ランス短編・中編集   作:OTZ

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鬼畜王の世界線(ただし正史の人物の登場)です。
誕生ルートとは書きましたが、サテラの提案時点で終わりです。


ケイブリス早期統一→真鬼畜王誕生ルート(上)

―ケイブリスの城―

 

「ぐぅわーはっはっはっは!!」

 

 ケイブリスは眼の前に居並ぶ雲霞の如き大軍を見て、どこまでも響き渡るような大音声を発した。

 宿敵のホーネットを降し、魔人領を統一。そしてこの日を以て人類圏へと攻め込もうとしている。

 

「ケイブリス様。準備は整いました。いつでも進発のお触れを」

 

 魔物大元帥のストロガノフは、拝跪して指示を待った。

 

「おう。ご苦労だったな」

 

 ケイブリスはストロガノフに一瞥だけくれてやり、大軍に視線を戻した。

 彼の前には魔物大将軍が二体と、魔物将軍が100体。総計200万の軍勢がおり、番裏の砦に配置した北方にも同数の軍団が配置されている。

 

「しかし、本当に宜しいのですか。シャングリラより主攻勢をかけたほうが、被害も少ないと存じますが」

「バーーーーーーカ。人類は未だに国家間の対立が続いているんだろ? そんな手を回すことはねぇんだ。正攻法でぶちっと潰したほうが、あいつらも諦めがつきやすいだろ?」

「はぁ……。まあ確かに。策を用いず、敢えて平押しをしても容易く勝てるとは存じますが」

 

 ヘルマンではステッセルによる専横が続き、ゼスでは高級官僚の腐敗や身分差による格差問題が横行し、とても魔軍の侵攻に耐えうるような状況でないことは内偵より調べがついていた。

 従前より人型の使徒を通じて工作を盛んにやっており、それが功を奏したともいえる。

 ストロガノフの試算では3日で首都が陥落し、抵抗が強くとも一ヶ月で全土を征服でできるであろうとの見立てであった。

 

「ようし。ではぶっ潰すぞ。行け、野郎ども。七面倒臭いことは言わねぇ。ただ好きに暴れまわり、世界を魔物(オレたち)の手に取り戻せ!!!」

 

 ケイブリスの号令と共に大歓声が上がり、一斉に侵攻が開始された。

 LP3年10月1日。人類にとって幾度となく繰り返される悪夢が、今また引き起こされる。

 

―リーザス城 謁見の間―

 

「もう、ダーリンったら。こんなところでさせるんだから」

「がはははは。玉座でセックスっていうの、やはり気持ちが良いものだな」

 

 ランスは朝っぱらからリアを呼び、玉座で4発発散した。

 王座について半年。ランスは反乱を鎮め、自由都市地帯の北半とJAPANを支配下に入れている。

 強権を惜しみなく用いながらも、治世は安定しており、リーザスは平穏な日々を過ごしていた。

 

「ランス王……」

 

 そうしていると、マリスがランス王の前にやってきた。

 いつもの通り冷静沈着な佇まいであったが、その声はいつもの張りをいささか失っていた。

 

「おう。マリス。どうだ、お前もまじ」

「――魔軍が魔人領の境を破り、全面侵攻を開始しました」

「……は?」

 

 ランスの軽口を遮って出たマリスの言葉は、あまりにも重い事実であった。

 

「えーっ……? 魔軍が、ここに攻めかかってくるっていうの?」

「とりあえずはゼスとヘルマン以外への侵攻は確認されておりません……しかし、どこまで持つことか」

「ぐっ……」

 

 さしものランスも流石に苦い顔をした。

 

「戦力はどうなっているの?」

 

 すっかり王妃の顔に戻ったリアがマリスに尋ねる。

 

「情報が錯綜しており、詳しいところは未だ……。ただ、ここ1000年の史書で確認されているどの侵攻よりも大規模であろうことは、確かなものと言わざるを得ません」

「っ……。そう」

 

 リアは一瞬苦悶に顔を歪めた後、平静に戻った。

 

「ランス王。さしあたっては我々も戦の備えを強めねばなりません」

「ああ。そうだな……。いや、これは逆にチャンスなんじゃないか?」

「は?」

「ヘルマンへの攻勢を強めれば、一気に中央まで叩けるんじゃないかってことだ」

 

 JAPAN征服後、リーザスはヘルマンへ宣戦布告を行っていたが、バラオ山脈で堰き止められ、被害が大きく出たため事実上の休戦状態にあった。表向きはLP2年の報復ということになっている。

 

「そ、それはそうかもしれませんが。今は攻勢にでるのが適当とは」

「バカ言うな。俺が先にヘルマンを征服しなければ、大勢のかわいい女の子が魔物どもにさらわれてしまうではないか。それだけはあってはならん」

 

 マリスは顎に手を当てて、暫し考える仕草をみせた後、

 

「承知しました。バレス将軍やリック将軍にはそのように」

 

 そう言って、マリスは一旦謁見の間を辞した。

 

「全く魔物どもめ……。俺様に盾つきおって」

 

 ランスはそう虚勢を張るが、心の奥底ではわずかに不安の芽が芽生えていた。

 

「……」

「どうしたリア、そんな顔して。いつもならもっとこう」

「ねえ。ダーリン……。そんなにヘルマン倒したいのって、あの奴隷女のため?」

「……違う」

 

 ランスは短くそう答えた。盗賊団で追われた際ヘルマンに置いてきてしまったソウルとシィルは、未だに救えずに居たのである。

 

「嘘よ。ダーリン、その話するといつも」

「うるさい! もう一発するぞリア」

 

 そう言ってランスは無理やりリアの唇を奪った。リアは従容と受け入れ、そのまま身を委ねた。

 

―健太郎と美樹の部屋―

 

「そうか……。ケイブリスが遂に」

 

 ホーネット派の敗北に続き、サテラにとっての凶報が続く。その眼には涙が溜まっており、悔しさが十二分に滲み出ていた。

 

「もはや……戦いの体をなしていない……。一方的に狩られていくだけだ……」

 

 前線をみてきたメガラスはそう告げた。侵攻開始から半日もたたないうちに番裏の砦も、マジノラインも蹂躙され、目立った組織的抵抗が出来ずに居る。

 

「やっぱり、ここにも……来るんですか?」

 

 美樹は恐る恐る尋ねる。

 

「あいつの目的は、自分が魔王になることです。ですから、遅かれ早かれ」

 

 サテラは悲しげな表情で美樹に告げた。

 

「カミーラも撤収を命じられ……、侵攻の指揮を取っている……」

 

 バラオ山脈の洞窟で美樹殺害をうかがっていたカミーラとラ・サイゼルも魔人領へ呼び戻され、侵攻軍と合流。ケイブリスはあくまでゼスとヘルマンを一日も早く蹂躙することに重点を置いていた。

 

「そうなのか。じゃあ少なくとも、今日明日、襲われる心配はない。ということでいいんだな?」

「それも分からない……。何せ戦力差がありすぎる……」

「くっ……。僕らだけでも、なんとかやれないものか」

 

 健太郎の言葉に、腰に差している日光が答えた。

 

「健太郎君。早まってはいけません。今、あなただけが出ていっても、意味がありません」

「で、でも……」

「幸いにも、リーザスは比較的今は安全です。こちらにはカオスを持ったランス王がいますし、考え方を変えれば世界で一番優位な状況にいるともいえます」

 

 日光は冷静な様子で話す。日光の言う通り、既にランスはカオスを手に入れており、ジークとレイは既に倒されていた。

 日光の言う通り、今人類圏で間違いなく一番魔軍に抗しうる勢力であることは否定しようがない。

 

「そうだな……。マイナスの方向にばかり考えても仕方ない。ともかく、ランスとうまく協力して打開していくしか」

「俺がどうかしたのか」

 

 サテラが気を持ち直そうとしていると、当人がいつのまにやら後ろに立っていた。

 

「ひゃっ!? ランス! ……。どさくさに紛れてサテラに触るな!」

 

 サテラは、自らの尻にふれていたランスの手を払った。

 

「がはははは。隙だらけなのが悪い」

「王様。何の用ですか」

 

 健太郎はやや警戒してランスに相対する。さりげなく日光の鞘を持つ。

 

「いんや。様子を見に来ただけだ。さぞかしショックを受けてるだろうと思ってな」

「王様……。僕たちのためにそ」

「あ? 何言ってるんだ。美樹ちゃんとサテラにだ。誰がお前なぞ心配するか」

 

 健太郎の言葉を遮って、ランスはそれを否定した。

 

「そんな。この前まで、剣の鍛錬に付き合ってくれたのに」

「あれは遊びで切りかかっただけだ。運良く生き延びられてよかったな」

 

 健太郎は何度かランスに呼び出されては、ランスアタックを繰り出され、そのおかげか健太郎自身も習得している。

 

「王様。わざわざ心配してくれてありがとうございます」

 

 美樹は前にでてわざわざ、頭をさげた。少しだけぎこちなさはあるが、可愛らしい少女の所作であり、とても目の前にいるのが魔王であり、キーパーソンだとは思えない容姿であった。

 

「うむ……。まあ、心配するな。この城に居る限り、俺様が全力で美樹ちゃんたちを守る」

 

 もちろん下心ありきのものであったが、ランスの本心でもあった。本能では、美樹をケイブリスに取られれば全てが破綻することを自覚していたのだ。

 

「ありがとう……。ありがとうございます」

 

 美樹は何度も頭を下げた。もはやリーザスだけの問題でなくなっていることは理解しているのか、それ以上のことは何も言わなかった。

 

「さてと、それはそれとして、サテラ、お前は来い」

 

 と言って強引に担ぎ上げた。

 

「ひゃあ!? な、何をするんだ急に!」

「いい加減わからないもんかなーー。セックスに決まっているだろう。お前は感じまくりで面白いからな」

「なっ……。ふ、ふざけるな。サテラはそんな女じゃない!!」

 

 そう言って、高笑いをしながら、ランスは三人のもとから遠ざかり、自らの寝室へ向かった。

 美樹と健太郎は少しだけきまずそうにそれを見ていた。

 

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