色々と疲れた俺は異世界島に辿り着き、獣人ヒロインと出会う【怠けると強化!強力スキルで異世界競技チャレンジ!】 作:幸福野郎
【はい!! STOP!! そこまでです!!】
【え?】
【混沌戦の勝者二名!! クライス&ミリアム両名!! 決戦競技に進出決定です!!】
【え?】
■ミリアムと戦う前に、マサルの混沌戦は終了した■
■それから勝者二名による儀攻戦が発表■
【チームメンバーは自由に決めていただいて結構です!】
【決戦日までにチームを結成し、戦いに備えてくださいね!!】
■そして現在……■
■カメ朗たちが所属するチームの助力を借り、マサルは最終決戦に挑む!■
●■▲
「うおおお!! 突撃だー!!」
「押しこめーッッ!!」
「抜かせるなー!! ブロックしろ!!」
「地力ならこちらが上だ!! 怯むな!!」
(あつくるしいなぁ……)
クライスの目前で繰り広げられる、選手同士の熱い衝突。
両チーム共に20人以上はいるので、その迫力はかなりのもの。魔導具を装備した選手たちが、互いの得物を遠慮なくぶつけ合う。
鳴り響く金属音が止むことはなく、マサルは若干および腰になっていた。
「なんて迫力……はぁ」
草原地帯で行われる、両チームのすさまじい小競り合い。
マサル達のチームが目指しているのは、彼らの前方にあるゴールへの到達だ。
ただし、ゴールと言っても終点ではない。
(【式の柱】……か)
マサルの視線の先にあるのは、大きな黒い石板のようなもの。それが式の柱と呼ばれる、終点とは違うもう一つのゴールだ。
自チームの領域に設置(その数はフィールド毎に違う)されたこれに近づくことで、ゴールしたことになり3点が加算される。
(……あの時とはちがうか)
マサルが以前に体験した時にはなかった要素。
また面倒なことになってしまったと、激しく肩落とす。
「よし」
■マサルは走り出し、敵集団へと突進■
「!! やらせねェよ!! ブローっク!!」
「!」
■盾を持った選手が走行ルートを塞ぐ■
「なら」
■マサルは数発の拳を、超速で盾にぶつけた■
「ぐおおッ!! 強烈!!」
「……」
拳は盾に衝撃を与えるが、決して破壊することはできない。
マサルは一旦後方に退避する。
「厄介」
プロチームの中でもかなりの選手ぞろいの敵チーム。
決してパワータイプでないマサルでは、力尽くで突破はなかなか難しい。
ならばと、足元に転がっているボールを拾って、それを式の柱まで投げつける。
「だめか」
■1Mも飛ばずに落ちるボール■
■飛ばすには、単純な身体能力以外の素養も必要となる■
「ふーむ」
なかなか進まない戦況。
目前で奮闘している味方選手も、どちらかというと劣勢状態であった。
カメ朗やフジ丸が所属しているチームもプロではあるが、敵の方が一枚上手なのかもしれない。
「くそおおっ、こんなはずではッ!?」
「……」
「この最強の……勇士!! 戦斧の勇士……ジンがッ!! 活躍できないなどッ!??」
乱戦の中で、助っ人として(半ば強引に)参戦したジンも苦戦している。
彼は最近スローラ村に住みはじめ、その関係で今回の試合に関わることになった。
「よわいなアイツ」
他の味方と比べて、敵選手に押されっぱなしという印象が強いジン。
最初からそんなに期待はしていなかったが、ここまで弱いとは思わなかった。
これは勝利した際の報酬も考え直す必要ありかと思う。
「はぁ」
■ため息ひとつ■
●■▲
「うおおお!!」
「気合だ気合!! 押し込めー!!」
■マサル達のいる地帯から少し遠い場所■
■そこでもゴール前攻防が行われていた■
「すごい攻勢だ……ッ。とても防ぎきれるLEVELじゃない!」
「ははは! もうギブアップかよフジ丸! おれはまだまだいけるぜ!!」
カメ朗とフジ丸が入った防衛チームは、ゴールしようとする敵選手をなんとかしのいでいた。
二人の盾が侵攻する者たちの武器を防ぎ、そのまま弾き返していく。
さらに、遠くからの火の球のような魔導攻撃がくる。
「おっと!」
■カメ朗の盾が火の球を苦もなく防ぐ■
「しかしこりゃあ……! やっぱりすごい圧だ……!!」
迫りくる剣をなんとかしのぎ、フジ丸はつぶやいた。
この場にいる敵チームと味方チームの数は同程度だが、ひとりひとりの練度は違う。
正直、このままではジリ貧感がある。
「……いやっ。まだまだチャンスはある」
「そのとーりッ!! なんせこっちには、頼れるいつもの仲間は当然として……期待の新星クライス! やたらと自信満々なジンがいるんだからな!! 100%勝てるって!!」
前向きに楽観的なことをいうカメ朗。
そんな彼に呆れながらも、少しうらやましいともフジ丸は思えていた。
「……よし!! 踏ん張るぞ!!」
「そうこなくっちゃ!!」
■カメ朗たちは奮起する■
■チームの勝利を信じる気持ちの成果か、少しだけ拮抗が彼らに傾いた■
「――燃え尽きろ。有象無象」
■それをすべて灰に帰すような猛火が、襲いかかった■
「んなッッ!??」
「なんだっ。これはーッ!?」
発生した炎が、次々とカメ朗たちのチームを飲み込んでいく。
あまりに強烈な勢いのそれは、魔導攻撃によるものに間違いはなく。
しかし。
「こ、この威力は!?」
大した抵抗も出来ずに、防御に優れた仲間たちが消滅していく光景。
それに、お調子者のカメ朗ですら開いた口が塞がらない。
「……!! 早くもお出ましかよ……!! ちくしょう!」
■灼熱の向こうに立つ影■
■その正体は、盤上の護衛団の二枚看板の一角■
「楽しんでいるヒマはない。さっさと終わらせる」
灼熱に対する耐性スキルを持つ者すら、彼女の発する炎を受けてはまともに動けない。
防御用の魔導具である鎧は数秒で破壊され、生身はそれ以下の時間で壊される。
本来ならば防壁としてそれなりに活躍できたであろう選手すら、その少女の前では無力な兵になりさがった。
「ぐ、ああッ! なんだこの炎魔導……!! ふつうのとは何か違う……!!」
「ま、負けるかァ!! うおおお!!」
体中にひび割れを起こしながら、なんとか消滅せずに耐えるブロッカーたち。
だが、それも数秒間しか持たない。
「うあああ!?」
「ぐあああ!??」
■たった数分で崩壊する、カメ朗たちの防衛陣■
■それを行った少女は、息一つ乱さずに・しかしどこか危うげに、ぽつりと呟く■
「ここにはいないか。ハズレだ」
■灼熱の勇士・ミリアム■
■炎の中で映える、美しき銀髪・凛々しき面持ち■
■上半身を覆う灰色のスポーツウェアが、芸術とも思える肢体を強調■
■女神とも見間違える麗人が興味関心を向けるのは、クライスという男ただ一人■
●■▲
「もう少しだ……! 壁が開く!」
「いくぞおおお!!」
■一方、マサル達の戦況■
■ゴールを囲むように横に並んだ敵集団の壁、それが壊されようとしていた■
「はぁ……はぁ……。くそッ!! オレも……!! もっと活躍しないと!!」
乱戦の中へ必死に入っていくジン。
しかし、あまりの強力な圧に弾き飛ばされてしまった。
「うわあああ!??」
「おい、やめとけ」
「う、うるさいっ。オレの実力はこんなもんじゃ……!!」
そんなジンを見てマサルは制止するが、まるで止まる気配がない。
斧を強く握りしめながら、再び乱戦の中へと突進していく。
そしてまた飛ばされた。
「はぁ」
ため息を吐くマサル。
■壁にヒビが入った■
「いくか」
■壁が壊れた■
■その瞬間に、疾風がゴールへと突き抜けていった■
「な……!?」
「はや……!??」
敵選手の何人かがマサルに反応、止めようとする。
しかし、すでに彼はゴールの近く。防衛ラインが式の柱に近すぎるため、限定魔導(儀式場の力を利用して発動する魔導)による仕切り直しも不可――ゆえに誰にも止められない位置にいた。
「3、2、1」
■マサルはゴールに到達し■
■式の柱から、赤と青の光が発生した■
「……クライス選手ッッ!! 敵の防衛の穴を逃さず、見事にゴールッ!! 先取点は不屈チームです!!」
「いやー。見事な走りでござるなー! プロの中でもあれほどのは中々ない!」
実況・解説の声が響き、ゴールしたことが全選手に伝わる。
味方選手は歓喜に沸き、敵選手は悔しがりながら交戦を続ける。
「やった! これで……!!」
「――おおっ~っとッ!! これは!! なんとほぼ同時にミリアム選手もゴールッ!!」
「!?」
実況からの声が告げたのは、ミリアムも同様に点を入れたという事実。
互いのチームに動揺が走る。
そしてマサルはうんざり顔になっていた。
「これで同点……めんどうくさいな。まったく」
「これで5対3!! 盤上が2点リードです!!」
「え?」
現在優勢なのは敵チーム。
それを知ったマサルは疑問符を浮かべた。
どちらもゴールしたというのに、なんなのかこの差は?
「おいおい……なにを疑問に思っている? 儀攻戦のセオリーも知らんのか?」
「ジン」
「ボールで点を入れれば1点。直接ゴールすれば3点。つまり……」
「大丈夫か? お前」
肩で息をしているジンはマサルと並走している。
今にも倒れそうな雰囲気だが、そうとは感じさせないように頑張っていた。
「あ、あたりまえだ……! オレは最強の……勇士! なんだ……が」
「……」
「こんなはずじゃ……ないんだ……が」
完全に意気消沈しているジンに、マサルはなんと言ったらいいか分からない。
とりあえず話を逸らすことにした。
「式の柱の位置、分かるか?」
「……ああ。◆索敵◆」
■ジンは限定魔導を発動■
■それによって、ゴールの位置を把握できるようになった■
(たしか、守るべきゴールは全て自チームの陣地内にあるんだったか)
■この魔導は、試合状況を知るのに有用だ■
■他にも便利な効果があり、儀攻戦において必須となっている■
「近くにあるな。このままなら一分で着く」
「よし」
■それなりの速度で彼らは走る■
■さっきの乱戦の中を抜けて、次の場所へと■
■マサルは少し不安を感じながら……スパイクで地面を踏みしめ、さらなる戦いの中へと切り込む■
「――おっと。ちょっと待ってもらおうか?」
「!」
「!?」
式の柱前の攻防。
それが遠目に見えたところで、一人の敵選手が立ち塞がった。
燃えるような赤髪をなびかせた、黒一色のスポーツウェアを着た青年だ。
その人物に見覚えがあるジンは、緊張を一気に強めた。
「……!! スタークッ。イヤシノ地区最強の……ジルヴァラ……!!」
「はは。知ってもらえているみたいで嬉しいね~。まあ、だからって手加減なんてしないけど」
■敵チームの二枚看板の一人■
■イヤシノ地区最強選手と相対したマサルたち■
(だれだ……???)
正直知らない人だが、少し恥ずかしくて言えないマサルであった。