色々と疲れた俺は異世界島に辿り着き、獣人ヒロインと出会う【怠けると強化!強力スキルで異世界競技チャレンジ!】 作:幸福野郎
「そー」
「ううーん」
「っとー」
「あぅぅー」
(いちいちエロい)
■退散しようとする彼の心を、繋ぎとめる声と仕草■
■男子ならば仕方ない■
(もう少し見てようかな)
■少しだけよぎる心■
■しかしそれは悪手であると、いつものクライスなら気付いたはず■
「あぅああーん」
「どきどき」
■胸元がはだけているため、余計にいかん■
(どうする、なにか見落としているような???)
クライスの足は止まり、さっさと逃げるというハッピーエンドへの道が閉ざされていくようだ。
そして、彼はあることに思い至る。
(待て。ヒナはどうした)
ここにジャスミンが寝ているということは、彼女はもしかして同室にいるかもしれない。
そう思った変質者、周囲をじっくりと観察する。
ジャスミンを起こさないようにビクビクしているので、いまいち動きが遅い。
(目が慣れて)
■それなりに見えてはいる■
(……ベッド)
奥の方にベッドが設置されている。
微妙にふくれ上がっているが……。
(いるのかヒナ?)
ふと、己がどういう状況にいるのか見失ってしまった。
完全に混乱状態で動いてしまう変質者。ジャスミン起きたらやばいのに、さっさと撤退しろと頭の中で自分が言う。
(口止めをしなければ。もしかしたら起きてて、なんてありえそうで怖いッ)
疑心暗鬼のような状態は、ヒナの神出鬼没ムーブのせいもあるのかもしれない。
そろりと近付き、ベッドの毛布を取る蛮行に出た。
もはや言い逃れできない行動。
「……」
■ベッドに横たわるのは、大きな抱き枕■
■どっかで、見たことあるような顔が印刷されている■
■そう鏡の中とかで■
(スルー)
■そっと毛布を戻した■
(たんす……)
■今度はタンスに目を付ける■
(いるのか?)
■んなわけないだろうと、つっこみはなし■
■完全に状況把握が狂っている■
(いない)
クライス君は安堵。
とうてい安堵できるような状況ではないはずなのだが、やはり混乱している様だ。
このままジャスミンが目覚めたらどうなるか……。
そんな思考がどっかに逸れていき、そこら辺を無駄に物色する謎の行動に出てしまう。人間は追い詰められた時、余計に事態を悪化させるようなことをしてしまう時がある。
(ここにも)
(いない)
(いないな)
■彼の行動は悪化していき■
「むにゃにゃ?」
■ついにきたその時■
「あ」
「あ」
■目が合う二人■
「――クライス?」
■開けられたタンス、散乱した下着■
■ベッドのシーツは乱れ■
■下手人の手には、はぎ取られたお布団様が■
「違うんやで」
■苦しすぎる言葉は逆効果■
■ジャスミンがわなわなと震え■
「わ——わ——わ——」
(いかーんッ)
「むぐ!?」
(あッ)
■思わず、彼女の口を右手でふさぐクライス■
■しまったと思いながらも、余った手で両手も封じてしまった■
(終わった――)
クライスは数秒後に吹っ飛ばされる自分を想起しながら、手の力を緩めた。もうこうなってしまったら、ジタバタしても無駄。大人しく裁きの鉄拳を受けるしかない。
それに対しジャスミンは。
「――ご主人様」
「……え?」
■彼女のその目は、焦点が乱れに乱れ■
■体が小刻みに震えだす■
■クライスは、背筋が凍っていくのを感じた■
「いけません、それは、こわれてしまいます、ます」
「ジャスミンッ」
「血に染まっています、きれいにしますから、あたしを血に染めないで」
「おいッ」
■彼女の存在から■
■酷く覚えのある気配が・発せられたような■
(乱れッ)
彼女の左目から発せられるそれは、かつて村を襲った脅威と同種であると気づく。
どろどろと流れ出す負の感情は、クライスに激しい拒絶感を与えるものである。例えるならばそれは、人によっては吐きかねないグロテスクな映像を延々と途切れることなく、次々に見せつけられるようなもの。
おぞましい光から、彼は目を逸らそうとして。
(――ジャスミン)
■彼女の目から流れる涙■
「落ち着け」
彼は、自然にそう言っていた。
ジャスミンの目をしっかりと見て。
(……いや、逆効果か?)
そもそもの原因であるかもしれない男の言葉など、無意味では?
なので、もう少し工夫をしてみることにしたクライスの言葉。
「ウホ」
「……」
(あかん、すべったか)
■うつろな瞳で、クライスを見るジャスミン■
「――Gさま」
■頬は上気し、その両腕をクライスへと伸ばす■
■まるでそれは甘える幼子のようで■
「ウホッッ」
■引き寄せられる彼の体■
■クライスの顔に、柔らかい感触広がる■
(むにゅっとな)
いい匂いと、なんともいえない素晴らしい感触に、クライスのすべてが一気に熱を増したような気がする。
このままでは、彼の理性は完全に砕かれてしまう。
それは不味いので。
(緊急的な脱出ッ)
急いでジャスミンから離れようとするクライス。
しかし、彼女の両腕の力は衰えることなく彼を逃がさない。
「お願いッ、Gさまッ、行かないでぇ……ッ」
「なぬッ」
子供のようにすがるジャスミンの体は震え、とても弱弱しく、いつもの活発さはどこにもないようだ。
クライスは混乱の渦中。
ハッキリ言って泣きそう。
もうなにがどうなってるんだか・だか???
(どうすっるッ。どうすっるッ)
心臓が高鳴るクライスは、決断を迫られている。
このまま強引にジャスミンを振り切っていくことも出来るが、やっていいものか。
かといって、彼女の想いに応えるということは。
(理性決壊ッ)
とてつもない決断を迫られてしまったと、己の行動を後悔する。
まさか伝説の布団を求めたら美少女と一緒に寝るイベントに突入するとは、そんなの予想できるわけないだろ俺が悪いんじゃないやいという、苦しすぎる言い訳をする彼。
だが、もうこうなってはやるしかないではないか。
男らしくどんと構えようと決意。
「わ、わわわかったッ、いかないッ」
■無理である■
「ドキドキ……」
「Gさま……」
「ドクン……ッ」
「Gさま」
■なんだかんだで一緒に寝る■
■背中を向けるクライスを、抱き締めるジャスミンのスタイル■
■甘い香りや、肉体の感触が男の理性を削る■
「ほっははッ、ほっはは」
「……」
「ほははは」
■気色の悪い声を上げるクライス■
■そうしていないと、万が一の確率で彼女を襲ってしまうかもしれないため、必死に理性防御行動を取っている■
■ああ、そういう風に考えてしまうのは・連想させるなにかがあったからで——■
「Gさま」
「はいッ??? なにッ」
「一つお願いがあるのですが――」
■ジャスミンの言葉に過剰反応してしまう彼は、まるで気が休まらない。はやくこの場から離れて、普通に寝たい……はよ休ませてくれムーブ■
■クライスの休暇はどっかに行ったよう■
■彼は、とても悶々とする一晩を過ごした……■
●■▲
「……朝」
「すーすー」
「人の気も知らずに」
■クライスは前もこんなことがあったなと思う■
■あの時は、目の前の彼女に制裁を受けたが■
■というか……今回のは、まじで理性持ったの奇跡だと思う■
「今回は了承済みだからな」
「すー」
■彼女の獣耳を、モフモフするクライス■
「もっふもふ」
「……」
「もふもふ」
「おい」
■その手が、がっしりと掴まれる■
■すさまじい力であった■
■クライスは訝しむ■
■ジャスミンの眼光は、鬼神のごとき有様だ。それだけで失神してしまいそうな、圧倒的なプレッシャーを感じる■
「おいおい、同意で添い寝したんだしこれぐらい……」
「いつ、あたしが同意したのよ」
「ええー、ちょ、ええー」
■このパターンはまずいと思う、クライス君■
■制裁に向けて動き出す運命■
■ジャスミンの眼光を、直視できない男■
「今度は違う。本当に冤罪」
「証拠は?」
「だから、お前が言ったのッ」
「有罪」
■握力が強まり、クライスの顔が青ざめていく■
■これはいかんと思った時には手遅れ■
「この……ド変態がああああああッ!!」
「ぐあああああッ――――」
■断末魔■
「……」
■そんな中、ベッドの上で■
■意味あり気な視線を送る少女には、気づかない■
●■▲
「――で、吊るされているわけか」
「自業自得だな!! がはははははは!!」
「……」
■二階の柵に、くくり付けられたロープによって■
■逆さづりになっているクライス■
「ふっははは!! それはそれで修業になるかッ!?」
「うるさーい」
修業を行いながら、その様を見て笑っているゴウト。
ジンは構ってられんと修業に集中。
女性陣は魔導場にいるため、彼の醜態を眺めることは出来ない。
(あーくそ)
なんでいっつも、こんな目に遭ってしまうのかと思うクライス。
まあ、自分の日頃の行いも問題ではあるのだが。
今回の行動は、混乱していたとはいえ何やってんねん案件だ。
(……ジャスミン)
■ふと思い出す、彼女の壊れそうな顔■
■乱れの光■
(過去になにが)
よくよく考えてみれば、クライスはジャスミンの昔をよく知らない。ジャスミン自身も、過去については避けているような気もする。
それなりに仲良くなったが、彼女の奥底にある何かについては分からないのだ。
踏み込む勇気もないために、気になってはいるが進展がない。
(……しかし)
■思い出す、自分を叩きのめした時の元気そうな表情■
■いや普通に恐ろしかったが■
■土下座したまま、頭を上げられなかったが■
(よかった)
もしあのまま彼女が壊れてしまったらと思うと、想像するだけで恐ろしい。
今度からは、もっと注意する必要があるのだろう。
■彼女の元気さは、彼にとっては好ましいものでもあるのだから■
(それはそれとして、早くおろして)