ランス短編・中編集   作:OTZ

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ウルザとランスの出会いが一年早ければという想定で書いてみました。


一話完結(短編)
別の出会い方


「むかむかむか」

 

 ランスは苛立っていた。

 LP3年1月上旬、玄武城からリズナを救い出したランスは、年末年始で金を使い果たしたのでまたキースギルドから依頼を受け、今度はゼス王国内に居た。

 クエストは果たして報酬は受け取ったものの、またも道に迷ってしまい、奴隷のシィルを探索に出している。

 しばらくするとシィルはとてとてと、ランスの前に駆け寄ってきた。

 

「遅ーーい!!!」

「すみませんランス様。道の途中でモンスターに何体か遭遇してしまって」

「言い訳は聞かん!」

 

 と、ランスは一発拳をシィルの頭にくらわせた。

 

「ひーん。ごめんなさい」

「で、どうなっているんだシィル。道はわかったのか?」

「さっき道案内の看板を見つけたんですけど、あと10kmでオールドゼスってかいてありました!」

 

 と、シィルは自信ありげに言って見せる。

 

「で、それはどこなんだ」

 

 ここですと言いながら、シィルは地図を広げてみせた。

 

「バッカもーん! なんでここまで国境から離れているのだ! シィル、お前がいい加減なのが悪い!」

「そんなぁ。ランス様が行き当たりばったりで進むからじゃないですか」

「口答えするな! お前は、俺の言う事さえ聞いていればいいんだ」

 

 そう言いながら、ランスは改めて地図を見直す。

 

「仕方ない。とりあえずその道しるべにそって町を目指す他あるまい。行くぞシィル」

「ま、待ってください。私探索で疲れてしまって。それに、そっちはゼスの兵隊さんの服をきた人が……」

「うるさい。知ったことか。キリキリ歩け!」

「ひーん……」

 

 というわけで、ランスとシィルは再び道を進んでいった

 

―森の中―

 

 道しるべを過ぎたが、一向に森から抜ける気配はなく、ランスのイライラは募るばかりだった。

 

「くそお。なんでこうも鬱陶しい森なんだ」

「もうすぐ町につきますからがんばりましょう」

「だからその町はどこにあるってんだー!」

「ランス様落ち着いて」

「あーもう我慢ならん! ヤるぞシィル。ケツ出せ」

 

 ランスは颯爽とハイパー兵器を取り出し、シィルに見せつけた。

 

「きゃっ。そんなランス様。せめて宿屋に着いてから」

「んなもんいつになるかわからんだろーが。奴隷は黙って御主人様の言う通りにすればいい」

「で、でもほら、近くで喚声みたいなのが聞こえませんか?」

 

 構わずにランスはシィルの服を脱がそうとしたが、なるほど確かに遠くから声が聞こえる。

 ランスはにわかに手を止めた。

 

「聞こえますよね……?」

「ちっ」

 

 ランスは危機を察知して流石に性欲をおさめ、ハイパー兵器を収納した。

 

「脇に入るぞ。面倒に巻き込まれちゃたまらん」

「道から外れるとまた迷ってしまいますよ?」

「馬鹿め。誰が外れるといった。林に隠れながら街を目指すのだ」

 

 そう言ってランスが森に入ろうとすると、火の玉が目の前に飛んできた。

 

「うおっ……あぶねーじゃねぇか!」

 

 ランスは怒りを顕にして、ロングソードを鞘から引き抜いた。

 すると見知らぬ戦闘服をきた何人かの戦士がランスとシィルに向かってきていた。

 ランスは一人の戦士に向かって、

 

「コラ! お前らだろ俺様にあんなもんぶつけたのは! 落とし前つけてやらぁ!」

 

 と、今にも斬りかかりそうな形相で怒りをぶつけた。

 

「ち、違う俺達じゃない! ゼス軍だゼス軍!」

「そうですよランス様。この方たちは魔法は使えないハズです」

「はぁ? なんでお前にそんなことが分かるんだよ」

 

 聞かれたシィルは表情を暗くした。

 

「そ、それはその」

「俺達は二級市民なんだよ。魔法は使えないんだ」

 

 ランスは訊問の意味合いでシィルに目配せする。

 

「そ、そうなんです……」

 

 と。シィルは申し訳無さそうな声を出した。

 

「そうだ。あんた、紺の髪をした、槌を持っている女の子を見なかったか? 俺達の仲間なんだが、この近くで迷い込んで」

「女の子だと?」

 

 ランスは俄然興味を起こして男の話を聞こうとする。

 しかし、二発目の火球が男のもとに襲いかかり、消し炭にした。

 

「ひっ」

 

 シィルは眼の前で人が炭化し、さすがに顔を青ざめさせたが

 

「女の子か。よしよし事のついでに探してやろう」

 

 ランスは下卑た顔を浮かべて、先程までの不機嫌はどこへやら、進んだ道とは正反対に進んでいった。

 

「あ、待ってくださいランス様ー……」

 

 シィルはそんなランスの背中を少し遅れて追いかけていく。

 

―10分後―

 

「ちっ。どこにもいないじゃないか」

 

 森の中を適当に探していたランスだったが、一向にその女の子らしき人を見つけられずに居た。

 

「その……。諦めて街に行きませんか?」

「何だと貴様。か弱い女の子が戦場の只中ではぐれているんだぞ?」

「そ、それはそうですけれど」

「そうだろう。このハイパーな英雄の俺様が見つけ出してやらねば男が廃ってしまうってもんだ」

「ひんひん……。ほんとはただ女の子に酷いことしたいだけじゃないですか」

 

 シィルは小さな声でランスを愚痴った。

 

「なんか言ったかシィル」

「いえ……なんでも。あ! ランス様!」

 

 シィルはふと目にやった方向に人影を見つける。ランスが目をやるとなるほど木の根元で誰かがいるのを見つけた。

 しめしめと、ランスとシィルは静かにそこへ近づいた。

 

―根元付近―

 

「ぐう……ぐう……」

 

 女の子は木の根に背中を預けてすやすやと眠っていた。槌は彼女のすぐ側に立てかけられている。

 

「ほほう。なかなかかわいいじゃないか。うむうむぐっどだ」

「しかし不思議ですね。結構騒々しいのによくこんなに」

 

 人の声や草を踏みわける音はここからは遠いものの、さきほどよりも大きくなっている。常人ならば安眠にはいささか厳しい状況である。

 

「大方、ゼスと相当やりあって疲れたんだろう。ま、俺様には好都合だがな」

 

 ランスはガチャガチャとベルトを外そうとしていた。

 

「え!? ランス様。もしかして」

「何を言ってるんだ。ここまで据え膳があるのにやらぬ馬鹿がどこにいる」

「で。でもでも、いつここに人がくるか。それにケガもしているようですし」

 

 シィルは彼女が自分で巻いたと思われる二の腕の包帯から、更に血がでているのを確認した。

 

「げっ。ほんとだ。さすがに血まみれでヤるのもなぁ……。シィル、治してやれ」

「は、はい。いたいのいたいのとんでけー!」

 

 シィルは患部に手を近づけて、ヒーリングの魔法をかけた。傷がみるみる治っていき、やがて血は止まった。

 

「ぐう……おぉ!」

 

 すると彼女は気がついたのか、ゆっくりと薄く目を開けた。

 

「ち。起きやがったか」

 

 ランスはしぶしぶ脱ぎかけたズボンをもとに戻した。

 

「気が付かれましたね。大丈夫ですか? 随分寝入っていたようですけれど……」

「私の……体質」

「え?」

 

 シィルは当惑した。

 

「どこでも……、すぐ眠ってしまうの」

「あぁ。そうなんですか。それは……ちょっと大変ですね」

 

 シィルは薄く笑みを浮かべて彼女に同情した。

 いやちょっとどころじゃないだろとランスは思ったが敢えて流した。

 

「傷……。ありがとう」

「いえいえ。とんでもないです」

「でーい。まどろっこしい。君を救ったのは俺様だぞ」

「え?」

「こいつは、俺の所有物。俺が君を治すようにいった。だから礼を言うべきは俺様なのだ」

 

 そう言ってランスは大きく胸を張った。

 

「そうな……の?」

「は、はい。私はランス様の奴隷ですから……」

「魔法使いが……魔法使いじゃない人の……奴隷……??」

 

 彼女は大いに混乱している。

 

「もしかして……そういう……プレイ?」

 

 彼女はシィルに尋ねる。

 

「違うわーーー!!」

 

 ランスは半ば本気で彼女に怒りの形相を向けた。

 そうこうしていると、もう一人、三人の前に誰かが現れた。

 

「あら……。セスナさん。こんなところに居たんですね」

 

 彼女はスレンダーな身の上に、ハイレグのバトルスーツに、三連装のボウガンと、腰にショートソードを下げている。

 やや顔立ちは幼く見えるものの、色白に整った目鼻立ちをしており、かなりの美人であった。

 

「おー97点」

 

 ランスは彼女を見つけるなりそう呟いた。

 

「はい?」

「いや、こっちのことだ」

 

 ランスは居住まいを正した。彼女の出で立ちをみるに、それなりに出来そうな事は直感で理解したからだ。

 

「ウルザ……隊長」

「無事で何よりです。それで、この方たちは?」

 

 ウルザはセスナの肩に手をかけて安堵した後、二人のいる方向に目をやった。

 

「魔法で、助けてくれました」

「まあ。それはどうもありがとうございます」

 

 ウルザはボウガンを立てかけ、二人に深々と頭をさげた。

 

「がはははは。可愛い女の子はみんな俺様が助けるのだ」

「申し遅れました。私は、ウルザ・プラナアイス。アイスフレームの幹部をやっております」

 

 ウルザはランスの言葉をさらっと受け流して、自己紹介をした。

 

「アイスフレーム? なんだそれは」

「私も聞いたことがありません。どういう組織なのでしょうか?」

「話せば長くなるのですが……」

 

 ウルザが話そうとした瞬間に、ファイヤーレーザーがセスナの頭上に突き刺さった。瞬間的に火がつき、燃え始める。

 

「居たぞ―! こっちだ!!」

 

 数人規模のゼス軍と思われる部隊がランスたちに気づき、追い詰めようとしていた。

 

「どうやら、のんびり自己紹介とはいかないみたいだな。いっちょやるか!」

 

 ランスは剣を取り出し、前に進みだした。

 

「え? しかし、無関係なあなたたちを巻き込む訳にはいきません。どうか逃げて」

「言っただろ。俺様は可愛い女の子の味方だ。ピンチを放って置くわけないだろ」

 

 もちろんランスの下心は情欲に満ちているが、一方の本心でもあった。

 そんなやりとりをしていると、肉壁と思われる大盾を持った兵士がこちらに突進してきた。

 

「ようし、やるぞ」

 

 といった側から、瞬く間に肉壁兵の眉間に次々と矢が突き刺さり、倒れていった。

 

「へ?」

 

 ランスは飛んできた方向を見ると、いつの間にかボウガンを構えたウルザが毅然として立っていた。

 

「私達は大丈夫です。伊達にこんなところにいるわけじゃありませんから」

「ふ、ふん! 少しボウガン使えるからって俺様を舐めるなよ! でりゃあああ!! ランスアターック!!」

 

 そう言って、更に襲いかかってきた肉壁兵を数人ランスアタックで一気に倒していった。

 

「なるほど。言うだけのことはあるということですか」

 

 ウルザはそう得心して、もはや言い返すのを諦めた。

 

――

 

 その後、四人がかりで15人ほどの包囲を抜けきり、もとの道に戻った。追手は全員倒したようで静けさを取り戻している、

 

「ふう。なんだゼス軍なぞこんなものか。魔法大国なんていっても口ほどにもないながははは」

「すごいです。さすがランス様。ぱちぱちぱちぱちー」

 

 ランスは高笑いして勝利を祝った。ウルザはそんなランスを背後から見てしばらく考えていた。

 そして、ようやく口を開く。

 

「ランスさん……とおっしゃいましたか」

「おう。なんだい、ウルザさん」

「説明が遅れてしまいましたが、私達の組織、アイスフレームはゼスのレジスタンスです」

「わざわざゼスの軍が出張っているってことはそういうことだろうな。なんだテロでもやったのか?」

 

 ランスは戦いの中でなんとなくそれは理解し、何の気なしに尋ねる。

 

「今回は少々行き違いがあってこんなことにはなってしまいましたが、基本的には平和的にゼスにある差別をなくそうと動いています」

 

 ランスの軽口に特にウルザは不機嫌にもならず、丁寧に答えた。

 

「そ、そんな凄い組織なんですか」

「シィルさんはこちらの出身ですか?」

「は、はい」

「でしたら私達の目指そうとしていることは……」

 

 と、ウルザはシィルにアイコンタクトをとる。

 

「と、とても大変なことだと思います。この国のそういう意識って本当に根強いですから……」

「ほーん。そうなのか」

 

 ランスは特に感心なさげにそう答えた。そんなことはどうでも良いからである。

 

「今日はもう遅いですし、お二人さえ良ければ、一旦私達のアジトまで来ていただけないでしょうか? お礼もしたいですし」

「おう。いいぞ。ちょうど野宿も飽きてきたからな」

「そうですね。確か今日で四日目でしたか……。寝床があるところで休めるなら嬉しいです」

「もちろんそれなりの待遇はしますよ。では、行きましょうか」

「うむうむ。行こうではないか。ウルザさんのもてなしが楽しみだなぁむほほ」

 

 ランスはあからさまに鼻の下を伸ばしている。これは絶対また女の子にまた手を出すだろうなとシィルは痛感し、ため息をついた。

 そういう訳で四人はアジトに向かっていった。

 

―道中―

 

 ランスとシィルに先導して。ウルザが先頭、1,2歩遅れてセスナがアジトへの道を歩いている。

 

「隊長……」

「なんですか? セスナさん」

「あの二人……、誘うつもり……?」

 

 セスナの声にはやや不安さが混じっていた。

 

「そうなればありがたいですね。腕も立つみたいですし、近くに例の計画もありますから」

「そう……ですか」

「もしかして……嫌なの?」

 

 ウルザは慎重にセスナに尋ねた。

 

「別にそうじゃないけど……すっごいドスケベ野郎な感じする……よ?」

「ま、まあ確かにそう感じなくはないですけど。ペンタゴンを抜けて間もないですし、やはり戦力は欲しいですから。いざという時はダニエルも、父さんや兄さんもいるし」

「そう……」

 

 そう言ってセスナは眠りに入り、ウルザによりかかった。

 

「あっ……。もう。困った娘ね」

 

 満更嫌でもない様子で、ウルザは自らの肩を貸し、歩いていった。

 ウルザは新たに力強い仲間を得られるかもという期待を持ちながら、アジトへ向かっていった。

 

―終―

 




例の計画が何かは原作をやっていればわかるはずです
本編内では触れませんでしたが、前年発生した12月革命の余波で、テロリストの残党狩りをしていたゼス軍にひっかかってしまったというのが前提の状況になります。
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