色々と疲れた俺は異世界島に辿り着き、獣人ヒロインと出会う【怠けると強化!強力スキルで異世界競技チャレンジ!】 作:幸福野郎
■薄暗い洞窟の中■
■灯りが、いくつか揺らめいている■
「――ガリアンが捕まっただと?」
■男性の声が響く■
「へ、へい! どうやらそのようで!」
「へえ、このホンワカ島を荒らしまわる、【五大盗賊】の一人がねぇ。驚きだ」
「ですよね……あの男の、【腕大砲】には苦しめられましたぜ」
どこかから拾ってきたかのような薄汚れたソファーに寝転がる、白い髭をもっさりと生やした大男。
彼は、季節外れの短いズボンのポケットから小さな何かを取り出し、口に含んだ。
「うまいっすか?それ」
「あったりめーよ、ガキの頃からの好物だ。はは」
「ガキの頃か……はぁ」
「んだよ、しけた面してよー」
盗賊の頭と思われる大男は、お菓子を子分に投げ渡す。
子分は上手くキャッチし、柿の種のようなそれを食した。
「すっぱいっ」
「お、今日はついてんな。吉だ」
「え、そういうお菓子なんすか?」
「いんや? オイラが適当に決めた」
けらけらと笑う頭の顔は、童心が微妙に表れている。
彼は体勢を変え、椅子にどっしりと腰かけた。
「さーて、それじゃあ今後の話すっか」
「へい」
「最近のソルジャーどもの動きは、どうにも厄介だ。……やっぱアレのせいだな」
「悪辣王の配下とか噂の、島外のやつらっすねー」
「そうそれだ、物騒な賊どもだぜ」
頭を掻く大男はどうやら気に入らない様子。
なにかしら、彼のポリシーに反する部分があるようだ。
「はー、これじゃあ満足に盗みも出来やしねぇ。世知辛い」
「で、同盟すっか?」
「だろうよ。ちりも積もればなんとやら……」
言うと、盗賊の頭は目を閉じる。
そうして、彼の目の前に青白く光る薄く四角い板のようなものが出現した。
「――何用だ? クソ野郎」
その光から発せられるのは、女性の声。
声だけではなく、盗賊頭と向き合うように光の中に浮かぶ顔。
「ひゅー、そんなにツンツンすんなって! 化け物面!」
「しにてえええええのかッ」
■これは、就職者同士の連絡手段■
■【サポート通信】である■
「仕事中だッ。切るぞッ」
「待てよ。仕事の話だ」
「なにッ」
■通信中の二人の間に、緊迫感が発生する■
「……ソルジャーどもの警戒強化に関連する話か?」
「あったりー! 手を組もうぜ! 最強の盗賊団同士でよ!」
「ははは、手を組むなんて……いつ以来だかなぁあああ」
嬉しいのかイヤなのか微妙な声色で応える女。
数秒の沈黙の後、再び口を開いた。
「――おまえ、S級モンスターの話を知ってるか?」
「? なんだよ、それ。Sって最上位のモンスターだろ?」
「ユッタリシティに出現した、謎のゴリラさ」
「ごりら?」
「ゴリラ」
■就職者Gに関する説明が行われた■
「飛行しながら、口から光線を出して、さらには腕を振るうだけで竜巻を起こすモンスター……だと?」
「加えて、山を指一本で吹き飛ばしたとか」
「さすがに冗談だろうッ」
なにやら脚色されている、後のS級モンスターGさん。
一応事実も混ざっているのが恐ろしい話。
「まあ、とにかくだ。もしかしたらそいつが、あたしの探している【怪物】の可能性がある」
「ああー、そういやそんなこと言ってたな……てことは、もしかして」
「同盟するんなら、探るの手伝え。諜報関係得意なのいただろおおお?」
同盟の条件を提示する女盗賊。
それに対する同盟相手の返答は速やかに。
「OKだ。謎のモンスターの正体、暴いてやる――」
●■▲
「……」
クライスはひと騒動を終えて、屋上で寝転がりながら、赤く染まっていく空を眺めていた。
その瞳には何の色も宿らず、ただひたすらに無気力の光を放つ。
「あー、だるい。本当なんであんなことに」
だんだんと黒く染まっていく空の模様は、今日一日の大変さを表しているかのようである。
助けに入った時はヒーロー的に見えなくもなかったのに、なんかもう今にも指名手配されそうな雰囲気に、なんだか泣きたくなる。
「まったく、なんてこったよー」
悪態をつかずにはいられずに、少し舌打ちしてしまう。
どうやら盗賊達は無事捕縛され、町の危機はなんとか回避できたようであるが。
【こわい! そんなモンスターがッ】
【この破壊跡をみるに、凶悪な性質を持っているようだ】
【ナイト協会に連絡は済んだってよ。あの人たちが動くかも】
■新たな危機の出現に、町民たちは怯えていた■
「ああー、なんでだーっ」
■クライスも同様■
「なんで腕動かしただけで……もう少し、確認しておくべき……?」
己の力を測ることを怠った結果なので、自業自得ではある。
しかし、無気力男らしいと言えばらしいよなと、なんか勝手に納得するクライスさん。
「はぁー、やってられないぜー」
さらに気力が抜けていくクライスは、ジャスミンの言葉を思い出した。
【そんなっ、G様が!? きっと何かの間違い! 陰謀よ!】
就職者Gによる、ユッタリシティ破壊活動はファンの一人の耳にも届いた。
ジャスミンはGの行いをそのままには受け止めず、あれこれと勝手に解釈している様子。
その様を見て、ある意味純粋な奴なのかもなとクライス。
(しかし、事実ではあるんだウホ)
「……あり得ない……ううう……!」
「ジャスミン……。よしよし」
■ジャスミンをなぐさめるサーシャの図■
■それも思い出す■
(なんか胸痛し)
■客室に引きこもってしまったジャスミン■
■そんなにショックを受ける程のことなのかと、クライスは呟いた■
【なんてこと……ジャスミン……クライスさんみたいになって……ううっ。このヒキニート感……!】
【おいこら】
【おいたわしい……わたくし……涙が……】
■ヒナは失礼な涙を流していた■
■サーシャのコメントは■
【なにがあったんですかっ、クライス様っ】
【バナナが、いや、いらいらして】
【なにをいってるんですかっ】
■ゴウト君は■
【まさかッ!! 就職者Gが破壊行為に手を染めるとはッ!! 信じられんッ!!】
【まだ決まってないよ。冤罪かもだよ】
【正義がどうとか言う気はないが……ッ。強い力を理不尽に振るうのは……許せんッ
【聞けよー】
【せめておれの手でッ!! お前に引導を渡すッ!! うおおおおおッ】
■なんか勝手に盛り上がっていた■
「影響、やばいっ」
まさかこんな事態になるとは、クライスですら予想できなかった――ではなく、基本的にマヌケの彼が予想できるわけもなし。
思考にすら怠惰が発生しているのだ。
「どうすっかー、困ったー。パリ」
パリパリとうるさくしながら考えるクライス。
彼は傍にある袋から、とても薄いお菓子を手に取り、食している。
■うまうまポテト:うすしお味■
「ぱりぱりぱり」
■クライスのお気に入りお菓子■
「うめーな」
■こんな調子ではあるが、彼は真剣に悩んでいる■
(Gの正体はもちろん、無職の勇士・勇士であることも知られたくはない)
己の平穏自堕落な生活を保つための策は、なんとしても考えねばならぬと、鈍い頭の処理スペック的なのを必死に動かしている。
そうしていると、思考を遮る音が耳に入った。
「クライス。ここにいたのか」
「ジン」
■屋上に現れたのは、先刻助けた仲間■
「話がある。……お前にも関係があるな」
■彼は真剣な顔で、クライスにある提案をした■
「――儀攻戦に参加?」
「そうだ。守りの大剣に挑むんだろう? メンバーに入れてほしい」
「あー、まあ」
「オレでは不満か。やっぱり」
「……」
■寝転がりながら話を聞くクライス■
■その頭には疑問が浮かぶ■
「なんでだ。儀式場?」
「無級なんぞに興味はない。――目的は、ロビンの撃破」
「!」
確かに口にした目的の名は、ジンの親友である筈の男。
冗談などではない、本気の敵対心がそこにはあった。
「……アイツは、オレの幼馴染で」
■静かに動くジンの口から■
■彼と、最強の守護者の始まりが語られる■
【――最強の勇士?】
【そうだ! すごいカッコいいだろ!】