キミとアイドルプリキュア♪ -朱蓮のダンサーとアイドル達-   作:寿垣遥生

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遥生です。この作品基準としては久しぶりの投稿になりますね…しかしながら、先日の原作の7話は皆さんご覧になりましたか?ついにキュアキュンキュンが覚醒しましたけど、本当に凄くて日曜日は1日中余韻に浸ったものですよ。具体的な振り返りはまた次回します。今回が念願のアニメのこの話相当でネタバレになるのでね…

こっちの方はオリジナルストーリーを挟んでいるので原作とは時間軸がズレてる可能性もありますし、結構アレンジを効かせてるとは先に言っておきます。どんな仕上がりなのかはお楽しみに!

ちなみに、始まる前にこぼれ話を1つ…蓮の姉である陽葵と笑華は陽葵が五等分の花嫁の一花ちゃん、笑華が同じく二乃ちゃんをイメージしています。容姿としても彼女達をイメージしていただければ結構楽しめますよ?(ただし、家事とかの出来具合はイメージとは逆)

それでは、また後書きにて。


#15 捨てきれぬ憧れ

side蓮

 

 息抜きも兼ねたデートから2日が経った週明けの月曜日、俺達はまた紫雨の問題と真剣に向き合うことにして俺は2人とは別行動で放課後に単独で紫雨の家を訪れる。あれから研究会を休んでいたのでとりあえず自宅に伺った方が早いと判断して行動に踏み切ったのだが、1回送り届けた時に見たとはいえ随分と大きな和風の家で、豪邸ではないが本当に立派な一軒家である。

 

「あら、あなたは…?」

 

 俺がインターホンを押して要件を言おうとする前に真っ先にドアを開けて出迎えてくれたのは紫雨のおばあちゃんと思われる女性…声からして凄く優しそうな雰囲気の人だ。

 

「はじめまして…こころさんの友達で2年の朱藤蓮です。こころさんはもう帰ってますか?最近元気がない上になかなか会えなかったので…会って話がしたいと思ってお伺いしたのですが。」

 

「ここちゃん?ここちゃんは外でダンスをしてるからここにはいないわね…」

 

(ここちゃん…紫雨のことか。)

 

「でも、もうすぐ帰ってくると思うから家で待ってて?」

 

「いえいえ、会ったらもうすぐに帰るので…お宅に上がるほどじゃないですから。」

 

「遠慮しなくても良いのよ?もうすぐ帰ってくるし、お友達に会えばここちゃん元気になるだろうから…ねっ?」

 

「ありがとうございます…お邪魔しますね。」

 

 俺は紫雨のおばあちゃんのご厚意に甘えて家の中へと上がることにした。異性の家に上がることはうたですっかり慣れてしまったが、ここはどうも雰囲気が少し重いというか神聖な場所にも感じてしまう。とりあえず、リビングに案内された俺は座布団の上に正座した。

 

「お茶とお菓子を用意するね?」

 

「いえ、お構いなく…俺はこころさんと話をしたらすぐ帰るので。」

 

「そんなこと言わずに。すぐ用意するから…」

 

 そう言うと紫雨のおばあちゃんはキッチンの方へと向かっていった。本当に親切なおばあちゃんだ…孫娘の紫雨が礼儀正しくて人間がしっかりしてるのも納得がいく。それで俺は待っている間に部屋の中を見回してみた…すると、あるものが目に入る。

 

(花と紫雨の親父さんと思われる人の写真と親父さんとお母さんと彼女の家族3人の集合写真に紫雨が小さい時の踊ってる写真が飾ってある…でも、家族の集合写真は小さい時のしかない。もしかして…?)

 

「ここちゃんのお父さん…聞いてなかったかしら?ここちゃんが小さい時に亡くなったの。」

 

「そうだったんですか…」

 

 俺が写真を見てるとそれに気づいた紫雨のおばあちゃんが衝撃的なことを俺に打ち明ける。紫雨は小さい時に親父さんを亡くしていることを…そんな過去があったとは初耳で内心驚いた。

 

「しかし、こころさんは小さい時からダンスが好きだったようですね。写真で見ても楽しく踊ってたのが分かりますよ…」

 

「ええ、最近はアレをよく踊ってるの。確か3人組のアイドルで…」

 

「キュアアイドル、キュアウインク、キュアブレイキン…ですよね?」

 

「そう、その3人!凄く楽しそうなのよ。」

 

(アイツ、何だかんだでファン辞めるとか言ってて踊ってるじゃねえか…やっぱり一時的な感情だったんだな。)

 

「それに、学校にあなたのような素敵な先輩がいて安心だわ。ここちゃんは昔から何でも1人で我慢しちゃう子だから。」

 

 紫雨のおばあちゃんは笑顔ながらもどこか寂しそうに孫娘の性格を語る。何でも1人で我慢…か、恐らく親父さんが亡くなられてから変わったのだと推測できる。恐らく今は仕事であろう1人働きの母親に迷惑をかけまいと色々我慢しているのだろう…

 

「俺、こころさんの気持ち…凄く分かりますよ。俺の家庭は父と母を亡くしていて上の姉がそんな感じですから。上の姉は両親がいなくなってから弱みや本音を隠して我慢しつつ大黒柱として頑張ってて…そんな彼女を見てるからこころさんの気持ちが分かるんです。」

 

 俺は紫雨のおばあちゃんに自分の家庭のことを話し、紫雨がどういう人間かを知って紫雨はひま姉と同じだなと思った。ひま姉は親父と母さんがいなくなってから笑顔は見せるけど、弱みを見せることもなくなったしわがままも言わなくなって今も忙しい女優の仕事や家事とかこつこつとこなしてつつ俺やニカ姉の面倒を見ている。我慢している人間を見てきたから俺は紫雨の気持ちが痛いほど分かるのだ。

 

「そうなの。ごめんなさい、あなたに嫌なことを思い出させて。」

 

「いえ、お気になさらずに。上の姉にも我慢するなってはいつも言ってますから…大丈夫って言い返されますけどね。こころさんにも今度ゆっくり話す時に同じことを言っておきますよ。そうすればあの子も何か変わるでしょうね…」

 

「ありがとう、朱藤くん。」

 

「ただいま、おばあちゃん…って、えっ?」

 

 紫雨のおばあちゃんが俺にお礼を言うと、そのタイミングで紫雨が帰ってきてバッタリ会ってしまう。彼女は学校の時の制服や私服姿ではなくダンスをするための練習着を着ていた…しかもへそ出しだからお腹が常にこんにちは状態である。

 

「おかえり、ここちゃん…お友達の朱藤くんが遊びに来てるわよ?」

 

「悪ぃな…お前に話したいことがあって待たせてもらったんだ。びっくりさせてごめん!」

 

「蓮先輩…おばあちゃん、蓮先輩に何か変なこととか話してないよね?」

 

「ううん。何も…」

 

 紫雨は顔を少し赤くしながら慌てた感じで自分のおばあちゃんに質問する。それもそうだ…異性の人間が家に上がって2人きりで紫雨のことを話してたのだから。

 

「紫雨、明日も学校が終わったらダンスの練習をやるのか?」

 

「はい…いつもやってますけど。」

 

「それなら良かった。もしも、やるんだったら約束通り一緒に踊らねえかと思って…そこでお前のことをもっと知りたいからな。ダメならダメで言ってくれ…無理強いはしねえから。」

 

「無理強いって…私は嫌じゃないですよ?むしろ、嬉しいです。あの時の約束通りに蓮先輩が私を誘ってくれた…それだけで少しですけど、心キュンキュンしてます。まだモヤモヤしてますけどね…」

 

 紫雨はまだどこかに曇りはあるものの嬉しい表情を浮かべる。本人の口からも『心キュンキュンしてます』が聞けたことだけでも俺は幸せだ。

 

「なら良かった。じゃあ、また明日…楽しみにしてるぜ?おばあさん、お邪魔しました。」

 

「ええ、ここちゃんのことをよろしく頼むわね?」

 

「はい!」

 

 そして、俺は2人に見送られて紫雨家を後にした。それで2人に連絡したところグリッターというかうたの部屋にいるということでとりあえず、紫雨の現状とかを話した上でどうするかを決めていこう。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 それから、俺達はうたの部屋に集まると既にうたとななが話していてプリルンは元気なさそうにしていた。あの元気に満ち溢れていたのがこうもなるとは…みんなの前にはホットミルクが置いてあった。

 

「蓮とヨーヨイもどうぞ。」

 

「ありがとな、うた。」

 

「サンキューだヨイ。」

 

 俺はうたが提供したホットミルクを1口飲む。久しぶりに飲んだが、牛乳の濃厚な甘みが温まったことでより深みが出て最高だ…その絶妙な温度加減にできるうたは13年お手伝いをやってんなと思う。

 

「それで、蓮くん…こころちゃんはどうだった?」

 

「まあ、少し表情に曇りはあったけど普通に生活はできてる。ただ、アイツには厳しい現実を見せちまったよな…ステージの動画を観て歌って踊る普通のアイドルと思ったら、マックランダーが出てきたりしてさ。驚かない方がおかしいと思うぜ?慣れてる俺達が異常なだけだよ。」

 

「プリルンのせいプリ…!」

 

 すると、プリルンは突然泣き出してから自分を責める。今回も何も説明せずにアイドルハートブローチを渡したりと責任はあるのだが、こいつもやっと反省を覚えたのだろう…ライブ映像を撮影してアップしたり、プリキュアの正体を漏らしたり、妖精の存在を知られたり。本当に振り回されたけど、ここまでになると俺達もプリルンのことをこれ以上責めるのが申し訳なくなる。

 

「泣くんじゃねえヨイ!やっちまったことはもう取り返せねえけど、そんな後ろ向きになってたらこころはいつまでも立ち直れねえヨイ!」

 

「ヨーヨイくんの言う通りですよ。何を弱気になっているのです?」

 

「プリ?」

 

 ちょうどその時、まさに働いている途中の田中さんが俺達の声を聞いてか上がってきてはプリルンを慰めようとする。本当にこの人はここぞという時に現れるから頼りになるよな…

 

「プリルンは最後のアイドルハートブローチを一度はこころさんに渡した…それには理由があるのでしょう?」

 

「プリ!こころはすっごくキラキラしてたプリ…だからきっと、こころはきっとアイドルプリキュアだって思ったプリ!」

 

「ならばその輝きを信じてみてはどうです?」

 

「プリ?」

 

「どういうことですか?」

 

「輝きが本物なら、そう簡単に消えはしないのでは?」

 

 ななの問いかけに対して田中さんはいつも通り淡々とした口調ながらもアドバイスをポツリと答えた。今のこの人は口調は塩対応でも心は暖かい…いや、それはずっと前からかもしれないな。だからこそヨーヨイとプリルンは彼のことを慕っているのだろう。

 

「そうですね。それでですけど、俺、明日紫雨と踊ってきます!ダンサーの彼女とはダンスを通じて分かり合う…それがダンサーとしての流儀なので。」

 

「分かりました…期待してますよ、蓮さん。」

 

 田中さんはそう言い残してまた下へと降りて仕事へと戻っていく。俺は一瞬ながら去り行く彼が笑顔だったのを見逃さなかった…それだけ期待している証だろう。とりあえず、明日は学校が終わったら紫雨ととにかく踊って楽しむことにしよう…それで彼女の心にキラキラが戻ってもっと仲良くなれれば俺は満足だ。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 翌日の放課後、俺は家に帰ってからいつものブレイクダンス仕様ではなく紫雨のようなスポーティーな感じに赤のスポーツウェアにジャージのズボンというシンプルな組み合わせに着替えてから指定された街の体育館の前で紫雨を待つ。ここでアイツは踊ってるのか…まあ広々してるしガラスが鏡のようになってるから自分のダンスがどうなのかも見れるから絶好の場所と言えるだろう。

 

「蓮先輩!」

 

 しばらく待っていると、昨日と同じく練習着姿の紫雨が走ってやって来た。今日の彼女はここ最近の中では1番元気があるようにも見える。俺と一緒にダンスをするのがそれだけ楽しみだということだろう…もちろん、俺もだけど。

 

「待ちましたか?」

 

「気にすんなヨイ。蓮は優しいから何分待とうが怒らねえからな。」

 

「ヨーヨイも来たんですね。」

 

「来たっていうか俺の相棒だしな…とりあえず、今日は色々と踊ろうぜ?よろしく頼むよ。」

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

 紫雨は俺に一礼する。本当に彼女は礼儀正しい子だ…でも、それでいて俺達の限界オタクだったりするというのも愛嬌で彼女の魅力は奥深い。

 

(しかし、紫雨の格好は腹が見えてるからどうしても目が行くな…キュアアイドルの時にうたの腹も見えてるから見てしまうけど、うたよりも引き締まってるんじゃねえか?やっぱりそれだけ運動してるってことだよな…)

 

「蓮先輩、今…私のおへそ、見ましたよね?」

 

 すると、紫雨は俺の腹への視線に気づいたのか顔を赤くして腹を隠す。彼女は寸田先輩への接し方を見た限り異性慣れしてるようには思えたのだが、流石にこれは恥ずかしすぎたか…

 

「ええっ、いや…お前の顔を見てたんだよ。紫雨は可愛いなって!」

 

「嘘つかないでください!蓮先輩の目線が下に行ってましたよ…本当に嘘が下手なんですから。」

 

「悪ぃ、どうしても見ちまうんだよ。こういう服装なんだから…」

 

「まあ、私もおしゃれとしてこういう格好をしてますけど…おへそをジロジロ見られるのは恥ずかしいです。見るならその…顔、いえ…顔でもちょっと恥ずかしいですけど、とにかくもう踊っちゃいましょう?ねっ!」

 

「分かった…それと、準備体操も忘れんなよ?俺は先にしとくから。」

 

「わ、分かってますよ!」

 

 紫雨は焦りやら恥ずかしさやら入り交じった中で音楽を再生するための機器をセットして準備を進めて、その間に俺は準備体操を進める。俺って不思議だな…俺が何かをするとななと紫雨は照れてしまうってどういうことだ?うたにはあまり効かないが、俺がそれだけ魔性の男なのだろうか…何か複雑だ。

 

(5分後…)

 

 それから俺達は準備体操まで完了していよいよ本格的なダンスへと入る。俺はこの日のために色んな曲のダンスを覚えてきた…何を踊ってもおかしくないようにしてきてはいるし、準備も万全だ。

 

「蓮先輩、今日は先輩に曲選びをお任せします。何を踊りたいですか?」

 

「そうだな…じゃあ、まずはお前のおすすめで買ったEIGHTEENの新曲である『Kingdom』で。最近覚えたんだよ…紫雨も踊れるか?」

 

「私も踊れますよ。蓮先輩があのCDを買った時からいつでも踊れるように練習してきました!」

 

「そうか、じゃあ音楽かけてくれ。」

 

「はい。」

 

 そして、紫雨はEIGHTEENの曲を再生してから俺も彼女も独学で覚えたダンスを曲に乗って踊る。横目で見ながら踊ってみたけど、紫雨のダンスの動きにはキレがある。女性のダンサーでここまでメリハリがついた動きができるのはまずプロじゃないと見かけない。これが彼女の練習の賜物だろうか…流石は俺達のダンスを完コピできるだけあるな。

 

(紫雨、やっぱすげーな…こんなにもダンスの上手い近い世代のやつは見たことねえ。)

 

(曲終了後…)

 

「やっぱりお前は天才だな…もう言葉が出ねえよ。」

 

「ありがとうございます。蓮先輩こそ凄かったですよ…これでダンス部に入ってないのが信じられないレベルです。」

 

「いやいや、それは言い過ぎだって…俺は趣味で踊る程度だし、お前とはジャンルが違うからな。でも、天才のお前から認められたのは誇りに思っておくよ…」

 

 俺と紫雨は曲を終えてからお互いのダンスを褒め合う。本当にお世辞抜きで彼女のダンスは上手かった…俺と同じく趣味でやってる人間のレベルじゃないし、俺と同い年か近い世代の女子でここまでダンスに真剣に打ち込むやつは過去にいない。運動会や文化祭とかでダンスをやった時は女子はみんなダルそうにしてたからな…それを見てると紫雨は特異性があるというかこっちの姿勢の方が当たり前でなければならないだろうけど。

 

「それで、次は何を踊りますか?どんな曲でも踊れますから何でも言ってください!」

 

「そうだな…じゃあ、俺達の曲を一通り踊ってみるか?」

 

「俺達って…アイドルプリキュアの、ですか?」

 

「当たり前じゃねえか。お前、完コピしてるんだろ?それを俺も自分のは踊れるし、他2人も間近で見てるからある程度踊れるぜ…」

 

「そうは言っても私はファンを辞めましたから…」

 

「お前のおばあちゃんから昨日聞いたよ。最近も踊ってるって…嘘は良くねえな。さっきお前が嘘つくなって言っただろ?」

 

「そうですよね。すみません…一緒に踊ります。」

 

 そして、俺の説得に折れた紫雨はうた(キュアアイドル)となな(キュアウインク)と俺(キュアブレイキン)の曲を音源に合わせてメドレーのような感じで踊った。それで実際に踊ってみたら完コピしてるというみことの評判通りの出来栄えで本当に天才だと思わされる…俺も近くで見てきただけあってまあ無難に踊れたけど、極み度が全然違った。(自分の曲を除いて)

 

「こころ、すげえ…完コピしてるヨイ。こりゃあたまげた…」

 

「本当に紫雨は俺達のことが好きなんだな?それが踊りの出来からも伝わってくるよ…これがお前の本当の気持ちだ。」

 

「本当の…気持ち。」

 

「ああ。お前…色々と我慢してただろ?昨日、これもお前のおばあちゃんから聞いたよ。しかも小さい時から何でも我慢していたらしいじゃねえか。」

 

「我慢なんかしてないです!私にはアイドルプリキュアになる資格も応援する資格もありません…だからファンを辞めて、ダンス部に入ろうと思ってるんです。昨日、寸田先輩からオファーが来てお返事もしました…」

 

「あの件に関しては本当にプリルンも俺達も悪かったと思ってる。でも、そんな理由でダンス部に入って寸田先輩が喜ぶと思ったのか?」

 

「えっ…」

 

「お前は寸田先輩に言ったはずだ。俺達を追いかけるためにダンス部には入らないって…俺達にキュンキュンしてたんだろ?そう言っといて理想と違うからファンを辞めて入りたいはおかしいじゃねえか!」

 

「蓮、先輩…」

 

「とにかく、弱みを見せたって良い。辛い時は泣いて良い…だから、自分の気持ちに嘘をついて我慢をするな!お前の本当の気持ちは何だ…本心を、教えてくれ。」

 

「私は…」

 

 俺は自分の気持ちに蓋をする紫雨に本当の気持ちは何かを問い詰める。俺はもうこれ以上、彼女が嘘をつく姿は見ていられない…ひま姉ももちろんのことだが、その前に目の前の紫雨を助けたいと心から思ったのだ。

 

「私はアイドルプリキュアの先輩達が戦ってるところを見てイメージと違ってたり怖かったりでファンを辞めてグッズも封印して忘れようと思った。でも、踊っても踊っても頭から離れない…だから、ダンス部に入ってダンスに打ち込んで忘れようと思ったのに!忘れたかったのに…」

 

 紫雨は俯いて泣くのを必死に堪えようとするも涙が零れ落ちてとうとう泣き出してしまった。本当はかなり辛かったんだろう…現実を知ったことも、好きなことを忘れたくても忘れられないことも。

 

「忘れられねえだろ…それがお前の心のキュンキュンってやつだよ。推しってのは忘れたくても忘れられねえもんなんだぜ?」

 

「そうは言っても…好きでも憧れてても叶えられないものなんです。だから…!?」

 

 俺は泣いている紫雨のことを無意識というか反射的に抱きしめる。許可がないからどうだの、恥がどうだの関係ない…今はこの1人の少女を慰めて明るくしたいという一心でつい手が伸びてしまった。そして、彼女のサラサラした髪を撫でる…

 

「ごめんな、お前に厳しい現実を突きつけちまって…でも、俺は信じてる。プリルンはそれを確信できる要素があったからアイドルハートブローチを渡したんだろうな…俺も今日のダンスを見て確信したよ。紫雨ならきっと俺達と同じステージに立てるって…戦いは確かに大変だけど、それを克服すればアイドルとして歌ったり踊ったりするのは楽しいもんだぜ?それをモチベーションにしてまた追っかけても良いと思う…俺達はその時が来るのをいつでも待ってるから。今はもう思いっきり泣いても良い…俺がお前の辛い気持ちは全て受け止めるよ。だから、1人で抱え込むんじゃねえぞ?」

 

「蓮先輩…ううっ、うわあああああっ!!」

 

 そして、紫雨は心のダムが決壊したかのように声を上げて泣くのであった。本当にあの日から溜め込んでて辛かったんだろうな…服が濡れるぐらい紫雨の涙が止まる気配がない。とにかく、これで心が晴れるのならシャツの1枚濡れようが安いものだ。

 

(5分後…)

 

「落ち着いたか?」

 

「はい、沢山泣いたらスッキリしました。ですけど、その…いつまで私を抱きしめているつもりですか?」

 

「ああっ、ごめん!」

 

 泣き止んだ紫雨に言われて俺はハッとして彼女から離れる。俺としたことが…抱きしめていたらついつい自分が紫雨の兄になったような気分になってしまった。俺は末っ子だから妹も弟もいないし今後もできないけど、紫雨は最初に会った時から妹みたいに思えたんだよな。それだけの愛嬌がこの子にはあったんだ…

 

「もう、しょうがない人ですね。でも、ありがとうございます…少し恥ずかしかったですけど、蓮先輩の優しさを感じて癒されました。」

 

「そうか?嬉しいよ。まあ、お前も色々あったかもしれねえけど…何かあったら俺でもうたでもななでも誰でも良いから相談しろよ?力になるから。絶対に隠し事はすんじゃねえぞ…」

 

「はい!」

 

「あっ、蓮とこころちゃんだ!おーい!!」

 

 ちょうどその時、俺達のもとへうたとななとプリルンが合流する。踊ってる場所を紫雨のおばあちゃんから聞いたのだろう…とにもかくにも、抱きしめてたタイミングじゃなかったのは運が良いと言える。

 

「うた、なな、プリルン!」

 

「こころ、ごめんプリ!プリルンがこころに酷いことをしてしょんぼりさせちゃったプリ…」

 

「もう良いよ、プリルン…ありがとう!私はもう大丈夫だから。蓮先輩のおかげでスッキリしたよ。」

 

 プリルンは紫雨に謝るも彼女はそれをすんなりと許した。今回の件は特に重罪かもしれないが、プリルンは流石に今回は反省した上に紫雨自身も気が済んだからな…経緯次第では許されてなかっただろう。俺がいて本当に良かった…

 

「良かったね、こころちゃん…蓮くんもお疲れ様。」

 

「まあな。それじゃあ、一件落着したことだしそろそろ帰ろうぜ?もう夕方だしな…」

 

「はい!皆さんにはご迷惑をおかけしてすみませんでした。でも、私…ダンスだけじゃなくてあなた達のファンでずっといますから。これからも先輩達、アイドルプリキュアをファンとして今は追いかけますけど…いずれは同じステージに立ちます。待っててください!」

 

「うん、いつでも待ってるよ…こころちゃん♪」

 

 そして、紫雨とうたは握手を交わしてファンとしての復活といつか同じプリキュアになることも俺達の前で高らかに宣言した。それから俺達はLINEの連絡先も交換してやり取りを始め、その中でグッズをまた出した報告を受ける。これからもダンスも推し活も頑張ってくれよ…俺達も精一杯頑張るから。




いかがでしたか?今回はこころちゃんが立ち直るAパートの終わり相当まで進みました。やっぱり好きなことって何気に捨てられないし、忘れられないですよね…蓮はこころちゃんのおばあちゃんから色々と話を聞いて何とか救い出そうとしました。それで一緒に踊る約束を果たしつつも相談に乗った蓮は見事解決させましたが、その中でこころちゃんに色々やっちゃいましたね…こんにちはしているお腹を見るということをして恥ずかしい思いをさせた上に抱きしめるという。妹のように思えたとはいえ…我ながらやり過ぎたというかステップ早すぎかなと反省しています。これでこころちゃんはどうなるのか…それはまあいずれどうにかなりますよ。ヒロイン戦争に参加しちゃいそうな気はしてそうですけど、果たして?楽しみにしててください!

次回はいよいよ7話の後半部分…ついにキュアキュンキュンがデビューします!原作とは多少違う展開になりますけど、楽しみにしていてください。

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