よくわからん多重クロス   作:ニョホ

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燃えさしの日常 1-3

 

「いないぞ客人‥‥‥‥」

 

 足の痺れから回復し、無人の応接室を確認したレジロは呟く。

 

「しかもなんか濡れてるし」

 

 ___掃除するのは俺だぞ、全く! 

 

 などとぶうたれながら、ふと、床に点々と水滴が続いているのを見つけたレジロは首を傾げた。

 

「どうなってんだ?」

 

 レジロが戸惑うのも無理はない、本来、この施設に招かれる客人は最初は応接室にいるのだ。そのように初期地点が固定されている。

 

 水滴を辿った先から客人が現れ、応接室のソファーへと座り、そして消えた。何故だ? レジロは考え、それからややあって悟った。

 

「逆か!」

 

 ”逆“ つまり今回の客人は最初から濡れていたのだ。

 そこから客人は移動した______レジロの記憶が正しければ水滴の向かう先は風呂場だった。急いでレジロは向かう。

 

 ______盟主(あの人)は風呂で遊んでるわけじゃなかったのか

 

 ‥‥‥‥そう思いながら

 

 ___

 ______

 _________

 

 

 風呂場に着いたが脱衣籠には服さえも存在しない。

 レジロが耳を澄ますと浴室の方から水音と話し声が聞こえてきた。

 そこで初めて浴室のドアの方を見ると、

 ガラスから光が漏れていた。

 

「服はどうしたんだ?」

 

 まあいいかと思いつつ、レジロはドアをノックした

 

 コンコンコン

 

「もしもし、どなたかいらっしゃいますか?」

 

「あれー? その声レジロ? セルヴィじいちゃんどしたの?」

 

「今日は別の仕事らしいですよ、盟主」

 

「え? おっかしいなあ‥‥‥‥ところで前にも言ったけどペレグリヌスでいいよ〜?」

 

「アンタのコードネーム言いづらいんですよ!」

 

「別に実権はボクのものじゃないんだからいいじゃん」

 

 

「アンタの特典が厄介だからこの組織ができたって聞いたんですが!?」

 

 

 特典__レジロ達転生者が持つ特別な能力、その内容は個人によって多岐にわたる。

 

 レジロの場合は読むことに関連した能力(と他メンバーからは伝えられた)、そしてドアの向こうにいるペレグリヌスの場合は___

 

 

「タロットカードを他の人に渡しておけばそこに転移できるから問題ないよね?」

 

「アンタだけ時々勝手に発動するから問題なんだよぉ!!」

 

 ______転移である。しかしスルーされたタロットカードも充分問題である何故なら___

 

「つかタロット! そっちの転移もこっちの都合を無視しないと失敗するじゃないですか!?」

 

 _____成功した場合は相手の状況を一切無視することになるのだ! ウシリーニャの転移の位置がおかしかった原因でもある

 

 

「というか盟主、今日の客人そっちにいませんか!? 応接室にいないんですよ!」

 

「いるよ?」

「いるの!?」

 

 入ってきなよ、その言葉を聞いてレジロは一度深呼吸し、ドアを開けた。

 

 ガチャリ

 

 

「や、久しぶり〜♪」

 

 そこには、

 

 

 

 脱ぎ散らかされた衣服と、

 

 

 

 全裸で浴槽に使ってリラックスしている長髪の少年______ペレグリヌスと、水球の中に佇む鯛の様な鯉の様な姿をした金色の魚らしき生き物が佇んでいた。

 

 

 

 

 レジロの表情がスン........と抜け落ちた。

 

 

 

 

「熱亡き光y「ちょ!? ストップストップ!? 悪かったって!」‥‥‥‥なにが悪いか言ってみろ!」

 

 ブチ切れてなにやらカードを掲げるレジロ___無理もないが

 

 

「え、えと、服を着たまま浴室に入ったこと、身体を洗わずに浴槽に入ったこと、掛け湯をしなかったこと、髪をまとめ無かったこと」

 

 なにが悪かったのかを説明したペレグリヌス。

 取り敢えずレジロは掲げたカードを懐にしまった。

 

「‥‥‥‥後で浴室の掃除手伝え、それと客人がいるのに

 『無差別生命力吸収攻撃』(逆雫)なんて使わねえよ」

 

「‥‥‥‥ほえ?」

 

「他にいうことは?」

 

「ごめんなさい‥‥‥‥」

 

「よく言えました。とりあえず服を着て応接室に来い、湯あたりしかねないんで」

 

「はぁい‥‥‥‥」

 

「あ、その前に客人には今から台車と水槽を注文してくるから水球はまだ解くなよ! 維持しとけ!」

 

「はぁい‥‥‥‥」

 

 レジロは一旦退室した。

 

 怒涛のやりとりを見ていた魚の様な生き物___コイキングは心なしか安心した様な顔をしていた。

 

「‥‥‥‥大分似てきたなぁ」

 

 ____

 ____

 ______

 

 

 

「やっぱ風呂あがりはフルーツ牛乳だよね〜?」ぷはー

 

 呑気にフルーツ牛乳を一気飲みするペレグリヌスをよそに、レジロは黙りこんでいる。

 

「‥‥‥‥」

 

「あれ? レジロー? もしもーし?」

 

 牛乳瓶を片手に戸惑うペレグリヌス、コイキングも心配そうだ。

 

「おっかしいなぁ〜ボク、『今回は座標が判明するまで待機しなくていい』って言っただけなのに」

 

「それだよそれ! どういうことだよ!」

 

 レジロは叫んだ、いきなり上司に仕事を奪われた様なものだからだ。

 

「うん、今回はボクが直接元いた場所にこの子を返してくるから」

 

 よんだ? そんなふうに顔を出すコイキング

 

「オマエはくつろいでていいぞ、ほら、このちっちゃいモモみたいな果物(モモンのみ)*1でも食ってろ、そんで盟主、一体何だってそんなことに?」

 

 嬉しそうに一口で平らげて笑顔になるコイキング、美味しかったようだ。

 

「いやー今回はこの施設とこの子の相性が微妙にあわなくってねー」

 

 ___というか()()()()()()に言えることなんだけどね〜

 

「それはどういう」

「ポケモンがなんだか知らねえが分かった。あとそうだ! 浴室の掃除から逃げるなよ!?」

 

「そんなことしないって〜」

 

 

「あと盟主、聞きたい事g「はいこれ、報告書まとめといたから」あ、拝見しますねってそうじゃなくて!」

 

「ちょっと送り届けてくるから30分だけ待っててね〜」

 

 報告書をレジロに渡すや否やそう言ってペレグリヌスは消えた。特典を行使したのだろうか。

 

「‥‥‥‥いってらっしゃいませ!」

 

 ヤケクソ気味にレジロは叫んだ

 

 


 

 

「レジロ君生きてる〜?」

 

「勝手に死なすんじゃない」

 

 ペレグリヌスとコイキングが退室して5分もしないうちにウシリーニャは転移してきた______今度は無事に転移できたようだ。

 

「どうせヴィンコロさんから連絡でもあったんだろ?」

 

「あったり〜! ご褒美に手伝ったげるね〜」

 

「なら皿洗いヨロシク、俺は浴室の方ちょっと使()()から」

 

「おっけ〜」

 

 ここまでなら普通の会話でいられたがレジロは待てよと考えた。

 

 ______コイツの袖、どうなっているんだ? 

 

 彼女の改造された制服は袖口から指が見えない______いわゆる萌え袖という奴である。水を使う作業なら、或いは______

 

「お皿、これで全部だよね?」

 

「ああ、それで全b______えぇ?」

 

 目の前には皿を全て持っていこうとするウシリーニャがいた。

 疑問に思ってから目線を外すことはおろか、瞬き一つレジロはしていないはずだった。だが______、

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の目の前で襷掛けした上にゴム手袋を嵌めたんだ!? 

 

「どしたの?」

 

「え? ああいや、いつの間に手袋嵌めたんだ?」

 

 もう素直に聞くことにしたレジロだった。

 

「あたしらのタロットってさ、転移とは別にアイテムボックス機能あるじゃん? あたしも予備のマガジン突っ込んでるけど油断も誘えて楽で良いよね」

 

「便利だよね、アレ」

 

 そういうレジロは非常用に予備の筆記用具とかカップ麺とか解体した爆弾を入れている______そろそろ中身を整理したほうがいい

 

「あれの機能を使うんだけどさ、レジロ君は狩ゲー*2ってやったことある? アイテムボックスで装備変更出来るの」

 

「ないな」

 

「うーんそっか〜、ないか〜 そのゲームにはあらかじめ装備を登録して部位毎に変更する手間を省ける『マイセット』っていうショートカット機能があってさ、真似できないかなって思ってアイテムボックスの機能を拡張して瞬時に着替えられるようにしたんだ」

 

「ああそういう‥‥‥」

 

「ちょっと調整に苦労したけどすっごく便利だよ? 容量もクローゼットぐらいの()()があれば十分だし」

 

「体積? 容積じゃなくてですか?」

 

「しまってるのが武器以外は服だけだからそっちの方が無駄なくリソースを割り振れたからさ、そこんとこ盟主さんが結構詳しいから後で一緒に聞いてみない? あたしもちょっと相談したいことがあるし」

 

「‥‥‥‥取り敢えず、この後またこっちに来るって言ってたからそん時にでも」

 

「マジで? 聞きたいことまとめとかなきゃじゃん! そうと決まれば急いで終わらせてくるね〜!」

 

 ウシリーニャは嵐のように去っていった

 

「テンション高いなぁ‥‥‥‥」

 

 


 

〜浴室にて〜

 

 浴室にてレジロは軽く点検を済ませると掃除用具を壁際に寄せ、一度出ていった。

 

「これを忘れるとこだった」

 

 そう言いつつ再び浴室に入ってきたレジロの片手には何やら細長い紐が束ねられたようなものがぬるま湯に浸けられたバケツが握られていた

 

「洗剤よし、ブラシよし! さて______掃除する前に、だな」

 

 懐からカードを取り出した______レジロの所有するタロット『月』のタロットカードである

 

「来い、『ムーンキャンサー』」

 

 カードから複数の青い光の球が飛び出し、レジロの前で一つになり______

 

 

 

 

 

 

 

 

 巨大なザリガニが現れた

 

 _____そういえばなんでCancer(キャンサー)*3なのにザリガニなんだろ? 

 

 そう考えながらレジロはM.C.(ムーンキャンサー)へと少しずつ距離を詰めると、M.C.はこちらに向き直ってきた

 

「「‥‥‥‥‥」」

 

「(いつものことだけどさ! いつものことだけどさ!」)

 

 残念ながらM.C.は鳴き声を特に出さない上に表情も変わらない。ただじっとレジロを見つめている。甲殻類だから仕方ない。仕方ないのだが‥‥‥‥。

 

「(やっぱ何考えてんのか分かんねぇ!)」

 

 加えてこのザリガニ、高ランクの読心耐性を有している。 最低でも読心されていることがわかるレベルだが触覚一本ピクリともさせないのだ。

 

「(なんか‥‥‥こう、精神的にクるものあるよ!?)」

 

 心の中で叫びながらもゆっくりと点検中にふやかしておいたスルメをさしだす

 

 ______スッ

 

(当然ながら)無言で受け取るM.C.‥‥‥‥鋏で器用に口元まで移動させている

 

「「‥‥‥‥」」

 

 レジロは目を離さずにゆっくりと下がり、足を滑らせた! 

 

「やばっ______」

 

 衝撃に備えて頭を庇おうとするが間に合いそうにない! 

 

 ______ドサッ

 

 

「あれ、痛くな______っ!?」

 

 腰に硬めの感触が生じる、下を見ると青い鋏、正面を向き直ると、視界にはM.C.の頭部が間近に迫っていた。‥‥‥‥どうやら助けられたらしい。

 

「‥‥‥‥ありがとな」

 

 鋏をゆっくりと撫でるレジロ______触覚はどこまで触れていいかわからない 少しずつ視界が下がっていく、降ろしてくれるようだ。

 

「そこで充分だぞ」

 

 ピタリと止まる鋏、足を滑らせないようにゆっくりとレジロは降りた。

 

「ゆっくり楽しんでたのに悪かったな」

 

 床を見ると真っ二つになった食べかけのスルメが落ちていた______うっかりレジロを挟まないように咄嗟に鋏を閉じたのだろう

 

「ちょっと新しいの持ってくる」

 

 スルメを拾って浴室から出て行こうとしたが、鋏で阻まれる。

 

「‥‥‥‥新しいヤツじゃなくていいのか?」

 

 片方の鋏がどかされる、合っていたらしい。レジロはシャワーや蛇口の据え付けられた壁面まで移動するとM.C.も後ろについてくる

 

「せめて水洗いさせてくれ」

 

 

 

 浴室には水の流れる音が響き、程なくして片方の鋏もどかされた

 

 


 

 ペレグリヌス/巡礼者/??? 男

 

 特徴

 

 男女どちらともつかない顔立ち

 

 長髪の一部を普段は後頭部にシニョンカバーでまとめている

 

 紹介

 

 レジロの所属している転生者組織の盟主 

 実質的なリーダーは別にいたがコイツの特典がないとこの組織は成り立たない、逃げられると困るので立場で縛っている。(特典の都合上阻止し切れない)

 天真爛漫なアホの子のトラブルメーカー、転生回数は数千万回を超えているとかいないとか。

 

 特典はテレポートの様なナニカとタロットカードによるマーキング機能+他者への擬似的な二つ目の特典付与ということにしておく

 

 ‥‥‥‥レジロは何故か彼に対して遠慮がない態度をとっている

 

 ・テレポート単体での短所

 

 勝手に発動することがある(転生者であることを自覚した瞬間が一番危険)

 

 転移する座標によっては死ぬ*4

 

 当人だけではあらかじめ転移する場所の状態を知ることができない

 

 自分以外を転移させるのは通常よりも集中力が必要

 

 遠ければ遠いほど集中力が必要

 

 ・テレポート単体での長所

 

 集中力以外特にコストが要らない(1ミリの移動でもある程度の集中力は必要)

 

 並行世界だろうが別次元だろうが転移可能*5

 

 座標の細かい指定、計算により転移時の負担を減らすことができる

 

 あらかじめ設定しておいた座標なら少し先の未来へも転移できる(過去へは不可能)

 

 ・タロットの基本的な機能(共通、固定)

 

 破壊不能(消えても元の形に戻る)

 

 無くしても戻ってくる

 

 タロット同士が通信機としての機能を持つ(着拒可)

 

 マーキング機能

 

 行ったことのある場所を2〜5箇所まで登録できる

 

 登録とは別枠としてペレグリヌスが他者に所有権を譲ることで持ち主の居場所への転移、持ち主の呼び出しが可能となる(呼び出しは相手の都合を考えてしまうと不発に終わる)

 

 この機能は他のタロットの持ち主も可能だが、互いに知り合いである必要がある。時々前話のウシリーニャのようなことが起きる

 

 

 起動コード「(アルカナ名)から(アルカナ名)へ」

 

 ・タロットの基本的な機能(共通、選択)

 

 使い魔等の召喚

 

 アイテムボックスとは別にタロットの中にしまっておける

 特に世話も不要だがどんな使い魔に成長するかはタロットの持ち主次第である

 

 アイテムボックス

 初期状態はランドセルほどの容積で限界重量は1t、恐らく安全装置も兼ねている

 この状態から容量や重量、入れられる荷物に制限をかけて機能を自分好みに仕立てていく

 

 

 

 ・タロットカード『月』______レジロの場合

 

 ・アイテムボックス

 

 収納する物質の数に個数制限をかける、収納した物品に対する時間停止を制限する。この二つの制限により重量制限を大幅に無視している

 

 なお荷物が10個あっても全て1つの袋に入れてしまうなどすればしまう荷物は1つ扱いとなる

 

『逆雫』 さかしずく

 

 レジロの持つタロットカード『月』の機能のひとつ

 

 カードの持ち主以外の生命体から生命力(エネルギー)などを奪い、還元する。オートマタをはじめとした無機生物には効果が薄い

 

 起動コード「熱亡き光よ、奪え」

 

 使い魔の召喚

 

 透明になれる巨大ザリガニ『ムーンキャンサー』を召喚する

 

 臭いで透明になってもバレそうなものだが飼料や世話によってかなり弱めることに成功している

 

 ハサミだけでも30cmはあるのでレジロは鋏だけ喚びだして鈍器として利用(クラブハンマー)することが多い

 

 表情がないので分かり難い上、高い読心耐性を持つのでレジロは距離を測りかねている。実際は普段の危なっかしい様子から心配されている

 

 今回呼び出されたのは関節や甲殻の点検のため、主人と触れ合えたので満足

 


 

 おまけ 浴室の壁に掲げられた看板の文章

 

 〜温泉、銭湯などの入浴マナー(超ざっくり)〜

 

 ・他の利用者に迷惑をかけない

 ・衣服は浴室に持ち込まない(利用者は服をきたまま浴室に入らない)

 ・浴槽に入る前に身体を洗う

 ・浴室に入る際、浴槽に浸かる際は掛け湯を行う

 ・髪の長い人は髪を纏めて湯に浸けない様にする

 

 当然場所によって変わるし抜けもある

 

 

*1
中に 空洞が あるので 食べられる 部分は 少ないが とても 甘くて おいしい。

*2
キヴォトスでは別の名前かもしれないので読者の皆様はモンハンで考えてください

*3
英語で蟹のこと 主に大きな蟹のことを示す

*4
いわゆる『いしのなかにいる』状態 原作___というより元ネタ:Wizardry 

*5
戻って来れるかは別




 
 気づいてないだけでレジロはちゃんとM.C.とコミュニケーション取れてます。
 ただ大きさの都合上、あまり呼び出せないので気付けていません

 ペレグリヌスの特典はかなり複雑です。
 作者も時々混乱しています
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