色々と疲れた俺は異世界島に辿り着き、獣人ヒロインと出会う【怠けると強化!強力スキルで異世界競技チャレンジ!】   作:幸福野郎

65 / 125
想定外の魔物

「こそこそ」

 

■こそこそと動いている彼の名は■

■マサル改め、クライス■

 

(約束守れよ、おっさん)

 

【え、なんのことかの】

 

【貴様ッ】

 

■修行を一応受けたクライス君■

■しかし、報酬は渡されないというね……■

 

「ぷんぷん」

 

■匍匐前進で寝室(ベッドと敷布団それぞれ二つある)のカーペット上を進むのさ■

 

「さて、どうすっか」

 

■現在位置は、館の二階西側・奥■

 

「そーっと、そーっと」

 

■現在時刻は、深夜とギリギリ言えるほど■

 

「くく、ばれへんよな」

 

■ちょっと楽しくなってきた彼■

■顔が心なしかにやけ、周囲の静寂を確認する■

 

(どこにありそうかというと、目星は付いている)

 

 部屋を出ると右と左に分かれた通路。

 建物の中央を囲むように広がる四角い二階通路からは、一階ロビーの様子が見える。

 そこには……。

 

「うおお、おおおッ。まだ、だッ」

 

「ぐ、ああああッ」

 

(まだ、やってるのかー)

 

 大きな石を持ち、背中に圧し掛かる重圧を受け止め、汗を大量に流すスポ根漫画的な光景。

 クライスはそれを眺め(伏せたまま)、しばらくの間停止する。

 気まぐれでしかない行動。

 

「く、ははは!! まずいな! 意識が飛びそうだッ」

 

「ふん、情けないなッ。あと一時間はいけるぞッ」

 

「はははは!! お前も同じだろうよッ!!」

 

「阿呆をいうな。オレはキミより余裕あるッ。」

 

 軽口を叩き合いながら修行を行っている二人。

 表情はまるで軽くない。

 今にも彼等は消滅しそうな程の状態。実際、止め時を見誤ったらそうなってしまうのだろう。

 

「……しかし、クライスのやつはまるでやる気がないなっ」

 

 ゴウトは眺めているナマケモノを話題に出す。

 やる気がないというか、師匠に修行を却下されてしまったのだが。

 

「見損なったぞー!! なんだかんだで熱い奴だと思っていたのに!!」

 

「……」

 

(勝手に熱血キャラにすな)

 

 クライスは顔をしかめる。

 最初から彼には熱意などない。

 日々を惰性で生きているような、ぼんやりとした人生を歩むのが自分であると。特に人生を素晴らしいとも何とも思わないし、もうすでに青春は蝶になって飛び立ち、みじめに落ちてしまった。

 あとに残ったのはぬけがらのみ。

 

「……たしかに、あいつは無気力だ」

 

「だろう、まったくけしからん!! 選手としての意気込みが足りんわ!!」

 

(なんだよー、俺わるものー?)

 

■まあ、本人も自覚はあるのだが■

■あったからと言って、改善のしようもない■

 

「……オレには分かるよッ。あいつの気持ちがッ」

 

「なにィ!?」

 

(なに?)

 

 ジンの言葉に聞き捨てならぬと反応する二人。

 彼は、続けて言葉の真意を語る。

 

「オレもッ、そんな時期があったしなッ」

 

「??」

 

「……村に来たばかりのころをッ。覚えてるかッ」

 

「おお??」

 

(来た頃?)

 

■クライスの回想■

 

【ふーむ、もう少し腰回りを凝りたいな】

 

【……】

 

【くそ、違う作り直しだッ】

 

【……】

 

■木像を作っていた記憶ばかり■

 

「木像づくり……そうだな。オレの趣味の一つだ。それはッ」

 

「ははは!! もっと運動せんかーッ!!」

 

「……というか、やりたいことは他にあったんだ。趣味のふりして逃げたんだ」

 

「??」

 

(……)

 

■ジンが前に言っていたことを、クライスは回想■

 

【なさけない男の話だが】

 

(逃げてたのか。お前は)

 

■言葉を思い出すクライス■

 

「オレは村に来てから……いや、来る前からずっとッ」

 

■以前の自分を思い出すジン■

 

「本当に目指すべき壁から目を背け、へらへら笑っていたッ。格好ばかりつけてなッ」

 

 今もなお、魔導具からの圧力は彼にのしかあかっているが、歯ぎしりしながらそれに立ち向かう。

 その苦悶の表情に余裕などない。

 だが、覚悟なら十分すぎるほどにあった。

 

「ダメだったんだよッ、どうしてもッ! 現実に向き合えなかったッ」

 

 誰に聞かせるでもない、自分自身の内面を吐き出すかのような言葉。

 ふんばる足に力が入り、その気迫を高めていくようだ。

 

「ああ、みんなッ。……約束したのにッ。そう言ってッ。旅に出たのになッ」

 

 体が悲鳴を上げ、今にも消滅しそうな危険すら感じるが、なんとか踏み止まれるのは、強い心が燃え上がっているからだろう。

 負けはしないと心が叫ぶ。

 

「だけどッ。だからッ! オレはァッ!!」

 

 力のかぎり叫ぶ。

 必死な人間が放つそれは、クライスの耳にもしっかりと届いた。

 

「……」

 

■クライスの視線は、しばらく止まったまま■

 

「……ふとん、探すか」

 

■やがて、本来の目的に戻った■

 

「こそこそ」

 

■行動再開■

 

「調査完了」

 

■そうして、宝のありかを突き止めた■

 

「三階か」

 

■どうやら伝説のお布団は三階にあるようだ■

■三階は二階と似たような造りになっている■

 

「いざ」

 

■階段を慎重に上がり■

 

「……」

 

 三階の廊下に出る。

 どこにあるかの詳細までは分からないので、自力で探し出すしかないのだが。

 

「……」

 

■右の通路が、いくつもの丸い光(赤)で照らされている■

■監視カメラがさりげなく多い■

■斧みたいな物体が、振り子のように動いて道をふさぐ■

 

(あからさますぎて、逆に迷う)

 

 見るからに、宝はこの先ですよと告げている。

 クライスは戸惑いの中、それでも一歩を踏み出した。

 現在、ビーフおっさんは就寝中であるからして、この時がチャンスと彼は考える。

 

(動く赤い光。ふれたら……)

 

 変幻自在に床や壁を照らす光を、回避する構えを見せる。

 動きはそれほど速くない。

 

「が」

 

■かなりすれすれで避けるクライス■

 

「っ」

 

■同時に、迫りくる斧を軽く跳び回避■

 

「監視カメラは」

 

■速力を上げて■

 

「――成功」

 

■映らない速度で移動■

 

「もしや」

 

 これはビーフが仕掛けた修行なのではないかと思った。

 しかし、あの中年の顔を思い浮かべて。

 

【ヒナちゃんも専属メイドにしたい気持ちがある。いや他意はないぞ他意はっ。ただこれは必要なことでだな……】

 

【わたさん】

 

■ヒナの可愛さに、魅了されてしまうのは分かるが■

■クライスは断固として反対した■

 

(……ないな)

 

■さて、警備の先には怪しげな扉が■

 

(……絶対入るなって書いてある)

 

■扉に直接書かれた文字■

■クライスは当然入る■

 

「む」

 

■入ろうとした時、左から猛烈な勢いで迫る影■

 

「うっ!?」

 

 クライスの両腕に衝撃が走る。

 影が放った拳をガードしたためだ。

 とても固い感触のそれは、とても常人では防御し切れない威力を感じる。

 

「……いたいな」

 

「……」

 

■影の正体は鋼の人形■

■ようするにロボットである■

 

「カメ朗なのか?」

 

「――違う」

 

「なんだ、違うのか」

 

 全体的にスリムなデザインのロボットは、青く両目を光らせてしゃべる。

 両拳を構え、完全戦闘態勢を整え、クライスと対峙した。

 

「私は正義のカラクリ、人の心を侵す悪を滅し、世の調和を守る者……!! 【オーバーテクノロジー】の結晶だ!!」

 

「なにぃ。悪だと」

 

「しかり、行くぞ!! 小悪党!!」

 

「! (目の光が)」

 

■ロボットの目が光を増していく■

■まさにそれは■

 

(まさかビーム——)

 

「くらえ、ビーム!!」

 

「うわああっ」

 

■はなたれた光線がクライスを襲う!■

 

「あ?」

 

■ちょっとピリッとした■

 

「……」

 

「……」

 

「行くぞおおおおおおおおッ!!」

 

「がっかりだッ」

 

■普通に殴りかかって来るロボット■

 

「(鈍いな)」

 

 しかしその動きは鈍重で、対処がしやすいものでしかない。

 クライス君はやれやれ困ったもんだ状態に。

 

(軽くのしてやるか)

 

 スキルで能力値をそれなりに上げて、迫りくるロボの動きを注視する。

 右のストレートが来ると予想した。

 

(余裕で対処——)

 

■その拳には、あまりに脅威がなく■

 

(を)

 

■だからこそ、クライスの顔面を貫いた■

 

「ごはッ」

 

 後ろに吹き飛ぶ体。

 鋼の拳はとても重く、彼の頭を揺らしたのだ。

 

「こ、のッ」

 

「ふん、その程度か! 小悪党に相応しい!!」

 

 片膝を突くクライスに対して勝ち誇るロボ。

 完全に調子に乗っているようだ。

 しかし、その実力は本物。クライスは前に聞いた話を思い出した。

 

(スーパーロボットは強い。能力値がないからこそ……【規格外】である、か)

 

 少しゆれているクライスの体勢。

 その動きはさっきの攻撃が効いた証であり、ロボットはそれで敵対者の実力を看破した。

 すなわち、自分の方が強いと。

 

「フフフ、かかってこい。そのぐらいのチャンスはくれてやろう! 悪党よ!!」

 

「……なに言ってるんだ?」

 

「は? どうした、早く」

 

「いや、もう終わった」

 

「はい? な——」

 

■クライスの言葉と共に■

■ロボの体は砕け散った■

 

「なにいいいいッ!?」

 

 驚き声と同時、ロボットは床に倒れた。

 なにが起こったかも理解できないまま、粉砕された鋼鉄の体。

 並の就職者と侮った相手も、また規格外。敵の攻撃に合わせて、それ以上の攻撃を返していた。

 そのナマケモノは気だるそうに腕を回す。ちょっと本気を出しただけで疲労感MAX。

 

(……十五発はぶちこんだかな? つかれた)

 

■クライスは立ち、扉の前へ■

 

(さて、改めて)

 

■ドアノブを回そうと手を近づけ■

 

「――番外の友」

 

■後方から聞こえた言葉に、手を止めた■

 

「なに?」

 

 クライスは振り返り、首だけになったロボットを見る。

 その機能は停止しているようだ。

 

「……」

 

■再び手を動かすクライス■

 

「――暗い」

 

 扉の先は暗く、どうやら無人のようだ。

 しかし、お目当てのものは存在した。

 

「おお」

 

 部屋の一角で光り輝く領域。輝く柱。

 どう見てもただものではないモノが、そこには存在した。

 

「これが」 

 

 クライスは柱に触れ、その感触を確かめる。

 どうやらそれは確かな実体をもったモノのようだ。

 

(少し力を入れれば、引き抜ける)

 

 まるで伝説の剣を抜くかのような緊張感で、クライスは能力値を上げて。

 光の柱を掴み、思い切りよく引っ張った。

 

「――ううーん~」

 

「はい?」

 

■消えた柱の中にあった光景は■

■敷布団の上に寝ているジャスミン■

■白いパジャマ(胸元のボタンが開いている)着用■

 

「……」

 

■そして、クライスの手には普通の見た目のかけ布団■

■まるでこの状況は■

 

(早く、逃げよう)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。