ランス短編・中編集   作:OTZ

7 / 30
鬼畜王ランスの序盤で、ルーベランに勝った直後くらいからの話です。


鬼畜王ランスヘルマン仕官ルート(上)

―ボルゴZ 近くの森―

 

「ダメですお頭……。どの道もヘルマンの奴らがいて進めそうにありません」

「ちっ。そうか……」

 

 警備大隊長のルーベランを倒してから2週間。

 ランスたち盗賊団は道中の街で略奪や仲間を増やしながらゼスへ向かおうとしていたが、この大人数を連れながら要害を超えるのは至難の業であり、この地に仮の拠点を設け、逗留し続けていた。

 暗い森から漏れるわずかな日光が、盗賊団たち一人ひとりの疲労を示している。

 

「だから言っただろう。リーザス国境に近いこの地点では4軍が常に目を光らせているとな。フフフフ……」

 

 囚われのルーベランは不敵に笑いながらランスを見上げていた。

 

「さあ。どうするんだ盗賊共。投降するなら私が罪一等を減じて、斬首で許してやるよう口を利いてやらなくもないぞ」

「うるさい!!」

 

 ランスはルーベランを思い切り蹴飛ばして、憂さを晴らした。

 

「ランス様ぁ……。ルーベランさんに当たっても仕方ないですよぉ」

 

 ランスはシィルにもゲンコツを一発くらわせた後、しばらく考えた。

 

「よし。西に行こう」

「え?」

「このまま東にいっても、むざむざ殺されにいくようなもんだ。だったら、手薄そうな西にいって稼ぎ続けるだけだ」

 

 ランスはルーベランの顔を見る。彼女の苦虫を噛み潰したような表情からして、それが正しいことが自ずと察せられた。

 

「ふっ。どうやらそれが正解みたいだな。よーし移動するぞお前ら!」

 

 ランスの号令によって道中、200人規模に膨れ上がった盗賊団は、西への移動を開始した。

 

―アークグラード 1軍本営―

 

 アークグラードでは1軍と4軍の合同会議が行われていた。将軍のネロは出席せず、副将のクリームが派遣された。

 

「そういう訳で、私たちが捕らえに行ったときには既にもぬけの殻だったのです……。申し訳ございません。将軍」

 

 4軍副将のクリームはそう言って、レリューコフに頭を下げた。

 

「全く、しぶとい奴らじゃわい。ここまで手を焼かせるとはのう……」

 

 レリューコフは頬杖をついて、嘆息した。

 

「将軍。こうなったら私の部隊が行きます。これ以上黙っていたらヘルマン軍の名に傷がつきかねませぬぞ」

「まあそう逸るなカールよ。クリーム君の報告では盗賊どもも既に中隊規模に膨らんでおると考えるべきじゃろう。ごろつきとはいえ、ここまでの部隊を殲滅するとなると、少々の手勢では効かぬぞ」

 

 レリューコフはカールの肩を手で制しながら、軽挙をいさめた。

 

「王宮からは未だに沙汰は降りないのですか」

 

 クリームが苛立ちを含んだ視線で尋ねる。

 

「うむ……。まだ村や街が占拠されたわけでもないから、中央は事態を楽観しておるわい」

「正規軍の中では質の劣る遺跡警備大隊とはいえ、一個部隊が壊滅されているというのに、呑気なものですね」

 

 クリームはそう嘲りながら、出されたコーヒーに口をつけた。

 

「私たちの軍も動かせれば良いのですが、如何せん……」

「あのドラ息子が頭では、そうもいかぬだろうな」

 

 レリューコフはクリームに同情の視線を向ける。4軍将軍のネロはコネと金で将軍の地位を買ってるようなものなので全くの役立たずであり、そのことはヘルマン軍上層部では共通理解であった。

 

「ええ。王宮からの命令もない上に、盗賊如きに私の兵など割けるかの一点張りでして……」

「困ったものじゃのう。四軍は立場上我々よりも動きやすいと思っておったのだが」

 

 一軍はヘルマン正規軍の中でも質の高い部隊が揃っている分、それ自体が権威を持ち、また将軍のレリューコフも反体制的と警戒されているため強い抑止がかかっている。

 

「君の裁量ではもう動かせないのか?」

 

 カールがクリームに尋ねる。

 

「副将の私で動かせる限りの兵を使ってはいますが、さすがにこれ以上は。予算の関係や、治安維持の問題もありますし」

「そうか……全く、なぜ盗賊如きに世界最強の我々がここまで……」

 

 カールは悔しさを多分ににじませ、机に拳をふるった。

 会議は結局盗賊団に何ら決定も下さず、警戒を継続するという方針を下し、重い雰囲気のまま締めくくられた。

 

―ある洞窟―

 

「お頭、これが今回のあがりです」

「うむ。ご苦労だった」

 

 ランスはバウンドからの報告を上機嫌に受け取った。

 あかから更に半月、ランスたちは予定通り北西に向かい、アークグラード・ログB・コサックの三点の中心付近にある洞窟に拠点を構え、盗賊を続けていた。

 ヘルマンでも比較的南側にあるこの土地は比較的豊かであり、旧拠点よりも稼ぎは上々であった。しかし、洞窟の中の居住性はお世辞にも良いとは言えず、湿った空気と、濁りきった気が充満する陰鬱な場所であった。

 

「へへ。あたしこの指輪とネックレス気に入っちゃった。どう? 似合う? ランス兄ぃ」

 

 ソウルは略奪してきた宝飾品をランスに見せびらかした。

 

「おう。よく似合ってるぞ。前に奪ってきたあのエロい服のほうがもっと似合うがな。がははは」

「もう。えっちなんだから~」

 

 ソウルは頬を赤く染めたが、嫌な様子は全く見せていない。

 

「しかしお頭。最近ちょっと雇いすぎじゃないですか? 統制にも少しずつ乱れがでてきていますし、略奪品をめぐっての喧嘩も回を追うごとに多くなってきています」

「さすがに最近はヘルマンの連中も少しずつ本気だしてきたみたいだからな。あのときみたいな事が、起こらんとも限らん。頭数が多いことに越したことはないだろ」

 

 ランスはあれ以来、急速に構成員の数を増やしていき、100名弱だった盗賊団は今や300名に迫る勢いにまで増えており、それに伴う問題も表面化し始めていた。

 

「た、大変ですバウンド隊長!」

 

 そうしていると、ランスたちのいる所へ一人の子分が駆け込んできた。

 

「なんだ。どうしたんだ」

「最近取り込んだルイスのやつが些細なことで喧嘩をおっぱじめて」

「いつものことだろ。そんなことでいちいちくるな」

 

 バウンドが睨むように子分を見る。

 

「いやそれが、20人くらい引き連れて、お頭にあわせろって」

 

 その報告をきいて、ランスはすっくと立ち上がる。

 

「けっ。手下風情が俺様に意見だと? たたっ切ってやるから連れてこい」

 

 その言葉に従い、ルイスはランスの眼前に連れ出された。

 

「おい。大将よぉ。入ったときと随分話がちげーじゃねえか? おぉ?」

「ルイス! 貴様、お頭に向かってなんて口を」

 

 バウンドはルイスを叱ったが、彼は全く怯まずに睨み返す。

 

「うるせえ、腰巾着は黙ってな。俺らはな、金と女をくれるっていうからあんたに従ったんだ。だのに、金は大してもらえねえ、女はブスばっかじゃねえか」

「文句があるなら、とっとと出ていけ。いくら頭数が欲しくても俺様のいうことに従えないんじゃいないほうがマシだ」

 

 ランスは議論をする気などなく、一方的に突き放した。

 

「いや。もう一つ道がある」

「なんだ」

「あんたを殺すことだよ! でりゃああああ!!」

 

 ルイスは得物を振り上げ、ランスの脳天目掛けて飛び上がった。

 しかし、ランスはすぐさま対応し、鞘を抜かずに直前で防いだ。

 

「なっ……!」

「フン」

 

 ランスはそのまま相手の力を利用して、ルイスを思い切り突き飛ばした。

 

「ぐわっ……」

「この野郎、よくもお頭を!」

 

 バウンドも剣を抜いて、ルイスを斬り捨てた。

 ルイスに従っていた約20名の子分たちは出鼻をくじかれ、恐々としている。

 

「おい、片付けとけ」

 

 ランスは脅しつける視線で、子分たちに冷たく言い放ち、一も二もなくルイスが引きずられていった。

 バウンドも慰撫のために一緒に出ていく。

 

「全く。この俺様に逆らうなど、とんでもない奴らがいるもんだ」

「気にすることないよランス兄ぃ。あいつらみんなバカでわがままなんだから」

 

 ソウルは叛徒たちが居た方向に侮蔑の目線を向けながらそう言った。

 

「うむうむ。そうだな」

 

 しかし、シィルの方は、どこか不安げな視線をのぞかせていた。

 

「なんだシィル。そんな顔して」

「いえ……」

 

 シィルは小さく首を振り、か細い声でそう答える。シィルの内心は先行きへの不安でいっぱいだったが、それを口にしたところで暴力がふりかかるだけなのでそう言う他なかった。

 

「なーに。ランス兄ぃになんか文句あんの」

「ち、違います。そういうわけでは」

 

 シィルは慌てて両手をふって否定する。

 

「ふん。お前なんか口減らしにいつ捨ててもいいのに、寛大な慈悲でおいてやってるんだ。もっと感謝しやがれってんだ」

「はい……」

 

 しかしそれでも、不安を払拭しきれないシィルであった

 

―ラング・バウ 評議会議室―

 

 それから二週間、深刻化する一方の盗賊被害につき、いよいよヘルマンの評議会の議題にあげられるようになった。

 

「ルーベラン・ツェール率いる遺跡警備大隊が敗れてからこの方、盗賊による被害は日を追う事にひどくなっており、先日は遂にアークグラード郊外が襲われました。1軍が偵察のため出払っていた隙をついたもので、122名の犠牲者と14万ゴールド相当の被害がでました」

 

 当地有力者からの陳情を受けて、評議委員のスーバ・ゴーヤは深刻そうな面持ちでそう報告した。ステッセルに懐疑的な人間の一人であり、この報告も彼の失態を明らかにする意味合いが大きかった。

 

「街の防衛は軍の主務ではないか! レリューコフは何をしていたんだ!」

 

 評議委員の一人であり、軍総司令官のケチャックは顔を真赤にして怒鳴り散らした。

 

「軍監を通して聞き取りを行いましたが、どうやらリーザスが国境で動いているようで、威嚇のためにアークグラードの軍を回したとのことでした」

「リーザスが? なぜこのような時期に」

 

 ケチャックは当惑した表情を見せる。

 

「大方、ルーベランの失態を聞きつけた、あの謀略好きの女王の嫌がらせでしょう。いちいち気にしておったら、キリがないですぞ」

 

 経済長官のバショウはそう言って切り捨てる。

 

「しかし、このまま放っておけば厄介な事にもなりかねませぬ。多少の出費を厭わずに兵を出すべきかと」

 

 評議委員のシタック・ルソが力強い声でそう提言した。彼もスーバと同じく反ステッセル派の一人であり、評議委員会ではこの二名と、ステッセル・バショウ・ケチャックの三者の構造で行われることが多かった。

 

「いや。まだあの蛆虫どもがどういう背景をもっているのかよくわかっておりません。リーザスが動いているのも気にかかりますし、闇の翼からの詳細な報告を待つべきでしょう」

 

 宰相のステッセルは柔らかな声色で、しかしそれとは相反する氷のような突き刺す視線が、シタックのこれ以上の反論を封じ込めた。

 

「待っている間に賊どもは更に付け上がって民を襲いますぞ」

 

 スーバは眉をしかめて、ステッセルに食い下がる。

 

「何も兵を出さないとはいってない。多少の兵を向ければ済むこと」

「し、しかし私は1軍を出すのは反対ですぞ! 盗賊如きに精鋭を用いるなど、誇り高きヘルマン軍の名に傷が」

 

 ケチャックの喧しい反論を、ステッセルはニヤリと頬を緩ませて返した。

 

「誰が1軍を出すなどと言いました? 蛆虫には蛆虫に相応しい軍をぶつければ済むことです」

 

―ある町の郊外―

 

 ランスたちは今度はコサック近郊にある中規模の町を襲い、難なく平らげ、略奪するだけした後、アジトへ引き上げようとしていた。

 しかし、その途上、斥候から報告が入る。

 

「お、お頭ぁ! 大変です! ヘルマン軍が道の途上に現れやした!」

「ちっ。しょうがない。面倒だが別の道を迂回して……」

「それが……。ほかの道も全て封鎖されていまして」

 

 斥候のさらなる報告にランスは顔を青ざめさせた。

 

「な……なんだと。こんな短時間にか?」

「お頭。これはまさか罠だったんじゃ……」

 

 バウンドの言葉に、ランスは親指の爪を噛みながら、先の対処法を考えていた。

 

―ヘルマン軍側 本営―

 

「こちら第1中隊! 既に中央道の封鎖、完了致しました」

「ご苦労様でした。これでとりあえず囲みきったかしらね……」

 

 討伐軍2000人を率いる将、クリームはそう言って安堵した表情を見せた。

 

「しかしまあ運良くかかりましたね。ヘルマンの諜報も大したもんです」

 

 側にいるクリーム直属の小隊長は感心していた。

 

「そうね……。将軍に黙って動かしている部隊もいるから、あれからもクビも覚悟で追っていたけど……。ま、辞表は出さずに済みそうね」

「副将に辞められたら、うちの軍はおしまいですよ。それだけは勘弁してくださいって」

 

 小隊長はそう軽口を叩く。クリームは一瞬だけ頬を緩めてそれに応じた。

 

「よし、ではこのまま少しずつ包囲を強めながら、一応降伏勧告を出します。拡声器を」

 

 クリームはすかさず差し出された拡声器を受け取り、陣の前に出た。

 

「ヘルマンの土を踏み荒らす盗賊たち! 貴方がたは完全に包囲されています! 無駄な血は見たくありません、武器を捨て、降伏して出てきなさい!!」

 

―ランス側―

 

「お頭ぁ。今度は流石にダメそうだ。ブラックナイトも何人もいるガチの正規軍だぜ?」

 

 バウンドはそう悲観的な声を漏らしていた。

 

「何いってんだよ! 前は勝てたんだ! 今度だって勝てるに決まってんだろ!」

 

 ソウルは悪態をつく。

 

「またお前はそんなことを……」

「おい待て。今の声……、女の子じゃなかったか?」

 

 ランスは突如そう口を開いた。

 

「え? ま、まあ確かにそのようですけど……」

「4軍のクリーム・ガノブレード副将だ……。2,3度お目にかかったことがある」

 

 ヘルマン側の情報を引き出す為、連れ回しているルーベランがようやく口を開いた。

 

「ほう。女の副将がいるっていうのか」

「フン。噂でしか聞かないが、彼女の知略は相当なものだとアリストレス将軍が褒めていたほどだ。終わったなお前たちは。大人しく武器を差し出して投降したほうが身のためだぞ」

 

 ルーベランは強気の姿勢をあくまで崩さなかった。

 

「美人か?」

「は?」

「そのクリームちゃんっていうのは美人かって聞いてんだ」

 

 ランスはルーベランに視線を合わせ、凄みながら聞く。

 

「だ、誰が貴様などに教えるものか」

「ほー……。どうやらヘルマン軍の眼の前で裸で犯されたいみたいだな?」

 

 ランスは淫猥な笑みを浮かべて言う。考える間もなく、本気であることを、ルーベランは直感で理解した。

 

「なっ……!!」

 

 ルーベランの顔が一瞬で真紅に染まる。何度かランスに辱めは受けていたものの、彼のお気に入りなだけあってまだ彼以外に裸体を衆目を晒したことはなかった。

 

「野郎に見せるのは趣味じゃないが……。ま、この際だから仕方ないか。ヘルマンの筋肉バカどものオナペットになるんだな」

 

 ランスは嬉しそうにルーベランの襟に手をかける。

 

「び、美人だ! それはもうとてもな!!」

 

 ルーベランは盗賊の誰にも聞こえそうな大声でそう言い切った。

 

「ふっふっふっ……。そうか、だったら。話は早い」

 

 ランスは俄然やる気を見せながら立ち上がる。

 

「野郎ども! 散開しろ! ヘルマンの正規軍だかなんだか知らないが俺等の敵じゃねえ! ズタズタに切り刻んでやれ!!!」

 

 そうランスが号令をかけると一気に野太い喚声があがった。

 

「お頭! 本気でやるんですか? ざっと見ただけで前よりも人数が……」

「こっちも人数は増えている。しかも俺らは幸いにも高台だ。射手もいるし、うちまくればなんとかなるだろう」

 

 こうなることも見越して、先程の町では軍需品も大量に略奪しており、準備は十分であった。

 バウンドは覚悟を固め、自らの部隊の指揮に戻る。ランスたち盗賊団は430名。約4倍以上の敵勢であった。

 

―1時間後―

 

 交戦開始からしばらく経過したが、やはり数的不利は明らかであった。

 既に150名の団員を失い、高所の有利をとって射殺すという戦略も、ブラックナイトの厚い装甲と、急ごしらえの弓矢では貫くには到底足りなかった。

 

「ちっ。斬っても斬っても終わらねぇ……」

 

 ランスは既に13名のヘルマン兵をあの世に送っていたが、流石に疲労が見え始めていた。気力は未だ強く持っていたが、汗と返り血の多さがまざまざと迫りくる現実を語っている。

 

「ランス様ぁ……。さすがにしんどいですぅ」

「バカいうな! やめたら死ぬだけだぞ! 死んでも回復しつづけろ!」

 

 シィルはひたすらランスと、他の傷病兵にヒーリングをかけ続けていた。

 

「お頭!」

「おう。戦況はどうだ?」

「どうもこうも……、やっぱり無理だ! 警備大隊とは質も練度も違う。このままじゃ……」

 

 バウンドは悲観的な視線を向けたが、ランスはあくまで強気である。そうしている間にもヘルマン軍の圧倒的な暴力によって、仲間の盗賊団の断末魔が次々と二人の耳に入ってきていた。

 

「ええいうるさい! 持ち場に戻って死ぬ気で戦ってこい!」

 

 ランスは振り切るように声をあげ、バウンドはとぼとぼ自分の隊へ戻っていった。

 

「ちっ……。さすがにこのままじゃ……、ちょーっとまずいかな」

 

 ランスは誰にも聞こえないような小さな声で弱音を吐く。

 そんな中、ランスの横から明らかに自分たちのものではない、整然とした喚声が聞こえる。

 

「ッラァァァァァァ!!!!」

 

 東方から殴り込むように突如として兵団が現れた。不意をつかれたヘルマン軍は次々とその数を減らしていく。

 

「な、なんだあれは……」

 

 ランスも突然の事に困惑していたが、そうしているうちに、眼前に4名のヘルマン兵が現れる。

 

「大将クビだ! 死ねぇ!!」

 

 一人の兵が槍を突き出し、ランスの喉元に迫る。

 

「くっ……!!」

 

 ランスは4人中、2人は一閃ではじき返し、一人は斬り殺したが、一振りのヘルマン騎士が放つ、剣戟に対処できなかった。

 

「うっ!」

 

 さしものランスも自分の脳天に迫るヘルマンソードの圧を認知しはじめたその瞬間、突如として聞き覚えのある喚声で打ち消された。

 

「ッラァ!」

 

 その一閃と共に、金髪が風にそよぎ、その身の何倍以上もあるヘルマン騎士は吹き飛ばされ、あの世へ送られた。

 

「お、お前はまさか……」

 

 ランスもそのあまりに力任せで、しかし正確無比な剣筋で、理解しかけていた。

 

「遅くなりましたランス殿。赤将、リック・アディスン。ここに参上しました」

 

 いつもの兜を脱ぎ、目に仮面だけをつけたリックは、そう言ってランスに拝跪する。

 ランスは表面上は嫌な顔をしたが、内心では心底安堵して、赤い死神に相対した。

 

―つづく―

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。