色々と疲れた俺は異世界島に辿り着き、獣人ヒロインと出会う【怠けると強化!強力スキルで異世界競技チャレンジ!】   作:幸福野郎

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赤き囚人

■向かう先は、ゼニゼニタウンの北■

■ナゴミノ地区との境にそびえる山■

 

「おおー、速い」

 

「だろう!! ローン購入で買った、自慢の愛車よ!!」

 

■ロベルトの【魔導車】に乗って、スローラ平原を疾走し、クライス達は【ネオン山】へ■

 

(オープンカータイプね)

 

 光を放つ魔導車によって受ける風はそれなりと、乗り心地は中々よい。

 日を浴びながら、クライスは後部座席にてネオン山の情報を整理していた。

 

(目撃場所は山の天辺)

 

 モンスターの姿形の詳細は不明。

 

(大きく・鈍い動きであることは判明)

 

【上級ナイトの一人・鉄血のハリーという男がそこに向かった】

 

(ナイトは下級・中級・上級に分かれる……そこからさらに区分できるが)

 

 ナイトの中でも最上の男が向かった、ネオン山のモンスター討伐。

 

(結果は、失敗)

 

 ハリーは撃破され、復活待ちの状態。

 彼がやられたことで、依頼を受けるナイトが激減したとかなんとか。

 サポート通信による連絡があったそうだが、まともな情報はなにもない。

 

(面倒そうだー)

 

 かなりの強敵でありそうな予感がしまくるモンスターに、ダウナー気味のクライス。

 そもそも本職ではない。

 モンスターの知識など皆無に等しい。

 自身の持っている魔導具の内、一つは【こういう状況】で使えない。

 

「ふふ……今回も期待……! それに……」

 

「はあ」

 

「わたくしの凄さ……見てもらえる……かも……!」

 

 彼の気も知らずに、ヒナは隣で怪しい笑みを浮かべる。

 ギラギラとした、狂気的な目をクライスの方へと向けていた。

 

「そんなに見たいか。俺の力を」

 

「当然……ですわ……。見せてもらえるまで……地の果てまで追いかけます……!」

 

「鬼め」

 

 未だに無職の勇士としての力を示して欲しがっている彼女に、クライスは気が重くなる。

 息遣いが荒いヒナの表情は、彼が受け止められる期待値をはるかに超える熱量を持っていた。

 それだけ無職の勇士……クライスのことが好きなのだろう。

 が、その好意が毒となることもあるのだ。

 

「ふふふ! サーシャちゃんっていうのか!!」

 

「は、はい」

 

 前部座席で運転しているロベルトに、隣に座るサーシャが少しうろたえている。

 

「めっちゃ好みだぜ!! 結婚してくれー!!」

 

「え、ええ!?」

 

「俺、現在嫁さん募集中!! よろしく!!」

 

「おのれっ」

 

 なにやら、ロベルトがサーシャを口説き始めた。同時にクライスが戦闘態勢に入る。

 恨めしそうなクライスの反応に、ヒナは面白くない顔。

 ふくれっ面を見せて、ぼそぼそと誰にも聞こえない声量で呟く。

 

「むう……やはりライバル……。これは……、わたくしも更なる攻勢を……!! そしてクライスさんの注目を……!!」

 

■車は進み■

 

「そういや、儀式場についてはどこまで知ってるんだ?」

 

「?」

 

「いや、お前さん、島については素人みたいだから」

 

 ロベルトがクライスにそんなことを聞いてきたのは、山がぼんやりと見えて来たころ。

 若干、眠くて意識を失いそうになっていたクライスは、ぼんやりとした頭で返答する。

 

「くわしくは知らない。が、便利なものであることは分かる」

 

 この島の各地にあるという、儀式場。

 クライスが知っているのは、上辺の部分のみだ。

 

「便利ねぇ……まあ、そうか」

 

【数百年前、銀の蛇はこの島の各地に儀式場を生み出した】

 

「銀の蛇」

 

「そうだ。そう呼ばれている存在、神様みたいなもんかな」

 

「ほー」

 

「勇士の伝説と並ぶほどだ。この島の中だけならな」

 

【それを理由に・儀式場は神聖な場所として管理されている】

 

「基本的に守護者が守らなければいけねぇんだが」

 

「だが?」

 

「それを阻む奴らもいる。【ヤマト】とかな」

 

【ヤマトとは、海に囲まれ孤立した町】

 

「そこ、強いの多いんだっけか」

 

「おう、守護の盾ですら崩せないほどにな。あの町出身の奴でトップクラスのナイトもいるぜ!」

 

「……」

 

 孤立した場所にあるという、ヤマトとかいう町。話を聞くに、和風な文化を主体とした地のようである。

 本来のクライスなら、特に気に留めない場所だが。

 

(そこの儀式場。無級だったら厄介だ)

 

 無職の勇士。その力を解放出来るらしい場。

 まだ、その全ての情報は集まっていない。

 

(判明してる無級の位置は少ない。全ての儀式場を回るはめになるかも)

 

 まあ、そんなこといっても面倒くさいと強く想っているのだが。正直、いまだに揺らぎまくる決意だ。

 

「他に守護者たちを阻んでいる場所は、【ソルト】の町とかか」

 

「ふむ」

 

「あそこは地区長が意地っ張りでなー。……この前の事件知ってるか?」

 

「島の襲撃のこと、か」

 

「ひでぇ事件だった……」

 

 苦虫を嚙み潰したように、ロベルトは言う。

 実際、この島で類を見ないほどの事件ではあったのだろう。

 

「あれで潰された町の一つ――守護の町・フェルト」

 

「ああ」

 

「なんで守護の町って言うのか……分かるかい」

 

「いいや」

 

「守護者に頼らず儀式場を守るからだ」

 

 山の輪郭がはっきりとしてきた。

 走行音と重なるロベルトの声が、静かに響く。

 

「地区長の方針でな。ソルトも同じように」

 

「方針」

 

「神聖なる儀式場を自分たちで管理する。それを意味あるものとしてるみてぇだ」

 

「ほほーん」

 

■どこか、気の抜けた問答は過ぎていく■

■クライスにとって、島の成り立ちは興味あるような、ないような■

■ただ彼は、この島の平穏に感謝する■

 

●■▲

 

「着いたな」

 

「ええ……! なんだかソワソワしま……ス! ふフ……! 刺激的なこと……ありますかネ?」

 

■クライス達の目の前に在る・大きな岩山■

■見る者に威圧感を与える、その堂々たる姿■

 

「ネオン山」

 

「そうだ! ここから先は気を抜くなよ。油断すると死ぬぜ? ここには、特徴があってな!」

 

「特徴?」

 

「そう! 遡ること数十年前――」

 

【ある、からくりを作るのが好きな男がいた】

【彼には夢があったのだ】

【巨大からくりアスレチックを造る夢が!!】

 

「それが」

 

「このネオン山ッ!! だッ!!」

 

「はた迷惑な」

 

■とはいえ登らねば始まらぬ■

■クライス足重し■

 

「俺の後ろから離れるんじゃないぜ! ぜ!」

 

「はいはい」

 

 山を囲むように螺旋を描く山道を、意気揚々と進んで行くロベルト(と背後の三人)。

 先頭を行く者だけ異様な雰囲気。

 

(うおおおお!! 俺、頼りにされてる!!)

 

 ロベルト氏は現在、ハイテンション。

 

(やってやる!! やってやるぞおおおおお!! この日の為に、実は情報収集しまくっていたんだ!!)

 

 クライス達に頼りにされている(と思っている)ことで、やる気がもりもり湧いてきているのだった。

 鼻息が無駄に荒く、あわよくばカワイ子ちゃんたちに良い所を見せられるかもと、下心満載。

 このまま、ハーレムルート行ったらどうしようとかとか。

 

【千を超える罠が・その山には潜んでいるという】

 

「む! 怪しい洞窟発見!」

 

「お?」

 

 道の左にぽっかり空いた穴があり。

 人一人が入れそうな大きさだ。

 

「なんぞこれ」

 

「ふふふふふふ」

 

 首をかしげるクライスに、ロベルトは怪しすぎる笑い。

 

「知ってるんだよなぁ。俺、知ってるんだよなぁ」

 

「なんだって(棒)」

 

「ナイスリアクション! ありがとう!」

 

■いざ、洞窟へ■

■一人だけやたらとテンション高い■

 

「この洞窟にはある罠が仕掛けられているっ」

 

「続けてどうぞ」

 

 ロベルトを先頭に、暗い洞窟内を並んで進む彼ら。

 丁寧に対応するクライス。

 

「あの扉だ!!」

 

 一行の行く手を阻む鉄の扉。

 

「あれが?」

 

「普通なら、そのまま開けて前に進もうとするだろう。が。が」

 

(もったいぶってねーで、はやくいえ)

 

「それが罠!! 本当の道はこっち!!」

 

「ほう」

 

 左の壁に、一部突き出た箇所があり。

 

「おら!!」

 

 それをロベルトが押し込むと!

 

「うお!?」

 

「きゃっ!?」

 

「ほあ……!」

 

■突如浮かび上がる、クライス達の体■

 

(上に!?)

 

■山の中を通り、天辺目指して一直線■ 

 

「これぞ!! スプリング・ショートカット!! 裏技だぜ!!」

 

■やがて彼らを光が迎え■

 

「戦いの時だ!! 気を抜くなよ!!」

 

■事態は、いきなり最終局面を迎える!!■

 

「――天辺か」

 

 地に足が着き、唐突な浮遊感は終わりを告げた。

 

「ごおおおおおお!!」

 

 激しい鳴き声が、山の頂上で響く。

 

「こいつが」

 

「大きい……。フむ……大型モンスター……。SPEEDは大したこと……ないみたいデすね」

 

「ごおお!!」

 

 大きな甲羅を震わせる、鈍重なイメージのモンスター。

 激しく地面を揺らしながら、クライス達を威嚇する。

 

(でかいカメだ)

 

 三人の前に立ちふさがる四足歩行の青い怪物は、その鋭い眼光を光らせた。

 

「わわわッッ。た、たべないでッ。ごめんなさい!! いやあああッ」

 

「サーシャちゃん。後ろに」

 

「ふフ……! 中々刺激的な狩りになりそう……ですわ!」

 

 

 

「あれ?」

 

 三人は気付く。

 三人しかいないことに。

 さっきまでうるさかった者がいない。

 

「ロベルトさん」

 

「おああああああああ!!」

 

 崖下に落下していく悲鳴。

 

「コースアウトォ!! 飛びすぎィッッ!?」

 

■ぐしゃりという音が鳴り■

 

「……」

 

■崖下から現れたロベルトの魂が、空気に溶けて消えた■

 

(噛ませ犬ですらなかった)

 

 クライスは一瞬だけ同情の視線を向け、すぐに戦闘態勢に入る。

 

「やっか。サーシャちゃん、回復は任せた」

 

「は、はいぃい。こ、こわくて動けましょんっ、すいませんっ」

 

「……哀れ。あの人は……実力はそれなりだけど……運がありませんわね」

 

■散った仲間の為にも、彼らは負けない!■

■まあ、クライスは既に帰りたくなっているが■

 

「ごおおおおお!!」

 

 けたたましい唸り声を上げる巨大モンスター。

 

「さて」

 

 クライスは掌を光らせた。

 

(ある意味、都合良いな。何にするか)

 

■せっかくなので、少し試してみるクライス■

 

「ほう……スコップ……」

 

 クライスが選択した魔導具は、古ぼけたスコップ。

 この島に漂着した時に、現出していたものだ。

 

「やはり……無職の勇士……様!」

 

「違うぞ」

 

 誤魔化しても無駄だとは思うが、一応否定しておく彼。

 めちゃくちゃ興奮している様子のヒナに恐怖しながら、モンスターと相対する。

 

「ごおおおおお!!」

 

 非常に鈍重な動きで突進してくる化け物カメ。

 

(遅い。俺といい勝負)

 

 あまりに鈍い突進に、気が緩みそうになる彼ら。

 迫力だけはすごいが、このモンスターはそこまで大した脅威に見えない。

 

(なのに。詳細な情報が【ない】)

 

 その理由を考えたクライスは。

 視界に何かを捉え。

 

「お――?」

 

 激しい雷光の輝きの中に消えた。

 

「ごおおおお!!」

 

 地割れを起こすほどの、超絶的な破壊力を持った一撃。モンスターが隠し持っていた鋭い牙。

 その場に残ったのは、大きなクレーターのみ。

 クライス達は消失した。

 

■唸り声は更に大きさを増し■

 

「あぶない」

 

 少し薄暗い空間で、彼はつぶやいた。

 

「い、いまのはッ」

 

「びっくり……ですわね」

 

 クライス達三人は、山の天辺からこの場に移動したのだ。

 無職の勇士の能力を使って、特殊空間にいる。

 

(スコップで正解)

 

■回避不能の先手必殺を■

■スコップによって生み出した空間に逃走して、回避■

 

「――あら、来たわね」

 

 そこには、もう一つの声があった。

 びくりとサーシャは恐怖する。

 

「……」

 

 クライスは振り返り、そこにいる人物を見遣る。

 声の主である赤き少女は、黒い拘束衣によって動きを封じられ、さらにいくつものベルトによって拘束台の上に固定されている。

 視界はガラス製の目隠しで遮られ、その様はさながら囚人か。

 しかしその乱れは・邪悪に笑う。

 

「悲鳴を聞かせに来てくれたのかしら? クライス」

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