色々と疲れた俺は異世界島に辿り着き、獣人ヒロインと出会う【怠けると強化!強力スキルで異世界競技チャレンジ!】 作:幸福野郎
「ふははははは!! 熱血!!」
■村に響く熱血漢の声■
■グッドMorning■
■そんな日に、二人は村の外■
「ミリアム」
「なんだ?」
「帰っていいかな?」
「だめよ」
■現在マサル君は、ミリアムちゃんに誘われ■
「あそびましょーう」
「やーだよ」
「お前に拒否権はない。こい」
■楽しく遊んでいるのだった!■
(場所は駆け回れそうな平地。わーい)
太陽の下。スローラ平原。
うきうき気分のマサル君は、ついはしゃぎすぎて村の方向に走り出そうとした!
その顔には、必死な感じがあるようなないような。
「逃がさん」
「そんなっ」
背中からがっちり両腕で掴まれ、逃走阻止。
自分より小さい体に抱擁される体勢。
「おううふ」
気持ち悪い声がクライスから漏れる。
それも無理はない状況ではあった。
(タンクトップ越しに伝わる感触ッ)
ミリアムの服装は、黒のタンクトップ(腹だし)とスパッツ。
ちなみにクライスはスポーツ用、ぴっちりスーツ。逆にこれ動きづらいなと後悔中。
だが今はそれどころでない。
(大きさは並。しかし絶妙な感触。というか、全体的にやばい。俺には刺激が強いッ)
マサル君の自制心が壊れそう!
ミリアムもまた、サーシャやジャスミンに負けないレベルの美少女。ド級のBEAUTIFUL GIRL!!
そんな密着して不快感とかないんかとか、彼は思ってしまう。
「み、ミリアムっ」
しぼり出すような声が出る。
必死に理性と戦っている漢の叫びだ。
「ここで何をするってっ?」
「修行だ。当たり前だろう」
抱き締める力を強めながら、彼女は言う。
ミリアムはジャスミンのようなゴリゴリの肉弾戦タイプではないが、それでも十分なパワーがある。
女性ファイターとして、人気が高いのもうなずけるというものだ。
「ほんま、修行好きなー」
クライスは普段の彼女を思い出す。
【フン、フン、フン】
【……】
【ハア、ハア、ハア】
【……】
【まだまだっ】
【……】
(汗を流しながら、村でトレーニングを行う姿しかない……あと、勝負を挑まれる)
彼の中のミリアムは、トレーニング中毒で固定。
クライスとの最大の違いはそこで、同じルーキーの天才でも、彼とは正反対な感じがあった。
……しかし、なんだか放っておけないような少女であるのも確か。
「なんなの世界最強が目標? ミリアム氏」
「良く分かったな」
「当たってた」
「いや。正確には少し違うか……強さ自体を求めているのではなく」
適当に言った予想が、当たっていたことに驚き。
それと同時に、彼女の表情に陰りが生まれたことで、クライスは少し真剣になる。
「私は強くならねばならない。この身に刻まれた灼熱が・そう叫んで止まらない」
真面目な声で彼女は言うが。
「腕の力は弱めてくれよっ」
それどころではないクライス。
「奴らを倒すために――!」
「過去話聞くから、はなしてっ」
■話開始■
「アレは十年前……私が七歳の時」
「へー」
とりあえず離れた二人は、地面に座って話をする。
クライスは持ってきたサンドイッチを食べ、それを物欲しそうな目で見てくるミリアムの圧に負け、彼女にもメシを分ける。
サーシャが気を利かせて、多めに作ってくれたのだ。
「私の村に・ある盗賊が来た」
【それは、灼熱の中に刻まれた光景】
「圧倒的な力で、奴は私の仲間を・家族を殺し」
淡々と紡がれているようにも聞こえる言葉には、内に激しい増悪が秘されている。
「全てを焼き払った」
【今でも忘れない・みんなの悲鳴】
【残った死体は島の研究機関に回収された】
【変異死した者は、復活することが出来ない】
「そいつが敵」
「そうだ。あの眼帯の男がっ。……私の家族を殺したのよ」
忌々し気に顔を歪める彼女の心には、今も尚、深い傷があった。
それを見て、少しだけ目をそらしてしまうクライス。
「……」
大会でのミリアムの様子を、クライスは思い出す。
かなり余裕がなく、鬼気迫る迫力を持っていた。
今の彼女は、それと比べるとかなり落ち着いた様子に思える。理由は分からない。
「変異死っていうのは、死体が消えないのか」
「そうだ」
「どうなったらそんなことに」
「はっきりとは分からないが、仮説がある」
「仮説」
ミリアムは頷き。
「もしかしたら、私の敵は――」
■それから少し経ち■
■話終わり■
■クライスにとって、もふもふとサンドイッチを食べるミリアムが、少し可愛かった時間■
「フン! フン!」
「ほいほいーい」
トレーニングの声が平原で重なる。
(なぜ俺までっ)
意味も分からず巻き込まれたクライスは、ミリアムと並んで腕立て伏せを行っている。
彼女の圧にまたしても負けてしまった。
連絡先交換は、まだなんとか回避していた。
【お前の強さの秘密を教えて欲しい】
【サポートマン】
【誤魔化すな。その為に村に来た】
(って言われてもなー)
やれやれと思いながら、だるそうに腕を動かすクライス。
まともな筋トレなんて、元の世界でやった覚えがないのでフォームがぎこちない。
それに比べてミリアムはスムーズ。一種の美しさも感じる。
(勇士スキルのこと教えるわけにはなー)
彼が保有するスキル・来年から本気出す。
(これが無職の勇士のものであることは、分からないだろうが)
が。
(勇士であることを勘付かれるか)
それは避けたいと思っている彼。
面倒になる予感しかない。
(ジンみたいに、挑んでくるやつがいるかも)
そんなのは面倒すぎると。
ただでさえ、ゴウトやミリアムといった迷惑凸人に翻弄されているというに。
(俺が無職の勇士であることを(明確に)知っているのは)
サーシャ・ジャスミン・村長・サメ男。
村人の名前が浮かぶ。
(ジンは無職であること知らず)
【分かった。約束通り、他言無用といこうじゃないか。敗者に権利はない】
■そんなことを考えていると、ふいに声が聞こえた■
「おい、これが秘訣なのかっ。クライス!」
「おう」
「くっ、ただの筋トレではっ」
「基礎が大事よ。基礎が(まあしかし、その通り)
とぼけた顔で少女をダマす悪党がここにいた。
教える気はさらさらない。
とりあえず彼女のトレーニング姿を眺める、それだけの時間になりそう。
(ゆるせミリアム)
■クライスは気の抜けた声で応援■
「諦めるなー。自分の可能性を信じるんだ」
「あ、ああっ。……フフ、そんなに応援してくれるか」
「そうだそうだクマー!!」
「ファイトだ銀髪ねーちゃん!!」
いきなり周囲に現れたクマ達が、ミリアムを鼓舞する。
「なんだこいつらは」
「さあ」
意味もなく現れたクマ達は、山に帰っていった。
■それから数時間経過■
■なんだかんだ、クライスはミリアムと濃い時間を過ごした■
「ふー。この程度では物足りんな。はぁはぁ」
「よくやった。師匠として鼻高し」
「師匠?」
「ふむ、これからは師匠と呼ぶのだ」
何かのスイッチが入ったのか、完全に調子に乗っているクライス。
彼は、持ってきていたスポーツドリンクとタオルを、汗だくのミリアムへと渡した。これもサーシャが用意したものである。
「なっ、なんで。師匠などと……私がっ」
「……」
顔を赤らめて拒否しようとするミリアムの姿に、クライスのスイッチが入った。
彼は圧を強めて、なんとしても師匠と呼ばせようとする。
「く、仕方ないかっ。し、師匠」
「ふむ弟子よ」
■奇妙な師弟関係が築かれたのだった■
(なんとか、誤魔化さないとな)
「……師匠。それでは連絡先を交換しましょう?」
「え」
「まさか断らないわよね。師弟関係なのに」
「……」
●■▲
■村への帰り道■
「へえ、ナイトなのか」
「金を稼ぎながら鍛えられるからな。モンスター相手はまた違った経験が得られる」
「ようやるぜ」
昼の散歩のごとく、並んで歩いている二人。
ミリアムは、割と積極的にクライスのことを聞いてくる。
なので彼も少し彼女のことを聞いてみた。
「ナイト。てことはヒナと同じ」
「ああ、同業だな。奴の名前はそれなりに耳にすることが多かった」
「へえ。どんな?」
「ソロでモンスターを狩っていく……凄腕暗殺者とな。あの容姿だ。男性ナイトの隠れファンも多かった」
「ああ。まあ」
ヒナの性格を知らなければ、言い寄る男もいるだろうとは思うクライス。
本当に性格さえ知らなければ。
なんか、そういう奴が自分の周囲に多い気がする。
少し現実逃避気味に視線を逸らし、揺れる木の葉が視界に映った。
「同業にまったく見えん」
「良かった、安心したよクライス」
「ひどい」
しかし、クライスは妙に納得してしまう。
あの陰キャ変態アウトローは、どう見てもダメ人間だ。
「ナイトのイメージ悪くなりそうだしなー」
【ギャンブルゥウ……マネー……はぁ……遊びには……お金が必要……でス。あの新作GAME……初回限定版高い……とほほ】
「それはないな、安心しろクライス」
「なぬ?」
「元々、ナイトには荒くれものが多い」
「ほー」
クライスは石ころを軽く蹴った。
その石は軽く跳ねていき、より大きい石にぶつかって停止した。
「逆にソルジャーは真面目なのが多いと聞く」
「ほうほう」
「なのでその二つは仲がよくないようだ」
私には関係ないがな。と付け足す彼女。
クライスは話を聞いて、なんとなくのナイトに対するイメージ構築。
15秒で完了。
【やんのかこらァッ】
【ふ、野蛮人め】
【戦争だーッ】
(こんな)
ぼんやりとイメージする。
まあ、ヒナがソルジャーに敵意を抱いているイメージはないが。
彼女の性格的に、別にソルジャーのお世話になるようなことは……ないとは言えないのが辛かった。
「村が見えて来たな」
「お」
「先に行く。少し予定が詰まっている」
走り出すミリアム。
せわしなく、さらなる高みへと上がるためのハシゴを探しているのだろう。
(それも修行か)
あっという間に見えなくなった彼女の後ろ姿を、ぼけっと見て。
「いいな」
どこがとは言わない。
なんにせよ、一生懸命な彼女の姿はクライスに影響を与えている。
ただ、どうにも心配になる彼女でもあった。
家凸するのは勘弁してほしいが、またミリアムと話をしたい欲が強まっている。どこか惹かれる部分があるのかもしれない。
●■▲
■村に帰還したよ!■
「熱血!! 青春!!」
「ふん! はっ! まだまだ!!」
村に響き渡る汗臭い叫び。
ミリアムとゴウト二人による、合同トレーニング。
彼らの周囲半径10メートル以内の気温が、急激上昇するのでは?
そう心配になるような、圧倒的な熱血青春ものオーラを感じてしまうヤバい。
「おいおいっ」
合わさった熱血は渦を巻き、クライスを吹き飛ばそうとする。
(暑苦しいッ)
恐るべき熱に膝を突く。
(なんということだっ)
冷や汗を流し、土煙を上げながら走り去っていく二人を見送る。
あのやかましい雰囲気が、増幅されているのではという危機感。
「く、俺は村に新たな脅威を招いてしまったのかっ」
静かな自堕落ライフが、壊れていくような錯覚に陥り。
「おかえりなさい――あれ?」
「ただいま……」
「どうしたんですか?」
「もふもふもふもふ」
「えっ」
「もっふもふっっ」
「きゃあああああああ!?」
■モフモフタイムスタート!■
「はぁはぁ」
「ふぅ、落ち着いた」
「ううう……別にいいんですけど……やる時はやるって言ってくださいっ」
■終了!■
●■▲
■某時刻・【蘇生場】■
「――」
魂は躍動し・肉体が構築される。
「……」
男は眼前にある扉を、力強く押し開いた。
「――復活」
先に広がる空間には誰もいない。
白塗りの簡素な部屋。奥にもまた扉。
静かな室内で、彼は少し残念そうに声を出した。
「今回は負けたか。僕もまだまだ」
正面にある台に、質素な衣服が置いてあった。
「はあ~」
溜息を吐きながら、その台の方へと歩く。
その足取りは気だるそうで、ゆっくりとしたものだ。
緩慢なテンポを刻みながら、衣服を右手に掴もうとする。
「ゼノ! いるか!」
いきなり開け放たれた奥の扉から、鬼気迫る女性の声が。
「な、なんだ?」
ゼノと言われた男は、入ってきた金短髪女性の方に目を遣った。
「すまん! 緊急事態だ!」
「?」
「……スミスが死んだっ」
「は?」
言葉の意味が分からないゼノ。
いや、引っかかる部分がある。
死んだという表現は、この世界ではおかしい。もしそれが使われることがあるとすれば、それは――。
「それが、どうしたって」
「――【変異死】だ」
■言葉を聞いた瞬間、ゼノは表情を一変させる■
「くわしく、聞かせろ」
目を見開いたゼノは、感情を押し殺した声で問う。
【俺はスミスって言うんだ! よろしくな!】
かつての幼馴染の姿が、彼の頭の中に浮かんだ。
●■▲
■イヤシノ地区:ソルジャー協会・会議室■
■ガラスの部屋からは・夜空が見える■
「まさか、あのスミスが」
「そもそも、島の【結界】によって異物は入れないはず」
沈痛な雰囲気がその場を包んでいた。
大きな机を囲むソルジャー達が、島の各地に出現した乱れについて話す。
治安を乱す要因として特級の存在の対処のせいか、彼らの顔には確かな疲労が見て取れた。
それでも、島民たちのために神経を削って、その使命を果たそうとしている。
「彼はファイターですが、ソルジャーの仕事を手伝ってくれる時もある……。本当に優しい方で……っ」
「あの時、近くにいた彼に救援を頼むべきでは……なかったのかっ」
席に着いた中年男性が、苦悶に頭を抱えた。
今のところ、犠牲者は最小限に抑えられていると言っていい。こういう時のために、事前に各地に配置されていた特殊部隊員の奮闘の結果だ。
しかし、ここから先の見通しは闇で包まれている。
「変異死」
「ええ、間違いなく」
「となると、あの仮説は本当のようだ」
スミス・その他犠牲者の状態から、彼らはある結論に達する。
「悪辣王の勢力――異物が関係していると」