色々と疲れた俺は異世界島に辿り着き、獣人ヒロインと出会う【怠けると強化!強力スキルで異世界競技チャレンジ!】 作:幸福野郎
■魔導室内にて……■
「はい、それでは少しの間、そのままで~」
「ハイ」
「大丈夫ですよ。リラックス~」
「ハイ」
■呆けた返事をするクライス君の視線は、白い天井■
■彼は、ベッドの上に仰向け状態■
■その体には、様々な器具が取り付けられている■
■中でも特徴的なのは、喉の部分に装着されたごつい器具■
(ロボットになるのか。俺)
■走馬灯のようによみがえる、カメ朗のジェット離脱■
■ポーラは逃走■
■クライスはロリンに捕まった■
(あの小悪魔系ロリめ)
【チャレンジ精神が大事ですよ! いざ!!】
(うおおおおっ、せめてカッコいい風で頼むっ)
苦い顔をしながら目をつむるクライス。
その反応に怪訝な視線を向けるナース姿の女性は、なにやら小難しそうな機械を操作している。かなり高性能な魔導具であると思われ。
しかし、クライスくんは恐怖に震える。
(ファンタジー系ロボットだっ)
変な妄想を広げて、せめての恐怖温和を試みるが、無駄なあがきであると感じる。
そうこうしている間にも、機械がぴこぴこ稼働を始めて――。
(さようなら。俺の体ッ)
■覚悟を決めた男の顔■
■鳴り響くエラー音に壊される■
「へ」
「あれ?」
「あれってなに」
「あちゃあ、これはいけませんね」
「なに? 死ぬの俺?」
「いえ、どうやらクライスさんに魔導の適性はないようです」
「なぬ」
■美人ナースさんの説明■
「非常に珍しい……魔導力がゼロでも、習得だけは出来ることが多いのに」
「要するに、完全なるゼロってことですか」
「そうなります、提出されたどの魔導も習得不可です。限定魔導なら別でしょうが……」
「えー」
■安心したような■
■残念なような■
■クライス君は少し肩を落として、退室した■
「どうでしたか、雇い主様~。まあ、【彼女】の目的はカメ朗さんの方だったんで、大丈夫とは思っていますけどぉ~」
「……」
「なんですか? カメ朗さんを見捨てたことですかぁ? ……仕方ないじゃないですか。さすがにあの【気狂い】相手はごめんです! か弱いわたしは、見て見ぬふりをするしかないんですよぉ……必要なことでもありますし」
「いやちがう」
「え?」
「魔導素質なし。おれ」
「あちゃー、アメ舐めます? よしよし」
■引き戸を開けた先にいたロリから■
■あめ玉を受け取るクライス■
■コーラ味であった■
「うまっ」
●■▲
■カウンター前の椅子で、クライスは呼ばれるのを待つ■
「習得料は発生しないので……」
■予想よりも安い支払いを済ませ、ジャスミンたちと合流するべくエントランス前に向かう■
「うおおお!」
「疾風◆踏破!!」
「遅い遅い! 【踏破】は、肉体強化系と相性が悪いぞ!!」
「ちくしょう! そうだった!」
「……」
そこで繰り広げられる魔導戦闘を、指をくわえて見ているだけの魔導力0の男。
なんだかんだで魔法的なものに対する憧れはあるので、嫉妬的な感情がなくもない。
(別に、能力値でごり押しできるし)
確かにクライスのステータスなら、魔導など無関係に脳筋プレイでなんとかなるだろう。
それはそれとして、手から炎出したりしたいなと思うのは、わりと誰でも思うことなのでは思わずにはいられないのである。
その視線は、体から青い光を放ったり、手から電撃を撃ったりしている就職者にぼんやりと向けられている。
少年漫画的なワクワク光景だ。
「なーに、落ち込んでんのよ」
「べつに」
「だめだったみたいね。どんまい!」
「ふん」
背後からの声はジャスミン。
結果は良かったようで、声は上機嫌のそれである。
「ふふふふ、新しい魔導は無事習得よ! あんたよりも強いかも! 一戦やってみる!?」
「戦わんぞー」
「腰抜け! そんなんでどうするのよ! これから守りの大剣に挑もうっていうのに!」
「あー、うるさいわー」
「もうッ」
クライスの変わらない無気力態度に、イライラ中のジャスミンちゃん。
今にも魔導を放ってきそうな雰囲気は、彼を一歩後退りさせる。
彼女の暴走特急っぷりは、身に染みているからこその警戒だ。
「すりすり……」
「ほはっ」
いきなりクライスの腰がさすられる。
犯人は、もう一人の同行者。
「ほう……なかなかの手触り……ですネ。ふフ……」
「ヒナッ」
■いつの間にか忍び寄ってきた少女は、クライスの腰をがっちりと掴んでいた■
「スキンシップ……ですわ……フふ」
「なにをぅ」
「はうう……そんなに怒らないでくださいまし……」
「このやろっ」
■クライス君は逃げるヒナを抱き留め、ささやく■
「あとで、たっぷりとモフモフしてやるからな」
「うう……はいぃ……! よろこんで……!! 鬼畜勇士さま……!」
「何をイチャついてんのよっ。まったく!」
人目もはばからずいちゃいちゃしているクライス達を、ジャスミンはじっとりとした目で見る。
その反応は、どこかうらやましく思っているようにも取れる。とクライスは勝手に解釈。
「ふ、嫉妬か」
「ライバル……! めらめら……!」
「はいいいいぃ!? 誰がよ! あたしにはG様という、こんなへなちょことは比較にならないナイスガイがいるのよッ」
憤慨するジャスミンの言葉に、クライスは少し思案。
なにやら、クライスの仮の姿である就職者、不動のG(という異名が知れ渡った)に無駄な幻想を抱いている様子の彼女に正体を明かすべきかと。
(ないな、ない)
その選択はありえない。
就職者Gの正体は、知られる訳にはいかないのだ。
彼はすでに、【悪辣王】の勢力に関わってしまった。
(念のため、村には監視を置いてある)
あの事件以来、村には不穏な空気が漂うようになったが、それでも平穏さを保っていた。
それをどう捉えるかは人によるだろうが。
(――平和ボケに過ぎる。か?)
そう思わなくもないクライスは用心している。
また、あの異質な乱れたちが襲ってくるのではないかと。
恐怖してしまうのは、それほど強烈な体験であったということ。
(まあ、島のお偉いさんたちによれば)
【独自の対策を行っており――】
(実際、その通りなんだろう)
島の代表たちも、ちゃんと対策に動いてはいる。
ならば任せればいいんじゃないかと思ってしまうのは、悪手なのかどうか。
結局、怠惰と彼は切り離せないもののようだ。
「――ま、ナイスガイっぽいよな」
と。クライスはいきなり謎の自画自賛。
ジャスミンは怪訝な顔。
「何よ、あんたG様を見たことあるの?」
「いいや、しかしなんというかオーラ感じる。とても感じる」
「異常に持ち上げるわね……。何か企んでんのかしら」
「いーや、村を救った英雄。だろ? 当然」
「何よそのどや顔。むかつくわねっ。すごいのはG様であって、あんたじゃないわよ!」
■拳が、ぎしりと鳴るジャスミン■
■びくりとしてしまうクライス■
「おっと、暴力系ヒロインはNG。いまどき受けんぞ」
「誰が誰のヒロインよッ!! まじで一発いっとく!?」
「いや、流行が一周する可能性も」
「人の話を! 聞けーッ!!」
■魔導が発動し、吹き飛ばされるのはお約束の流れ■
「ほうふーッ」
■珍妙な声を上げて、クライスは床を転がる■
「魔導の……無断使用……」
「あ、しまったっ」
「さらばライバル……!! メインヒロインの座はもらいましたわ……!!」
■周りの人たちは何かの宣伝と思い、大して気に留めない■
「クライスさん……無様……。へなちょこ……」
「ひ、ひな。はやいな逃げるのっ」
ちゃっかり魔導の範囲から離脱していたヒナが、倒れたクライスに駆け寄る。
少し薄情ではないかと彼は思う。
ヒナは、ケガを調べると言って彼の体をベタベタと触る。鼻息がすごい荒い。
「わたくしが敬愛する……勇士様は……この程度、問題なし」
「……」
「はぁはぁ……たまりませんわ……!! ふヒ……!」
無職の勇士であるのならまったく平気。
そう信じるからこそ、ヒナは彼を守ろうとはしないのだと語る。
興奮しながら言われても、いまいち格好がつかないなとクライス思う。
「お、お前の中の俺、どんな無敵人間?」
「ふふ……勇士様は、最強無敵……! 当然ですわよね……!」
■サーシャと同等の期待視線を、彼は感じ取った■
■無職の勇士に対する、憧れがある瞳は……■
■危うさも持つ■
「ですから……」
■続けて彼女は■
「ぎゃふんと……言わせてやりましょう……あの勘違いゴミクズに……ッ!!」
■強い決意を表した■
■ぎらぎらとした熱意が、その両目に宿る■
「あー、やっぱり」
「ええ……。わたくし……腹が立っていますの……」
「そう、やっぱりよ。クライス」
■ジャスミンも同じく、決意を示す■
■その瞳は、同じくギラギラと燃えて■
「あたしたちも一緒に挑戦するわ。【儀攻戦】」
倒れたクライスは、ジャスミンに目を向ける。
その彼女の顔は覚悟が溢れていた。
そして、強者と戦えることに対する熱意も見て取れる。
「そうか。じゃ、頼むよ」
「軽いわねッ!?」
「いや、お前らの実力なら大丈夫」
クライスの目は真剣に。
守りの大剣を踏破するためのメンバーとして、彼女たちを信頼すると言っている。
他力本願の気持ちもあったりする。
「何よ、あんたにしては男らしいわね……」
「ふっ」
「……まあ、今回ばかりは気持ちが同じかも。あんたと」
■ジャスミンは、親友の顔を思い浮かべる■
「あの娘にあんな顔をさせる奴を、こてんぱんにしたいってッ!! 燃えたぎっているの!!」
「――ああ」
■彼女の発言に対して問いが浮かんだが、それを止め■
■クライスは目力を強めた■
■その視線は、ジャスミンに向けられ■
(すごい、真剣なまなざしねッ。クライス!)
■より正確に言うと、彼女の下半身に■
■運動用の短いスカートに■
(見える、もう少しで――)
「フンッ!!」
■クライスは、顔面を踏んづけられた■
■ジャスミンの目は、ゴミを見る目になっている■
(スパッツかよ)
見えたスカートの中は、黒いスパッツ。
その上からでも、彼女の引き締まった下半身の力強さのようなものは、見て取れるような気がした。日常的に鍛えていないとあり得ない、洗練された肉体美・同時に思い起こされる、彼女が最近猛トレーニングを行っている姿。
まあ、それはそれとして。
(ありだな)
■守りの大剣に挑むメンバー■
■二人追加■
「ふんっ」
「ぎゃっ」
■再び踏まれるクライス■
■ヒナはそれを見ながら、そういうプレイもありですわね……と呟いた■