色々と疲れた俺は異世界島に辿り着き、獣人ヒロインと出会う【怠けると強化!強力スキルで異世界競技チャレンジ!】   作:幸福野郎

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爆裂走破

「……」

 

■少し肌寒く、チラチラと落ちてくる雪が見える■

■そんな平原にて、並ぶ選手たちの集団■

■近くに村が複数ある場所だが、今回行われる試合に際して、誰も村人はここに近づいてこない■

 

「フン、まだか? さっさと始めてほしいものだな」

 

 この度の【儀攻戦】は、乱れの勢力との戦争のようなものだ。

 ゴールドによってもたらされた、儀式場を破壊されないための方法。それをすべて信じるわけではないが、島側としても時間がなかった。彼の人柄をよく知っている者の意見もあり、その要求にひとまずは従う方針。

 ゴールドに指定された人員を集め、すぐさま乱れのチームとの試合がセッティングされた。

 

「……ハーディン」

 

■選手の一人がつぶやく■

■その声は寒気に触れてもなお、燃え盛る灼熱のようだ■

 

「あっちの試合は大丈夫だろうか……?」

 

「心配しても仕方ない。それに、あのローラさ……さんがいるんだ。負けないさ」

 

「なんで言い直した? お前、もしかしてあの人の隠れファンか? 様付けで呼ぶファン多いんだよなぁ」

 

「……いや? なんのことやらさっぱりさっぱり」

 

■それぞれの選手たちの顔つきは、試合前の覇気に溢れている■

■プロチームから集められた選手が多いが、所属している所はバラバラ■

■儀式場の危機——つまり島の危機とあっては、参戦しないわけにはいかなかった■

 

「ふっふっふっ」

 

■そう、参戦しないわけにはいかない■

■儀式場以外の目的だって、あるのだから■

 

「——」

 

■選手たちの一人■

■彼の目に宿るのは熱意ではなく■

■黒く染まった、怒りのようなものだった■

 

●■▲

 

「ぎゃはははは!!」

 

「いやいや、お前それはないだろー!」

 

■月の下、岩の上に腰かけて談笑をする男二人■

■まるで緊張感がなく、警戒心が薄い■

■だが、しっかりとその体からは【乱れ】の波動が発せられていた■

 

「しかし、ハーディンさんも自分勝手だよなぁ。侵攻者の相手は俺たち任せだ」

 

「この儀式場には、大した侵攻者は来ないだろうよ。特に目ぼしい就職者は遠い地域で戦っているって話だ」

 

「それなら……まあ、おれたちだけでも十分かァ。ははッ!!」

 

 彼らは乱れの一派として、儀式場内に入り込んだ。要するに乱れ側の選手たち。

 ゴールドの思惑によって作られたチームで、試合が始まったというのに彼らの雰囲気は全体的に緩んでいる。

 とはいえ、この二人の肉体は競技用の服の上からでも強さが分かり、恐ろしく強力な近接戦の才能を感じさせた。

 

「この場所は無名でしょぼい儀式場だからな。守る価値は低いってことだろ」

 

「最強の盾や、ソルジャーの最高階級が来たらまずいが、これなら楽勝だなァ」

 

「適当に守護者の真似事でもしてようか——へへ」

 

 月下の夜闇には何の変化もない。

 彼らは、式の柱の付近で敵を排除するべく待ち構えている。

 二人共とても体格がよく、間違いなく接近戦においてはかなりの実力を誇っていた。

 その手に持っている魔導具は、最高クラスのものであり、特殊な接近戦用のスキルを備えている。

 

■そう■

 

「――◆爆裂」

 

■あくまで、接近すれば強いというだけの話だが■

 

「なに――?」

 

「は?」

 

 きらめく灼熱。

 決着は一瞬。

 夜闇を吹き飛ばす轟音・大火力が、二人を一瞬で戦闘不能にした。

 

「……まずは試合開始の一撃だ。準備はいいなクライス君。ハーディンはここにいる」

 

「ああ」

 

 問答無用の中距離攻撃。

 金の魔導・爆裂。

 ソルジャー最高戦力が得意とするそれは、儀式場内に衝撃を走らせた。

 少し離れた位置で、二人の人影が動き出す。

 両者の抱く想いは違うものの、目指す地点はある程度共通していた。

 

「……ジャスミン」

 

■平穏の欠片である少女を取り戻すため■

■平穏を支える柱を壊させないために■

■クライスは、混迷の太陽の撃破を誓う■

 

【ああそれと。……クライス君に伝えておいてくれるかな? 【大切な姫君】は大事に預かっている。取り戻したければ……次の試合に出場してくれたまえ。ははは】

 

■ゴールドが言っていた、ジャスミンの所在■

■信じていいかも不確かだが、今の彼にも余裕がなかった■

■とにかく手がかりが欲しくて、今回の試合に参戦したのだ■

 

(ジャスミンは——ハーディンと共にいる、はず)

 

 心の中で深呼吸をしながら、平静であるようにしているクライス。

 とにかく試合は始まっている。前方には守る者のないゴール地点が見えた。

 試合形式はダブル。現在彼は、攻勢側に回って進撃を続けていることになる。

 当然、試合に負けるわけにもいかない。

 

「よし」

 

■式の柱を解放し、クライス達は最高得点でゴールを決める■

■まだ試合は序盤だが、まずまずのスタートと言えた■

 

「こちらとしては、そこまで儀攻戦の経験があるわけじゃないが……お役に立てたかな?」

 

「すごい」

 

「……それは称賛と受け取ろう。では行こうか。次は北東方向だ」

 

「ああ」

 

■サーシャも助力した、チームの作戦行動■

■乱れの動きは予測が難しい部分もあったが、おおむね順調にそれは進行していた■

 

●■▲

 

「や、野郎!!」

 

 悲鳴と絶叫が、魔導場内を埋め尽くしていく。

 しかしそれをかき消すほどの爆発音が連続し、次々と乱れの一味を葬っていく。

 爆炎の中に動ける者はいても既にフラフラ。魔導力が高い者の中には、それなりに動ける状態の敵もいるが、それはそれで対処の術はある。

 もうもうと立ちこめる煙の中を、疾走する影は二。

 広い岩石地帯を突き抜けるような速度で、儀式場奪還を目指して走り続ける。

 

(島の各地で儀式場は破壊されている。防げた地もあるが、正直戦況は苦しいという他ないだろうな)

 

■ゼノは、クライスや部下たちと共に試合に出ている■

■しかし、その数は意外と少ない■

■儀式場内であっても、乱れの波動を完全に消すことは出来ないため■

 

(乱れに耐性のない者もいる。試合に出れるのは、ある程度それがあるものだけ……だが、懸念は……)

 

 爆発を起こしながら、ゼノは全体的な戦況を分析し、迫りくる魔導と弓矢による攻撃を回避する。

 さすがのソルジャー出身か、あらゆる奇襲を見事にかわし、逆にカウンターで相手を確実に仕留める。

 その流れを見たクライスは、かなりの頼もしさを感じていた。

 

「すごい威力」

 

 彼自身もまた、疾走&速攻で爆発から逃れた者たちを蹴散らしながら、小高い台地の上にあるゴール地点へ向かう。

 その動きはさらに洗練されているようで、ゼノは見事と無意識につぶやいた。

 

(しかし気になるのは……彼のあの服装)

 

■クライスが着ているのは、試合用の運動着ではない■

■地味なシャツだ■

■試合で着ている以上、魔導具であることは確かだろうが■

 

「あー、だるい」

 

■言葉とは裏腹に、明らかにいつもより力が入っている■

■両足の動きは加速し、しっかりと地を蹴っていく■

 

「ゴール」

 

 いつも通りの、無気力な雰囲気のゴール。

 この式の柱の近くには、ほとんど敵選手の姿が残っていない。

 元々そこまで多くはいなかったが、改めてゼノの魔導がすごい威力であることを認識するクライス。

 本当に頼もしい、と。

 

「次だ」

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