題ない。

 

 そして、紅里ちゃんとメイディールは目標をティアからミサイルへと変更して、迎撃体制にはいる。

 さすが、紅里ちゃん。正確な射撃だ。

 ミサイルの機動では放たれたアサルトライフルの弾丸にあっさり撃ち抜かれるが……当然、大きな爆発が起きる。

 

「メイディール、無事!?」

 

「はい、問題ありません……しかし、相手が」

 

 一時的に視界を外したこととミサイルの爆煙で私達の姿は見えていないはず。

 なら、そこを突くしか無いよね!

 

「左に影! 撃って、メイディール!」

 

「はい!」

 

 姿煙に紛れて突っ込んでくると思ったんだろうけど――

 

「ミサイルがもう一発!?」

 

 残念、ティアじゃありませんーってね。

 

「くっ!?」

 

 肩のビームキャノンでミサイルを撃ち落とすことには成功したものの、爆発と爆風によりダメージを受けながら吹っ飛ぶメイディール。

 そこを逃す私ではない。

 

「ティア、そこ!」

 

「了解です、マスター」

 

 地上へと降りて隠れていたティアがスラスターを使って、一直線に下からメイディール目掛けて飛び上がる。

 

「さらに下から!? しかも速い!?」

 

 ふっふっふー、すでに肩のミサイルはパージしてるからね。さっきまでとは速度が違うよ、速度が。

 

 装甲に備え付けられたレーザーブレードを起動して、そのままメイディールへと振るう。

 不意打ち気味の一撃はバッチリその体躯を捉えたかと思ったが――

 

「パージよ!」

 

 紅里ちゃんがとっさの指示を出す。

 肩のキャノンをパージして盾にすることでレーザーブレードから逃れたけど……ごめんねこの武装は装甲の左右両方についているんだ。

 

「これで、おしまいです」

 

 ティアの振るったレーザーブレードはメイディールの胴体を切り裂き――そのまま、機能停止判定がくだされる。

 

 

 『BATTLE END!』

 

 

 はい、私の勝利―!

 観戦していたお客さんや参加者からパチパチパチと拍手が送られてくる。

 いやーありがとうございます。嬉しいけど、毎回恥ずかしいんだよねこれ……。

 

「あぁー!? 最初に肩部ショットガンが破壊されてなければ、勝てたかもしれないのにー!?」

 

「申し訳ありませんお嬢様……」

 

「メイディールのせいじゃないでしょ! 私のせい!」

 

 ぐぬぬ、と不満そうな顔こそしているものの、泣き出すようなことはない。紅里ちゃんは私に何回も負けてるから、悔しさはあっても悲しみは無いんだろう。

 

「いやー、いい勝負だったね。紅里ちゃんも強くなってたし、見事だったよ」

 

「どこがよ! 楔お姉ちゃん、全然本気じゃないじゃない! 両手の装備はともかく、他はどっちかっていうとネタ装備でしょ!」

 

 げっ、バレてる……。

 

「誰でも気付くと思います、マスター」

 

 ティアからもツッコまれてしまった。

 一応、装甲も肩のミサイルも普通に使える装備なんだよ。うん、本当に。

 ただ、この二種を組み合わせるのはあんまりシナジーないけど。

 

「あー、いやたまにはいいかなぁーって思って使ってみたんだけど……ちょっと、クセつよで売れ残っている装備だし」

 

「正直、こういう装備はシノかフレイの方が気に入りそうですね」

 

 ティアは真面目で堅実な装備が好きだからなぁ。シノとフレイは自分が好きなのを好きなだけ使いたい派だから趣味にあってれば何でも喜ぶ。

 

「うう……でも、どんな武装でも使いこなせるのはカッコいいわよね――」

 

「確かに、お嬢様も私もそこは見習うべきかもしれませんね」

 

「い、いや別にそんなんじゃないよ?」

 

 い、言えない。久々にゲームでもたまに組んでいたクソ武装同士の組み合わせを使って見たかっただけだなんて……。

 

 ちなみに、私が使ったことで、メテオ・テクノロジー製の多弾頭分裂ミサイルと疾風工業製のレーザーブレード付き装甲がこの周辺でちょっと流行ったのだが、ほぼ全員が使いにくさにすぐ使用をやめてしまった。

 うん、でもそのチャレンジ精神は大事だと思うんだ。

 決まった装備だけじゃなくて、クセ強武装を探すのも楽しいよ! パノプロイドバトルは無限大だね!

 

 とか、アニメの次回予告風に言ってみたりしておこう。

 うちは潤ったからオッケーってことでめでたしめでたし。

 

 

 

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