色々と疲れた俺は異世界島に辿り着き、獣人ヒロインと出会う【怠けると強化!強力スキルで異世界競技チャレンジ!】   作:幸福野郎

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美しき走者

【はは。まあ、戦う理由なんて人それぞれだろうさ】

 

■スタークは、前にミリアムと戦う理由について話をした■

 

【金のため、ファンのため、単に楽しいから……。さてはて、僕はどんな理由で戦っているように見える? ミリアム】

 

【さあ? 大して興味もない】

 

【……ひどいな。深く傷つく発言だそれは。なんでそんなにそっけないかな~?】

 

【お前相手だから・余計に、だ】

 

■彼ら二人は、同質の性質を持った選手なのかもしれない■

■故に――■

 

●■▲

 

「さあ、始めようじゃないか……ここからが本当の試合だ!」

 

「……(そうかこいつ、イヤシノ地区最強とかいうやつだ)」

 

 草原で対峙するスタークとマサル。

 お互いにそれなりの警戒心を持っているのは、相手の実力を認めているからだろう。

 特にマサルの方は、少なからずの驚きを感じていた。

 

(目に見えるステータス……速力は俺以上、か)

 

 スタークは敵チームの主力。

 それを確信させるステータスの高さ。

 マサルは、さりげなくハンドサインをジンに送る。

 

「……ッ。やはりか」

 

 ジンの頬を静かに流れる冷や汗。

 ハンドサインの意味は最高レベルの要警戒。

 ステータスを確認する素養のない(酷く不安定)ジンは、スタークの強さを確認できないが、それでもマサルが警戒するということの意味を理解している。

 

「……いやっ。弱気になってどうする!? しっかりしろ最強の勇士……!!」

 

「?」

 

「やれる……!! オレはやれる……!! そうでなくては……!!」

 

 自身を鼓舞するような発言を、誰に聞かせるでもなく繰り返すジン。

 彼は斧を強く握り、マサルに力強く宣言した。

 

「クライス……! こいつはオレが止める! お前はゴールに向かえ!」

 

「ジン」

 

「心配無用! ステータスだけで強さが決まるわけではない!!」

 

 ジンは勢いよく飛び出し、スタークへと一直線。

 己の得物であるアックスを振り上げ、全力を込めた一撃を振るおうとする。

 

「誰だよアンタ? 正直眼中にないんだよなぁ」

 

「!!」

 

 一瞬で間合いを詰められるジン。

 それでも怯まず、斧を加速に乗せて振り下ろした。

 

(よしッ! ばっちりな一撃!! 入った!!)

 

 その攻撃は確かにスタークへと炸裂した。

 したはずだった。

 

「がッ!??」

 

■地面を転がるジン■

■スタークの一撃で鎧は砕かれ、吹き飛ばされた■

 

「……こういうことさぁ。格の違いってヤツ?」

 

■スタークは余裕の表情で、立ち上がれないジンを見下す■

 

「才能ないよ、アンタ」

 

 言い放つ言葉は容赦なく。

 すでにスタークの注意はマサルの方へと向いている。

 

(厄介だ、こいつ)

 

 自身の前に立つ壁の大きさを感じ、マサルは自然に警戒態勢を強めた。

 ジンは何とか立とうとしているが、とても援護は望めない。

 つまり、どうにか一人でこの壁を超えなくてはならないのだが。

 

「……」

 

■高速で動き出す足・マサルの疾走■

 

「へえ、やっぱり速いなぁ。認めてやるよ」

 

■スタークはそれに追いつき■

 

「だが、まだまだ抜けないよ。僕はね」

 

「!」

 

■マサルの体を弾き飛ばす■

 

「……」

 

「……やっぱり厄介だなぁ。今のを喰らって、ダウンする気配なしとは」

 

 衝撃を何とか抑えたマサルは、両足で地面を抉りながら停止する。

 彼の両腕の痺れは、否応なしに敵の脅威を伝えてきた。

 

(予想以上、か。めんどうだ)

 

 敵の強さにうんざりし、面倒くさくなってきたマサル。

 自身を吹き飛ばした技に興味がなくもないが、それ以上に無気力でだるい。

 今は制限もあるからなおさらだ。

 

「……す、すごいすごい!! これぞスターク選手の伝家の宝刀!! 【チャージスマッシュ】!!」

 

「今のは……!! まさかクライス選手の速度を捉え、弾き返すとは……! 分かっていたことではあるが、スターク選手はすごいでござる!!」

 

「まるで大きな盾で走りを防いだ……そんな風に見えましたが!? 解説のなんちゃってサムライさん!」

 

「なんちゃってサムライさん!? なにその呼称!? ……ま、まあ、それはともかくっ。その感想は的外れでないでござるな。なぜならアレは……」

 

■マサルの走行を阻んだ、スタークの技。それに驚愕する実況と解説■

 

(そう。まるで、見えない大きな盾でも持っているかのような・威圧感)

 

■その脅威を、マサル自身がよりよく理解していた■

■実況と解説の声が続く■

 

「――つまり、盤上とは! スターク選手という大いなる守りに支えられた、そんなチームであると!」

 

「【それだけ】じゃあないんでござるなぁ。何故なら――」

 

●■▲

 

「うおおお!! 突破しろー!!」

 

「押し込めー!! なんとか点を入れるんだー!!」

 

■マサルとスタークの接敵から少しさかのぼり■

■スタークたちの陣地内、ゴール前の攻防■

■殺風景で少しぬかるんだ地面の上で、20以上の選手が乱戦を行っている■

 

「ふはは!! ぬるいぬるい!! その程度でこの防御を崩せるかい!!」

 

「腕力も技術も! なにもかも足りない!! そんな貧弱なパワーでなにできる!?」

 

 屈強な男たちが壁を形成し、マサル達のチームによるゴールを許さない。

 飛んできたボールも見事にブロックし、わずかの得点すら許さない。

 盾や強靭な両腕などによって、見事に敵の侵攻を防ぎ、逆に攻撃側の体力を削っていく。

 

「ハハハ!! 出直してくるんだなぁ!! もっと強い選手を――」

 

「――どきなさい。邪魔よ」

 

「は?」

 

■壁の前衛、攻撃力が高い大男■

 

「ご、ばッッッ!??」

 

■彼は、一直線に突き進む砲弾に弾き飛ばされた■

 

「な、なんだぁ!?」

 

「こ、この女ァッ!?」

 

 弾丸の正体は、桃色の髪を伸ばした少女。

 その勢いは、まさしく鬼神の如く。

 自分より体格のいいブロッカーたちを、粉砕しながら一直線。

 

「と、とめろー!!」

 

「うおおお!!」

 

 手の空いている者たちで、少女を止めようと一斉にかかる。

 

「……」

 

■自分に迫る壁を前に、彼女は■

 

「突撃あるのみ!! ふっとばす!! 正面突破ー!!」

 

■極めて単純明快■

■それゆえの強みをもってして、壁に突っ込んだ■

 

「ぬおお!??」

 

「強烈ッッ。なッ!?」

 

 敵集団の盾に走る衝撃。

 

「と、止めたッ」

 

「いや……これはッ」

 

 止めたはずの砲弾が、じわじわと盾をゴールへと押し込んでいく。

 盾を持った男5人が、たった1人の選手による圧力に押され、地面を削りながら後退するのを止められない。

 パッと見は可憐な少女に、さっきまで余裕だった防衛ラインが破壊されようとしていた。

 

「こ、こっちは5人、だぞおおおおおッ!??」

 

「だから、どうしたぁあああ!!」

 

■少女の咆哮と共に、砕かれる壁■

■そのまま彼女はゴールに到達した■

 

「ゴール!! 盤上の鉄壁防衛を破壊し、一人の爆裂特急が得点しましたー!!」

 

「いやぁ。さすがでござるなー。これが有名ファイターの強みというか……。敵の態勢が整う前に速攻で決める! うまく混乱を突いた形でござる!」

 

 実況解説がゴールした少女について言及する。

 有名ファイターという言葉を聞いて、敵選手の何人かが反応する。

 

「ま、まさか。あの美しい桃色の長髪……!! そして豪快なプレイスタイル……!!」

 

「し、知ってるのかっ。あの女!」

 

「ああ……!! あの、全身を覆う紫のぴっちりスーツは……円盤戦のファイターである彼女の魔導具……!! その名も……!!」

 

■敵味方問わず、ゴールした少女に敬意のこもった視線が送られる■

■そう、彼女の名は■

 

「ジャスミン・ジェイスター!! 前に全地区大会でベスト8まで残った、イヤシノ地区屈指のパワーファイター!!」

 

■今回の大会に参戦した、暴走機関車ジャスミン■

■彼女は獰猛な肉食獣のような笑みを浮かべながら、勝利の余韻に浸る■

 

「って、そんなヒマもないか!! いっくわよー!! まだまだあたしの快進撃は止まらない!! オー!!」

 

「う、うわああ!?」

 

 まだ止まらない暴走少女ジャスミン。

 彼女は土煙を大きく上げ、まだ見ぬゴールへ向けて動き出す。

 ただひたすらに真っすぐに。

 

「う、うお。生でジャスミンさんを見ちまった……!! 感動……!!」

 

「見とれてる場合かよっ。は、早く止めないと! あの人の恐ろしさ知ってんだろ!?」

 

 敵選手たちは怯みながらも、なんとか彼女を止めようとする。

 しかし、それを阻むべく多数の選手が動いた。

 

「おっと! そうはさせないぜ!!」

 

「ジャスミンさんはウチの主攻! 彼女の邪魔はさせない!!」

 

「おうよ! かわいこちゃん二人のために!! ふんばらないとなぁ!!」

 

 ジャスミンの味方による援護。

 彼女が点を取るためのキーであると理解しているため、仲間たちは迷わない。

 

「まかせてみんな!! あたしがきっとGOALして!! チームを勝利に導く!!」

 

■美しき走者がフィールドを走っていく■

■その凛とした声によって、味方の士気が大きく上がった■

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