ホビアニ転生!! ~世界を救う戦いに巻き込まれてから一五年が経ち平和に過ごしていたらなんか様子がおかしいんですが?~ 作:海星めりい
「さて……」
選択されたフィールドはサイバースタジアム。近未来的な電子のコロシアムといった感じのステージ。エリアには非破壊性のオブジェクトが少々点在しているだけのシンプルな作りだけど、見栄えもよく人気のあるステージの一つだ。
今回、フレイの装備はいつもの装備じゃなくて、結との練習用の装備だから立ち回りも変える必要がある。
普段のフレイは低機動力のかわりに重装甲重火力という戦闘スタイルだが、結が相手をするプロは重量級の中でもバランスを重視したスタイル。
私のスタイルが固定砲台なら、プロの人は戦車か装甲車って感じだろうか。
前世のゲームでも確立されていたスタイルの一つだが、武装の数も増えているためゲーム通りのスタイルというわけじゃない。
まぁ、私はこっちも使えるけどね。
そんでもって、全く同じではないけどプロの人とほぼほぼ同じ装備で構成させてもらった。
装甲は重量級の中では軽めでハードポイント多めのブラストソニック社製。手には
さらに、肩部にはフレキシブルラウンドシールドを二つ、背部にはメテオ・テクノロジー製の三連装垂直ミサイルと二連装ロケット砲。
太ももには最終手段の近接武装としてビームナイフが二本格納してある。
ガトリングとミサイル、それにロケット砲で遠~中距離を維持しながら、近づかれた場合はショットガンで迎撃。機動力によって下がった防御力はフレキシブルラウンドシールドでカバーするっていうたくさん武装を積める重量級の強みを活かしているスタイルだが、個人的には好みではなかったりする。
これは要するに、弱点を消すタイプの戦い方なわけだ。
私は重量級の強みに特化させて押しつぶすのが正解だと思っているので、機動力なんてほぼほぼ無用。火力と装甲こそが大正義なのだよ。
まあ、前世だと重量級の重さを活かして格闘戦に特化させている人(ほぼネタだが一撃必殺みたいなもの)もいたが、あれはあれで結構面白い。私は絶対やらんけど。
「とりあえず盾を構えながら前進するよ」
「わかりましたわ!」
あまりこっちから移動するのもどうかと思うけど、見通しは結構いいフィールドだ。
装備的に遠距離からチクチク削るスナイパータイプってわけでもないし、進む方がまだましってところだろうか。
さてさて……どこからくる?
ステージの半分ほどまでやってきたが、ピッキーの姿はまだない。
「いませんわね……」
「ちょっと、判断ミスったかな?」
ここまで来て、視界の端にすら捉えられないってことは、結のやつかなり慎重に進んでいるか、うまく隠れながら来てるってことだろう。
そうなると、厄介だな。
一度、Uターンしてでも撤退すべきか、それとも無理やり進むべきか――ちょっとでもそんな風に考えたところを狙われた。
気づいたときには真横から極光が飛んできていた。反射的に飛び退くも、完全に避けるのはこの機動力じゃ無理だ。
「――フレイ、ガード!!」
「っ!?」
私の叫びに合わせてフレキシブルラウンドシールドを動かしたフレイはシールドで極光を受け止める。
反射的に避けようと体を動かしたのが功を奏した。
極光に対して正面から二枚のシールドで受け止めることに成功する。
おそらく、片方だけで受け切ろうと思ったらシールドを貫通して確実に装甲までやられていただろう。
「っち、武装の一つくらい持っていきたかったにゃ」
「ぶー、完全な奇襲だと思ったのにー」
不満そうな声を上げながらピッキーが飛び出してくる。手には大型のライフルが握られていた。あれが先程の一撃を放ったのは間違いない。
結め……また厄介なものを使ってきたな。
ピッキーが持っているのはチャージ式ビームライフル。
チャージするには時間が掛かるものの、フルチャージ後の威力は絶大だ。
じっくり、時間を掛けてやって来ていたのはこのためだったということだろう。
ノンチャージでも発射出来るが、その場合はさっきみたいな威力はでないのが救いだけど――
「やってくれるなあ!? フレイ状況は!」
「フレキシブルラウンドシールドが損傷、両方ともほぼ耐久値がありませんわね」
機動系重量級とでも呼ぶ、このスタイルの肝であるシールドがほぼ使い物にならなくなったとなると短期決戦を狙うしかない。
シールドの方は攻撃を受けれて数発……威力によっては一発持たないってところか。
「フレイ、詰めるよ!」
「それそれそれ、ですわー!」
全力でスラスターを吹かしつつ、加速する。おまけにガトリングとミサイル、ロケット砲全てを使っての突撃だ。
「にゃ、にゃー!?」
「落ち着いてー、ガトリングは必要経費と割り切って当たっていいよー、でもロケット砲は絶対当たっちゃだめー」
やっぱり結なら見抜くよねー。射程範囲外のガトリングは威力がそこまでじゃないから、中量級であるピッキーの装甲でも十分受けられる。
的確な判断だけど、どうするつもりなのかな?
ピッキーが持つ武装は大型チャージ式ビームライフルと装着型レーザーブレード。肩部にレーダーと……あれは小型のビーム砲のはず。
つけている装甲はカグツチ・コーポレーションのバランス型。速度を重視した装備みたいだけど、武装的に中距離射撃戦はそこまで得意じゃなさそうな感じだ。
根本的な機動力では負けているため機動戦に持ち込まれたらキツイけど、一応ショットガンがあるし、対応は出来るはず。
おまけに、ミサイルを撃ち落とすのは肩の小型ビーム砲だけじゃどうにもならないはずだからダメージレースでの勝負になるだろう。
シールドでの防御ができないといえど、こっちは腐っても重量級。装甲の分厚さならこちらが上だ。
結め……このままジリ貧に追い込んじゃうからね。
なーんて、考えたのが良くなかったのだろうか。
ガトリングの射程内にあと少しで入ろうかと言う時に結が怪しげな笑い声をあげる。
「むっふっふー、お姉ちゃんならそう来ると思ってたよー。ピッキーばらまいちゃってー」
「はいにゃ! はいにゃ!」
結の声にあわせてピッキーがステップを踏みながらフィールドに光の玉をばらまいていく。
げっ、結のやつ!? またマニアックなものを隠し持ってたな!?
結が起動したのはフレアデコイと呼ばれる武装だ。
読んで字のごとく、戦闘機やヘリコプターなんかで使われるミサイルを誘導する囮だ。
ミサイルはパノプロイドがマシンガンやライフルなんかで撃墜することが多いし、
ビームキャノンとかで纏めて迎撃したりするから、正直言って、全く想定していなかった。
アニメだと未登場だったし、ゲームだとミサイルしか積んでいないようなネタキャラ以外にはそこまで効果的な装備じゃないから覚えていなかった。
さらに、対戦が始まるまで相手の装備がわからない現実だと、相手の装備にミサイルがなかったらフレアデコイがその時点でデッドウェイトになっちゃうから装備している人は殆どいない。
ただ結の場合、私が仮想敵として重量級を使うって分かっているから、それを見越して積んでいたってことだろう。
機動力で撹乱してくる相手への対策としてなんらかのミサイルを装備しているのは割と当たり前だからね。
まさか、装備の構成段階から対策されるとは……。
こないだのパタッシー団相手にも余裕だったから、ちょっと腑抜けてたかもね。
結相手でよかったと思っておこう。
「ミサイルがほぼ無効化できればー、こっちが有利だよねー。ガチ装備じゃないとはいえ、本気のお姉ちゃんにー、勝利かなー?」
「にゃにゃ! シールドもいただきにゃ―!!」
「楔さん!? どうしますの!? 距離を取られてましてよ!?」
おまけに肩部のビーム砲でフレシキブルラウンドシールドが二つともやられた。
防御に使っていなかったのにわざわざ壊しに来たということは、私がここぞという場面で防御に使うことを想定して破壊したということだろう。
さらにガトリングの射程内にいれるのはほぼほぼ不可能な状況……完全にピンチってやつだね。
その割に落ち着いているのは、世界がかかった戦いってわけじゃないのと、あの最終決戦に比べたらちっとも大変じゃないってことだ。
本来の装備じゃないからって、結に負けたなんて知られたら絆君や恭也君に笑われちゃうかも。
それはちょっと……いや、かなり腹が立つ。
だから――
「フレイ、パージ、パージ、おまけにも一つパージ!」
「わ、わかりましたわ!?」
フレイに両腕のガトリングと肩のミサイルをパージさせる。
間髪を入れずにフレイを前に進ませる。
「そのまま、突っ込め!!」
重量のある武装を三つもパージしたフレイは速度が先程よりも五割増といったところ。中量級にも負けていない速度でピッキーとの間合いを一気に詰めていく。
「にゃにゃにゃ!? 結、マズイにゃ!?」
「落ち着いてー。自棄になったー、突撃だからー、しっかり対処すれば大丈夫―」
「了解にゃ!」
ピッキーのビームライフルと肩の小型ビーム砲からビームが飛んでくるけど、あまいあまい! ダメージとして蓄積はしても重量級の装甲ならまだやれる。
「っ!? やってくれましたわね! ぶっ放しますわよ!」
フレイもダメージを受けながらも軽量ショットガンで反撃する。
ドパッっとばらまかれた弾丸は、ピッキーの装甲や武装に降り注ぐ。全弾命中とはいかないけどこの距離なら四~六割は当たるなら十分なダメージソースになる。
「痛いにゃ!?」
よしよし、悪くない状況まで持っていけた。
ただ、このままだと確実に勝てるとは言えない。それは結も分かっているはず。
ピッキーも右に左に逃げてフレイを引き剥がそうとしているけど、こちとらもっと機動力がない重装甲で普段は戦っているのだ。振り切られてたまるもんですか……ってね。
結としても勝てるかわからない勝負を続けるのは嫌なはずだ。
そうなると、選択肢は限られてくるはず。
「このままじゃーちょっと微妙かもー。ピッキー、ショットガンを狙ってー、武装を一個奪っちゃおうー」
「わかったにゃ――痛!? この、うざいにゃ!」
「楔さん、小動物の狙いが……」
「気にしないで、距離を詰めて! 全力で!!」
フレイはピッキーの狙いが軽量ショットガンの破壊にあることに気付いたみたいだけど、それよりも接近を優先させた。
フレイがショットガンへの直撃を避けながらも頑張ってくれていたが、接近した以上避けるのは容易でなく左手の軽量ショットガンを失ってしまった。
こちらが少しだけダメージレースでは勝っているとはいえ、攻撃用の武装を一つ失った以上、この先は同じように戦っても負けるだけだろう。
「よし、これでー」
「こっから、逆転にゃ!」
「っく!?」
フレイは失敗した……みたいな顔をしているけどこれでいい。
別にここで勝負を決める気はなかった。本命はこの後だもんね。
私としては軽量ショットガンを結とピッキーに破壊して欲しかった。こっちがパージしたら何かあるのかもと思って警戒されるから、これ以上のパージはしたくなかっただけ。
軽量ショットガンは軽いといっても、当然重さはある。それが失われたってことは速度に影響する。
さらに速度の上がったフレイはピッキーへと接近する――それこそ、触れられるほどに。
「今だよフレイ、組み付いて!」
「!? わかりましたわ!」
「にゃにゃ!? 離すにゃ!? お前とくっつくなんてごめんにゃ!?」
「楔さんの指示じゃなきゃワタクシだって嫌ですわよ!?」
「ピッキー!? そんなこと言っている場合じゃないよー。なんとか、はずしてー!?」
「そんにゃこといったって……」
「フレイ! 力のかぎりロケット砲発射!」
「! くたばりあそばせええええ!!」
ややカオスな状況になったところで、残していた最後の武装を使う。
なんのためにこれだけパージしなかったと思っているのか。ここで使うためってね!
ドドドドドドドドドン!!! と、一際大きい爆発音と爆煙があがり、あたり一面の視界が悪い。
「フレイ、大丈夫だよね?」
「ええ、ロケット砲と軽量ショットガンは失いましたが無事ですわ。装甲も一応残っていますわね」
装甲は八割方損傷しているがフレイは無事だ。流石にスラスターもやられているのか本来の機動はできそうにないが動けないわけではなささそうだ。
ただ、フィールドが消失せず、戦闘終了のアナウンスも聞こえないということは……。
「にゃー……こっちはまだ武装は残ってるにゃー!!」
「ピッキー、いっちゃってー!」
ピッキーが壊れていなかった装着型レーザーブレードをフレイ目掛けて振るってくる。
こちらと同様かなりのダメージをくらっているのか速度はあまりないが、大ぶりのレーザーブレードは残り二割の装甲ぐらいなら一瞬で持っていってしまうだろう。
当たればだけど……ね。
「ごめんあそばせ――こちらにもまだ武装は残っていてよ?」
「にゃ、にゃー!?」
振るわれたフレイのビームナイフがピッキーの胴体へと吸い込まれるように突き立てられた。
いぇーい、大勝利―。
『BATTLE END!』
「うぐー、悔しいー。お姉ちゃんに勝てると思ったのにー」
「残念だったね、結。そう簡単に勝てるほど、お姉ちゃんはあまくないってね」
「ええー、結構―、追い込んだようにー見えたけどー?」
む、中々にするどいな。確かにちょっとやばかったのは認めるけど、それを顔に出すのはなんか負けた気分になるから、絶対にださないようにする。
「とにかく。どう、満足した?」
「そうだねー。プロって言っても若手だしー、お姉ちゃんより強くないだろうからー、いい練習になったよー」
「なら、よし」
「おほほほほほ、やはりワタクシの勝ちでしたわね。本来の武装じゃなくても、小動物には負けないのですわー」
「ぐぬぬぬぬ。確かに負けはしたものの、お前はこっちの戦法に焦ってたにゃ。お前のパートナーにしてやられただけにゃ」
私と結が話しているあいだにもフレイとピッキーの相性悪コンビもいつもの煽りあいをしていたみたいだけど、ピッキーの最後の一言はマズイんじゃない?
確かに焦ったフレイを落ち着かせて、いい方向に持っていったのは私だけど、その言い方だと……。
「それってー、負けたのは私のせいってー、言いたいのかなー?」
「にゃにゃ!? ち、違うにゃー、む、結、言葉の綾だにゃー」
「うーん、本当かなー」
「ほ、ほんとだから許してにゃー!?」
あーあーあー、ピッキーが結に思いっきり詰められている。
フレイは愉快って感じで笑ってるし……まあ、結もあれでピッキーとの仲はいいわけだし、程々で止めるだろう。
私は一足先にお仕事に戻りましょうかね。
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なお、結は後日の放送で若手プロをボッコボコにし、プロを超えたアイドルとしてそこそこ話題となったのだった。
ひょっとして、私、本気で仮想敵を努めすぎただろうか。
なんだかんだバズった結を見て残していったサインを店に飾っておくか本気で悩む私なのだった。