―アイス ランス自宅―
「ふっ……嫌だなあ奥さん。ちょっとお茶するだけじゃないか……」
ある朝。ランスはそんな寝言をベッドの上でぶつぶつ言っている。
そうしていると、もぞもぞと彼の下半身で、うごめくものがあった。
「んっ……な……なんだ」
「あ、ご主人様~。おはようございますれす」
違和感に気づき、ランスが目を覚ますと、ペットのあてな2号がランスのハイパー兵棋を取り出そうとしていた。
「……。なにしてやがる」
「ご主人様のがつらそうにしていたから、すっきりさせてあげようと思ったんれす」
あてなは発情しきった顔でランスを見つめていたが、ランスは覚めきった目である。
「離れんかコラ」
「嫌れす」
「えーい。今、俺様はお前とする気分じゃねえんだ! いいから離れんか」
ランスは不機嫌たっぷりにあてなを蹴飛ばした。
「ぴえーーーん。ご主人様いじわるれす……」
「誰のせいだ。というか、シィルはどうしたんだシィルは。飯の匂いもせんし」
「シィルちゃんなら、ずっとソファで寝てるれす。役立たずれす」
「なんだと」
ランスは半分寝ていた脳を覚醒させ、居間へ向かった。
―居間―
「あ……。ランスさま。おはようございまゲホッ……おはようございます」
シィルはよろよろと掃除しようとしていたが、ホウキを握る力が入らず、へなへなと座り込んでしまった。声もかすれて鼻声になっており、明らかに彼女は風邪を引いていた。
「起きているではないか」
「ち……。さ、さっきまで寝ていたれす」
「本当か? シィル」
ランスはシィルを睨む。
「あ……は、はい。ちょ、ちょっと調子が良くないですけど、今から朝ご飯つくりま……あっ」
シィルは台所に向かおうとしたが、滑って転んでしまった。
「何してんだ鈍臭い奴だな。さっさと起きんか」
「す、すみませんランス様……ゲホッゴホッ」
シィルの体は悪寒で震えており、見るからに辛そうであるが、シィルは気丈に振る舞おうとしている。
またふらふらと立ち上がり、台所に向かおうとしているが、その足取りは重い。
「キリキリ歩かんか!」
「はぁ……、はぁ……。すみません、どうしても辛くて……」
「ね? ね? シィルちゃんはこの通り、奴隷のくせにろくに働けそうにないれす。だから、今日はあてなと……」
「黙らんか。ペットの分際でご主人様に物を言うな!」
ランスはあてなに拳骨をくだした。
「酷いれす酷いれす。ペット虐待れす。人権団体に訴えるれす」
「お前は人じゃないだろが」
あてなの戯言を適当にいなしつつ、シィルのつらそうな様子をランスはしばらく観ていた。
が、遂に痺れを切らした。
「あーーーもう。何してんだこのバカは……」
みかねたランスは、頭を掻いて、シィルをお姫様抱っこの要領で抱き上げた。
「げほっ……。どうされたのですか。ランスさ」
「あてな。その机どかせ」
「は、はいれす」
ソファの前にあるテーブルを、あてなはそそくさと動かした。
「布団」
「へ?」
「いいから布団しけって言ってんだ!!」
「どこにあるかわかんないれす」
あてなはうつけた顔でランスを見上げた。本当に知らなそうである。
「は? 自分の家にあるものくらいわからんのか」
「あてなはきちょー品管理担当れすから、そうでないものはしらないれす」
「むがー! ふざけるな! 俺様の家にあるものくらい全部把握するくらいゆーづーきかせられんのか!」
ランスは大声であてなを怒鳴り散らしたが、あてなは胸を張る。
「あてなは高性能だから、余計なことは覚えないようにできてるんれす。えっへんえっへん」
「はぁ……。わかった。じゃあさがしてこ」
「げほっ……。あ、あてなちゃん。お布団だったら、けほっ。ランス様のお部屋の、ごほっ、クローゼットに入ってるから、そこから、出してくれる?」
シィルは辛そうな声であてなに弱々しくお願いした。
「分かってんだったらさっさと言わんか!」
「ひんひん……すみません……ごほっ」
「なんかシィルちゃん生意気れす。もっとちゃんとお願いしてくれないといやいやなのれす」
「お前もさっさと持ってこんか!」
そういうわけで、どうにかあいた場所に布団を敷き、シィルを無事に寝かせた。
「全く。ご主人様にこんな手かけさせやがって。ふざけた奴隷だぜ全く」
ランスはシィルの頭の側に立って、嫌味を言った。
「すみませんすみません……。げほっ」
「むぅ……しかし」
ランスは病に苦しむシィルを見る。白い肌には汗が浮かび、肌は紅潮し、胸のあたりも呼吸で大きく起伏を繰り返している。
「ぐふふふ……。しかし、いかん、いかんぞ。シィルよ。奴隷ならば体調管理くらいできなければダメではないか」
ランスは口元をいやらしく歪ませながら言う。
「へ? ……ごほごほっ」
「またこのようなことがあってはいかん。スーパードクターたる俺様が、じきじきに診察してやろうではないか」
「え? そんな。大丈夫ですよランス様。ごほっ。ただの風邪ですから。ちゃんと寝ていれば」
「えーいうるさい。そんなのお前にわかるものか。お前は黙って、俺様のセッ、じゃなかった診察をうければいいのだ」
そう言ってランスは掛け布団に手をかけ、2発発散した。
「ひんひん……。酷いですランス様。げほっごほっごほごほっ」
「うーん……。なんか余計にひど……。いやいや、体の奥深いところに、俺様のハイパーなスペルマをくれてやったんだ、きっと治るはずだ。がはははは」
すっきりしたランスはそう言って高笑いをした。
「ぐすん。ご主人様仲間外れなんてひどいれす……」
「悔しければ、お前も風邪をひけばよいのだ」
「そんなぁ……」
あてなはがっかりと肩を落とした。
「ふー。しかし体を動かしたはいいが、腹がいい加減減ったな。そういえば朝飯もまだだった。シィルはさすがに役に立たなそうだし」
時計は既に正午を回ろうとしており、昼の時間帯である。
「あてなが作るれす」
「ふざけるな。俺様を病院送りにするつもりか」
「えー……。じゃあどうするんれすか」
「ふっふっふっ」
そういってランスは、立てかけてあった物干し竿を使って、天井を思い切りついた。
「わっ」
その声は限りなく小さかったが、ランスは聞き逃さなかった。
「おーい。居るのはわかってんだぞ。出てこいかなみ」
しばらく時間が経過して、かなみが天井裏より降りてきた。
「うう……。バレてないと思ったのに」
かなみは悔しそうな顔をランスに向けた。
「がははは。俺様をごまかそうなど100年早いわ。なんだ。またあのリアのバカが差し向けたのか?」
「そうよ。定期的に様子見に行けって……。最悪」
かなみは深くため息をつく。
「こそこそ監視されるのは気に食わんが……。こういう時は好都合だ。話は聞いていたな?」
「う、うん」
かなみは小さくうなずく。
「そういうことだから、今よりかなみを臨時奴隷に任命する。とりあえず飯作れ」
「は、はぁぁぁぁぁ!? なんで私がそんなことしなきゃ」
「ほー。言う事きかんのか。リアにちくっちゃおっかなー」
ランスはあさっての方向にむいて口笛を吹いた。
「わ、私の任務は監視と警護であって、そんなことまで」
「そんな言い訳、あいつに通じると思ってるのか? まあ。あることないこと言いふらすけどな」
「うっ……。この卑怯者」
かなみは蔑んだ目線をランスに送る。
「ラ、ランス様。かなみさんが、ごほっ。かわいそうです。けほっ。ご。ご飯でしたら私が、げほっ作りますから」
「うるさい。お前は黙ってろ」
シィルは無理に上体を起こし、立ち上がろうとするが、ランスの視線で止めさせられた。
「シィルちゃん……」
「おいかなみ。お前はあの姿見てなんとも思わんのか。薄情なやつだなー。ま、血も涙もないリアの部下だからしょうがねーか」
ランスはニヤニヤ笑いながらかなみを言葉責めにした。
「もー……。わかった。わかったわよ。料理でもなんでもするから」
かなみは観念した顔になって、肩を落とした。
「ふん。最初からそう俺様の言うことに従ってればよいのだ。30分以内に作れ。細かいことはシィルにきいてこい」
「はいはい……」
「やい新入り、ご主人様の口に合わなかったらただじゃおかないからな」
あてなはそうかなみをいびった。
「うう。なんで私がこんな目に……」
かなみはとぼとぼとシィルのところへ向かい、頭の側で腰を下ろした。
「かなみさん……。すみませんごほっ。私がこんな体なばっかりに」
「ううん……いいの。シィルちゃんは悪くないんだから。あんなコキつかわれたらそら体も壊すわよね」
かなみはシィルに同情の目線を向ける。
「いいんです。けほっ……私はランス様の、助手ですから」
シィルは小さい声で言う。
「ほら、もう少し布団被せないと、こじらせちゃうよ」
かなみはそう言って、シィルの首まで布団を引き上げる。
「ありがとうございます……」
「それで、なんだけど、玉子ってある?」
かなみはおそるおそる尋ねる。
「あ、はい。昨日安売りしてたので2パックくらいごほっ。冷蔵庫に入っていますけど」
「ほっ……」
かなみは胸をなでおろす。
「かなみさん?」
「ううん。それがあるなら大丈夫。お台所、借りるわね」
そう言ってかなみは立ち上がり、台所に向かおうとした。
「あ、かなみさん!」
「何?」
「えっとその……。玉子はできるだけ消費期限の早い方から、つかってくださいね。ごほっ」
シィルはやや恥ずかしそうに言う。今月もギリギリな家計なだけに節約志向である。
「あ……うん。わかった」
―午後1時―
「はい。できたわよ」
かなみは不機嫌そうに、ランスに食事を出した。厚焼き玉子に作り置きのサラダ、味噌汁、ごはんであった。
「おせーぞ。30分で作れっていっただろ!」
エロ本をソファで読んでいたランスは、ズカズカとダイニングテーブルへ向かった。
「しょうがないでしょ。ご飯炊いてなかったんだから……」
「たく……。だいたいなんだこの食事。品数少なすぎだろ」
ランスは卓上の料理を見て早速文句をつけた。
「だ……だって、これくらいしか冷蔵庫に」
「嘘こけ。昨日シィルが買い出しに行ってたから、それなりにあるはずだぞ」
「うっ……」
まさか出来合いを除いたら厚焼き玉子くらいしか、自信を持って作れないとは言い出せないかなみであった。
「ちっ。まあいい。食ってやる」
そう言ってランスは味噌汁から手をつけ、食べ進めていった。
かなみは持参していた兵糧丸を口にしながら、反応を注意深く見守る。
「ね。ねぇ」
「んー?」
「その、美味しい?」
ランスはサラダを口にした後言う。
「旨いもなにも。半分以上シィルの作り置きだろが」
「うっ……。でも、でも厚焼き玉子だけは私が……」
そう言われて、ランスは無言で厚焼き玉子を切り分け、口に入れた。
「ん……おー……」
ランスはもぐもぐと咀嚼し、飲み込んだ。
「ど……どう?」
「うんまあ……悪くはないな」
ランスは素直に褒めようとせず、そのまま二口目にかかった。
「な、なによそれ。うまいかまずいかはっきり」
「うるさい」
そう言って、ランスはお茶を飲んでかきこんでいく。
―午後3時―
ランスは昼食を食べ終えると、色々とかなみに家事を命じて、外に出ていった。
あてなの妨害やいたずらに手を焼きながらなんとかこなし、シィルの看病を行っている。
「シィルちゃん。おかゆできたけど……食べれる?」
「げほっ……。あ、はい。なんとか食べれると思います」
シィルは上体をおこし、小さい土鍋に入ったおかゆを受け取る。
「ごめん。本当ならまっさきに作るべきだったんだけど……」
「仕方ないですよ。げほっ……。ランス様の言われた事のほうが先ですから」
そういってシィルはふーふーと息をかけながら、おかゆを口にした。おかゆには玉子と梅干しも入っている。
「ど、どう?」
「ふぅ……。おいしいです。良い感じに味もついていますし」
シィルはにっこりとかなみに微笑んだ。かなみはほんの少しだけ救われたような心地になる。
「よ、良かった……」
かなみは深く息をついた。
「もぐもぐ……。もしかして、ランス様が。けほっ、お昼に言われたこと、気にしているんですか?」
「え、いや……別にそういうんじゃ」
シィルはゆっくりと2,3口更に食べた後、続ける。
「ランス様……。素直なお方じゃないですから。げほっ。まず美味しいなんていわないんです」
「えっ」
「でも……けほっ。悪くないとか、そういう事いった後に、全部食べている場合は……げほっ。おいしいと思ってくれてる証なんです……よ」
「あ……そういえば」
なんだかんだ完食していた上に、おかわりにもう1回作らされた事までかなみは思い出した。
「はぁ……。全く、もっとちゃんと、そういう事口にすればいいのに」
「あはは……」
シィルはさらに食べ進めて、8割型食べ終わっていた。
「おかわり、いる?」
「いえいえ。けほっ。大丈夫ですよ。これだけ食べれば、十分ですから。げほっ」
「そう。咳すごいけど、他になにかある? 頭が痛いとか、関節が痛いとか」
かなみは心配そうに尋ねる。
「今のところそういうのはないですから……げほっ。ただの風邪ですよ」
「なら良かった。他なにか、欲しいものとかある? 風邪薬とか」
「一応常備薬はありますけど……。でもいいです。あれはランス様のためのものですからごほっ」
シィルはそう言って薬を断った。
「そんな。そういう事言ってる場合じゃ」
「風邪は栄養をつけて、寝て治すのが一番良いんですよ? げほっ。免疫もありますし」
「そ、それはそうかもしれないけど」
かなみは戸惑いの視線を投げかける。やはり苦しんでいるだけに放ってはおけないようだ。
「かなみさんがこうして看病してくださってるだけで、私には十分です」
「シィルちゃん……」
なんでこんないい子が。そう思わずにはやはりいられないかなみである。
そうしているうちに、シィルはおかゆをきれいに食べきり、お盆と土鍋をかなみに渡した。
「ごちそうさまでした。おいしかったです」
「あ……うん」
かなみは盆を受け取り、ゆっくりと立ち上がる。それと同時に、玄関のドアが乱暴に開けられる。
「帰ったぞー! 出迎えをせんかかなみ!」
「はぁ……。シィルちゃん。出来るだけ早く治してね。私だって一応、他にも仕事あるんだから」
玄関先から聞こえる声にうんざりした顔をしながら、かなみは下げられた食器を台所に持っていこうとした。
「はい。がんばります」
シィルは申し訳なさげに目を伏せた。
その後も夕食を作らされたり、他にも色々家事や、しまいにはセックスまでさせられ、かなみは事実上一日奴隷としてこきつかわれた。
―午後9時30分―
「ふぅ……。全く、ランスのお守りも疲れるわ。シィルちゃんよく毎日耐えられるわね」
かなみはシィルの氷枕を取り替えながら言う。
「まぁ……もう4年以上はやりましたから。げほっ」
「慣れたってこと? それはまたなんというか……」
そのさきの言葉を、かなみは敢えて口には出さなかった。
「それに。辛いことばかりじゃないですから。ごほっ。ランス様って時折、優しかったり、その、かわいい一面とかもみせてくれたりするんですよ」
「へー……。そうなんだ」
かなみは半分共感できるようなそうでないような、そんな表情を見せた。
そうしていると、風呂からあがったランスがすぐ側にまでやってくる。
「ふぅ。いい湯だったぞかなみ。お前も入ってこいよ」
「ランスが寝たらね」
どうせ覗くなり襲うのは目に見えているので、先に釘を刺す。ついでに夕食後に4回抱かれていた。
「で、どうなんだシィルは」
「んー……」
かなみはシィルの額に手をやる。
「そうね……。少しは熱も引いたみたい。咳もさっきよりは少なくなったし」
「そうか」
そう言ってランスはどっかりとソファに座り込んだ。
「もしかして……心配してるの?」
かなみはなんとなく尋ねてみる。
「バカ言うな。何日も倒れられたら、誰が俺様のハイパー兵器をおさめるのだ」
ランスはまたエロ本を読みながら、適当に答える。
「ああ……」
かなみは聞くだけ無駄だったと、いわんばかりの表情をする。
シィルはそのさまを少しだけ微笑ましく眺めていた。
「え。シィルちゃん……もしかして、そういうこと?」
「そういうことです……げほっ」
かなみはシィルの言う事の意を得られず、ランスのことを、気づかれないようにそれとなく観察していると、本をよみつつ、一瞬ではあるがシィルの様子を時折見ていた。
「あぁ……」
かなみはなんとなく、シィルの言っていたことを理解した。
「なんだ、奴隷二人でひそひそと」
ランスは二人を見咎めて尋ねる。
「いえいえ。別に」
二人はほぼ同時に答えた。
「仲いいなお前ら……」
ランスはそう言って、エロ本に視線を戻す。
こうして夜は更けていく。
―翌日 朝7時―
かなみは一日の仕事を終え、そのままシィルの隣にあるソファで寝ていた。
やがて、良い匂いがかなみの鼻腔をつき、目をさます。
「ん……」
「おはようございますかなみさん! 昨日は本当にありがとうございました」
シィルはすっかり元気を取り戻し、満面の笑みでかなみを迎える。かなみの側にはシィルの淹れたコーヒーが置かれていた。
「あ……ああ。シィルちゃん。治ったんだ。よかったぁ……本当に!」
かなみは目に涙を溜め、心の底からシィルの快癒を喜び、感情のあまり、シィルの太腿あたりに抱きつく。
「あ……もう。かなみさんってば」
「ご、ごめん。急にこんなことして」
困惑したシィルの声を聞いて、すぐに元の位置に戻った。
「眠気覚ましにコーヒーを淹れてみました。お口にあえばいいんですけど」
「あ、ありがと」
かなみはゆっくりとコーヒーに口をつける。作った人間の人格を表すような、優しい味であった。
「おいしい……」
「それは良かったです」
シィルはコーヒーポットを持ちながら感想に応えた。
「あの、これ少ないですけどお礼のつもりです。任務の合間にでも召し上がってください」
シィルはかなみに、数日分はありそうな手作りの菓子を渡した。
「あ、ありがと。でも、いいわよ。ランスはともかく、シィルちゃんの看病は半分くらい善意みたいな……」
「ふふ。でしたら、もう半分のお礼ということで……どうでしょう?」
シィルの言葉に、かなみは言い返す気になれず。
「うん……。ありがと」
と、包みを頑丈な竹で出来た入れ物に入れ、懐にしまった。
「さ、ランス様が起きないうちに」
「そうね……。リア様からはあくまで定期的に行けって話だし。それじゃ。さようなら、シィルちゃん」
そう言って、かなみは煙のようにランスの家から去っていった。
「あ……。やっぱり忍者ってすごい……」
シィルは思わず、そう感想をもらした。
かなみが去って静かになると、ランスの部屋から唸り声が聞こえ、シィルはいそいそとランスの部屋に向かった。
―ランスの部屋―
「う~。くそっ。げほっ。このバカ奴隷が! なにご主人様に風邪うつしてんだ!!」
ランスは高熱にうなされながらも、シィルへの罵声は衰えなかった。
「うう……ごめんなさい」
「昨日、あてなを差し置いて、新入りやシィルちゃんにえっちなことをした罰に違いないれす」
布団に潜り込んでいたあてなはそう断言した。
「う。うるさい! げほっげほっぶぇっくし!!」
「あーランス様。お鼻が……、はいちーんってやってくださいちーんって」
シィルは急いでランスの鼻にティッシュをあてる。
こうしてまた、ランスの一日がまたはじまるのであった。
―終―