朝6時。シィルはいつもこの時間に起床する。
昨日も散々ランスに抱かれた後だったので、シャワーで軽く体を洗い流し、軽く玄関前や外を掃除をする。
「おはようシィルちゃん。今日もえらいわね~」
「おはようございます~。そちらもジョギング毎日お疲れ様です」
掃除がてら軽く近所に挨拶と世間話。問題行動を起こしてばかりのランスがなんとかこの街で暮らせるのもシィルの人徳あってこそ。
掃除が終わると、今度は朝食の用意を始める。
冷蔵庫から食材を取り出し、慣れた手つきで具材を調理していく。鼻歌も歌いながら上機嫌な様子。
やがて出来上がるとダイニングテーブルに朝食を並べる。
すると、朝食の匂いに誘われてか、ランスが起床する。
「おはようございます。ランス様」
「ふぁぁ……。なんだ今日は焼き鮭と味噌汁かよ」
だいたいランスはシィルの食事に文句をつける。
「はい。昨日はお魚が安かったので」
「ケチくさいことするな! 俺様は今日はハンバーグの気分だったのだ」
「すみません……」
「しょうのない奴だ。仕方ない、食ってやる」
しかし、まずシィルの出した食事を食べ残すことはない。
食べ終わって一服すると、今日はこのまま一発した。
「がはは。今日もよかったぞシィル」
「しくしく……。今日は温かいまま食べれると思ったのに」
シィルは大体ランスが食べた後に朝食を取る。
「じゃあなシィル」
といってランスは身支度を整えて、玄関へ向かった。
「い、行ってらっしゃいませランス様」
シィルも身支度を整え、食器片付けなど他の家事に向かった。
――
今日のランスはとりあえず、WW保育園へ向かった。
「あーランスおにーちゃんだ!」
「あそんであそんで」
ランスが来るとだいたい園児たちが群がってくる。
内心はガキになど構いたくはないのだが
「ああわかったわかった。後でな」
とそこまで邪険にはせず、適当にあしらう。
そして、園庭の砂場で園児と遊んでいる保母のところへ向かった。
「ようマナちゃん。今日も相変わらずかわいいな」
「あ、ランスさん。おはようございます」
これがランスのターゲットである保母のマナミである。今年度から保母になったばかりの新人で、華奢で童顔だが胸がかなりあり、ランスは落とすべく計画を建てていた。
「おじさんあそぼー」
と、保母と遊んでいた三人くらいの園児がランスに話しかけた。
誰がおじさんだ!! とランスキックを繰り出しそうになるのをすんでのところでおさえ、
「おう。何をする?」
と表面上普通に接した。
「すなやまつくるの!」
と、園児は小さなスコップを差し出してきた。
「俺様はそんなちゃちなもん使わん。ワイルドに素手でいくぞ」
「わいるど?」
「俺様みたいにかっこいいことだ」
といって、ランスは手で砂をかき集め、園児たちの作った砂山に被せていく。さすがに手が大きいだけあって、幼児用スコップより何倍もの量がかかっていった。
内心バカバカしく思いながらも、ランスはしばらく園児たちの遊びに付き合う。
「すみませーんいつも」
やがて園児たちがランスから離れると、マナミは頭を下げてランスに礼を言った。
「がはは。何、大人として当然のことをしただけなのだ。えっへん」
「ランスさんが時たま来てくれるおかげで、私としても助かりますよー。なったばかりで子どもたちとの接し方に苦労することもあるので……」
「マナちゃんも大変だな。今度二人でお茶飲みながらじっくり話聞こうじゃないか」
当然その後一発ぶちこむこと前提の誘いである。
「そうですねぇ~」
と、マナミが返答に悩んでいると
「宮本先生。ちょっと物置で、今度のおゆうぎ会に使う物品のチェックやっておいてくれない? ハニーやるろんたのお人形が結構ボロくなってるからそのへんもお願い」
副園長のババア、もとい御婦人が二人へ近づき、マナミに仕事を回した。
マナミはすぐに応じて、物置へ消えていく。
「ランスさん。当園をナンパの場とするのは、やめていただきたいと何度も注意したんですが」
「ぐっ……。うるせーな。金を払えばいいんだろ払えば!」
そういってランスは財布からいくらかゴールドを副園長に渡した。
「全く。父兄の方からも苦情も来ているんですよ。園内に見知らぬ男がうろついてる。ロリコンなんじゃないのかって」
「ちっ。まだ足りないってのか。俺は断じてロリコンじゃない! あくまでマナち……」
副園長はかけているメガネを鋭く光らせ、威嚇を行った。
「守銭奴ババアが」
そういって財布から更にゴールドを渡した。
「ありがとうございますあしながおじさんのランスさん。これで当園の園児たちもより楽しくおゆうぎ会ができますわ」
とにっこり笑って、ランスの元から立ち去っていった。こうして大義を作らなければ関係者でないランスはそもそも立ち入れないのである。
「はじめに渡さないからって、マナちゃんを落とせそうな時に因縁つけやがってあの因業ババア。いつか殺してやる」
ランスは固く心に誓ったが、マナミを落とせないうちは到底できない相談であった。
――
保育園を後にしたランスはムカムカとしながら家に帰ってきた。
「あ、お帰りなさいランス様! お昼ごはんできてますけど」
「それより一発やらせろ」
ランスはフラストレーションをシィルにぶつけ、思い切り4発発散した。
「がははははは。やっぱ白昼にヤッても最高だな。さーて飯でもくうか」
「ひんひん……。お料理作ったばかりなのに」
スッキリさせたランスは昼食を済ませ、また出かけようとするとシィルに呼び止められた。
「ランス様。ガス屋さんと水道屋さん、ケーブルテレビの支払いが今日になっているんですけど」
ランスはプレイの参考とシィルへのセクハラ目的でエロチャンネルにいくつか加入している。
「なんだ足りんのか? 全く甲斐性のない奴隷だな。待ってろ」
といってランスは財布を開いて手持ちを確認する。
しかし、財布の中には因業ババアにとられてほとんどゴールドが残っていなかった。
「あ……」
「ランス様?」
「そ……。それくらいお前がなんとかしろ。いいな!」
「そんなぁ。今日の集金が今月三度目の催促なんですけど……しくしく」
シィルの言葉を聞こえないふりをして、ランスは家を飛び出した。
しかし。このままではちょっとヤバいと思ったランスはキースギルドへと向かった。
――
「ようハゲ。相変わらず悪趣味な店だな」
ランスはギルドに入るなり、そう悪態をついた。
「おいおい。久々にきたと思ったらご挨拶だな。この前の報酬、もう使い切ったのか?」
キースはニヤニヤと脂ぎった頬を緩ませながら言う。
「うるせえな。その余計な口閉じねえと、ぷちハニー100個ぶちこむぞ」
「おお怖い怖い。しょうがねえな。いくつかおめぇがこないうちに来たからそれ見てくれ」
キースはクエスト依頼票のつまった台帳をランスに渡した。
5分ほど目を通した後、ランスは深くため息をついた。
「たく。こんなしけた仕事しかないのかよ。そろそろやべーんじゃねえのかここ」
「お前の要求が高すぎるんだよ。この前だって1万ゴールドの仕事紹介したのに断ったじゃねえか」
「フン。英雄の俺様には、にゃんにゃん探しなんか似合わんのさ」
ランスはそう言って台帳を更にめくった。
同じ台帳を見ていたキースが口を挟む。
「これなんかどうだ。ジフテリア付近のヤンキー退治で3000ゴールド」
「安すぎるわ。女の子絡まんからせめて10倍出させろ」
「お前なぁ……」
こんな調子でランスは台帳の仕事を隅々まで見たが、気にいる仕事がなく帰ることにした。
――
夕方になって家の近くにたどりつくと、シィルと他の男が玄関先で話していた。
「シィルさん。こっちもねえ。仕事なんですよ。使った分は払ってもらわないと」
「すみません。明後日には内職のお金入りますから、せめてそれまで待っていただけませんか」
「いくらも入らないでしょうそれ。こちとらもう三ヶ月滞納で800ゴールドも溜まってんですよ」
集金人は呆れた顔でシィルを見る。
「申し訳ありません。本当に……」
「謝られたところで、私も手ぶらじゃ帰れないんですよ」
集金人はそう言いながら、シィルの体を上から下まで眺める。
「内職をやってるって言ってましたね。それよりももっと割の良い仕事を紹介しましょうか?」
「えっ……」
「えじゃないでしょ。このあたりじゃシィルさんの事知らない男なんざいませんよ。さぞかしいい金になるだろうなあ」
そう言いながら、集金人はシィルの手を取り、馴れ馴れしく触りだした。
「えっ。や、やめてください……」
「この手で、その体で男を喜ばせれば、どれだけの金になるか……ああ、なんてもったい」
「こらああああ!!!」
様子を伺っていたランスが、集金人の度が過ぎた行いを見て、剣を抜きながら怒鳴り込んだ。
「ひぃぃぃ!! お助けえええ!!」
そう言って集金人は一目散に家から逃走した。
「ちっ。逃げ足の早い奴め。お前もお前だ。気安く男に触らせるんじゃない」
剣を鞘にしまいながら、シィルの事も責めた。
「も。申し訳ありませんランス様」
「まさか、他の奴にも赦してないだろうな」
「いえ。他の集金の人も来ましたけど、あそこまでされたのは無いです」
シィルは身振り手振りで強く否定した。
「本当だろうな?」
シィルは今度はこくこくとうなずいた。
ランスはしばらく黙った後、一つの事を決める。
「仕事だ。明日からジフテリアに巣食っているヤンキーどもを、しばきに行く。準備しとけ」
「は、はい! わかりました、ランス様!」
シィルは晴れやかな笑みを浮かべて、ランスの言葉にうなずいた。
「なんだお前。随分と嬉しそうだな」
「へへ……。そ、そうですか?」
「まあいい。今日はあと晩飯を食ってその後はヤッてヤッてヤりまくるぞ」
「うう……。それだと準備に時間が」
「知ったことか。奴隷なら、それぐらいなんとかしろ」
そんなやりとりをしながら二人は自宅へ入っていった。
―終―