色々と疲れた俺は異世界島に辿り着き、獣人ヒロインと出会う【怠けると強化!強力スキルで異世界競技チャレンジ!】 作:幸福野郎
「ここがスローラ村か……」
■狩人はその目を光らせ、村を観察する■
「フフ……」
■乱れは・すぐそこまで来ていた■
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■ある日の・昼■
窓からの陽射しはクライスの顔に当たり、自堕落な様子を照らし出す。
「はー、今日も一日ごろごろするんやー」
自室床で転がり中の彼は、ほこりをまき散らしながら自堕落ライフを送っていた。
よれよれのTシャツが、なんとも陰気な雰囲気。
「掃除するかなー。いや、面倒だー」
面倒くさがりの男が小まめに掃除などする訳もなく、部屋の中は着実に混沌が侵食している。
「ああああ」
その怠惰オーラたるや、他者まで巻き込んでしまうような歪さを持つ。
「世界よ。怠惰に染まれ~」
もはや一切の情熱が失せた瞳は、気力最低値更新である。
「だりー、ぜー」
「なんという……負の感情……。社会のゴミ……でス?」
「どこから入ってきた」
いつの間にやらクライスの部屋に出現したヒナが、彼のベッドに寝ていた。
彼女は悪気もなく枕に顔を埋め、勇士分を摂取している。
もしやとは思っていたが、彼女はとてつもない危険人物であると確信強まるクライスくん。
「普通に窓から入ってきましたが……。はぁ……はぁ……フヒヒ……たまりません……!」
「何か文句でも? みたいな顔やめや。普通じゃないからね」
「部屋でローリングかましてるアナタが……言いますか……? はぁはぁ……勇士さまの香り……あぁう」
「こわいんだけど。息荒いんだけどっ」
ジト目でクライスを見るヒナ。その頬は興奮で赤くなっている。
こんな変態と一緒にされたくはないと、彼はジト目を返した。
「……わかってないな。これは掃除。回ってるのに理由あり」
「ほうほう……斬新……」
「信じてないな」
「……エスパー?」
コントのようなやり取りは、わりと自然に広がっている。
「だらしのない……情熱はないのです……?」
「なにそれ? くえる?」
「……」
死んだ目で自分を見るクライスに、ある種の感心を抱くヒナ。
開き直りだけは立派だと素直に思った。
「……それで……話があるん」
「却下だ」
「え……」
ヒナが何らかの話を切り出そうとした瞬間に、それを切って捨てるナマケモノはにごった眼で天井を見遣る。
それに対し、ヒナはわざとらしく瞳をうるうるさせていく。
「まーた、なにか手伝ってー的なやつだろー」
「ぎくりです……」
「そんなに俺のこと見定めたいのかー。ほんとによー」
床に体を反転させて、クライスはだらだらと話し続けた。
「俺はただの無職だよー。だりー」
「無職の勇士……!?」
「勇士フィルターでもかかってんのか? お前の耳」
「そんなことよりトランプでもやろうぜー。ひまだー、いいことだけどー」
「……やりましょう! ……いくら賭けます……?」
「博打好きだなー。お前ー」
「金は有り余っているでしょう……? むしり取ってあげますよ……生活費もほしいですし……」
「まだダンボールだもんなー。サーシャちゃんは部屋使っていいって言ってるー」
「ライバルにそこまでお世話になるわけには……」
ベッドに顔を埋めながら、ヒナは言う。
変なところで意地をはる彼女に、クライスはそんなことよりベッドから離れろと言いたい。
「ライバルね」
【無職の勇士伝説! クイズ大会! 開催!】
「……」
いつかの日常風景。
サーシャとヒナは、時々火花がすごいことになる。
正直、ちょっと気恥ずかしいところもあるクライスなのだった。
「なあ、無職の勇士って評判悪いんだろう」
「? ……そうですネ」
「最低評価の勇士って聞くぞー」
「ええ……ですが……」
ヒナはクライスの言葉を遮るようにいう。
「わたくしの住む場所では……無駄に崇められていました……!」
「無駄にってっ」
【無職の勇士ばんざーい!!】
【怠惰の王!! ばんざーい!!】
【無職!! 無職!! 無職!!】
「けなしてんのかな?」
「崇めてますよ……」
微妙な気持ちになりながら、クライスは近くにあるお菓子の箱を手繰り寄せた。
「ありゃ、もうないな」
中はからっぽ。
「……そんな場所あるなら、行ってみたい」
「行きますか……? 遠いですけど……。二人きりで旅行……フヒヒ」
「うーむ」
お悩み中のクライス。
ヒナと二人で旅行は、色々な意味で危ない気がしている。家の中ですら身の危険があるというのに。
とりあえずは保留することにした。
「そうだ。トランプ」
「ああ……でも……」
ヒナはベッド上から部屋を見渡し。
「このゴミ山……から……?」
「ひでーな」
「どっちの意味……ですか……?」
彼らがいるそこは、かなりの廃棄場と化していた。
散乱した漫画やお菓子の袋、脱ぎ捨てられた衣服……。
などなど。
ジャスミンが見たら、吹っ飛ばされそうなありさまだ。
「すさまじい……恐怖です……!」
「最近、片付けてなかったからなー」
色んな匂いが混ざり合って、絶妙な不健康さを演出している。
「うう……なんという拷問……! 何時間かかるやら……!!」
「拷問」
涙目のヒナと面倒くさそうなクライス。
それでも、クライス達はトランプの捜索を開始する。
「ごそごそ」
「ごそごそ」
現在、捜索中。(クライスは寝転がりながら捜索)。
「あ……お札発見」
「おい、しまうな」
「けち……」
いろいろな物が埋もれているので、ヒナは少し楽しくなってきた。
もしかしたら、勇士さまの貴重なアイテムGETできるやもと。
「おっと……これは……」
「!」
「ふふふ……」
彼女が手に取ったのは、アニメキャラが表紙に描かれた薄い本。
「よせっ」
「男の子……ですネ! ほほう……」
中身を確認したヒナは、頬を赤らめている。
クライスはめちゃくちゃ焦り、その本を奪おうとする。
しかし、この期に及んでもまだ、彼は怠惰の姿勢を崩さない。ので、ヒナを捉えることができない。
「こういうこと……したいんですか……? フふ……!」
「それカメ朗のだもん。俺のじゃないもん」
あっさりと友人を裏切るクライス。
奪えないのなら、なすりつけてしまおう。
「非道……外道……。そんなクライスさんには……制裁が必要……かもしれません……!」
「サーシャちゃんには言わないでっ」
必死に隠そうとする、無職の勇士のちっぽけなプライド。
すでにクライスに対してそういう目を向けていることに、彼は気付かない。
「どうしましょうか……! もだえるクライスさんも……それはそれで……!!」
「なにを興奮してんのっ」
■ヒナの変態性を甘く見ていた■
■クライス猛省!■
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「そういえば……あの噂知ってますか……」
「噂?」
捜索開始十分。
まだトランプ発見できず。
「盗賊ですヨ……盗賊被害……」
「盗賊ねー。それが?」
「近くの町で、何人か被害に遭ったとか……」
「【ソルジャー】は?」
■ソルジャーとは、就職者として島の治安を守るモノであるが■
「撃破されたようでス……」
「まじか。就職者の盗賊ってわけ」
「でしょう……」
少しクライスの顔に緊張が戻った。
ソルジャーは当然弱くはなく、そのトップクラスの実力はクライスにも匹敵するだろう。
島の各地に、拠点部隊長と呼ばれる役職の者が常在しているが、かなりの実力者であることは彼も知っている。
「……」
「もしかしたら村に……なんて……考えすぎ……?」
「やれやれ」
頭をかき、彼は乱れの気配にうんざり。
そんなやつらが村に来たら、対処するの面倒だと。
自分ひとりだけならともかく、敵が大勢ならばおそらく――。
(しかし今の村には)
なかなかの猛者がそろっている。
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■コンビニアルバイト!! 熱血野郎!!■
「いらっしゃいませえええええええ!!」
暑苦しい接客で有名な就職者・ゴウト!!
今日も元気にレジ打ちするぜ!!
「お釣りはこちらになりまあああああす!!」
お釣りを渡す際、がっしりと両手で握ってくる!!
好意的:【ふふ、力強いですね】
否定的:【セクハラ……】
絶対に許さない:【しねえええええ!! 変態があああああ!!】
「ごおふっ、またのご来店を……がくっ」
吐血しながらでも接客はこなすぜ!!
ジャスミンの拳はめちゃくちゃヘビーだが、根性で耐えたぜ!!
「困ったなぁ」
「お客様!! 何かお困りですか!!」
「うわぁ!? びっくりした!?」
店内に困ったお客様がいれば、一秒かからず飛んでくる!!
「ふん!! ふん!! ふん!!」
少し雑だが、仕事は一生懸命こなすぜ!!
商品を置く陳列棚を間違えて、店長に怒られたけどまったく気にしないぜ!
一つや二つじゃなく、棚に置く商品まるごと間違えたけど気にすんな!!
「いやそこは気にしろよ」
■ある日、ナマケモノが来店したぜ!!■
「なに!? オレが村に来た理由!?」
聞いてみたのは気まぐれクライス。
「はははは!! 決まっている!! お前だよお前!!」
「やっぱり」
「お前のような滾るマッスル!! オレのライバルに相応しい!!」
ライバル認定されてしまったクライスは、しぶい顔でコンビニを出た。
たびたび勝負を挑まれたりもするし、もうすでに面倒な気配がある。
(なんてこったい)
■……■
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■ある日の、昼下がり■
「おー、どうした? しけた面して歩いて」
「サメ男さん」
サーシャ宅を出たクライスは左の道を行き、途中でサメ男と出会った。
変わらず威圧感を感じる体格の持ち主で、少しだけゆっくりと距離を取るクライス。
なにやら心に刻まれたトラウマがあるようだ。
「いや。散歩」
「散歩なー。こんな青空なんだ。元気だしなー」
「今は難しいかな」
クライスの頭は、盗賊のことを考えていた。
ヒナから聞いた話が、なぜか妙に引っかかっているのだ。
(就職者ですら倒してしまう盗賊か)
自分が負けるとは思えないが、警戒はある程度しておくべきかと思う。
そのための準備も……面倒くさいが一応しておいた。
まあ。考えすぎになる可能性の方が高いのだが。
「ところで傷だらけだけど」
「あー、この丸太を運ぶ途中でモンスターに襲われてなー」
「撃退したと」
「そうなるなー、はは、拳がすりむけてしまったー」
笑いながら、大きな丸太(十五メートル以上)を軽々と担ぐサメ男。
彼はそのまま何処ともなく、去っていった。
あの人、昔モンスターを狩る仕事でもやってたのかな?とか、真面目に思ったクライスさん。
(そういや)
■サメ男さんも昔、儀攻戦の選手だったと■
■そんな話を思い出した■
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■集会所・前■
「フフフ……この研究が上手く行けば! 村に変革が起こりますよぉ!」
「……」
「このスーツが完成し、そしていずれは世界支配も可能に……!」
マッドな笑みを浮かべるのは、整った黒髪を生やした眼鏡男・ジャック。
背後のクライスの存在にも気づかず、自身の世界に入ったままである。
「おっと聞かれてしまいましたか……。まあ、いずれ分かりますよ。いずれね」
黒幕のような言葉を残して、ジャックは去る。
なんか毎回同じようなこと言ってるような、そうでもないような、奇妙な感覚を与えてくる。
(この時の俺は、まさかあんなことになるなんて思わなかったんだ)
とか思ってしまいそうなクライス。
まあ、そもそも彼の頼みごとが関連しているのだが。
なんにせよ、かなり頼もしいマッド野郎だとは彼も思っていた。
「……案外、大丈夫かも」
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■村の外・南西■
「野郎ども準備はいいな!!」
「へへへ! 当然ですぜ!」
「いつでも!」
茂みの中に潜む者達は、物騒な得物を光らせている。
「あの村を襲い……! 金品を奪う!」
「食料を奪う!」
「そして良い女がいたら……へへ!」
邪悪な笑みを浮かべる彼等は、恐ろしき企てを実行に移す。
「「「プロポーズする!!」」」
「めっちゃ可愛い娘いたらどうしよう!」
「顔赤くなるー!」
「やっべ、今から緊張してきた!」
「お、おれの身だしなみどうかな!?」
あたふたと準備を進める者達。
「お前ら落ち着け! わ、我らに敗北はない!」
■予定時刻より・襲撃10分遅れ■
■盗賊たちとの戦いが始まる!?■