色々と疲れた俺は異世界島に辿り着き、獣人ヒロインと出会う【怠けると強化!強力スキルで異世界競技チャレンジ!】   作:幸福野郎

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重なる欠片

■鳥居をくぐり、クライス達はそれなりに大きい社を前にした■

 

「着いたぞ隊長」

 

「うん……ジンくんの敵は討たないと! カブトムシ探索隊! これより作戦開始!」

 

「目的の輝きは……未だ遠い……! はよ一攫千金……!!」

 

「【スローラ神社】、今日はサーシャいなかったわね」

 

「まあまあ、これは珍しいお客さん」

 

■巫女さんと対面する一行■

■クライスは、彼女の姿を見て■

 

「ふふふ~。どうもどうもぉ~」

 

「……」

 

■違う少女の・その怪しげな笑みを、重ねた■

 

(守護者の剣士・彼女の笑みか)

 

 気のせいなのか、なんなのか。

 目の前にいる巫女の、その底知れないような不気味な笑みが、変にひっかかる。

 ああ、なんというか、過去にもこういう類の人間と接点があった気がする。その誰かと直接的な関係があるわけではないだろうが、どうにも委縮してしまう。

 

「はじめまして。マヤと言います、……貴方のことは聞いていますよ。クライスさん」

 

「……へえ、そうか」

 

 向かい合うクライスとマヤは、お互いに人の良い笑みを浮かべている。

 いや、クライスのはとっさの作り笑いだった。表情が固まっている。

 マヤの方はそうではないと、言い切れないが。

 

(一見はおしとやかそうな人、この人がサーシャちゃんと並ぶスローラ神社の新米巫女……)

 

「いやです……そんなジロジロッ。クライスさんっ」

 

「あっ」

 

 指摘されたことで動揺してしまい、クライスは噛んでしまう。

 美人に反応してしまう男の性……だけではない。

 警戒心があった。

 

「……」

 

 何を思っているのか、ジャスミンは無言。

 

「ひどいです。クライスさん……ワタシ、そういうのに慣れていないのに。ワタシの胸が人より少し大きいからって!」

 

「いやっ、そのっ」

 

 泣きそうな顔のマヤに、クライスはどうして良いか分からずアタフタ。

 ジャスミンは「少し……?」とつぶやいている。彼女のその目は、めちゃくちゃ怖いとトラ太。

 

「すまん。本当にすまんっ。この通りっ」

 

「ならならなら!! このお守りを買いませんか!? 買いますよね!!」

 

「は?」

 

 思わずぽかんと口を開けてしまうクライス。

 いきなりマヤの表情が変わり、ギラギラと狩人のごとき熱を瞳に映す。

 彼は一歩後ずさる。

 

「はぁ、相変わらずね。マヤ。ほどほどにしときなさいよ」

 

「うるさいですよっ。偽善者っ。さあさあ! クライスさん! 変質者扱いを受けるか、お守りセット買うか選んで!」

 

「……」

 

■改めてクライスは思った■

 

(こんなんばっか)

 

■悪質セールスを、なんとかスルーし■

■巫女さんとお話■

 

「はあ、伝説のカブトムシをゲットして売りさばくために、この神社でお祈りがしたいと」

 

「売りさばくとは言ってないよっ!?」

 

「またまたー。そんなに格好つけても、結局金でしょうに。トラ太、素直になりなさい。ロマンなんて一銭にもならないのよ。分かってる?」

 

 うんうんと静かに頷くのはヒナ。

 あまりにも無慈悲なマヤの言葉は、トラ太の心中にクリーンHITした。

 

「ちがうもんッ。ひどいやぁッ」

 

 わああ、と泣き出したトラ太がジャスミンの胸にすがりつく。

 

「よしよし。だめよ、トラ太はあんな大人になったら!」

 

「わああああ」

 

「よしよし」

 

 ジャスミンは、優しくトラ太をなぐさめる。

 大人げなく子供をいじめる性悪巫女に、彼女は鋭い視線を向けて牽制した。

 

「……さて、お祈りでしたねー。クライスさん」

 

 何事もなかったかのようにスマイルを見せるマヤに、クライスは戦慄した。

 まるで意に介さないメンタル。

 この女は邪悪の化身なのではと、ナマケモノは恐怖する。

 

「その前に。はい」

 

「? それは……」

 

 それはそれとして。

 クライスは、手に持った風呂敷包みをマヤへと手渡した。

 

「ああ……あの人ですかぁ」

 

 どうやら、誰からの贈り物なのか即座に理解したようだ。

 

「よくわかるな」

 

「割としょっちゅう貰いますからね」

 

「……ラブコメ?」

 

 ヒナがぼそりと言った。

 それに対し、マヤはにやりと口端を上げる。

 

「ふふ、どうでしょうか~? どう思います?」

 

 巫女さんははぐらかした。

 まるで考えの読めない表情で。

 

■お祈りのターン■

 

「この岩が」

 

「そう! この神社の、神聖なる岩なのですよー。ご利益MAX!」

 

 神社奥、赤い屋根の社前に置かれた、巨大な蛇のような形の岩。

 それを近くで眺める面々。

 神聖な雰囲気があり、同時に威圧的な荘厳さを感じなくもない岩だ。

 

「凄まじい波動を感じるでしょう?」

 

「全然」

 

 クライスの返答。にこにこ笑顔のマヤは、少しこめかみが動いた。

 彼女は笑みを保ったまま、クライスの右腕に抱き着いて、その動きを制限する。

 柔らかいモノがめっちゃ押し付けられ、彼の体に緊張が走った。

 

「またまたー、ほらもっと近くで見て」

 

「強引な。痛いっ」

 

 クライスを引っ張る怪力巫女。

 こいつ実はアスリートタイプでは?と、思うほどの力はあった。

 

「見てください! この芸術的な造形!」

 

「へえ」

 

 クライスは興味なさげに、岩に彫られた絵を見る。

 

「まあ格好良いが」

 

 様々な怪物がうねり狂う様子を描いたかのような、神秘的な画風だ。

 

「でしょう! さあ! お祈りするのです! そこに刻まれた怪物は、ヤマトで【妖怪】と称される存在で――」

 

「……」

 

「破壊不可能と言われる、儀式場を滅する力を持つと——」

 

「……」

 

「そういった妖怪パワーによって強化されたその石は、とても歴史と価値のあるものなのですよ! おおおっ。これはいけません! 泣けてきましたよー。ワタシ」

 

■説明を聞きながら、クライスの視線は岩の一部へ■

(この絵、見た覚え。あり)

■どこで?■

 

(今週のジャンパーやんけ)

 

■事実に気付いた彼は・反転■

 

「ちょ! なんでっ!? どうしてそうなりやがります!?」

 

「マヤちゃんってジャンパー好きなんだなー」

 

「ギクゥッ!」

 

「露骨なリアクションどうも」

 

 まさかバレないと?と、クライス君は思った。

 もしかして、この動揺しているのすら何かの策略なのか。

 いや、本当に心の均衡が崩れているように見える。

 いやいやいや???

 

「歴史と価値のあるものに、なにやってんの」

 

「ええっと、間違えましてー。そのー」

 

「異議あり」

 

「え、なにが」

 

「君のような守銭奴が、間違ってもそんなミスは犯さない」

 

 はっきりと言い切るクライスは、まっすぐに彼女を信じていた。

 何故だか、それに関しては言い切れる気がしたのだ。

 この女性の、金に対する執着は本物であると!

 

(近くに似たようなのいるからな)

 

 ヒナの方に少し視線を送るクライス。

 ヒナは何を勘違いしたのか、頬を赤く染めた。

 

「つまり、これは単なる岩と結論が出せる」

 

「ひどいです! 本当に神聖なる物なのにッ。なんてことを言うんですかぁ! 鬼畜!! 悪魔!! 無職!!」

 

 そう言いながらもマヤの瞳奥で輝く怪しい光を、クライスは見逃さなかった。

 この女、めちゃくちゃ計算してやがるな?と。

 

「薄情者なクライスさんとは違って、みんなはお祈りしてくれますよね? うるうる」

 

「うん、ついでだからね」

 

「……まあ、気持ちの問題もあるもの、こういうのは。【後】に備えてやっておきますか!」

 

「……はいでス……まあ、気まぐれで……。やってみても……いいですわね」

 

 完全に一歩しりぞいたクライス以外の探索隊は、お祈りを行うようだ。

 

「良かった。では——」

 

■マヤは一拍置いて、言う■

 

「岩に近付くのに料金が発生しますので、払ってください」

 

「はい?」

 

「え?」

 

「……なんと?」

 

 マヤが言った言葉に、固まる三人。

 

「それと、お祈りをする前にコチラが指定した百の行為を行ってください」

 

「……」

 

「あ、その行為を行う度に料金発生しますので♪」

 

■探索隊は回れ右した■

 

「ええええ!! なんで!? ストップ!!」

 

 必死に、彼らを引き留めようとするマヤ。

 今回は、割と本気で焦っているように見えなくもない。

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