とある昼下がり
今日は昼の依頼も終わり、暇になったので何処かでお昼にしようかと飯屋を探していた
どっかに入って座ってもいいけどテイクアウトして宿で食べるでも良いなぁ
「あ!モトカズさんだ!」
何を食べようか迷っていると、後ろから声をかけられる
振り返ると、元気な足取りでこちらに少女が近づいてくるのが見えた
「こんにちは!」
「クレーちゃんか。こんにちは。」
彼女の名前はクレー
このモンドにある西風騎士団に所属しており、火花騎士なんて呼ばれている
誰かから聞いた話ではこのモンド最強であり、大団長さんと唯一対等に渡り合える存在なのだという
あのジンさんやリサさんがいる中で最強なんて言われているくらいだから相当凄いのだろうけど、僕から見た限りではちょっとやんちゃな女の子にしか見えない
「モトカズさん!クレーこれからお魚ドカーンしに行くんだけど、モトカズさんも一緒にドカーンしに行かない?」
「あー爆破漁のことかい?今は暇だし全然構わないよ。」
「やったー!ねぇねぇ?またあのスゴイドカーン見れる?」
「場所によるけど見せられるんじゃないかな。」
まぁそんなにお腹減ってないし、クレーちゃんと遊んでからお昼にするでも良いかな
なんて考えながら楽しそうに僕の手を引っ張る彼女に付いていくことを決める
僕がクレーちゃんと知り合ったのはこの世界に転移してから結構すぐの頃である
当時は右も左も分からず、しかも自分の力のせいで魔物に襲われたりしていたせいで完全に自分が何処にいるのか分からなくなっていた
色々な場所に果物がなっていたり、誰かが置いていった鍋があったりしてなんとか食いつないでいたが、それも正直限界というくらいの時にクレーちゃんに出会った
突然出てきたボロボロな僕を見て怖がること無く手を差し伸べてくれた
そして、彼女のおかげで僕は無事人のいる場所にたどり着くことができたのである
その後も、騎士団に事情を話して僕が街に滞在することを許可してもらえたり、仕事を紹介してもらったりと融通を聞かせてくれた
まぁつまり、クレーちゃんは僕にとって、命の恩人であるのだ
なので何かお願いされたりするとできる限り答えているのだ
たとえそれが爆破漁の手伝いであったとしても
そして、クレーちゃんが今回のように遊びに誘ってくれたりと、僕に懐いてくれている理由
それは僕のこの5000兆熟知が関係していた
僕を助けてくれて街まで案内していた道中、沢山の魔物や宝盗団のような危ない奴らが現れたが、皆クレーちゃんの爆弾によって吹き飛ばされていた
だが唯一吹き飛ばさない存在がいたのだ
それが炎スライムである
クレーちゃんは爆弾を使って戦うため、炎元素に耐性のある炎スライムに何もすることができなかったのだ
しかも、数も多く逃げるのも難しい状況なのであった
あのときは困り果てた表情をしたクレーちゃんを見て、僕はこの状況をどうにかできないかひたすら考えた
この溢れ出る5000兆熟知で消し飛ばせば良かったのだが、当時の僕にとってこの力は、手や口から青緑色の風が出てきて偶に謎の大爆発を引き起こすという頼るには危険すぎる力という認識であった
故にこの状況で使ったとしてもただ風が出て終わるか爆発してこの小さな少女を傷つけてしまうのではないかと考え、力を使うことを躊躇していた
解決策が出るのを炎スライムが待ってくれるはずもなく、狙いを定めた彼らは僕達に向かって突進してきた
クレーちゃんは怖いのか僕の服にしがみつきスライムから顔を背けるように僕のお腹の方に顔を向ける
僕はもう一か八かだと腹を決め、爆発が起きても守れるようクレーちゃんに覆い被さるような体制になり、炎スライムに腕を振るった
すると炎スライム達はものすごい勢いで大爆発を引き起こし跡形もなく散っていった
この時の大爆発をクレーちゃんは僕の腕の中で見ており、それを見た彼女は
「すっごーい!あのスライム達をドカーンって倒しちゃった!」
と目をキラキラとさせながら大喜びしていた
そしてそれがとても気に入ったのか、モンドで僕と出会う度にあの爆発を見せて欲しいと頼んでくるようになったのである
後はまぁ、誘われたらとりあえずついていくから、そういうのもあってそれなりに懐かれているのかもしれない
「ねぇねぇ。今日は何処でドカーンしに行こっか?」
「そうだねぇあんまり人が近くにいないところが良いだろうねぇ。」
「お魚ドカーンした後はいっぱい遊ぼうね!」
「あまり遅くならないようにやろっか。」
僕の手を引きながら楽しそうに話すクレーちゃんを見てほっこりする
彼女が喜んでいるのだから、ちょっとぐらいお魚さんを爆散させたって問題ないだろう
「クレー?一体何をしに行くって?」
…それはこの人に見つからなければの話であるが
その声を聞いた僕達はビクリと体を硬直させ、錆びきったロボットのようにギギギ…と首を後ろに向ける
「あ、どうもジンさん。いつもお世話になっております」
「君の活躍は聞いているよモトカズ。君のおかげでモンドの魔物被害がかなり減っている。代理団長として感謝するよ。」
「いえいえそんな、それは僕ではなく騎士団の皆さんが色々やってくれているお陰ですよ。感謝するのはこちらの方です。」
「ありがとう。そう言ってもらえると助かるよ。…ところでその騎士団として聞きたいのだが、今、君たちは何をしようとしていたのかな?」
ジンさんの表情はまるでイタズラをしようとした子どもをお説教しにきたとでもいわんばかりの顔で、クレーちゃんはその視線から逃げるように僕の後ろに隠れていた
ちらりとクレーちゃんの方を見るとなんとかして!とでも言いたげな顔で此方を見ていた
「いやぁ…その。ええと…」
しかし、怒れるジンさんを前にして僕に言い訳などできるはずもなかった…
僕は…弱い…!
「クレー。この前不用意にお魚を爆破してはいけないと言ったばかりだというのに…はぁ…ちゃんと分かっていなかったようだ…」
「ジ、ジン団長…?」
「こうなったら、もう一度最初から教えないといけないな。」
そういうとジンさんは目にも止まらぬ速さで僕の後ろにいたクレーちゃんを捕まえ抱き抱える
「帰るぞクレー。もう一度お説教だ。」
「うわーん!」
ジンさんから逃れようとクレーちゃんはもがいてはみるが、一切効果はなく連れてかれてしまう
「あ、あのー。あまり厳しくは…」
「モトカズ。あまりクレーを甘やかしすぎないでくれ。」
「あっはい。申し訳ありません。」
どうにかクレーちゃんに温情をと口を開くが、すぐに叱られてしまいその場で項垂れる
そしてそのままクレーちゃんがジンさんに連れて行かれるのをただ見守ることしかできなかった
すまないクレーちゃん、骨は拾うから…
というわけで結局やることがなくなってしまい、その場で立ち尽くしてしまう
まぁ、当初はご飯を食べに行こうとしていたし今からでも行こうかな?
「ようモトカズ。ちょっといいか?」
「ガイアさん。こんにちは」
ご飯を買いに行くために街に繰り出そうとしたところを眼帯をした男性に声をかけられる
この人はガイアさん
騎士団で騎兵隊だったかの隊長をやっているすごい人だ
「さっきの見てたぜ。残念だったな」
「あはは…ジンさんが来た時点でああなるのは確定でしたから。ところで何か用事でも?」
「ああ。モトカズお前、飯は済ませたか?」
「いえまだですけど」
「なら、エンジェルズシェアに行かないか?今日は昼からディルックの旦那が出てきてるから、からかいにでも行こうぜ。」
僕の肩に腕を乗せながら、いたずらっぽく笑うガイアさんに僕は苦笑する
ディルックさんとはアカツキワイナリーのオーナーである
その人とガイアさんは昔からの付き合いらしい
「いいですけど、僕お酒飲めませんよ?」
「構わんさ。1人だと旦那に追い払われるだけだからな、誰かと行けば何も言われなくて都合がいいんだ。」
「それなら、ご一緒させていただきます」
まぁ、何処で食べるかも決めてなかったし丁度いい
そうして僕はガイアさんとエンジェルズシェアに向かうのであった
「ところで、騎士団のお仕事は大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ問題ない」
それダメな時のやつでは?
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・モトカズ(主人公)
この世界に来て路頭に迷っていた所を何の見返りもなく助けてもらったのでクレーや西風騎士団の面々に対して足を向けて寝られない
特にクレーへの好感度は異常に高く、クレーにお願いされたらだいたい何でもオッケーを出すクレー全肯定マシン
お魚ドカーン?いいよいいよ
拡散反応がみたい?やろうやろう
・クレー
お魚ドカーンしに外に出たら、ボロボロの人を見つけたのでモンドまで送ってあげた騎士の鏡
しかも、ただ送るだけでなくその後の身分の保証や仕事の紹介までアフターケアはバッチリ
モトカズの拡散反応に憧れており、モトカズと出会っては密かにボンボン爆弾の火力増強を行っている
モトカズとクレーが協力して魔物討伐などを行うとモンドが滅ぶ危険性があるため、この2人が一緒に歩いているのを見かけたらすぐにジン団長に通報して下さい
・ジン団長
クレーが身元不明の成人男性を連れてきたと聞いたときは警戒していたが、モトカズがクレーに号泣しながら土下座して感謝していた姿を見てそんなモノは吹き飛んだ
拡散反応の威力には驚いたが、モトカズ自身が危険性を理解しているため問題はないだろうと判断している
読み書きや計算もでき、仕事にも誠実なモトカズに騎士団に入ってほしいと考えている
・ガイア
拡散反応が強力で、大物相手にする時楽ができるのでモトカズのことは気に入っている
後は飯を誘えばだいたいついてくるのでそこも気に入っている