色々と疲れた俺は異世界島に辿り着き、獣人ヒロインと出会う【怠けると強化!強力スキルで異世界競技チャレンジ!】   作:幸福野郎

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掴んだ好機・隠されし修練

「ど、どうぞ。ゆっくりしていってくれい……」

 

「あ、ハイ」

 

■ちゃぶ台前に座るクライス達■

■出された茶をすするヒナ■

 

「ほう、修行とな」

 

「そうなんです。あなたの噂を聞いて、ぜひともと思いまして」

 

「ふ、ふーむ……」

 

■トンテンカンと■

■背後で聞こえる、メイドさんによる修復作業■

 

(ベストコーチの異名を持つ、【ビーフ】。戦士を鍛えるスペシャリスト)

 

(数々のナイトやファイターを、鍛えた実績を持つ人だ)

 

(今は隠居おっさん……ですカ……。ちゃんとお風呂入っているのでしょう……カ……?)

 

■魔導の効果により、縮んだ肉体■

■それでも、天井すれすれの巨体■

■白髪はふさふさ■

 

「し、しかしなぁ……私としては……そのなぁ……」

 

(がんばれおっちゃんっ)

 

■同じコミュ障として、肩入れしたくなるクライス■

■心の中で声援送る■

■彼も以前は、社会の中で必死にコミュ力を身につけざるをえなかった経験あった■

■それも、この異世界に来て消失したようだが■

 

「ふむむぅ……」

 

「お願いしますっ、どうしてもあなたの力が必要なんですっ」

 

「……」

 

 うつむき、返答に詰まってしまうビーフ。

 どんな理由で悩んでいるかは分からないが、ジン達は必死になって説得しようとする。

 それは密かにプレッシャーでは?と、クライス心配。

 

「わッ!? ど、どうしようッ。こわれたっ!? あわわっ」

 

 後方で聞こえる破壊音などに冷や汗を流しながら、内心毒づきながら、彼らは頼みこむのである。

 まじでジャスミンさん勘弁してください。全員そう思った。

 

「ううぅ……なんでいつも、こうなるのぉ……」

 

(ほんとな)

 

■不器用すぎるジャスミン■

■メイドとして、当分の間奉仕することになりそうだ■

■そうクライスが思った時、ビーフが口開く■

 

「ジャスミンも……同じこと言ってたがなぁ。もう私は……」

 

(あ、やっぱり)

 

「ふぅうむ……」

 

(だめか? だめかもな。だめな流れだコレ)

 

 顎をなでるビーフは、クライスたちの顔を見遣る。その視線はいきなり鋭く、奥底を見通すようなものになった。

 間違いなく熟考しているであろう眉間の皺が、数秒後になくなる。

 

「……まあ、分かった。そこまで頼まれたら無下には出来んわな」

 

「!」

 

「金はいらん。……付いてきな。さっそく修行場所に行くぞ」

 

■ビーフは一瞬だけ悲し気な顔を見せた後、クライスたちにそう言った■

 

(普通に通ったっ。意外っ)

 

■すくっと立ち上がったビーフ■

■クライスたちはその後に続く■

 

「――私の修行は、ちょいと厳しいぞ」

 

(なんか顔つき変わった)

 

■雰囲気が一変したコーチと共に■

■いざ、トレーニング場所へ!■

 

(……なんか不安そうに見える・な)

 

■クライスはビーフの顔を見て、そう思った■

 

●■▲

 

「で――」

 

■着いた場所は■

 

「もっと気合いを入れてやれ!! きさまらァ!!」

 

「はい!! 師匠!! うおおおおおお!!」

 

「きっついッ。なに、この修行ッ」

 

■長い階段を使い、空の下でうさぎ跳びを行うクライスたち■

■竹刀を持った熱血師匠に変貌したビーフが、叱咤しながら指導中!■

■クライスは雰囲気的にキツイ(スポ根)■

 

「まだだ!! まだ限界じゃない!! 己の力をふりしぼれええええ!!」

 

「おおおおお!! 熱血!!」

 

 やたらとうるさいゴウトも加わり、もうすぐ冬だというのになんとも暑苦しく、汗をかきまくる一同。

 そして、クライスの前にいる人物は。

 

「……うぅっ……なんですか……これぇ……。なんか苦手な感じでス……!」

 

「……」

 

 クライスの前で必死に跳ぶヒナ。

 ローブの下にあるミニスカの中が見えそうで見えない。とてつもない生殺しである。

 それを鋼の自制心でなんとかスルーしようとして、出来てないクライスは、無意識にヒナの方へと注視してしまう。

 

(く、手強いッ。もっと激しくッ)

 

「……はッ!?」

 

 視線に気づいたヒナが、慌ててスカートを両手で押さえた。

 クライスは思わず舌打ち。

 彼女は振り返り、赤くなった顔を向けてくる。

 

「アウトですわ……もう……っ。えっち……! ド変態……!」

 

「悪い。つい」

 

■少し怒ったような感じで、ヒナは先に行くようにうながす■

■なんか、本当に意外な反応だと思ったクライス■

■いつもの変態とは思えない■

 

(あんなに普段変態なのに……羞恥ポイント分からん。すごい恥ずかしそうだ……)

 

■彼は、ヒナにしぶしぶ従う■

 

(あんなに積極的なくせして)

 

■パンチラは、ヒナにとってNGらしい■

■そんな豆知識増えた■

 

「……ッ!!」

 

■一方、先頭でひたすら跳びまくっている男■

 

(能力値補正なしでの運動は、流石にこたえるなッ)

 

 ジンは誰よりも苛烈に修行を行っていた。

 彼の目に映っているのは、先にある困難の壁だけである。

 もっと強く、更に高みへ、己の全身全霊をもって挑まんとする。

 

「待っていろッ!! ロビンッ!!」

 

 熱意を瞳に灯しながら、いずれ戦う友の名をさけんだ。

 その姿を見たクライスは、あまり感情が分からない表情を浮かべる。それは肯定とも否定とも言えるものだった。

 

●■▲

 

■場面は切り替わり■

■階段の先にある大きな池■

 

「ぬおおおおッ!! まさしく修行!!」

 

「微塵も動くな!! 滝の勢いに負けるんじゃない!!」

 

■横に並んで滝に打たれるクライス達■

■男性陣はフンドシ一丁■

 

「ぐぼあッ」

 

 すでに体力の限界の三歩手前に達しているクライスを襲う、水の洗礼。

 冷たさもあいまって、もう彼は心が折れそうになっているのだった。

 体がガクガク震えて止まらない。

 ていうか、なんで自分までこんなことしてるんだ?というループ思考。

 

(しかしッ)

 

 クライスは約束したのだ。

 ある魔導具をゆずってもらえると。

 

【ふっトーンありますかな】

 

【あるぞー】

 

【まじでー】

 

■そんなやり取りが、クライスとビーフの間にあったとさ■

 

「しかし、やっぱきついッ」

 

「……ふふ」

 

「!」

 

 今にも背中が折れそうな、クライスの横に立つ人物。

 彼女は水着姿である。

 

「……その程度……ですか? ……がちがち」

 

「めっちゃ震えとる。ヒナ」

 

 白い水着を着用した魅惑的な肉体を震わせながら、ヒナは滝修行に耐えていた。

 あふれんばかりの巨乳に、自然に目を奪われるクライス。

 それがあれば、男子はどこまでも強くなれるのかもしれない。彼はそんなことを考えるが、やっぱり寒いものは寒い。

 

「ううう……寒いぃ……」

 

「(かわいい)」

 

「でスわ……」

 

「(ポロリはあるかな……なんてな)」

 

 滝の勢いに一縷の望みを懸けるクライスの思考は、半ば現実逃避気味ではある。そうしないとヤバい状態なのだ。

 いつの間にやらそっちに集中していた。

 

■その他の男子は■

 

「ふははははは!! なんのなんの!!」

 

「ッ」

 

 ゴウトはやかましいが、その体勢にゆらぎはなく、滝の勢いに真っ向から立ち向かっている。

 ジンは……。

 

(正直きついッがッ)

 

 彼もまた寒いの苦手(ヒナほどではないが)。

 歯が鳴りながら、しかして、その先にあるものをしっかりと見据えたジンは、力強く立っている。

 気力によって能力が上がる……それも決してウソではないと、その姿が証明していた。

 

(だが、この程度でくじけていられるかッ。ロビンはさらに手強い!!)

 

(だが、ポロリを見るまではあきらめんッ)

 

■クライスとジン、二人の男の意地が燃え広がる■

■片方は完全に邪念だが■

 

「むむ、こりゃあいかんぞ……」

 

■その時、異変は起きた■

 

「きしゃあああああ!!」

 

「!?」

 

■上から流れてくる大量の魚■

■鋭く光る牙を持ったモンスターだ■

 

「こいつらはっ」

 

「B級モンスター、【軍隊ピラニア】!」

 

■それらは、修行中のクライス達に襲いかかる■

 

「うおおおお!! 右腕◆疾風◆鉄壁ィ!!」

 

 赤青緑の三色を身にまとい、ゴウトは降り注ぐ魚の群れを迎え撃つ。

 その両腕はすさまじい速さで動き、破壊の拳がモンスターの肉体を砕き、散らせていく。

 対応しきれないモンスターの牙が突き刺さる。

 

「ぬううう!! 鉄壁を貫いてくるかァ!!」

 

■一方……■

 

「がちがち……ッ。も、モンスター……ッ」

 

「ヒナッ」

 

 寒さで上手く動けないヒナを助けようとするクライス君。も、またうまく動くことが出来なくなっていた。

 原因は、待ち望んだ展開のせい。

 

(ポロリッ、きたーッ。いやいや? そんな場合か?)

 

 急速に色々固まっていく彼は、頭が混乱している。

 しかし、取るべき行動は決まっていた。

 

「うおおおいっ」

「きゃっ……」

 

■抱きしめる形でヒナをかばう、漢クライス……内心そう思っているクライス■

■魚たちは容赦なく牙をむく■

 

「――はあああああッ!!」

 

■その牙を寄せ付けない■

■一陣の風が拡散・炸裂した■

 

「ジャスミンっ」

 

■青い競泳水着をまとった、正義(?)の少女■

■メイド業務は終わったようだ■

 

「正義は勝つッ!! ってね! あー! すっきりしたー! 自由だー!」

 

 拳を突き上げ、高らかに叫ぶ姿は、それなりに決まっている。

 それはそれとして、ついさっきまで不器用な修復作業を行っていたのだが。

 そんなことは忘れたかのように、彼女は陽気に笑っている。

 

「やっと来たか。おそい」

 

「アンタに言われるのはアレだけど……遅れたわね。ここからあたしも修行に加わるわ! 最強になるわよー!」

 

(一時間前まで泣いていたやつとは思えない威勢)

 

 ジャスミンはやる気満々であるが、クライスはもう体力の限界2歩前に近かった。

 というか。

 

(胸。の感触)

 

 ヒナの胸を隠すようにかばったため、かなり直に近いそれが当たるのは当然。

 加えて抱きしめる形になっているため、クライスは色々といかんことになってしまった。

 

「クライスさん……?」

「まて。少し待って。お願い」

 

 かつてない感触に戸惑う。

 どうにか離れようとする体を、心が阻止する。

 

(たまらん。ずっとこのまま……いやいや、いかん)

 

■己の色々に勝ち、クライスが離れようとした時■

 

「いつまで抱きついてんのよ!! ヒナから離れなさい!!」

 

■どっかーんと響く音■

■手遅れだった■

 

●■▲

 

「思った以上に多かったな……」

 

 予想以上のモンスターの大群に、思わず助太刀してしまったビーフ。

 しかし、予定通り実力の一片を見ることはできた。

 彼らが本気かどうかということも。

 ——これで最後の見定めは終わった。

 

「……よし。今のでっ」

 

「熱血には勝てん!! はっはー!!」

 

「このぉ!! 待ちなさいクライス!!」

 

「ま、待てぇ。ジャスミンっ」

 

「ふフ……あんなに緊張して……かわいいお方……ですわね」

 

■三者三様の光景■

■しかし、不思議な統一感を感じるビーフ■

■いや気のせいかもしれないが■

 

(やる気も実力も十分か。ならば、本当の修行に移ろう)

 

■ギラリと光るおっさんの瞳■

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