色々と疲れた俺は異世界島に辿り着き、獣人ヒロインと出会う【怠けると強化!強力スキルで異世界競技チャレンジ!】 作:幸福野郎
■そして、ようやく反省は終わった■
「まあ、許しましょう。今回は温情をかけてあげるわ」
「ですね! ふふふ。あー面白かったー」
裁判官ジャスミンと、何故かノリノリの執行官ロリン。
(こいつら、危険だ)
二人の本質は、それぞれまったく別種のトラブルメーカーであると、クライスは気付いてしまった。
今回のトラブルは、クライスが原因ではあるのだが。
■彼を襲う乱れが、また一つ増えた■
「守護者なのよね。ロリンちゃんは」
「はい! そうですよー! それなりに腕が立ちます! 以後、お見知りおきを!」
「確かに。あの時見た斬撃は、闘争心を煽られるわねっ」
「おおっ。さすがのBATTLEマニア! その尽きぬ闘争心……格好いいですねー」
話し始めて数分で、かなり意気投合しているジャスミン&ロリン。
前から親交があったようだが、これはロリンのコミュ力が高いのかもしれんと、クライス思う。
「く、クライス様が、いつもお世話になっています」
「いえいえ、それほどでもー。えへへ。まあ雇い主様は任せておいてくださいよ!」
クライスそっちのけで、彼女たちの会話は弾む。
サーシャとロリンも仲が良く見える。
(……)
■しばしの間、二人の様子を眺める■
「しかし、クライスはどうしようもないわね」
「まあ、めちゃ凄美少女のわたしを襲いたくなる気持ちは分かりますがー。さすがにこわかったです……うぅ、ブルブル。お金を請求してもいいでしょうか? 慰謝料もらっちゃいます?」
「く、クライス様……っ。釈放されるその時まで、お待ちしていますっ。うぅぅう……」
「あー、サーシャさんを悲しませるなんてっ。雇い主さま失望案件でしょうか?」
(なんか寒気が。つめたい視線)
■女性陣の話し合いによる威圧で、クライスは胃が痛い■
「……」
「こうなったらあの計画を進めるしかないわね」
「まさかアレをっ。終わりましたね! 雇い主様!」
「いくらんなんでもそれは……」
■クライスの不安は募っていく■
■そんなこんなで時は過ぎ……■
●■▲
「それでは皆さん。またお会いしましょう~! お力が欲しい時はいつでも言ってください!」
「ただし有料」
「てへぺろ」
■ロリンは去って■
「あたしたちも、待ち合わせ場所に行きましょう」
「そうだね。……クライス様の暴走こわかったぁ。……そんなにモフモフしたいなら、いつでも遠慮せずに言ってくれれば良いのになぁ」
ジャスミンとサーシャは、皆との待ち合わせ場所に向かう。
「……」
その後ろに、縄で縛られた哀れな罪人を引き連れて。
奇妙な一行通りを歩く。
(せっかくの平穏ライフが)
乱れは容赦なく、クライスを奇異の視線で突き刺していく。
「――何が起きた」
クライスを眺める人の群れの中に、漆黒のナイトは佇む。
自分がライバル視していた強者が、なんか連行されているという謎の状況。
「むむ……見なかったことにしよう」
空気を読んだナイトは、背後の酒場に戻っていった。
●■▲
「買い物……楽しいでス。人もそんなに多くはない……でスし」
■昼:大きな噴水のある広場・タリー広場はそれなりに人が多い■
「これが……エンジョイライフ……!」
噴水前で恍惚の表情を見せるは、相変わらずのフード美少女ヒナ。
町を歩けば男たちが振り返りそうな美しさだが、顔が隠れているせいなのか、注目はされていない。
クライスとは違うのである。
「クセになりそう……」
「――人を奴隷扱いするのがか?」
「ぐはは!! そう言うな!! ジン!!」
男二人は、彼女の荷物を持たされていた。
ヒナは可愛らしい仕草と声で、ジンに言葉を返す。
「わたくしの細腕では……とても……。ぽっきり折れてしまい……ますわ」
「そのステータスで良く言う」
「攻撃力2000超えとはな! 平凡な就職者では、合計能力値でようやく拮抗できるレベルだ! ははは!!」
不満そうなラフスタイルのジンと、上半身下着で笑う熱血漢ゴウト。
彼ら三人は、別行動していたところでたまたま合流し、なんやかんやでヒナの荷物持ち態勢が完成したのだ。
「同じ勇士でも! こんなに差があるとはな!!」
「誰のことを言っている? 熱血バカ」
「がははは!! さてな!!」
■二人の男の両手は、複数の手提げ袋で埋まっている■
「くそ、あいつら早く来いよなっ」
「はははは!! なになに! まだまだ行ける!! いい筋トレだ!!」
「はー、この筋肉バカ」
「お! もう降参か!! 根性なし!!」
「なぬっ」
■その状態で、男たちの火花散る■
「能力値は?」
「最低限だ!!」
「その勝負乗った。オレの力を見せてやるっ」
■勝手に始まるジンVSゴウト■
「はー……なにを……単細胞……。暑苦しい……。うざい……」
呆れた様子のヒナは、敬愛する勇士の到着を待つ(発端は彼女なのだが)。
色々とへんてこな品を買ったので、それをクライスにも見せたいと思っている。彼とそのような時間を過ごせるだけで、彼女は胸が高鳴る気分だ。
「おおおおお!! 腕が!!」
「ぬおおおおおお!! オレはッ!! 最強の勇士だッ!!」
■竜を模した大きな噴水から流れる水が、暑苦しい声を反響させる■
「ははは、なにやってんだい?」
■熱血二人を見たギャラリーは、その様を見て笑った■
「ボクも混ぜてよ――ジン」
「ッ!?」
頭上からかけられた声に振り向くジン。
その声が、とてもなじみのある……だけではない、ものだったからだ。
(今の声はッ)
「久しぶりだな。親友」
■竜の頭に立っているのは、緑髪の少年■
「ロビン……ッ! 君かッ」
ジンが見上げる男の姿は、鬱陶しいくらいに輝きを放つ。
やたらと主張の激しい、光り物を大量に付けた彼は、最強の守護者の一人。
「相変わらず、きらきらしてやがるッ」
「ああ! 嬉しいな! お前ときたら、何も言わずに引っ越してしまうものだから!!」
■華麗に跳躍した美男子は、ジン達の前に着地する■
「あ」
■ぐきりとその右足が、鳴った■
■ロビーの顔引きつる■
「……」
「はは、すまない。手を貸して」
「あ、ああ」
■宿命の再開――■
「あれは、守りの大剣のッ!! 見たことあるぞ!!」
「……」
あんまり格好良くないロビーの姿を、凝視しているヒナとゴウト。
かなりの有名人のようで、周囲にいる人たちも彼に目を向けている。
「なんだ、ありゃあっ!?」
ゴウトの目には困惑の色が宿っている。
■その、圧倒的な能力値に染められて■
「全能力値が6000オーバーだとッ」
さすがのゴウトも冷や汗が止まらない。
守りの大剣を守護する守護者チーム……守護軍の一角であるロビーを見れば、おのずと他のメンバーの強さも分かってくるからだ。
「冗談きついぜッ……!!」
困難が強いほど燃えるタイプの彼だが、いきなり現れた最強の一角を前に委縮している。
それでも、その能力値をしっかりと目に焼き付けていた。
「……」
ヒナはロビーを黙って見ている。
その真意は推し量れない。
「――ふう、助かったー」
「助かったーじゃないだろう。相変わらず天然というか……」
「ははは、いつもお前には迷惑かけたな。身長伸びた?」
立ち上がったロビーは、親友との再会を喜びながら背比べを行う。
その姿はまるで無邪気な少年のようだ。
「くそー、負けたっ」
「ふん」
ジンの身長(約180)を、僅かに下回るロビー。
「昔はボクが大きかったのにっ。どんな食生活をッ」
「そういう問題か?」
「ボク、野菜あんまり食わないから……」
「それはオレもだ」
■絶妙に噛み合う(ような気がする)、親友同士の会話■
■ジンの声色には、若干とげとげしいものがあった■
「弟君たちは元気かい? 会いたいな」
「……まあな。元気、だと思う」
「よく秘密基地で遊んだよなー。ははは! 勇士ごっことかっ」
■二人の会話。その雰囲気は、幼馴染同士のそれ■
「ジンの奴、まさか! 【最強の盾】と知り合いだとはな!!」
「……ええ」
■再会を喜び、友と語らうイケメン■
■その周囲にいる女性たちのことを考えると、彼の知名度もあってこうなることは必然だった■
「――きゃああああああああッ」
「――ロビンきゅーん!!」
■平穏は長く続かなかった!!■
「うわっ、やばいっ」
噴水前で語らうロビーたち目がけて、女性ファン集団(弾丸形態)が突っ込んでくる。
実際、ロビーの顔はアイドルかというぐらい整っていた。
さらに普段の言動の波及によって、女性人気はかなり高い。
「逃げようか! ジン!」
「お前なぁ……顔ぐらい隠せよっ」
呆れる親友に逃走を促し、走り出すロビー。
どこか楽しそうである。
「げえー!! 多すぎる!!」
「とばっちり……! ふざけていますわね……あの天然イケメン……!」
■このままでは自分たちも飲まれるため、ゴウトとヒナもまきこまれて逃走■
「きゃあああああああ!!」
「待ってー!! せめてハグをー!!」
「キスだけでもー!!」
凄まじい熱気をまとって、女性集団は加速してくる。
ジンはそれに純粋な恐怖感を抱く。
「最低限のハードル高いな。おい!」
「ははは、ボクってなんでか女性に好かれるんだ! なんでだろうねぇ? 普通に優しく接しているだけなのに!」
「そういうところだろっ。多分っ」
「???」
さわやかに笑いながら、親友たちを道連れにして広い通りを疾走する自覚なしナルシスト(偽)。
その顔はやはり楽しそうで。
(ま、顔は文句なしなやつだしなッ。昔からなんかモテていた気がするっ)
性格の問題点はスルーして、ジンは評価する。
「しかし、このままではッ」
「追いつかれる!! マジかよ!?」
■恐るべしファンの熱量!!■
「――お前らっ」
逃げる彼らにかけられる声。
「!!」
「クライスさん……!」
■みんなのピンチに現れる、無職のヒーロー■
縛られたクライスさん「なにがあったっ。お前らっ」
「「「本当になにがあったッ!?」」」
■重なる言葉は、クライスに向けて放たれた■
「かくじか」
「そんなことがー」
■説明中■
「――しかし状況は好転しないっ」
「なんで、あたし達まで!!」
「もう、せっかくの旅行なのにっ。しかもあの大勢……こ、こわいッ」
クライス・ジャスミン・サーシャを加えて、町中を走り続ける彼ら。
「いや、むしろ」
「あれ、ロビンきゅん!!」
「きゃー!!」
■徐々に強化されていく弾丸■
■軽くホラーである■
「このままじゃ駄目ね!! 町の治安を守る為にも!!」
「よせ!! 自殺行為だ!! ジャスミン!!」
「誰かが犠牲にならないとっ」
無茶なことをしようとするジャスミンを、止めるゴウト。
クライスは彼女なら大丈夫じゃない?と、普通に思ってるのでスルー。
「!!」
■その時、奇跡は起きた!!■
「お前らはッ!? 誰だァ!!」
■現れた黒服集団による!! 華麗なブロック!!■
■弾丸を一時食い止める■
「今だ!! 分かれ道まで走れYO!!」
「あ、ああっ」
クライス達は、先にある三本の分かれ道まで疾走。
■黒服たちの壁により、弾丸は標的を見失う■
「ぐああああああ!!」
「がああああ!!」
■壁が破壊された断末魔■
「左の道に逃げたわよ!!」
「よし、追いかけましょう!!」
■追跡を開始する追尾機能付き弾丸■
「――行ったかっ」
「【逆の道】へな。仕込みが上手く行った」
右の分かれ道に面した大きな店の中で、その女性は呟いた。
金髪が印象的な彼女は。
「ロビー。これはスマートじゃない」
女性の名は、金髪ポニテの麗人・【最強の盾】ゼロ。
少し顔をしかめた彼女は、同じ儀式場を守る仲間に対して苦言を言うのだった。
「いやー、助かったよ。ゼロ!」
「ふう、仕方のない奴め……。毎度毎度、なぜこんなに女性にモテるのか分からないな」
語り合う二人の最強。
見る人によっては、卒倒しかねない光景。
儀攻戦において間違いなく世界トップクラスの選手が、語り合っているのだから。
「……」
クライスにとっては、どう見えているのだろうか?
「さて、オマケ共はどうするか?」
ゼロの視線が、クライス達に向けられる。
ロビーに向けるのとは別の、冷たく鋭い・刃のような眼を。
「何やら見たような顔がいるな。はは」
見下し切った眼を、隠す気もない彼女。
その視線がクライスへと向く。
「クラ……クラ……?」
数時間前に聞いた名前を、既に忘れている。
単純に興味がない、そんな理由で。
「どうでもいいな」
彼女は思い出す気もない模様。
別にクライスは、それ自体はどうでも良い。
「――サーシャ、お前は覚えている」
「ッ!!」
ゼロの金色の瞳が鋭さを増す。
サーシャはぷるぷると震え出した。
「ううう、お久しぶりです」
「本当にな。何も言わずに去っていった友よ」
■金色の瞳が更に鋭く■
「そ、そ、それは……」
「やれやれ悲しいなぁ。薄情な女だ」
「うううっ。そんな怖い目で見ないでください……」
■めちゃくちゃ小さくなっていくサーシャ■
(友達? 天使サーシャちゃんと、この嫌味野郎が? 水と油?)
二人の会話を聞いているクライスは、状況が上手く分からない。
サーシャとゼロの両極端なオーラが、混ざり合っているカオスな状況だ。
「まあ、いいさ。……これも何かの縁だ。少し話をしようじゃないか」
「え、えええっ。それはぁ」
「まさか断らないよな?」
サーシャは歓談を強要される。
蛇ににらまれた何とやらで、その体はプルプルと頼りなさげに震えている。
(この野郎)
クライスはゼロが気に入らない模様で、敵意のオーラを発しまくっている。
「そ、それなら少しだけ」
■結局、サーシャは折れた■
「では、他のお客はこの店を見ていくと良い」
ゼロは片腕を上げ、そんなことを言った。
クライス達は木造の店内を見渡す。
「ここは」
棚に並んだ、【異質】な商品らしき物。
奥のカウンターには、不満そうな顔の男性が立っている。
■その店内には、魔導の気配が漂っている■
「OPENにはまだ早いが――この魔導ショップ。品揃えには自信があるぞ」