色々と疲れた俺は異世界島に辿り着き、獣人ヒロインと出会う【怠けると強化!強力スキルで異世界競技チャレンジ!】   作:幸福野郎

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幕間・村人たちとの交流

「祭りとな」

 

「はい!」

 

「村に新しい住民が訪れた際に、行われる祭りなんですよ!」

 

「へーえ」

 

「その名も、【歓迎祭】!!」

 

「まんま」

 

 朝、起きて居間に入ったクライスが、サーシャに祭りに関する話をされた。

 

「クライス様が村に来てから、それなりに経ちますし……祭りの準備が始まりました!」

 

「……わざわざ悪い。まあ、俺の他にもいるけど」

 

「気にしないでください! お楽しみに! いえでも……あんまり期待されると、それはそれですこし怖いかも……うぅ」

 

(楽しみではあるな……どんな感じだろうか?)

 

■時刻は午前10時頃・晴天■

 

「むにゃむにゃ……だめですよ勇士様……」

 

 段ボールハウスの中から寝息が聞こえる。

 それを無視してクライスは外出。

 

「おっ?」

 

「あっ」

 

 サーシャ宅を出た所で、大きな二足歩行のカメと出会うクライス。

 前開きのアロハシャツ的なのを着用している。

 

「カメ朗」

 

「おー! クライス! 調子はどうだー! がはは!!」

 

「ぼちぼち」

 

 彼の名前はカメ朗。

 このスローラ村の住人にして、サメ男の友人。

 

(明るく朗らかで、人付き合いの良いやつ。サメ男さんとは違ってせっかちだ)

 

 クライスとの相性はそれなりに良さそうだ。

 というのが、カメ朗自身がよく使う自己紹介の流れ。あくまで自己申告であって、クライスが相性良いと言ったことは一度もない。

 だが、調子に乗った彼はそんなこと気にしないのだった。

 

「サメ男さんに用か?」

 

「そうなんだよー。あいつ、おれの家に忘れ物してさ」

 

 そう言ってカメ朗は右手に持ったモノを示す。

 

「包丁……?」

 

 それは刃の部分に布が巻かれていて。

 

(赤くにじんで……?)

 

 寒気がクライスを襲う。

 

「なんなんだ……それ?」

 

「これは――おっと。いけないな」

 

 目を逸らして、モノを懐に仕舞うカメ朗。

 

「この世には……知らない方が良いこともあるんだぜ?」

 

「え、え」

 

「ふふふ……」

 

 カメ朗はそのままサメ男の家へと向かい。

 

「にやり」

 

 ニヒルな笑いを残して、家に入った。

 

(なんだよもおおおおぉぉっ)

 

 滅茶苦茶気になるクライス君は、しばらくサメ男の家を凝視する。

 最初に比べればましだが、いまだにサメ男に対する苦手意識はあった。

 

●■▲

 

■……それから数分■

 

「ククク……やったぞっ。遂に完成だ!」

 

「……」

 

 村の中央区で、見知った顔を見つけたクライス。

 ゆったりとした足取りで、その人物に接近する。

 

「あいつは」

 

 中央区の木々生い茂る場所、【樹木公園】で何やら作業を行っている鎧の男。

 

「ジン……なにやってんの」

 

「な、いつの間に背後に! くっ、オレとしたことがぁ!」

 

「さっきから」

 

「ふん! なにをやってるだと!?」

 

 ジンは偉そうに言うと、クライスに己の成果物を見せた。

 

「みろよ! この芸術を!」

 

「おお」

 

 ジンの後ろに立っている木像は、シカを模したもの。

 かなり精巧に作られていて、彼の手先の器用さがうかがえる。

 

「へえ」

 

「リアクション薄いな! もっとこう何かないのかよ!」

 

「すごい」

 

「……まあ、いいや。バカには芸術が理解できないかッ」

 

(いや感心してんだが)

 

 心の底からジンを見直した、クライスの目が細まる。

 

(こういう才能はあるんだな……勇士としては微妙)

 

 彼はジンが村に来てからのことを回想する。

 

【よう! あの儀式場を解放したようじゃないか!】

 

 顔面ボコボコの状態で、HP1しか残ってないような男はクライスに言った。

 

【そこの坂道で転んだ。本当に】

 

 涙目で言ったので、それ以上の追及はしなかった。

 むしろスルーするのが優しさだろう。そう思った。

 大した強がりだと、感心する部分もそれなりにある。なんとなくだが、時々ジンは根性を発揮する時があると思っていた。

 

【意外と優しいじゃないか……】

 

【頬赤らめるな。気持ち悪い】

 

【だが容赦はしない! オレが勝ったら儀式場を貰おう!】

 

【(守護者と戦うより、俺に勝つ方が楽と判断したか)】

 

【くそ……あのガキ!】

 

 しぶしぶ勝負を受けたクライスと相対するジン。

 

【ま、負けた……】

 

【おわりか。あっけない】

 

【う、うう……ちくしょう。オレはこんなんじゃダメなのに……うおおおおおん】

 

【な、泣くなよ】

 

(その後なんやかんやで、ジンはこの村に留まっている)

 

■それなりに村人たちとは仲良くやっている様子の、新たな村人ジン■

 

「ううーん、もう少しこうっ。アクセントを……」

 

 自身の像について頭を悩ませているジンは、クライスはもう眼中になくなったようだ。

 試合に出たいと言ったり、芸術に目覚めたり、どうにもその行動は一貫性がないように思える。

 

(何がしたいのか、よくわからん。楽しそうではあるが。……表面上は)

 

●■▲

 

■……場所移動■

 

「お、村長」

 

「やあ、クライス君」

 

 樹木公園を抜けた先、村の中心にある大きな広場。

 石畳の地面が広がっていて、所々に花が植えられている(近くにはベンチ)、どこか癒される空間。

 

「散歩中ですか」

 

「そうなんだよ。はははは。こういう日は思い切り体を動かしたくなる」

 

「相変わらずお綺麗で」

 

 手提げかばんを持つ、紫の長髪を腰まで伸ばした大人のお姉さん。

 たれ目美人で、全体的におっとりした印象を与える。

 村の中でも特に人気と人望があり、まさしく村長にふさわしい女性と言えた。彼女に求婚する村人もいるとかいないとか。

 

(更に犬耳と尻尾……)

 

 それが可愛らしさを足していて、最強だな。

 

(と思う俺であったとさ)

 

「まあアナタも、色々あってこの村に来たみたいだから……」

 

「……」

 

「ゆっくりしていきなよ。ボクたちの村でさ。ね」

 

■村長の目は■

■何故か、好意的な感情を強く含んでいる■

■すべてを包みこむような、そんな包容力を感じた■

 

「(もしや俺に気があるのか)……はい」

 

 村長はゆったりとした足取りで、クライスの前から去っていった。

 彼女と話したことでなんだかほっこりしたナマケモノは、サーシャと話した後のような満足感を得たようだ。

 

●■▲

 

「ふう。うまい。これ」

 

 木のベンチに座り、右手に持ったペットボトルを口に付けるクライス。

 

「【元気マックス!! 熱血どりんく!!】ね。コンビニで売ってるらしいが……」

 

【うおおおおお!! 熱血青春!!】

 

(なんか変なの思い出した)

 

 それは村長から貰ったものだ。

 口の中でバチバチと弾ける味が、人間の奥底に眠るなにかを目覚めさせるような気がしないでもない。と、クライス。

 

「元気が湧いてくるような、来ないような」

 

 ぼんやりと青空を見上げて、心の底に沈んでいく。

 

(ああ~このまま溶けていきたい)

 

 怠惰の底まで落ちていく彼は、歓迎祭について考える。

 

(あ~楽しそうだな~あ~)

 

 ずぶずぶと怠慢気分・お昼時。

 

(これも仕方ないんや。修行なんやー)

 

 どう考えても修行には見えない。

 

(あーあー後で、サーシャちゃんにモフモフしてもらおう……)

 

 流れる雲を目で追いながら、漠然とした思考を行っていた。

 

●■▲

 

■樹木公園……■

 

「……お?」

 

「あ、クライス君」

 

 樹木公園に戻ってきたクライスは、虫取り網を持った虎と出会う。

 元気にかけ回る姿は、少年である証明のようにも思えた。

 

「こんにちは。相変わらずダルそうだね」

 

 ライオンの絵が描かれたTシャツを着た、小太りの虎人間。身長はクライスと同程度。

 

「トラ太。虫取りか」

 

「そうなんだよー。でも、なかなか取れなくてさ。くやしいなぁ」

 

「ふーん」

 

 トラ太が肩にかけた虫取りかごの中身はからっぽ。

 どうやら苦戦中のようで、すこし苦い顔を見せている。

 

「あーあ、いつになったら伝説の【あれ】に遭えるんだろう」

 

「あれ?」

 

「そうさ。とんでもないレアなカブトムシがいるんだ」

 

「カブトムシねぇ」

 

「本当にすごいんだぜ。光る甲殻を持っていて、高値で売れるんだ。おいらは売らないけど」

 

 目を輝かせながら、まだ少年のトラ太は夢を見ている。

 少年特有ともいえるそれに、クライスは反射的に右手で視界を覆った。

 

「まぶしいな。直視できない」

 

「? なにが」

 

「いや、なんでも」

 

 元気よく走り回るトラ太の背中を見送った後、クライスは樹木公園から去った。

 村人との交流は、不思議と彼に活力を与えているようにも思える。

 

(俺もその一員……かぁ)

 

●■▲

 

■……中央区・村の集会所前■

 

「クライスさん。ちょうど良かった」

 

「?」

 

 四角い屋根の大きな建物の前で、クライスは呼び止められた。

 これまた顔見知りであり、そこそこの交流がある人物。

 

「ジャックさん」

 

 芝生の庭で、その人物の名前を呼ぶクライス。

 

「……少し頼み事があるんだが、良いかな?」

 

「用件次第かな」

 

 真面目なスーツを着て、とても身長が高い、細長い体系の眼鏡男性。

 手には纏められた書類が。

 彼は天才発明家として村で有名で、特に機械類に強いのだ。

 

「じゃあとりあえず話をしようか」

 

 落ちついた口調で、ジャックは話を始めた。

 

「キノコ?」

 

「ああ。君が前に行ったワーク山で採れるんだが……あっちの方はモンスター出るからね」

 

「それが目的か。分かったよ」

 

「さすが。この前は大会で大活躍だったみたいじゃないか。……儀攻戦というと、【覇道の勇士】とかしか知識はないが……」

 

「……」

 

 ジャックの称賛に、少し苦い顔をするクライス。

 

(報酬は良かったが……その影響がなぁ)

 

 大会で活躍したせいで、色々と面倒な事態になっている。

 様々な取材・追っかけ・スカウト……協力者の報告を聞く限り、そんな者たちが発生してしまっているようだ。

 

(どっかのテレビ局のやつが、俺を探し回っていたし……やっぱり注目は避けられないか)

 

■ルール上、下手に顔を隠すこともできない■

■とはいえ、もっと何か対策すべきだったかと思う■

 

「はああ……」

 

「お疲れかい? それなら……」

 

「ああ。大丈夫。やるよ」

 

「任せた。お礼は弾む……ふふふ、あのキノコさえあれば……! あとはあの人も暇だった筈だから……」

 

 眼鏡をきらりと光らせるジャック。

 書類をパラパラと捲りながら、なにかをぶつぶつと言っている様子。

 

「んじゃ、行ってくる」

 

■そして……。クライスは村の北にある出入り口に着く■

 

「……」

 

 山まで続く道の前で。

 

「なんで引き受けてんだ……?」

 

 ふと、クライスは疑問に思った。

 

「……面倒」

 

 そうこんな面倒なこと、引き受けないで、川原に転がって昼寝でもすれば良いのに。

 

「……まあ。いいか」

 

 疑問を消して、遠くに見える山へと走り出した。

 その足取りは、不思議と軽くなっている。

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