色々と疲れた俺は異世界島に辿り着き、獣人ヒロインと出会う【怠けると強化!強力スキルで異世界競技チャレンジ!】   作:幸福野郎

56 / 125
獣の過ち

「おいっ!? さっき、あのモンスター喋ったよな!?」

 

「んなばかな! そんなモンスター、【言霊の竜】ぐらいしか知らねぇぞ!?」

 

■混乱中の盗賊たち■

■それを尻目に■

 

(さて、やるかー)

 

 すでに気力が抜けきったクライスは、右腕をグルグルと回して戦闘準備動作。

 その腕はとても太く・力強く・野生の力を感じさせ、完全に彼の肉体の一部として機能していた。

 

「就職者G……! またかッ」

 

「ウホ?」

 

 背後からかけられた声に振り返る。

 そこには、敗北寸前状態の仲間の姿が。

 

(やはりな……地面に転がった服を見るに、ソルジャーはやられたウホか)

 

■朝のことを思い出すクライス■

 

【少し走ってくる】

 

【はいよー】

 

 朝の客室で、ベッドに寝転がる半覚醒状態のクライスに向けて、ジンはそんなことを言っていた。

 それを覚えていたので、もしかしたら彼が巻き込まれているのではないかと思い、ゴリラ砲弾と化して助けに来たという展開である。

 

「しかも、このゴリラ……っ」

 

「ステータスがッ!? なんでだよッ。普通モンスターにはないだろッ」

 

「んだよッ!? このステータス!!」

 

■就職者画像:ゴリラ■

■名前:G■

■攻撃力:すごい■

■防御力:やばい■

■速力:最強■

■魔導力?知りませんね、そんなステータス■

 

(こんなふうに見えているだろうウホな)

 

■これぞ無職の勇士のスキル■

■【怠惰なる申告】■

 

(ステータス表記を適当にする、意外と便利スキル)

 

 マサル。改め、クライスのステータスを誤魔化すのには最適なそれを発動するのが、就職者G状態の時のお約束。

 

「設定された名前は簡単に……どうだったけかっ」

 

「変えられねぇよ! ばか!」

 

「名前はまだ分かるが! 顔が完全に人外じゃねぇか!?」

 

「新種の種族かよッ!?」

 

 盗賊達(×6)の動揺は収まらない。

 自分たちの仲間を空から飛来して吹き飛ばし、でたらめなステータスを持ち、人語を介する・笑顔が怖いゴリラ。

 完全に恐怖の対象である。

 

「モンスターだろッ。あの威圧感!!」

 

「しかしッ、就職者でモンスターなんてッ」

 

(ウホ、なにやら勘違いされているウホ)

 

 モンスターや他種族と勘違いしている風の盗賊たちの様子に、クライスは一思案。

 この状況をどうにか利用できないかと考えて、模索する。

 

(モンスター……ってことにした方が都合よし?)

 

 己の姿はどう見ても変であり、理由付けが難しい。

 ならば元からそういう生物であることにした方が、自然な感じになるのでは?と、彼は思ったり思わなかったり。

 実際、この姿を装備型の魔導具によるものと思っている者はいない様子。

 

「ウッホホ、愚かな人間どもよウホ」

 

「!?」

 

「どうやら俺の正体を知らないようウホ」

 

「!?」

 

 クライスがなにかする度に驚きのリアクションを返す盗賊達。

 これなら勢いでなんとかなりそうだと、彼は思った。

 

「……俺は偉大なるモンスター様の配下、【野生の四天王】の一角、【不動】のGッ」

 

「ふ、不動のッ」

 

「G……ッ」

 

■即興で考えた設定をぶち込む無謀■

■かつての、クライス誕生シーンが浮かぶG■

 

(行けるかッ)

 

「やっぱりかよ、どうりでッ、ステータスがバグってるわけだッ」

 

「間違いなくA級モンスター……! もしかしたらS級かッ!?」

 

「びびるんじゃねぇ!! 見かけ倒しの可能性もある!!」

 

(行けそう)

 

■ほくそ笑むゴリラ■

 

「不気味な笑みをッ」

 

「連携で行くぞ!!」

 

「うおおおおおッ!!」

 

 盗賊達は結束を強め、野生のクライスに戦闘を仕掛ける。

 そこには魔王に挑む勇者の面影があった。

 

「踏破◆踏破◆焼却!!」

 

「踏破◆踏破◆雷光!!」

 

(踏破は魔導強化――繋げて二回使用によって強化効果が上昇――その直後に攻撃系の魔導を組み込むことで、更に上昇する可能性があるウホ)

 

■クライスは、学んだ魔導の知識を反芻■

■ただし、やはり魔導は使えないのであるが■

 

「まだまだ!! 支援◆踏破◆踏破!!」

 

(三人目、こっちも踏破——しかし、同じ【支えの言】である支援と組み合わせることで、他者の魔導を強化する性質に変化するウホ――だったはずウホ)

 

■己の、適当な記憶力に疑念を抱きながらも■

■一応、分析には成功■

 

(なら、試してみるかウホ)

 

■迫りくる激しい炎・眩い雷光に対して■

 

「直撃だあああああああッ」

 

■クライスは■

 

「――ウホ」

 

「え? は?」

 

「???」

 

「なに? 消えた? なんで?」

 

■不動のまま、当たる直前で、それを無効化した■

 

「ウホホ、俺のバリアにはそんなの効かんウホ」

 

「な、なに言ってやがる!?」

 

「ま、待て! 今、バリアって言ったか!?」

 

 状況が理解できず混乱する盗賊達の一人が、就職者Gの言葉に強く反応した。

 震える彼は、信じられないものを見る目をクライスに向ける。

 

「ま、まさかッ!? 強力なモンスターしか使えないという、スキル【魔導・絶対消滅陣】!!」

 

(なんだそれウホ)

 

「なんだよそりゃあ!?」

 

「非常に希少なスキルで、あらゆる魔導を無効化するといわれるモンだッ」

 

(まじか。すごいなウホ……適当にバリアって言っただけウホ)

 

■クライスの行ったことは非常に簡単■

■ただ両腕を超速で動かし、迫る魔導をしっぺで払った■

■それが、周囲の目にはなにもせずに無効化したように見えた■

 

「さて、終わりにしようかウホ」

 

「ひ、ひいいッ」

 

「か、勝てるわけがないッ」

 

「に、にげろぉっ!!」

 

 自信の攻撃を容易く無効化したクライスに対し、盗賊達は逃走を選択。持っている武器すら放り投げて、必死の走り。

 それを眺めるクライスは。

 

(面倒だ。どうしよう・しかし)

 

■思い出す光景■

■そうだ・笑っていた盗賊団■

 

「――俺からは逃げられないウホ」

 

■クライスは少しかちんとなり■

■右腕を、強く動かした■

 

「!?」

 

「うそだろ!?」

 

■ゴリラの腕から投擲された、破壊された地面の欠片■

■それが盗賊達に直撃■

 

「ぐああああ!!」

 

「うああああああ!!」

 

■響き渡る絶叫■

■石の道を削りながら前進する、投擲兵器であるそれは■

 

「な、なんだ!? 魔導!?」

 

「退避ー!!」

 

■駆け付けたソルジャーの部隊すら巻き込み■

■ついでに周囲の建物や器物を壊しながら、突き進んでいく■

 

「……」

 

「お、おいGッ」

 

「………………」

 

 その惨状を見ているクライスとジン。

 ジンは不安そうな顔で、二度も己を助けた存在に声を掛ける。

 

「バナナの時間ウホ。食べないと死んじゃうウホ――あとはまかせたッ」

 

「!?」

 

■ダッシュで逃走するゴリラ■

 

 来た時以上の速度でクライスは去り。

 プラマイで言うと、微妙な成果を残していった。

 

●■▲

 

■少し時が飛び、後日談■

 

「おい聞いたか!? 新種モンスターの噂!!」

 

「聞いた! 聞いた! なんでも喋るとか!!」

 

「しかも、ステータスを持っているって」

 

 ユッタリシティに出現したゴリラ型のモンスターはたちまち島中の話題となり、ガリアン盗賊団の知名度の所為もあって、燃え広がっていった。

 

「だが、盗賊団を倒してくれたんだろう?」

 

「いや! 駆け付けたナイトにも襲い掛かったって話だぜ!!」

 

「無差別かよ! こえーな!!」

 

「しかも、黒幕の存在を示唆していたとかッ」

 

 噂には幻想が付与されていく。

 今回の場合、悪い意味であるが。

 

「飛行能力を有しているとか聞いたッ。着地の際、地面にクレーターを残したらしい」

 

「魔導を無効化するって聞いたぞ。厄介な……」

 

「竜巻を起こす能力持ちらしいが……」

 

「山を一つ消し飛ばしたって聞くぜ」

 

「遂に、ファンブルナイトが動き出したってよ!!」

 

「四天王ってことは、同格があと三人ッ!?」

 

「悪辣王とは別の勢力なのかッ!?」

 

■こうして、ラクラク歴1558年の冬■

■史上10体目となる、S級モンスターが誕生した■

 

「……」

 

 一方、屋上に帰還した現在のクライスは。

 

(なんてこったウホ)

 

 ショックで立てなくなっていた。

 

(……考え過ぎだ。まさか討伐対象モンスターになったりするわけないない、はははははははは)

 

■彼の予想は当たっていた■

■また、新たな乱れが追加された瞬間である!■

 

(バナナうまいウホ――)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。