色々と疲れた俺は異世界島に辿り着き、獣人ヒロインと出会う【怠けると強化!強力スキルで異世界競技チャレンジ!】   作:幸福野郎

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終着点・その過程

「パリパリパリ」

 

■屋内に響くお菓子の音■

 

「――ッ」

 

■ここはまさしく修行の場■

 

「うめー」

 

■怠惰なる者は、いつもと変わらず菓子貪り、寝転がる■

 

「ぐ――おッ」

 

「おおおッ……!!」

 

■二人の挑戦者は■

■生死の境をさまよう■

 

(頑張るなー、ジンとゴウト)

 

■それは、魔導具による修行■

 

【その大きな石を持って、しっかり立て。それだけだ】

 

 漆黒の輝きを放つ四角い石を、二人はしっかりと両手で支えている。

 床の四角い模様からはみ出ないように注意しながら、彼等二人はただひたすらに異質な圧力に耐えている。

 

(淡い灰色の光が、二人を包んでいる)

 

 魔導具から発せられるプレッシャーの凄まじさは、二人の苦悶の顔からうかがえる。

 ただひたすらに負荷を耐えるだけなのだが、その密度が半端ではない。

 

【今度は全開で構わん。しっかり力を込めて立つんだ。そうした方が早く終わる】

 

 石の色は底から徐々に白くなっているようで、やがて色がまるっと塗り替わる。

 その時こそ、修行の終わりであるようだ。

 これこそが修行用の魔導具……それも、あまりに【過酷】すぎて生産中止になったいわくつきの品だ。

 

【おまえら二人は、基礎的な能力から底上げするべきだな。技術以前の問題だ。相手があの最強の盾ならなおさらに】

 

 ビーフは、少し疑念をもった視線を二人に向けながら言った。

 師匠にそう言われ、ジンとゴウトは必死になっているわけだが。

 

(ヒナとジャスミンは)

 

■女性陣は、また一味違う修行を行っている模様■

■クライスは、建物の奥にある二つの扉の一つへと足をすすめた■

 

「――やあああッ。これでどう!?」

 

■そこに広がるのは魔導場■

■荒れ果てた荒野である■

 

「おお」

 

 クライスの前でぴっちりとした運動用スーツ(紫色)を着たジャスミンが、大型のモンスターを相手に立ちまわる光景。

 彼の目が真剣なものになった。

 

(ほう)

 

 腕を組み、彼女の雄姿を見守る。

 本当に真剣なまなざしには邪な気持ちがまったくないなんてことはなく、その視線に気づいたジャスミンに睨まれてしまう。

 これ以上見たら、ぶん殴ると告げる顔だ。

 

(暴力には屈しない)

 

■眼力を強めるクライスは覚悟あり■

 

(なんだかんだいって、かわいい)

 

■ふとした瞬間に、見惚れる時もある彼女■

■こういう時は特にだ■

 

「がんばれー」

 

■ジャスミンは、目前のトカゲのようなモンスターに苦戦している■

 

「く、手強いわねーっ。このトカゲ!! いいかげん倒れなさい!!」

 

 ジャスミンは汗を流しながら、トカゲの口から飛ばされる体液をかわし続けていた。

 攻撃に転じる様子はない。

 いつもの彼女らしくない行動に、クライスは不思議に思う。

 

「ふむ、ジャスミンの攻撃力では無駄だしな」

 

「うお。おっちゃん」

 

「あのモンスターのスキルによって、一定以下の攻撃は無効化される」

 

 いつの間にやら横に立っていたビーフに、驚くクライス。

 彼も真剣なまなざしで、ジャスミンの修行を見守っていた。そんな中で、美しきパワーファイターは、地面をにらみながら回避行動中。

 クライスは彼女の奮闘を見て、一言。

 

「ジャスミンのやつ、動きにくそうだな」

 

「ああ。それでいい」

 

「?」

 

■ビーフの意味深な言葉■

■クライスは疑問符■

 

「まあ、いっか」

 

■しばしの間、クライスはジャスミンの姿を見ていた■

■その太陽のような輝きは、共に戦ったあの時から少しも陰ってはいない■

 

●■▲

 

■元いた場所に戻ったクライス+おっさんは■

■もう片方の扉へと入る■

 

「こっちも魔導場」

 

「親友と協力して作ったんだ。そういうのが得意な職業でな……」

 

「ほー」

 

■魔導場は上手く作れないと、かなりチープな光景が広がるが■

 

(すごい作り込み。芸術の一種として数えられるわけだ)

 

■そこに広がる木々の群れは■

■実物以上に美しい■

 

「さて、ヒナは」

 

■修行を行っている彼女を探す■

 

「お」

 

 大きな炸裂音が響く。

 ヒナの戦闘音だろう。

 なので、クライスたちは小走りでそこへと向かった。

 

「……!」

 

「……!」

 

■彼女を発見した二人は息を呑む■

 

「ああぅう……やだあぁああ……ですゥ……」

 

■めちゃくちゃヌルヌルしてそうなツルに絡めとられた美少女の姿が■

 

「「触手ゲーか?」」

 

■息ぴったりの二人■

■まるで兄弟の様だ■

 

「ううぅ……ぬるぬる……しますゥ……」

 

 ヒナを捕縛しているツルは、近くに立つモンスターの口から出ていた。

 緑の体色をそなえた、筋肉もりもり、体格がっちりの怪物。

 

(オークっぽい)

 

 昔プレイしたエロゲーに似たようなキャラいたなーと、クライスは視線を完全固定したまま考えるのだった。

 なぜだか目を離せない、そんな尊い光景があるような気がしてならないんだ。

 

「あれは、危険じゃないんだよな」

 

「……あのモンスターは、【ヌルヌルポーク】」

 

「ほう」

 

「女性をさらい、その後は……」

 

「どきどき」

 

「ヌルヌルにして、住んでいる場所の地面に首から下を埋めて去っていくとか」

 

「……判断に困る脅威度だな。性癖特殊過ぎない?」

 

「モンスターの思考は分からん……」

 

「ぬるぬるされるぅ……ですゥ……」

 

■なんだかんだで、修行を見守ることにしたクライス■

■どうにもヒナの声が色っぽくて、落ち着かない■

 

「おっちゃん」

 

「なんだ」

 

「なんだかソワソワする」

 

「奇遇だな。私もだ」

 

 クライスとビーフは無駄にそわそわしながらも、ちゃんと真面目な意味でも見てはいた。

 その間にもツルの勢いは増し、ヒナの肢体を強く絞めつけていく。

 彼女は苦悶の表情を浮かべながらも、負けじと対応しようとする。

 

「この……ッ! 調子に乗らないで……ッ!!」

 

■ついにヒナの反撃■

 

「!」

 

「ツルが切れた。いや、切ったのか」

 

 ヒナを拘束していた複数のツルが、次々に切り裂かれる現象。

 まるで見えない刃でも使ったかのような。

 

「ヒナの本領」

 

 続いて見えなくなったのは彼女の姿。

 クライスですら捉えられない気配殺しの術で、モンスターの周囲に潜んだ。

 

「ぐるるる!!」

 

 姿を見失ったヌルヌルポークは、きょろきょろと辺りを見回す動き。

 切られた触手的なものが、その間にも素早く再生。

 

「え……?」

 

■再生した触手的なのが、ヒナの右腕と左足に巻きついた■

 

「きゃっ……っ」

 

 透明な肢体をしっかりと捕らえて放さない触手……的な何かは、次々と巻き付いていく。

 やがて、ヒナの術が崩された。

 彼女の姿が露になり、クライス達の視界に入る。

 

「なぜ……わたくしの技が……ッ」

 

「ぐるる!!」

 

「いやですわ……ぬるぬる……っ。やぁ……!」

 

■リプレイするかのように、またヒナは捕らえられた■

 

(今のは……)

 

 クライスは敵モンスターの性質を理解した。

 どうやら彼女の天敵であるようだと。

 

「しかし、いまいち集中できない。この修業風景」

 

「まだまだ未熟者よな……クライス」

 

「師匠っ」

 

■ヒナの修行を見守る二人■

■クライスは、なんだかんだいってヒナのことが心配■

■そわそわしながらも、ちゃんと彼女の頑張りを見ていた■

 

●■▲

 

■数分後、魔導場を後にする二人■

 

「うおおおおッ!! 熱血!!」

 

「おおおおッ。まだまだ……!!」

 

(暑苦しい)

 

 クライスの目の前には、まだ魔導具の圧力に耐えている体育会系二人。すでに数時間は経過しているというのに、その闘志は萎えていない。

 彼らを照らす、高窓から射し込む光はすでに赤く染まっている。

 

「もうこんな時間」

 

「……クライス、お前なかなか見所があるな。異世界競技の才覚を感じる」

 

「へへ」

 

 若干むかつく笑みを見せるクライス。ジャスミンなら殴っている可能性あり。

 ビーフの称賛は選手に対するもので、彼から見てもトッププレイヤーということなのだろう。

 

「だが、お前に対する修行はない。残念ながらな」

 

「なぜに」

 

「【強すぎる】」

 

■その時だけ、ビーフの語気が強まった■

 

「……」

 

「見た感じの能力値はへぼいが、私には分かるとも……。お前は【銀の闘技会】でも充分通用するレベルの選手だ……。まだそこまで目立ってないのが信じられんな」

 

「(なんかシリアスだ)」

 

■ビーフの真剣な表情に、そう思わずにはいられない■

 

「そういえば、風呂入ってくか?」

 

「お言葉に甘えて」

 

「飯は?」

 

「あまり味が濃くないので、よろ」

 

■クライスは、飯をご馳走になることにした■

 

「風呂は左の扉だ」

 

「了解ー」

 

「あ、そういえばシャンプー切らしてたなぁ」

 

「ないわー」

 

 いつもの無気力状態を維持したまま、修行展開に突入することなく、浴室へと向かうクライス。

 彼の頭には、ある想いが充満していた。

 

(修行できない疎外感? 違う)

 

 割と狭い浴室(一般の大きさ)で髪を泡立てるクライスは、残り少ないシャンプーに歯噛みしながら、必死である。

 

(俺の心に渦巻く感情は――くそ、もっと泡立てないとッ)

 

 シャカシャカ音を響かせながら、彼はそもそもの目的を思い出す。

 そう、己はある魔導具を求めてここへ来たのだ。

 ……ならばやることは決まっていた・己のスキル残量を確認する。

 

■風呂から上がり……■

 

「寝室は二階だ」

 

「ラジャー」

 

 ふかふかのベッドに入り、お休みタイムに突入するクライス。

 ちゃっかり宿泊することにしたようだ。

 

(……)

 

■ぱちりと開く彼の目■

 

(ふっトーンを奪取するッ)

 

■怪盗クライスの時間■

■求めるは、いつまで経っても渡されない報酬■

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