ホビアニ転生!! ~世界を救う戦いに巻き込まれてから一五年が経ち平和に過ごしていたらなんか様子がおかしいんですが?~   作:海星めりい

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六 誰もが目を奪われるためには可愛さだけじゃだめ 1

 

 

「ここがあの女のショップにゃ!」

 

「その言い方はーやめた方がいいと思うよー?」

 

 一人の少女とパノプロイドが『Connecters』の看板を見上げていた。

 一拍おいて、顔を見合わせた少女とパノプロイドはニッと笑って、意気揚々とショップの入口へと歩いていくのだった。

 

 

**********************

 

 

「いらっしゃいませー」

 

 ミドリさんの声が店内に響く。

 ドアが開いた音もしたし、だれか来たみたいだね。私は商品棚の陳列中だから、見れてないけど今日も好調だねー。

 この調子で売上げが良ければ二号店……ゆくゆくはホールディングスにしちゃうとかもいいかも。

 なんてことを考えていたのが良くなかったらしい。

 

「楔さん? 今、並べたところズレてましてよ?」

 

「え、ホント? ごめんごめん、すぐ直すね」

 

「こういうのは、見栄えが大事なのですわ。注意してくださいまし?」

 

 本日の私のパートナーはフレイだ。

 三体のパートナーを持つ私は日によってメインを変えている。

 といっても、全員店内にはいるしいざとなったらいつでも呼べるから、そこまで意味のあるものじゃないけど。

 フレイに言われた通りズレていた、武装セットを並び直していると、

 

「え、店長ですか? 店長―!」

 

「ん?」

 

「お呼びのようですわね」

 

 ミドリさんが私のことを呼ぶ声が聞こえた。

 私にお客さん? 今日は仕入れの日でもないし、新商品のために営業さんでも来たのかな。

 見知らぬ中小企業の人とかが結構、営業に来るんだよね。うちの装備置いてくれませんかーって。大型のチェーン店じゃそうそう置いてもらえないだろうから来るんだろうけど、うちだって売れるかわからないものを仕入れるわけにもいかないもんね。

 

 たまに掘り出し物みたいに良い装備があるし、全く受けないとその会社が大きくなったときうちに卸してくれなく可能性もあるから、受けるときは受けるんだけど……っと。

 とりあえず、今の棚を並べ終わったところで、小走りでレジへと移動する。

 

「はいはーい、ただいま……」

 

 そこにいたのはニット帽を深く被り目線を隠しマスクをした長髪の少女。髪色は私と同じような黒だけどちょっと青みがかっている――濡羽色っていうんだっけ?

 一見、不審者でも来たのかと思ったけど……そういうわけでもなさそうだ。

 

 というか、少女の肩に乗っているパノプロイドに見覚えがありすぎる。

 あの子、なにしに来たんだ?

 私を見つけた少女はマスクとニット帽に手をかけて、その顔をあらわにする。

 

「やっほー、お姉ちゃん。お店、繁盛しているみたいだねー?」

 

「やっぱり……(むすび)か」

 

 マスクの下から現れたのは、親の顔よりも見た我が妹の顔――八百望 結だった。

 

「もう! 可愛いー妹がやってきたのにそのそっけない態度はないんじゃないー?」

 

「そうにゃそうにゃ! せっかく来たにゃー」

 

「あら、小煩い小動物もいましたのね」

 

「げっ、乱射馬鹿(トリガーハッピー)にゃ!?」

 

「だぁれが、乱射馬鹿ですか!?」

 

 あーあーあー。私と結が会話する前から、パノプロイド同士でヒートアップしちゃってるよ……。

 結のパートナーであるピクトキャットと私のフレイは相性が悪い。性格的に合わないだけなので、本気で嫌っているわけではないのだが顔を合わせるとすぐこんな感じになってしまう。

 

「あーもー、話が進まないからフレイ一旦ステイ」

 

「楔さん!? ワタクシ犬ではありませんでしてよ!?」

 

「こっちもだよー。ピッキー」

 

「う、了解にゃー」

 

 とりあえず互いのパートナーを大人しくさせたところで、結の要件を聞くことにする。

 

「で、なんでまた急に来たの?」

 

 まさか、姉の顔が見たくなって来ました、とかいうタイプじゃないのは私が一番良く分かっている。

 普通に賞品を買いに来た可能性もあるけど、それならわざわざ私と話す必要なんてないだろう。

 

「わあー、さすがお姉ちゃん。話が早いー」

 

「はいはい、さっさと言う。一応、こっちは仕事中なの」

 

 今日は、そんなにすること多くないけどね。

 

「えっと今度ねー、番組でねー、若手プロとの対戦企画があるのー」

 

「そういうの言っていいわけ?」

 

「お姉ちゃんなら口外しないでしょー」

 

 結が口にしたプロていうのは、パノプロイドバトルのプロリーグに所属している人を指す。

 といっても、簡単にプロになれるわけではなく、プロ予備軍のリーグ戦をこなした後、プロリーグに所属するって感じかな。

 早い話が将棋や囲碁と同じだと思えばいい。

 

 当然プロでもランク分けされており、A~Dまで別れている。二つ名みたいなタイトルもあるんだったかな。

 ものすごく不思議に思えるかもしれないが、うん、ホビアニ世界だからね。人気は将棋や囲碁よりも高くてもおかしくないんだよ。私は未だに慣れないけどね。

 

「そういうのって、『きゃ、私ーすごい頑張ったけどー、駄目だったー。くやし~い』っていうのをアピールするんじゃないの?」

 

「私にわざと負けろってー?」

 

「アイドルってそういうもんでしょ?」

 

「それ偏見―。私達は本格派パノプロイドアイドル『ジーニアス7』だよー!」

 

 目の高さで横ピースとかしてキメ顔してるけど、そういうのいらないって。

 そう、この妹――結は現役高校生アイドルだったりするのである。

 私から見ても愛嬌がある結は帰り道スカウトされたらしく、私や両親に相談した後、事務所に所属してアイドルとなった。

 過去には『お姉ちゃんも姉妹アイドルとして一緒にやろうよー』とか誘われたが、絶対にいやだったので断っている。

 

 というか、結の所属しているアイドルってそんな感じだったけ。

 自分らでジーニアスとか名乗るのどうなんだ? とかは思わずにはいられないが、実際所属メンバーはリーグで敗れたプロ落ち組やアマ大会で好成績を収めた人員で構成されているらしく、バトルが強いアイドルして今密かに人気が上がってきているという。

 当初、結はこのメンバーに入る予定はなかったらしいのだが、私仕込みで鍛えたせいか事務所内でも強いと噂されており、メンバー候補とバトルさせたところ完勝したことにより所属と相成った。

 

「はいはい、可愛い。可愛い。そもそもなんでプロとやり合う羽目になってんの?」

 

「お姉ちゃんさー、私達の番組見てるー?」

 

「ネット配信のやつ? あそこ加入してないから見てないよ」

 

「ひどーい!? 妹の番組くらい見てよー」

 

「わかった、わかった。今度見ておくから、今は説明する、ほら」

 

「絶対だよー。それでねー――……」

 

 結から聞いたところによると、結たちの番組ではゲストを呼んで対戦するという……まあ、ありきたりな内容の三〇分番組らしい。

 ゲストには最近話題のアマ参加者や配信者、そのほか趣味で強いと噂のタレントや芸人など様々な人と戦ってきたのだが、結だけは誰にも負けないまま半年が過ぎてしまい、番組としても問題になってきたということらしい。

 

 あー、幼い頃からバトルといえば、私や絆君一味(主人公ズ)とかいう手加減してもこの世界のトップクラスであろう人とばかりやっていたからなあ。さもありなんって感じかな。

 さすがに完勝がまずいのはこの妹でも分かっていたらしく、多少は手を抜いて戦っていたらしいのだが、それでも勝ってしまったとのことだった。

 でしょうね。結がその程度の相手にちょっと手を抜いたところで負けるはずもない。

 

 うまく手を抜ければいいけど、これ以上手を抜くとあまりにもわざとらしすぎるし、視聴者にも確実にばれてしまって批判の的にも繋がりかねないため、プロを呼んでみることにしたらしい。

 台本だとか八百長だとか、が頭によぎると面白くないもんね。

 若手は露出も少ないからプロ側にもメリットはあるし、そこまで出演料も高くないとのことだが――

 

「それ、改めて聞いても呼んだプロを倒していいのかわからないんだけど?」

 

「んー、可愛さをアピールするなら負けたほうがいいかもだけどー、すでに色んな人を倒しちゃっているからー、若手プロなら倒しちゃったほうが話題になるかなーって」

 

「一応、考えているわけね」

 

「もちろんだよー」

 

 ホントか? と問いかけたくなるぐらいぽやっとした雰囲気を醸し出しているが、こう見えて意外とクレバーなところがある結だ。問題はないのだろう。

 

「で、相手と使うパノプロイド、使用フィールドは?」

 

「若手プロでも上位の重量級使いの神楽(かぐら)さんて人―。フィールドはランダムだよー」

 

「なんか、どっかて聞いたような……」

 

 端末で検索してみるが、見た目に見覚えはない。紹介動画を見ると、私のフレイとは違う戦い方だが、重量級使いなのは間違いなかった。

 

「戦闘スタイルはーお姉ちゃんとちょっと違うけど、お姉ちゃん軽量級~重量級どころか装備含めて何でも使えるでしょー? だから仮想敵(アグレッサー)にちょうどいいかなってー。えへへー、頼める?」

 

 姉をつかまえて、仮想敵とはこの妹もなんというか図太い。

 まあ、妹の頼みだ。叶えてあげるのも悪くない。

 店内の様子を見渡しても、お客さんが捌ききれないとかもないし、特に問題はなさそうだから……いいか。

 

「わかった、わかった。相手してあげる。フレイ、今日はちょっといつものスタイルじゃないけど……ごめんね」

 

「……仕方ありませんわね。たまにはこういうのも悪くないと思うことといたしましょう」

 

「普段のスタイルじゃにゃいなら、あちしにも勝機があるにゃー」

 

「あら、小動物ごときには負けませんわよ」

 

「ぜってー勝つにゃ!」

 

「ふたりとも準備バッチリだねー」

 

「バッチリっていうのこれ? まあ、いいわ。久々だけど手加減無しで行くよ、結!」

 

「うん、お姉ちゃん! よろしくー」

 

 

 

「「バトル承認! 戦闘領域(バトルフィールド)展開!!」」

 

 

『BATTLE START!』

 

 

 私と結の久々のバトル――練習試合が始まるのだった。

 

 

 

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